三番瀬問題をどう見る

〜根底に第二湾岸道路〜


千葉県自然保護連合事務局



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 三番瀬をめぐる状況は、私たちの予測どおりに動いています。
 結論をいえば、県や堂本知事は第二湾岸道路を三番瀬に通すという基本方針をもっていて、そのための“地ならし”としてあの手この手をつかって猫実川河口域を埋めようとしている──ということです。
 三番瀬海域に張りだす形での護岸改修や、「漁場再生」をうたい文句にした人工干潟造成、さらには市川市などに人工海浜(人工干潟)造成の世論づくりをさせていることは、すべてここからきています。
 また、三番瀬が今年秋の締約国会議でラムサール条約に登録されることは不可能となりましたが、これも同じ問題です。「いまはまだ登録すべきでない」というのが、県や堂本知事の一貫した姿勢です。
 こうした本質を理解するためには、経過(歴史)や事実をきちんとおさえることが必要です。経過をざっとみてみましょう。


1.三番瀬をめぐる経過

(1)740haの埋め立て計画と第二湾岸道用地確保
 県は1993年、「市川2期・京葉港2期埋め立て基本計画」(2期埋め立て計画)を発表しました。これは、三番瀬の海域を740ha(市川側470ha、船橋側270ha)埋め立てるというものでした。埋め立て地のど真ん中に第二湾岸道路を通し、あわせて下水処理場や都市再開発用地、住宅用地、人工海浜などを確保しようとするものです。
 ちなみに、先月28日の『朝日新聞』(2005.7.28)が、東京外郭環状道路(外環道)と第二湾岸道路のルート図を載せています。この図では、三番瀬を埋め立て、そこに第二湾岸道路を通して外環道とつなぐようになっています。おそらく、740ha埋め立て計画時のルート図を使ったのでしょう。

(2)埋め立て反対運動が高揚
 740haの埋め立て計画に対し、「県環境会議」(知事の諮問機関)が、三番瀬の生態系について補足調査を行うことや、土地利用の必要性を吟味することなどを提言しました。
 また、埋め立て反対運動が大きく盛りあがりました。1996年には、「三番瀬を守る署名ネットワーク」(署名ネット)が結成され、埋め立て中止を求める署名がはじまりました。署名ネットは1998年4月、第1次分として12万人の署名を県に提出しました。

(3)埋め立て規模を101haに大幅縮小
  〜第二湾岸道の用地確保が最大の目的〜
 県は1999年1月、「埋め立ては三番瀬の自然にたいする影響が大きい」とする補足調査結果を発表しました。そして同年6月、当初計画の740haを101haに大幅に縮小する見直し案を発表しました。
 この縮小案は、計画図をみれば一目瞭然のように、第二湾岸道の用地確保が最大の目的でした〈注〉。
 この点は、たとえば『朝日新聞』(千葉版)もこう指摘しています。
     「埋め立て計画の全面中止にならなかった背景には、第二東京湾岸道路の用地があげられる」(1999.7.2)
     「従来の埋め立て計画は、第二湾岸道路の用地確保の意味合いが大きかった」(2001.9.26)
 また、1999年7月2日付けの『赤旗』も次のように記しています。
    「三番瀬の埋め立てにとって第二湾岸道路建設問題は最大の課題ともいえます。中野英昭企業庁長も、『第二湾岸道路の建設と埋め立ては一体』と強調します」
 埋め立て地には、下水処理場用地も確保されていましたが、これは完全につけ足しです。県の下水道担当の部署は次のように語っていました。
     「三番瀬埋め立て地に下水処理場をつくる必然性はまったくない。都市計画決定されている市川市行徳の約48haの土地を使えばいい。軟弱地盤の三番瀬につくれば金がかかりすぎるので、本当はそこにはつくりたくない。しかし、下水処理場の建設がなくなれば埋め立ての大義名分が弱くなることから、埋め立て計画にムリヤリ織り込まれた」

(4)101ha埋め立て計画のうたい文句は、「人の利用と自然との共生実現」
 県は、この101ha埋め立て計画について、「人の利用と自然との共生を実現する」ものであり、これ以上は縮小できないということを述べ、不退転の決意を表明しました。第二湾岸道路を通すために、これ以上は埋め立て面積を縮小できないということです。
 県は、市川側海域に人工干潟を造成することで、三番瀬にそそぐ猫実川の河口部は「潮の流れが改善され、環境の向上が期待できる」(『朝日新聞』千葉版、1999.7.2)ということも盛んに強調しました。

(5)「埋め立て中止」の世論広がる
   〜2001年知事選で「白紙撤回」を掲げた堂本氏が当選〜
 一部の環境NGOが縮小案(101ha埋め立て計画)を容認する姿勢に転じたものの、埋め立て反対運動はますます高まり、「埋め立て中止」を求める世論も広がりました。埋め立て中止を求める署名は、2001年1月に26万人を突破しました。
 そして、2001年3月の知事選では、三番瀬埋め立てが最大の争点になりました。朝日、読売、毎日の3紙が埋め立てに関する県民世論調査をおこなった結果、いずれも、県民の半数以上が埋め立てに反対か、見直しを求めています。
 選挙では、こうした世論の動向を見た堂本暁子氏(無党派)が、最終盤で「埋め立て計画の白紙撤回」に転じ、当選しました。

(6)堂本知事は就任当初から一部埋め立てを示唆
 堂本知事は、埋め立て計画の「白紙撤回」を公約したものの、第二湾岸道路は建設促進の姿勢でした。ですから、知事就任当初から、三番瀬の一部埋め立てをほのめかしていました。
 たとえば、就任直後の2001年4月17日、三番瀬保全団体が堂本知事の代理人と懇談をおこない、いま残っている三番瀬の干潟・浅瀬はそっくり保存することを要望しました。しかし、代理人は、「猫実川河口域は、いまのまま残すというわけにはいかない」と言いました。
 また、知事自らが、「漁協、自治体、市民団体などから要望を頂いたが、すべて同じではなく、ある程度妥協点を探らなくてはいけない」(『東京新聞』千葉版、2001.5.26)とか、「地域の全員が満足する 案は難しく、ちょっと埋め立てたり削ることはあるかもしれない」(『毎日新聞』、同)などということを述べていました。

(7)白紙撤回とあわせ、見直し案提示を表明
 知事は2001年7月、シンポジウムを開いて住民の意見を聴いたうえで、9月県議会に見直し計画案を示す方針を明らかにしました。翌日の新聞は、いっせいに「9月県会に見直し案」「9月議会までに新案」などと報道しました。たとえば『千葉日報』(01.7.31)は次のように報じています。
     「堂本暁子知事は30日の定例記者会見で、東京湾・三番瀬の埋め立て問題について、8月と9月に市川市でシンポジウムを合わせて2回開催して住民らの意見を聴いた上で、9月下旬に開会予定の9月定例県議会に見直し計画案を示す方針を明らかにした」
 見直し案がどういうものであるかは明らかにしませんでしたが、第二湾岸道路を猫実川河口域に通すことと関係していることは間違いありません。
 これに対し、三番瀬保全団体は強く反発しました。わずかな期間で見直し案を作成するのは拙速であること、見直し案の作成は専門家や関係団体・住民などの参加のもとに慎重かつ十分な検討を行うこと、従来の埋め立て思想と決別し、わずかに残された干潟・浅瀬はこれ以上埋め立てたりつぶしたりしないこと──などを求める要請書を知事に提出しました。
 2001年8月23日に開かれた県主催「第1回三番瀬シンポジウム」では、公開抽選で選ばれた20人の住民が意見を発表しました。
 意見発表では、
     「三番瀬は東京湾に数少ない水鳥の生息地であり、渡り鳥の大切な中継地」
     「生物多様性豊かで、水質浄化に多大な貢献をしている」
     「これ以上埋め立てないでほしい」
     「子どもたちにそっくり残すべき」
     「知事は、白紙撤回ではなく、埋めないと断言してほしい」
 ──などの声が相次ぎ、“埋め立て反対”の意見が圧倒的多数を占めました。また、「シンポジウムを2回開いただけで見直し計画案をつくるのはあまりにも拙速すぎる」という意見もだされました。
 9月7日の「第2回シンポジウム」では、県が選んだパネリストによるパネルディスカッションがおこなわれ、ここでも「三番瀬は貴重な自然」「計画作成には時間をかけるべき」などという意見が相次ぎました。
 こうした動きや運動によって堂本知事は新たな埋め立て見直し案の提示を断念し、2001年9月下旬に101ha埋め立て計画の白紙撤回を表明しました。

(8)新たな三番瀬計画を作成するために円卓会議を発足
 しかし堂本知事は、第二湾岸道路は三番瀬に通すという姿勢をくずしませんでした。
 そこで、住民参加により新たな三番瀬計画案をつくるということを決めました。これが「三番瀬再生計画検討会議」(通称・円卓会議)です。
 円卓会議は、2002年1月に発足しました。委員構成をみると、案の定でした。埋め立て反対運動を進めてきたメンバーはわずかです。
 一方、猫実川河口域で人工干潟をつくるべきという団体(漁協、一部環境NGOなど)からは多数が委員に選ばれました。

(9)円卓会議の議論の焦点は猫実川河口域の扱い
 円卓会議の議論も、予想どおり、最初から最後まで猫実川河口域の評価と扱いが焦点になりました。
 会議では、猫実川河口域は「死んだ海」「ヘドロの海」「瀕死の状態」「生き物はほとんどいない」とする主張が声高に叫ばれました。そして、猫実川河口域に土砂を入れて人工砂浜をつくるべきという意見や提案が何度もくりかえされました。
     「アサリなどを増やすために、人工干潟が必要」
     「高潮被害を防ぐために、護岸改修とあわせて人工砂浜をつくるべき」
     「市民が自由に安心して海にふれあえるように、人工砂浜(人工干潟)をつくるべき」
 ──などというものです。
 これに対し、大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)は、猫実川河口域の大切さを訴え、その保存を強く主張しました。多種多様な生き物が生息し、浄化能力も高いなど、生物多様性や東京湾漁業などにとって重要な浅海域(浅瀬)であることを何度も主張したのです。
 計163回開かれた円卓会議には三番瀬保全団体のメンバーも多数が参加し、傍聴席からさまざまな意見を述べました。また、パブリックコメント(意見公募)では、三番瀬はこれ以上つぶすべきでないという意見が、県内だけでなく県外からも多数寄せられました。
 こうした結果、円卓会議が最終的にまとめた「三番瀬再生計画案」では、猫実川河口域は保存することが盛り込まれました。
 しかし他方で、この海域につながる市川塩浜2丁目地先では、海に張り出す形で石積み傾斜護岸をつくり、その前面に人工砂浜をつくることも盛り込まれました。
 これは、三番瀬海域をつぶすものであり、猫実川河口域の人工砂浜化につながる恐れの強いものです。そのため、三番瀬保全団体は強く反対しました。パブリックコメントでも、反対意見が多数寄せられました。しかしながら、円卓会議では、これが合意されてしまいました。

(10)「猫実川河口域は結論がでなかった」という扱いに
 前述のように、「三番瀬再生計画案」では、「猫実川河口域は保全すべき」と書かれています。しかし、計画案の「まえがき」には、岡島成行・円卓会議会長が、こっそりと次の点を書き入れました。
     「円卓会議が積み残した仕事も数多くあります。ラムサール条約登録の問題、猫実川河口域の扱いなどです。いずれも2年間の議論でははっきりした結論が出ませんでした」
     ようするに、岡島会長は、ラムサール条約に登録するかどうかや、猫実川河口域をどう扱うかは結論がでなかったと公表したのです。これは、堂本知事の意向を受けてのものでした。

(11)県が「三番瀬再生基本計画案」を作成
   〜猫実川河口域の保全は明記しない〜
 県は昨年(2004)12月、円卓会議の後継組織である「三番瀬再生会議」が発足させました。この会議は、県が作成する三番瀬再生計画案などについて意見を述べる知事の諮問機関です。
 今年4月、県が「三番瀬再生基本計画素案」を発表しました。案の定、この素案には、猫実川河口域を保全するということが明記されていません。
 素案を審議した再生会議でも、大西隆会長(東京大学教授)が、「猫実川河口域の評価や扱いは意見が分かれているので、基本計画では明記しない」ということを強く求め、これが「合意」になりました。

(12)市川市が人工海浜化構想を発表
 一方、地元の市川市は今年6月、猫実川河口域に土砂を入れて人工海浜をつくる構想を「市の提案」とし、広報紙で発表しました。


2.円卓会議の合意事項は次々とホゴ

 以上が、おおまかな経過です。
 これをみればわかるように、県は猫実川河口域の「埋め立て」(人工砂浜造成)をけっしてあきらめていないことがわかるでしょう。はっきりいえば、第二湾岸道路を通すために、猫実川河口域はどうしてもつぶしたいのです。
 私たちは、このことを2001年の知事就任時から言いつづけてきました。しかし、異論も多くだされていました。
     「『生物多様性』(岩波書店)の本を書いている堂本知事がそんなことをするはずがない」
     「円卓会議で猫実川河口域本体の保全が合意されたので大丈夫」
     「三番瀬の再生・保全の理念に反する形で第二湾岸道路の計画を行わないことを円卓会議が要望しているので、道路は通せないはずだ」
 ──などというものです。
 はっきりいって、こうした見解は「甘い!」といわざるとえません。それは、次の点を考えただけでもわかるはずです。
  • 堂本知事は、県議会などで第二湾岸道路は必ずつくるということを今も表明している。
  • 第二湾岸道路は三番瀬で中ぶらりんになっているので、道路をつくるためには、どうしても三番瀬を通さざるを得ない。ここを通さないと、浦安、船橋、習志野、千葉市などの埋め立て地に確保されている8車線の道路用地はムダになる。
  • 環境省は第二湾岸道路を三番瀬に通す場合は、地下(トンネル)方式にすることを求めている。しかし、費用が3〜4倍かかり、さらに外環道とのジャンクション(接続)部分の地下工事が技術的にむずかしいため、地下方式は困難ということを県が発表している。
  • 三番瀬円卓会議の本来の目的は「三番瀬の保全・再生計画を作成する」となっていたのに、じっさいには保全や再生とはあまり関係のないことが議論された。猫実川河口域で人工砂浜をつくるとか、石積み傾斜護岸をつくるとか、そんなことばかりがくりかえし議論された。
  • 円卓会議では、「猫実川河口域は保全する」とか「海域は狭めない」が合意されたのに、県が作成した「三番瀬再生基本計画素案」では、それがあっさりホゴにされた。また、それを再生会議も認めた。このように、円卓会議の合意事項は次々とホゴにされている。


3.今後の展開予想

 それで、今後の展開予想です。
 「三番瀬再生基本計画案」に猫実川河口域の評価や扱いが盛り込まれなかったのは、県のもくろみどおりです。「基本計画」に猫実川河口域の保全が盛り込まれたら、第二湾岸道路を通せなくなり、アウトになるからです。
 猫実川河口域をどうするかは、事業計画や実施計画の段階で議論することになりました。しかし、そういうふうに進めば進むほど、行政の意向どおりに事を運ぶことができます。

 県は今後、各種委員会で、猫実川河口域の人工海浜(干潟)化を求める提言をさせたい考えです。また、世論づくりも、です。
 たとえば、「三番瀬漁場再生検討委員会」は、10人の委員中、じつに7人が人工干潟造成推進派です。また、「市川海岸塩浜地区護岸検討委員会」も、猫実川河口域の人工海浜化を主張しているメンバーが多数を占めています。
 両委員会とも、円卓会議とはまったくちがった雰囲気になっていることがわかるはずです。環境保護派の発言は頭から抑えつけられたり、無視されたりしています。
 さらに、市川市が人工海浜構想を広報紙で発表したのは、世論づくりです。風呂田利夫・東邦大学教授が猫実川河口域は人工干潟にすべきということを公然と主張しつづけているも、こうした動きにのっているとみるべきでしょう。
 今後の動きに注目です。

(2005年8月)





第二湾岸道路の予定ルート







740ヘクタールの埋め立て計画(1993年発表)







101ヘクタールの埋め立て計画(1999年発表。2001年に白紙撤回)







県がめざす三番瀬再生












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