人間の浅知恵で環境に手を加えると

ロクなことにならない

  〜映画『風の谷のナウシカ』などが訴えること〜



中山敏則



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 『風の谷のナウシカ』と『崖の上のポニョ』


 諫早湾干拓に見るように、人間の浅知恵で環境に手を加えるとロクなことにならない──。(2008年)7月25日付け『東京新聞』のコラム「大波小波」が、宮崎駿(はやお)映画をとりあげてこう書いています。
    《洞爺湖サミットは地球温暖化やエコロジーに関する議論を盛んにしたが、その余波も収まらぬなか、宮崎駿の『崖の上のポニョ』が公開された。》

    《宮崎の名作『風の谷のナウシカ』は一面的なエコロジーを批判していた。核戦争後、瘴気(しょうき)を発する「腐海(ふかい)」を地球汚染の象徴として消滅させようとする政治権力に対して、「腐海」が自らは汚れながら地下に清い水を生みだす浄化装置であることを知って戦いを挑むのがナウシカであった。そこには、諫早湾干拓に見るように、人間の浅知恵で環境に手を加えるとロクなことにならないぞという戒めがある。》

    《『崖の上のポニョ』でも、ヒロインの父親は人間の自然破壊を憎悪し、人間をやめて海中に暮らしている。そして、海の生命力を凝縮する液体を作るのだが、この液体のせいでかえって大津波が起こることになる。この災害が独善的なエコロジー思想への皮肉であることは明らかだ。》
 まったくそのとおりだと思います。


 三番瀬でも独善的エコロジーが横行


 ところが残念ながら、いまの日本は、諫早湾の教訓などをまったく学ぼうとしないヤカラが多すぎます。

 たとえば、東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」です。その一部の猫実(ねこざね)川河口(市川側の海域)をつぶして人工干潟をつくるべきという主張が声高に叫ばれているのです。

 千葉県は「三番瀬再生」という名でこの海域の人工干潟化をめざしています。市川市は、「市民が親しめる海に」をキャッチフレーズにして人工海浜化構想をブチ上げています。

 さらに、「NPO三番瀬」を名乗るNPO法人も、「環境保全開発」などをうたい文句にし、この海域の人工干潟化を盛んに主張しています。同NPOは、今年4月に『海辺再生─東京湾三番瀬』(築地書館)を発行しました。その基調は猫実川河口を人工干潟にすべき、というものです。


 猫実川河口は“宝の海”


 猫実川河口は、大潮の干潮時には広大な泥質干潟や天然カキ礁が現れます。しかし、護岸の前が深い窪地(埋め立て用の浚渫跡といわれている)となっているため、歩いて干潟に行くことはできません。ボートを使わないと干潟に渡れないのです。そのため、泥質干潟に足を踏み入れているのは、市民調査の参加者だけです。

 猫実川河口は、一見するとなんのへんてつもない海です。しかし、目を凝らして見ると“宝の海”であることがわかります。足を踏み入れると、豊かな生物相に触れ合うことができるのです。

 この海域は、アナジャコが無数に生息するなど、浄化能力が非常に高い海域です。大潮の干潮時には広大な泥質干潟が現れます。千葉県の生物調査では、この海域で動物195種、植物15種が確認されています。そのなかには、県レッドデータブックに掲載されている希少種も、ウネナシトマヤガイ、エドハゼなど11種が含まれています。
 市民グループ「三番瀬市民調査の会」が定期的に実施している市民調査でも、これまでに177種の動植物を確認しています。


 「あそこが埋まったらゲームオーバーだ」


 猫実川河口は、魚類の産卵場、稚魚の成育場にもなっていて、東京湾の漁業にとっても大切な場所となっています。  ですから、船橋市漁業協同組合の大野一敏組合長も、この海域について次のように述べているのです。
     「海にいろいろな生き物がいないと漁業は成り立たない。あそこが埋まったら、ゲームオーバーだ」『サンデー毎日』2005年7月24日号)
 そんな大切な干潟・海域をつぶして人工干潟にするというのは、“人間の浅知恵”であり、愚行以外のなにものでもありません。

(2008年7月)






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