水循環再構築をうたいながら、

 水循環に逆行する巨大下水処理場建設を支持

  〜三番瀬円卓会議〜


千葉県自然保護連合事務局



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 (2003年)12月22日の夜、三番瀬「海域委員会」(円卓会議の下部組織)の第20回会合が開かれました。
 この会合で「河川・流域ワーキンググループ(WG)」のとりまとめ案が報告されました。タイトルは「三番瀬の再生のための『水循環の再生計画』(案)」です。


●「水循環の再構築」について立派なことが書かれている

 このとりまとめ案には立派なことがたくさん書かれています。三番瀬再生のためには「水循環」全体の再構築が必要だとの共通認識ができたとし、その方策としてさまざまなことが盛り込まれています。自然の保水力、浸透力、貯水力を高めることや、湿地、後背地、水田などを保全・復元することなどです。三番瀬への河川水導入などもうたわれています。
 水循環を阻害している大きな要因のひとつは流域下水道です。この点についても、きちんと指摘がされています。
      「高度成長による都市化・工業化の波は、水循環全体のシステムを根底から変えてしまいました。上水→下水道→処理場という全く新しい人工的な水系システムが巨大化した」
      「流域下水道については下水道整備が大量の下水を海側に集め集中的に処理する方法がとられています。このため、河川水の流量を減少させ、特に都市型の中小河川では流量が不足する傾向にあります」
      「下水の処理についてもできる限り発生源に近いところで処理する方法を模索することが今後重要になります」


●しかし、水循環を阻害する江戸川第一下水処理場建設は支持

 これらはかなりすぐれた提案です。
 しかし、こうした考え方や方策とまったく正反対のことが三番瀬再生計画素案に盛り込まれていることについては、一言も触れずじまいです。これにはガッカリしました。
 素案には、江戸川流域下水道の第一終末処理場建設計画を「支持する」と書かれています(152ページ)。この処理場は、三番瀬近くの市川市本行徳に建設される計画です。
 しかし、この大規模下水処理場はつくる必要のない施設です。既設の第二処理場を機能アップすれば、必要ありません。また、この処理場は、建設費が1950億円と算定されており、県や関係市の財政破たんに拍車をかけるものです。
 この計画は、水循環に完全に逆行です。関宿(野田市)から延々60キロメートルも管渠を通して市川の臨海部に持ってくるということは、管渠という名の新たな大河川をつくることになり、既存河川の水量を減少させます。これは河川の水質悪化につながり、三番瀬への汚濁負荷を増やしています。
 現に、県は、印旛沼流域下水道の花見川第二終末処理場の処理水を延々24キロメートルにわたってポンプアップし、市川市内の大柏川や船橋市内の海老川上流に還元するという工事をすすめています。数十億円以上もかけてです。ポンプアップの理由は、流域下水道の整備にともない、海老川などの水量が減少し水質悪化が深刻になっているからです。
 将来は江戸川第一処理場の処理水を延々とポンプアップする必要もでてきます。そんなムダづかいはやめるべきです。処理場をどうしてもつくるのなら、最初から内陸部に処理場を分散してつくるべきです〈注〉

〈注〉 くわしくは江戸川第一下水処理場建設計画の見直しを求める要望書をご覧ください。



●平和の尊さを訴えながらイラク派兵に賛成するのと同じではないか

 このように、一方で「水循環の再構築」を強調しながら、他方では、水循環に逆行するばかりか、壮大なムダづかいとなる大規模下水処理場の建設を「支持する」としているのです。いったいどういうことでしょうか。
 これは、素案が、総論で猫実川河口域(三番瀬市川側海域の一部)の保全の必要性をうたいながら、そこへの護岸張り出しや土砂投入を「提言」(結論部分)に盛り込んでいるのと同じ構図です。平和の尊さや平和外交の重要性を訴えながら、自衛隊のイラク派兵に賛成するのと同じです。


●宇井純氏は江戸川第一終末処理場計画をきびしく批判

 たとえば、元沖縄大学教授の宇井純さんは、この江戸川第一終末処理場計画について、水循環を阻害するばかりか、「効果は小さく、費用が過大」「金食い虫」などとして、きびしく批判しています。
 参考に、宇井純さんが就任したばかりの堂本千葉県知事にあてた文を転載させていただきます。

(2003年12月)




《『千葉日報』2001年5月20日付より》

1年かけ流域下水道見直しを

沖縄大学教授 宇井 純


 公害問題の先駆者として「公害原論」「日本の水はよみがえるか」などの著書で知られ、現在沖縄大学で教べんをとる宇井純教授が19日までに、全国的な関心を呼んでいる三番瀬問題で千葉日報社へ自らの考えをまとめた原稿を寄せた。宇井教授の原稿は、堂本暁子知事あてとしているが、流域下水道処理施設の建設は慎重であるべきだなどとする意見であり、全文を掲載した。

*  *  *  *  *  *


 拝啓 堂本暁子千葉県知事御中

 御当選おめでとうございます。多年にわたってlUCN(国際自然保護連合)でのご活躍に心から感謝しておりましたが、今度は千葉県政を引き受けようと決意されたことに深く感謝します。だれがやっても大仕事であり、まともにやろうとすればそれだけ苦労の多い重責を果たすためのお仕事に、いささかなりともお手伝いできればとは思いますが、このように遠方の地にありまして、上京もままならぬ仕事にありますので、せめて気のついたことでもこの機会に申し上げてご参考になればと思います。
 三番瀬を埋め立てる理由として、流域下水道の処理場の用地の必要があげられていること、下水道の技術者として私が聞いて、これは全く論外の根拠のない申し立てであると判断します。一昨年、流域の現地を歩いてみて、処理場の用地はすでに十分あるし、過大な計画そのものを見直さなければ将来の県民の負担は大変なことになると感じました。

 大きいことはいいことだという考えのもとに造られた江戸川左岸の流域下水道は、それ自体が時代遅れであり、効果は小さく、費用が過大です。21世紀には水資源の慢性不足が予想されているとき、処理下水も貴重な水資源ですが、流域下氷道ではその利用も困難です。
 まず、この下水道事業を1年やめて、その間に千葉県の抱えている下水道計画をゆっくり見直すことをお勤めします。それぞれの計画が、どれくらいの費用を必要とし、そこから生ずる利益はどのようなものが予定されているか、いわゆる費用便益計算をやり直すのです。
 そんなことはとっくに済んでいるから工事を進めているのだという推進側には、20年、30年前と経済条件が大きく変わっているからこそ、今、分析をやり直す必要があることを説明し、再計算と計画の見直しをするのには1年あれば十分でしょう。
 この作業を完全な公開で、学識経験者による委員会の監視のもとに進めます。この委員の選任も完全に公開し、業界も含めた各分野から理由を明示した推薦を公表します。公開の場での議論に堪えないような学者はお断りするしかありません。
 下水道の工事を1年やめたら失業者が増えるという議論が必ず出るでしょう。しかし、土木の世界では県の直営で、かつての失業対策のようにコツコツとやっていく仕事がいくらでもあります。下水道でも素人でもできる枝管の埋設などを1年やればよいのです。
 同じように、委員会の選定などの最初の階段から公開し、手続きをできるだけ透明化して複数の案について行えば、県の事業に伴う環境アセスメントの質も向上して、信頼できるものになります。今までの事業者アセスメントでは、工事をするための“アワセメント”などという批判がありましたが、県の環境部門がしっかりすることで、第三者アセスメントに近づけることはできるでしょう。
 県の部局が勉強して力をつけることは、県民の財産が増えることでもあります。ご多忙の折とは存じますが、ぜひこの方向に県政をお進めください。遠方から成功を祈ります。






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