三番瀬をめぐる対立点


千葉県自然保護連合事務局



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 東京湾奥部に残る干潟・浅瀬「三番瀬(さんばんぜ)」をめぐっては、対立点がかなり鮮明になってきました。それを大ざっぱに整理してみました。

1.猫実川河口域を保存するのか、それとも人工干潟(人工海浜)にするのか

     最大の対立点は、猫実川河口域(三番瀬の市川側海域の一部)を維持保全(保存)するのか、それとも土砂を入れて人工干潟(あるいは人工海浜)にするのか、という点である。

    ◇三番瀬保全団体(埋め立てに反対している自然保護団体。千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、三番瀬を守る会、市川三番瀬を守る会、千葉県自然保護連合など)
     この海域をそっくり保存すべきと主張。その理由は、多種多様な生き物が生息し、浄化能力も高く、大切な浅瀬(浅海域)になっているからである。
     人工干潟については、自然の干潟や浅瀬に比べると生息する生き物の数が少なく、浄化能力も劣り、全国的にみても人工干潟の成功例はないと主張している。

    ◇市川市、漁協、一部環境NGO・学者、県など
     砂を入れて人工干潟(人工海浜)にすべき、と主張。東京の「お台場」や横浜市金沢区の「海の公園」のような人工海浜にすれば、たくさんの市民が海に親しめるようになる。また、環境学習や人材育成にもつながり、アサリやノリの漁場再生につながる──と言う。
     県も人工海浜化をめざしている。しかし、県の目的は、三番瀬に第二東京湾岸道路(第二湾岸道)を通すための地ならしであって、人工海浜化そのものではない、と言われている。


2.猫実川河口域の評価

     猫実川河口域を、「傷つきながらも自然の豊かさを維持している海」とみるのか、それとも「ヘドロ化している海」「死滅しつつある海」とみるのか、という点である。

    ◇三番瀬保全団体
     焦点となっている猫実川河口域は、多種多様な生き物が生息している。最近の県の調査によれば、動物197種、植物15種が確認されている。そのなかには、千葉県レッドデータブック記載の絶滅危惧 種が12種含まれている。市民調査でも100種以上の生物が確認されている。
     この海域には、アナジャコもたくさんいる。ハゼなどの稚魚がたくさん泳ぎ回っており、稚魚の楽園ともなっている。約5000平方メートルの貴重なカキ礁も存在する。水質能力も非常に高い。それほど、ここは生命力豊かな浅瀬である。生物多様性の観点からも、ここを保存することは重要である。

    ◇市川市、漁協、一部環境NGO・学者など
     猫実川河口域について、「ヘドロ化している」「このままではダメになってしまう」「青潮の影響を受けやすい」「潮流が停滞しているので漁場に悪影響を与えている」「泥干潟など存在しない」「カキ礁は漁業にとって何の価値もないどころか、有害である」などと主張。

3.ラムサール条約登録の時期
     三番瀬をラムサール登録湿地にすること自体については、どの団体も反対しない。問題は登録時期である。

    ◇三番瀬保全団体
     三番瀬は、過去の埋め立てや周辺からの汚濁負荷流入にもかかわらず、豊かな生物相を維持し、ラムサール登録条件を十分に満たしている。したがって、ただちに登録すべきと主張。登録署名も進めている。

    ◇県
     現状での登録には反対。今の状態で登録湿地にするのは時期尚早であり、必要な整備を済ませたうえで登録すべきという姿勢。具体的には、第二湾岸道はどうしても必要な道路なので、この道路を三番瀬に通してから登録するということ。

    ◇市川市
     現状での登録には反対。猫実川河口域を人工海浜にしてから登録すべきと主張。

    ◇地元漁協
     現状での登録には反対。漁場の再生(猫実川河口域の人工干潟化など)を済ませたあとだったら登録に賛成するという姿勢。
     3月18日に開かれた東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」では、田草川信慈氏(市川市の三番瀬担当幹部)がこう述べた。
     「漁業者は、ラムサール登録そのものに反対しているわけではない。漁場が改善されれば登録に賛成すると言っている」

    ◇一部環境NGO
     現状での登録には反対で、人工干潟造成などの条件が整備されたあとに登録するのならばいいという姿勢。たとえば「三番瀬フォーラム」顧問であり、「三番瀬研究会」の代表である小埜尾精一氏は新聞でこう述べている。
     「今の状況で登録しましょうと言っているのは間違い。ラムサール条約は国際法で、国内法に対する圧力はなく、不法係留・投棄・釣り糸・釣り針がまったく手付かずのまま残っている。法的に間違っていることをやっている人間を県や市の条例なり法律を整備し排除・規制した上でラムサールという冠=勲章をもらうのはいい」(『毎日新聞』千葉版、2001.10.5)


4.第二湾岸道の建設

    ◇三番瀬保全団体
     第二湾岸道は三番瀬を通る計画になっているが、第二湾岸道は三番瀬の自然破壊や費用対効果など重大な問題をかかえている。この道路が本当に必要なものであるかどうかを三番瀬再生会議などで徹底的に議論すべき──と主張。

    ◇環境省
     第二湾岸道は三番瀬の自然環境に重大な影響を与えるので、三番瀬海域では高架方式(地上方式)ではなく、地下方式にすべき、と県に要請。

    ◇県
     県や堂本知事は、「第二湾岸道路は必要であり、つくらなければならない」と言明しつづけている。
     最大のネックは、三番瀬の猫実川河口域である。浦安市の埋め立て地に確保されている第二湾岸道路用地は変更不可能であり、この用地が猫実川河口域のど真ん中とぶつかっているので、この海域はどうしても通さざるをえない。
     そこで県は、「三番瀬再生」という名でこの海域の人工干潟化(人工海浜化)をめざしている。
     人工干潟を造成する際に、「沈埋(ちんまい)方式」などにより道路を埋め込むというものである。そうすれば、人工干潟の下に道路が隠れるので、「三番瀬再生」と第二湾岸道は整合するというわけである。
     これは、「再生」という美名による三番瀬埋め立て計画の復活である。

    ◇市川市、漁協
     三番瀬に第二湾岸道を通すことに積極賛成。

    ◇一部環境NGO
     猫実川河口域は人工干潟にすべきと主張しているが、そこに第二湾岸道を地上式で通すことについては反対。
     たとえば、三番瀬フォーラムの顧問をしている風呂田利夫氏は、3月18日に開かれた東邦大学理学部環境科学シンポジウム「三番瀬の環境再生計画」でこう述べた。
     「三番瀬で人工的にやれば何ができるのかを検討すべきだが、やっていけないこともある。それは第二湾岸道路の橋をかけることだ。道路を通すのなら、地下方式にすべきだ」
     したがって、人工干潟の下に第二湾岸道路を埋め込むことには反対しないとみられている。


5.三番瀬再生のあり方

     三番瀬再生のあり方については、「三番瀬円卓会議」の発足(2002年1月)以降、三番瀬保全団体と人工干潟化推進派の間ではげしい議論が交わされてきた。
     計163回におよぶ円卓会議の議論、さらにはパブリックコメント(意見公募)などで、保全団体や保全団体のメンバーらが、意見や対案を何回も提示した。

    ◇三番瀬保全団体
     三番瀬の保全・再生は、ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」に沿って実施すべきと提案。すなわち、現存する干潟・浅瀬の保全維持を基本にし、弊害要因をとりのぞいたり、埋め立て遊休地の湿地復元などを行うべきというもの。
     具体的にはこんなことを提案している。
    • 猫実川河口域は生物相が豊かで、“命のゆりかご”となっているので、現存の海域はすべて保存すべき。
    • 護岸改修はいまの直立護岸の形で改修すること。どうしても傾斜護岸にするというのなら、海には張り出さず、後背埋め立て地を使うこと。
    • 遊休埋め立て地で湿地復元を図ること。たとえば「三番瀬再生計画案」(三番瀬円卓会議がまとめたもの)にも盛り込まれている次のような施策を積極的に講じるべき。
      • 市川市塩浜2丁目の現護岸の一部を撤去し、その陸側を湿地化する
      • 猫実川の干潟化を図る
      • 浦安市日の出地区の現護岸の陸域側で湿地化や干潟化を図る
      • 行徳鳥獣保護区と三番瀬との連絡水路の開渠化
    • 三番瀬に流入する汚濁負荷を軽減すること。たとえば沿岸の下水道普及率(2003年度末)をみると、市川市は63.5%、船橋市は49.8%であり、全国平均(66.7%)と比べてみてもかなり遅れている。このため、三番瀬に流入する河川には家庭雑排水が未処理のまま放流され、川がものすごく汚れている。たとえば、市川市内を流れ、三番瀬に流入する真間川流域の春木川は「2003年度日本の汚い川」(環境省発表)のワースト1、同じく国分川はワースト5である。船橋市内を流れて三番瀬に流入する海老川もたいへん汚れている。三番瀬は、こうした流入汚濁をかなり浄化しているが、限界がある。また、船橋市の下水処理水が三番瀬に直接、放流されていることも、三番瀬に大きな負担をかけている。三番瀬の環境改善で、早急に手をつけなければならないのは、こうした阻害要因を取り除くことである。
    • カネがかかるばかりでいつまでたっても下水道整備が終わらない流域下水道方式を見直し、内陸部に小規模の処理場をつくるとか、未整備の地域では単独浄化槽を合併浄化槽を切り替えるということをどんどん進めるべき。

    ◇市川市、漁協、県、一部環境NGO・学者など
     猫実川河口域の人工干潟化こそが最優先課題とし、保全団体の提案はまったく無視。パブリックコメントで寄せられた意見や提案も黙殺である。
     そればかりか、「猫実川河口域の泥干潟は保全すべき」など、円卓会議の「三番瀬再生計画案」に盛り込まれていた優れた点もほとんど無視するか、ホゴである。
     そして県は、三番瀬再生事業の最優先課題として、市川塩浜護岸の改修工事(海をつぶしての石積み護岸建設)に着手した。

 以上です。  

(2006年9月)





第二湾岸道の予定ルート








県は、「再生」という名で三番瀬埋め立て計画の復活をめざしている。
その目的は第二湾岸道路を猫実川河口域に通すことである。
「三番瀬再生」という名で人工干潟を造成する際に
沈埋(ちんまい)方式などで道路を埋め込む、というのが県の考えと言われている。
人工干潟の下に道路が隠れるので、
「三番瀬再生」と第二湾岸道は整合するというわけである。






漁協代表委員が三番瀬円卓会議に提案した「三番瀬再生イメージ図」







市川市による三番瀬海域の人工海浜化提案












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