「環境学習の場として人工干潟が必要」を批判する

〜三番瀬・猫実川河口域は保全ゾーンとして残すべき〜


中山敏則



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 (2002年)9月29日開催の第2回「行徳臨海部まちづくりシンポジウム」(市川市主催)で、あるパネラーは三番瀬・猫実川河口域の人工干潟化の必要性を強く主張しました。
 「今の生物を犠牲にしても人工干潟をつくって環境修復をしていかなければならない」
 「三番瀬の環境をきちんと話せたり、三番瀬に日常的にかかわれる人がわずかしかいない。そういう人を増やすために人工干潟をつくることが必要だ。人工干潟を環境学習の場とする。そういう仕掛けとして人工干潟の造成が必要となっている」
 環境学習の場をつくるために、この海域に砂を入れて人工干潟をつくるべきと言っているのですが、これは常識的に考えてもずいぶんおかしな主張です。6点述べます。



■環境学習の場はすでに何カ所も存在する

  1. 三番瀬の船橋側は広大な干潟となっており、そこにはだれでも気楽に入れます。実際に、さまざまな観察会が頻繁におこなわれています。
     このように立派な環境学習の場がすでにあるのですから、わざわざ浅海域をつぶし、莫大なカネをかけて人工干潟をつくる必要はありません。

  2. 江戸川放水路の下流部は海の一部です。ここはすでに親水護岸が整備されており、誰でも海に接したり、生き物にふれあうことができます。
     つまり、すでに立派な環境学習の場ができているのですから、そこを市川市が広報紙などで宣伝し、積極的に利用すればいいのです。

  3. よく知られているように、浦安市日の出の自然干潟も生き物がたくさん生息しており、誰でも入ることができます。

  4. さらに、市川塩浜地区前面の三番瀬のうち塩浜1丁目地先にはすでに人工干潟がつくられています。
     ここは、1982年から83年にかけて、地元漁協(市川市行徳漁協)が養貝場として造成したものです。最初のうちは潮干狩り場として利用されていましたが、2、3年後には潮干狩りもやめてしまいました。F氏が役員をしている市民団体「三番瀬フォーラム」や市川市はここで観察会をときどき開いているようです。
     「市川緑の市民フォーラム」は市民提案の中で、この人工干潟の市民利用を提案し、人工干潟と護岸を結ぶ桟橋(現在は壊れかかっている)の再整備を提唱しています。これはもっともな提案です。これを実現すれば、あまり金をかけずに新たな環境学習の場を創出することができます。
     ちなみに、市川市(行徳臨海部対策担当)は、ある市川市民の質問に対する返信メールで、この人工干潟について、「過去にあった自然干潟を再生した成功例として現在アサり漁場として利用されています」と述べています。もし、そうであれば、そこを市民に利用してもらえばいいのであって、猫実川河口域をわざわざつぶして新たな人工干潟をつくる必要はありません。

  5. 猫実川河口域は、東京湾奥部で奇跡的に残された浅瀬です。ハゼの子どもなどがたくさん泳ぎ回っていて、稚魚の楽園となっています。魚のエサとなるアミ類なども泳ぎ回っています。ハゼやスズキ、フッコなどの魚やカニがたくさん採れるので、密漁船も頻繁にやってきます。先日の市民調査では、アナジャコの穴もたくさん確認されました。それほど、ここは生命力豊かな浅瀬です。このことは、県の補足調査でも明らかにされています。
     このように、猫実川河口域は、船橋側とはかなりちがった環境を保持しており、三番瀬全体の環境の中で重要な役割を果たしています。ここをつぶせば、生物多様性や三番瀬の多様な生態系を破壊することになります。
     補足調査をてがけた望月賢二氏(千葉県立博物館副館長)も、三番瀬円卓会議のなかで、「この海域の環境は三番瀬にとって必要不可欠である。そこで人工干潟をつくったりすることは、マイナス面も大きいと思われるので慎重に検討すべき」ということを毎回のように発言しています。
     そんな重要な海域をつぶし、人工干潟をつくって環境学習の場にするなどというのは愚の骨頂といわざるをえません。

  6. 前出のパネラーはシンポジウムにおいて、いまの猫実川河口域は子どもたちが安心して入れない。アナジャコがいても、そういうものを子どもたちに見せることができない。だから、安全な状況で見せるために人工干潟をつくる必要がある──ということを主張しました。
     海域をつぶして人工砂浜(干潟)にしたら、アナジャコなどの生き物は死滅してしまいます。この海域にだけ生息している生き物も全滅です。子どもたちが見ることができるのは、疑似自然でしかありません。
     日本の湿地を守るために奮闘された故・山下弘文さんは、そんな考え方をきびしく批判しました。
     「日本の官僚や政治家たちは、貴重な自然環境を徹底的に破壊し、それに代わるものとしての疑似自然を、莫大な税金を使って造成し『自然と人間の共生』であると強弁しています。これでは国際的な非難を受けるのは当然でしょう」(『西日本の干潟』南方新社)
     「現実に存在する豊かな干潟生態系をいかに保護・保全して活用を図るかではなく、非生産的な疑似自然を造成し、いかに市民の目をごまかすか、という発想です」(同)
     「世界の潮流はエコーツーリズム、『本物の自然を訪ねる旅』が主流です」(『諫早湾ムツゴロウ騒動記』南方新社)
 自然豊かな猫実川河口域は保全ゾーンとして残すべきです。

(2002年10月)



 













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