“自然再生とは何か”が問われている三番瀬

   〜『中学校社会科のしおり』付録に永尾俊彦さんが執筆〜


千葉県自然保護連合事務局




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 社会科や地図の教科書を出版している帝国書院は『中学校 社会科のしおり』を発行しています。その4月号付録に「自然の再生とは何かが問われている三番瀬」が載っています。

 執筆したのはルポライターの永尾俊彦さんです。写真も、「猫実川河口域のカキ礁」(提供者:高島麗さん)、「ノリヒビとハマシギの群れ」(同:田久保晴孝さん)、「三番瀬観察会」(同:千葉県自然保護連合)の3枚が掲載されています。

 永尾さんの文は、「市民参加組織」(三番瀬円卓会議、三番瀬再生会議)の限界や、「自然再生」(三番瀬再生)のいかがわしさを突き、三番瀬問題の本質をみごとにえぐっています。
 以下は、その一部です。

    《02年1月、堂本知事は三番瀬の再生をどうするか話し合う「三番瀬再生計画検討会議」(通称円卓会議)を発足させた。委員には漁協、自然保護団体、地元市などの代表に学者ら24人が選ばれた。自然の再生計画を利害関係者が話し合いで策定しようとした先進的な試みだった。
     しかし、対立ばかりが際立った。最大の対立点はカキ礁のある猫実川河口の評価と人工干潟問題だ。猫実川河口域は周辺の埋め立てによって潮の流れが遅くなり、海水がよどんで「ヘドロの海」になったと地元の市川市や漁協の代表らは主張する。だから三番瀬の自然を再生するために砂を入れてヘドロを埋め、人工干潟を造れば潮の流れが戻り、ノリ養殖に良い環境になり、砂地を好むアサリも育つという。
     これに対して、自然保護団体代表は人工干潟とは事実上の埋め立てで、カキ礁もある豊かな生態系がつぶされると批判、自然の再生とは陸地化されている所を海に戻すことだとする。
     この対立は、自然の再生とは何か、保護とは何かという根本的な問題について共通認識が形成されれば、自ずから結論が出るはずだ。人間は自然を造れるのか、自然が自ら蘇ろうとするのを手助けできるだけなのかということを考えてみれば自明ではないだろうか。
     けれども、共通認識は形成されず、砂投入(人工干潟)をやってみたいとか、護岸が老朽化していて人命にかかわるので改修を急げという議論に大半の時間が費やされた。》

    《さらに、議論を制約したのが第2東京湾岸道路計画だ。撤回前の三番瀬埋め立て計画では、第2湾岸は埋め立て地を横切って浦安市と船橋市を結ぶ予定で、両市にはすでに用地が確保されている。だから、第2湾岸を通すには三番瀬の上を高架橋にするか、トンネルを掘るしかないが、そうなると三番瀬の自然は壊滅する。
     堂本知事は、一方で三番瀬は保全するといいながら、他方で県議会の約6割を占める自民党が求める第2湾岸は建設すると明言している。そこで、自然保護団体は第2湾岸を通すために県は猫実川河口域を人工干潟化したいと見ている。あらかじめ「自然再生」という名目で人工干潟にしておけば、カキ礁などもなくなっているので反対も弱くなるからだ。
     円卓会議では、この第2湾岸問題を何人もの委員が取り上げるよう提起したが、堂本知事の意向をくんだ会長の配慮で議題にされなかった。》

    《また、三番瀬を国際的な湿地の保全条約であるラムサール条約に登録するための関係者の合意形成を進めることが円卓会議で決まったが、堂本知事は消極的だ。登録すると第2湾岸が造れなくなるからではないかと見られている。》

    《結局、円卓会議は2年間で関連会議も含めて168回の会議を開き、04年1月、三番瀬の再生には海域をこれ以上狭めないことを原則とすることの他、7つの再生のための具体的施策を堂本知事に提言した。しかし、その中で唯一県が前向きなのは干出域の形成、つまり砂投入による人工干潟化だけだ。
     円卓会議は再生会議に引き継がれ、08年3月現在、人工干潟造成に向けての実験が始められようとしている。》

    《千葉県の円卓・再生会議には、これまで官僚が決めてきた公共事業を市民の話し合いで進めるという画期的な意義がある。しかし、知事や県の政治的思惑で話し合いに大きな制約がある点がその限界だといわざるをえない。》

 三番瀬の現状や「再生」については上っ面しかみない論調が多いなかで、永尾さんの見識はたいへんすぐれたものだと思います。

(2008年4月)






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