吉野川河口干潟の東環状大橋と第二湾岸道

〜環状道路などを安易につくらない施策が求められている〜


公共事業と環境を考える会



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 (2002年)10月5日に東京で開催された緊急シンポジウム「吉野川河口干潟を救え!」はたいへん中身が濃いものでした。

●吉野川干潟は東環状大橋が焦点に

 シンポでは、干潟を横断するかたちで計画されている東環状大橋(仮称)が議論の焦点になりました。
 事業者の徳島県も、干潟の重要性は認識しているようです。担当者の要哲雄氏(徳島県県土整備部都市計画課街路・鉄道高架担当主幹)はこう述べました。
 「環境アセスの対象ではないが、重要な湿地なので、それに配慮して干潟の重要部分をはずして橋を計画した。この干潟の重要性は十分に認識しているつもりだ」

 これに対し、「とくしま自然観察の会」の井口利枝子氏は、この大橋や環状道路(徳島東環状線)の必要性を問題にしました。「橋や環状道路は本当に必要なのか」「ほかに方法はないのか」ということです。

 しかし、県から次のように説明されれば、橋を架けるのは仕方がないと思う人も多いでしょう。
 「徳島市は、市内に流入する車が非常に多い。県内で最も流入車の多い都市となっている。交通渋滞も慢性的に発生している。吉野川大橋では1日8万4000台の車が通っており、四国でも有数の渋滞ポイントとなっている。こうした状況を打開するために環状道路を計画した。干潟の重要性は十分に認識している。それで、大橋は、中洲干潟の西端をかすめる形で計画した」


●「山河壊れ、市民滅びて、国残る」

 この点で、「公共事業チェック議員の会」の佐藤謙一郎事務局長(衆院議員)のつぎの指摘は印象的でした。
 「1日の自動車交通量が8万4000台というが、実際にはどれくらいの渋滞なのか。環状道路を新しくつくらなくても、ほかの施策を講じることによって改善できるのではないか」
 すごく重要な指摘だと思います。
 日本ではこれまで、「渋滞解消」を旗印にして高速道路や環状道路などがどんどんつくられてきました。渋滞がどうしておきているのか、ほかに方法はないのかなどはいっさい検討されないままに、です。このやり方だと、今後も道路をつくりつづけなければなりません。その結果、政府や自治体の借金はますます膨らみます。自然破壊も際限なく進みます。
 長野県の田中康夫知事は、こうした状況について、「まさに『国破れて山河あり』じゃなくて、『山河壊れ、市民滅びて、国残る』」(浅田彰・田中康夫著『憂国呆談リターンズ〜長野が動く、日本が動く』ダイヤモンド社)と述べています。まったく同感です。


●ほかに方法がないかを徹底的に追究すべき

 “山河壊れ、市民滅び、国残る”を防ぐためには、「渋滞解消のためには、自然破壊もやむを得ない」ではなくて、他に方法がないかを徹底的に追究すべきです。

 たとえば、東京湾・三番瀬を通り抜ける形で計画されている第二東京湾岸道路(第二湾岸道)は、よく考えると必要のない道路です。

 第二湾岸道も渋滞解消が最大の目的にされています。しかし、東京湾岸道路の渋滞解消を目的につくられた東京湾横断道路(アクアライン)は、料金が高いために産業用の車がほとんど通りません。したがって、湾岸道路の渋滞解消にはまったくつながっていません。
 フリーライターの清水草一氏は、自著『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(講談社)の中で第二湾岸道についてこう述べています。
 「千葉県には、もう1本東京湾アクアラインというルートが存在する。そちらが有効利用されるようにすれば、第二湾岸建設の必要度は低くなるはずだ。1兆4000億円を海に沈めたままで、また新たに1兆円を東京湾に投入すべきかどうか」

 そして、試算を示し、「(アクアラインの)料金を1000円にすれば、アクアラインは1日4万台が通るようになる。同時に千葉の湾岸地区の慢性的渋滞が相当解消される」と述べています。

 三番瀬円卓会議の委員をしている大野一敏さん(ベイプランアソシエイターズ理事長、元・船橋市漁協組合長)も、第二湾岸道についてこう述べています。
 「せっかく造った東京湾横断道路(アクラライン)も、十分利用されているのか疑問。新しい道路をつくる予算があるなら、横断道を無料にすれば渋滞も解消される」(毎日新聞、2001.10.16)


●アクアラインの料金を安くすれば、第二湾岸道は必要ない

 要するに、東京湾アクアラインの料金を1000円以下にすれば、第二湾岸道は必要ありません。
 ところが、財界、自民党県連、千葉県、堂本知事などはこうしたことをいっさい検討せずに、第二湾岸道の建設促進に躍起となっています。
 たとえば、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)や第二湾岸道の促進運動を進めている「圏央道建設促進県民会議」(県、市町村会、企業など138団体が参加)の代表世話人をしている吉成儀・京葉銀 行会長は、第二湾岸道と三番瀬についてこう述べています。
 「交通渋滞で経済交流・物流・人の流れすべてが停滞してしまう恐れがある。第二湾岸道を造ることは、三番瀬を埋め立てるとか保全するとかの問題と関係なく絶対に必要」
 「(堂本)知事には初志を貫徹し公約は守りながら、理想論ではなく現実路線で第二湾岸は割り切って造ってもらいたい」(毎日新聞、2001.10.11)


●首都高の渋滞は設計ミスを改良すればかなり改善される

 渋滞解消策はほかに方法がないかという点で、もうひとつ。
 首都高速道路の慢性渋滞は有名ですが、その原因の一つは、道路設計の恐るべき欠陥です。たとえばジャンクションの導流設計や合流地点の車線減少がそうです。
 この問題については、フリーライターの清水草一氏が前出書のなかでくわしくとりあげています。
 ジャンクションの手前で、通行量がわずかしかない方面へ向かう車のために本線の1車線がまるまる充てがわれ、残り大半の車はもう一つの車線へと集中せざるをえない。そのため、必然的に大渋滞になる。さらに、ジャンクションに入ると、2+2車線の合流部分が3車線になるために恐るべき渋滞がつづく。──こんな設計ミスが首都高には何カ所もあります。この欠陥について清水氏はこう怒っています。
 「ただでさえ、放射線よりも容量が必要で、2車線でも足りないくらいな環状線が、なんと部分的に1車線に絞られてしまうとは! これを設計した人間は、恐らく免許を持たず、自分で首都高速を走ったことが一度もないのだろう。でなければ、こんな馬鹿げた設計をするはずがない」

 清水氏は、こんな設計ミスを改良すれば、渋滞はかなり減ると強調しています。
 じっさいに、首都高の箱崎ジャンクションは、かつては2+2=3車線となっており、名物渋滞となっていました。しかし、その後の改良工事で2+2=4車線となり、以前よりは渋滞がかなり改善されたそうです。
 ところが、行政側などは、こんなことを隠したまま、渋滞解消策として外郭環状道路などの建設の必要性を盛んにうたっています。


●安易に環状道路などをつくらない施策が求められている

 要するに、「公共事業チェック議員の会」の佐藤謙一郎事務局長が指摘しているように、渋滞の中身を十分に検討し、ほかの施策を検討することが必要になっているのです。
 たとえば、ハード面では、渋滞箇所の立体交差化や道路拡幅など。ソフト面では、道路交通を阻害する違法駐車対策、渋滞の激しい交差点における右折専用レーンや左折専用レーンの設置、時間帯別の車線数の変更などです。ボトルネックとなっている箇所でこうした適切な対策を講じることにより、渋滞はかなり減少するといわれています。
 たとえば東京都渋谷区は、激しい渋滞の解消策として、道幅を狭め、代わりに荷物の積み下ろし優先の有料駐車スペースをつくる工事を進めています。この計画について、『朝日新聞』(2002年10月30日付け夕刊)はこう記しています。
 「道幅が9メートルあると、通りの両側に荷の積み下ろし用の車が止まったり、違法駐車があったりして渋滞の原因になっている。片側が3.5メートルになると、バス1台が通るのがやっとで、違法駐車もなくなるはず、と見込んでいる。計画によると、駐車スペースは荷の積み下ろしに必要な最初の10分程度を無料にし、その後は時間を区切って有料にする」

 これからは、安易に環状道路などをつくるのではなく、渋滞の原因などを究明し、対策をきめこまかく講じるべきです。

(2002年10月)






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