真の干潟再生に向けて


カキ礁研究会 加藤 倫教

(NPO藤前干潟を守る会理事)





 はじめに

 諫早や和白干潟、例示するまでもなく日本全国の干潟の悲惨な現況を見るにつけ、胸を締め付けられるような思いをせずにはいられない。
 そういう中で、全国各地で一般の市民が知らないうちに、着々と進行している事業がある。「干潟の再生」を掲げて行なわれている人工干潟の造成事業である。


1.干潟の再生とは何か

 長年、藤前干潟などの干潟保全の運動に携わってきた者としては、風呂田利夫氏の論文「地域資産としての東京湾三番瀬猫実川河口沖の干潟再生」(『環境と公害』第35巻第1号)には深い違和感を覚える。
 まず、再生とは、もともと存在していて何らかの原因により失われたものを蘇らせることであろう。風呂田論文の論じようとする三番瀬、その中でも特に市川市側の猫実川の河口部について、風呂田氏は「再生」の必要性を非常なる熱意を込めて主張されている。
 だが、もともとこの区域にあった広大な前浜干潟の消失は、埋立てや地下水の過剰な取水による地盤の沈下などという人為によって消滅したのである。したがって、「再生」の論議をするとすれば、まず干潟の再生とは埋立地の除去や、地下水利用の規制の徹底といった方策が手始めに行なわれなければならないし、「再生」という以上はそれ以外にありえない。
 人為で消滅させたものを再生するというならば、まずは人為の結果=造成された埋立地を元の干潟に戻すということになる。「人間が傷つけた環境の修復は人間社会の責任である」と、風呂田氏自身も述べている。(p.60)

 現在、いくら「造成」という言葉が人心を得にくいからといって、ラムサール条約に登録しようという干潟や浅海域に土砂を投入する行為を「再生」という言葉で表現するのはいかがなものか。科学的に議論をしたいというのであれば、なおさら言葉の使い方には注意を払いたいものである。
 また、風呂田氏の言うように、「猫実川開口部沖については現状維持を保全対策としており、干潟の再生を求める意見との対立が生じている」というのは、現在市川市が計画策定を進めている「塩浜地区まちづくり基本計画」をめぐって対立が生じている状況を覆い隠す表現といわざるを得ない。
 現在、猫実川河口沖について対立が生じているのは、「現状維持」という立場と「干潟の再生」という立場の対立ではない。現在対立している議論ということであれば、市川市塩浜地区の垂直護岸の前に置石護岸を施し、さらにその前面に砂を投入して傾斜地形を創出し、干出する面積を増やして「干潟を再生する」という立場と、そうした海面を狭める計画に反対し陸地側に傾斜面を作り出し環境的に連続性のある地形や風景の再生を望む立場、この両者の立場の対立である。
 前者の計画には、風呂田氏は委員の一員という以上に、積極的にこの計画の理論的な推進者として懇談会の席上熱弁を振るっているというのに、このことに本論文で触れていないというのはどういうわけであろうか。


2.猫実川河口部の現況

 さて、風呂田論文の主対象の三番瀬の猫実川河口部の現況はどのようなものであろうか。
 三番瀬の中でも、この猫実川河口区域の評価は人により「ヘドロの溜まった死の海だ」という立場と「非常に多様な生物の生息する重要な場所だ」という立場の大きな違いが見られる。
 猫実川河口について「泥干潟とは造語だ」などと非常識なことを公の席で堂々と論じる人もいる。驚いたことに、こうした発言は風呂田氏が「再生」の必要性を強調する猫実川河口の問題をも論じる「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」の席上での発言なのである。風呂田氏はこの懇談会の委員であり、かつこの懇談会でのオピニオンリーダーの役割を発揮されているが、こうした猫実川河口の現状を知らないか、干潟というものについての間違った認識を専門家として正されているようには見受けられない。

 猫実川河口の正しい評価のために、市民による本格的な調査が2004年春から始まった。生息生物種の調査、塩分濃度測定、酸化還元電位測定などの調査が継続的に行なわれている。
 猫実川河口は、実際に見に行けば明らかなように、「ヘドロの海」などではない。とくに河口部の沖にあるカキ礁の周辺部は非常にきれいなと表現してもいいくらいに澄んでいる。
 これまでの約1年半の調査だけでも、確認された生息生物種数は100種類を超えている。千葉県のレッドデータに記載された生物だけでも、ウネナシトマヤガイ、ミズコマツボ、カワグチツボ、ヤマトオサガニ、マメコブシガニの5種類が生息していることが確認された。(ウネナシトマヤガイについては、風呂田氏は「外来種だ」と主張しているので後述する)

 近年「癒し系」生物として人気が広まっているウミウシ類は、一般にはいわゆるきれい南方の海にしかいないと思い込まれているが、そのウミウシ類もメリベウミウシ、クロシタナシウミウシ、ミドリアマモウミウシの3種がこれまでに確認されている。
 また、近縁のブドウガイは無数に生息しており、シマハマツボといった微小貝類とともに堆積したアオサをせっせと食している。また、アオサに産卵もしている。
 岩礁に固着するヒメケハダヒザラガイといった生物も発見されるなど、カキ礁とその周辺からは普通の干潟では考えられないような多種多様な生物が次々と発見されている。
 猫実川河口は、このカキ礁を核として三番瀬のなかでも特異で多様な生態系を形成している。
 カキ礁には、海の熱帯林と形容されるサンゴ礁と同様な生態的な役割が指摘されている。

(1)さまざまな生物の生息空間を作り出す
 干潟や砂浜は単純化して表現すれば平面構造の戸建て住宅だが、カキ礁はその上に立体構造を作り出す。カキ礁は単にマガキの群集体というだけではなく、カキ礁は広大な表面積と空隙を持つことによりいわば高層マンションだと形容できる。カキとカキの隙間やカキの死んだ殻の中さえも他の生物の棲家となり、カキの殻自体がフジツボなど固着生物たちの生息場所ともなっている。実際、カキ礁にはさまざまな多種多様な生物が住み着いている。ユビナガホンヤドカリ、ケフサイソガニ、ウネナシトマヤガイ、イボニシ、ギンポ類、アナゴ、イソコツブムシ、ホトトギスガイ、タマキビガイ、ハゼ類、スジエビ等々あげれば数十種にもおよぶ。
 生物群集に関する研究が最近盛んになってきているが、さまざまな生物がある生態系を作り出す足場や基盤となる中核的な生物の一つが、このカキ群集=カキ礁なのである。(風呂田氏は市川市の懇談会の席では、干潟には固いものがあってはいけないと、これとは逆の見解を述べている)

(2)水質の浄化
 膨大な数のカキは、大量に海水を濾過して水質を浄化する。カキは海水を体内に取り入れて水中の有機物を濾し取る。1個体のカキが1時間あたりに濾過する水量はアサリの20〜30倍にも及ぶといわれている。カキ礁の中にはウネナシトマヤガイやホトトギスガイなども生息しており、これらの二枚貝類も海水を濾過している。その総量は年間数千万トンにもなると思われる。
 実際、カキ礁の周りは極めて海水の透明度が高く、訪れた誰もがいわゆる「きれいな海」という印象を持つ。

(3)他の生きものにエサや栄養を提供
 マガキなどの二枚貝は、濾過摂食活動を通じて、海水中の有機物を自らの体に変換するばかりでなく、糞や擬糞や尿という形で、他の生物に利用可能なものに変えている。こうした二枚貝の群集が生物体を作り出す生産力は、サンゴ礁をもはるかにしのぎ、海の中ではもっとも高いといわれているほどである。

(4)小さな生きものの隠れ場所
 カキの上にカキが付着し、カキの株が立ち並ぶカキ礁には大きな生きものは入り込めない。小さなエビ類、魚の稚魚や小さな魚は大きな捕食者から逃れる場所としてカキ礁を利用している。

(5)魚貝類の産卵場所
 イボニシ、アカニシなどの貝類、ギンポなどの魚類はカキの殻の内外に産卵をしている。

(6)快適な生息環境を作り出す
 カキ礁の内部には直射日光が当らないため、夏には温度が低く湿度は高い、冬には寒風による温度低下を防ぐことにより、温度や湿度が安定した穏やかな環境を作り出す。小さな生きものたちのパラダイスと表現する研究者さえいる。

(7)カキ礁の波消し効果
 カキ礁はその堆積構造とその堅さによって打ち寄せる波の勢いを削ぎ、静穏な環境を作り出し、固着性の生物が波に流されないようにしているし、小さな生きものたちに快適な環境を提供している。
 昨年、私たちは台風接近の中で調査を行なったが、カキ礁の周りはかなりの波が立っているのに、カキ礁内のタイドプールはまったく波立ちもなく静穏なままであった。昨年のスマトラ沖地震では、サンゴ礁に囲まれた島では比較的被害が小さかったというが、それはサンゴ礁の波消し効果によるものであろう。自然の堅い構造物が防災効果も持っているのである。
    「カキ礁」について昨年来マスコミがその存在を大きく報道したあと、近傍に他にもあるという情報が飛び交った。しかし、「カキ礁」(oyster reef)とは、泥質干潟にカキが積み重なった塔状の立体構造の群集体をいうのであって、平面的にカキが単層状に並んでいるだけのものは「カキ床」(oyster bed)と呼ばれて学問的にも区別されている。


3.人工干潟の造成が「次善策」か

 風呂田氏は、次のように具体的な根拠を何もあげずに、埋立地の河口湿地への転用や水路の開削による自然地形の再生という主張に事実上の異議を唱える。
     「対象地の街づくりとしての利用計画があり地権者ならびに公有地の転用に関しての地元自治体の同意は困難である」(『環境と公害』VOL.35.NO.1.p.59)
 そもそも風呂田氏自身が前記の市川市のまちづくり懇談会の委員の一人である。そして、この懇談会ではまさしくこの街づくりの計画策定のための論議をしているのである。委員の一人としてなぜその利用計画として、水路の開削や埋立地の河口湿地への転用を提言しようとはせずに、それは無理だと頭から決めつけるのであろうか。いったい、この懇談会は何のためにあるのか、その存在意義が問われるというべきだろう。
 例えば、市川市塩浜1丁目に新しい漁港を作ることになっているが、このことも風呂田氏には動かしがたい前提になっていて、猫実川河口沖に人工干潟を作ることの理由にされている。つまり、江戸川放水路方面はいじることができない、と。
 風呂田氏も書いているように、現在考えられる最善の策とは、「江戸川放水路の開口部(現在の市川港)ならびに猫実川河口沖双方の湿地・干潟化が自然的干潟成立過程の視点から見れば最も理にかなった計画である」(p.59)から、その実現を計ることである。
 「次善策」があるとすれば、江戸川放水路干潟からウミニナ、ヘナタリなどの干潟性巻貝がいなくなった原因を突き止め、その対策をとることだろうし、あるいは、ふなばし海浜公園干潟の改善策をとることではなかろうか。
 「再生」と言いながら、いまあるもの=人工構造物には一切手をつけないというのが、風呂田氏の主張のようだが、それでは再生とはいえまい。自然を犠牲にして人間が作ったものを取り壊し、元の自然の復活を計る、そういうことを再生というのではないのか。


4.なぜ猫実川河口沖が「再生」の対象なのか

 風呂田氏の論文を一読して根本的な疑問が湧いてくる。それは、なぜ猫実川河口なのか、ということだ。風呂田氏も同論文で認めるように、猫実川河口には淡水供給がない。風呂田氏は、次のように述べている。
 「仮に埋立地の河口湿地への転用ができたとしても、土砂流出堆積過程や河川からの淡水供給を伴わない湿地化は河口湿地形成と維持の歴史的過程とは大きく異なる」と。(『環境と公害』Vol.35.No.1.p.59)
 なぜ、この見解が猫実川河口沖の人工干潟造成には適用されないのか、不思議でならない。
 猫実川河口沖に土砂を投入して、干出面積と干出時間さえ増大させれば「干潟再生」といいうるのか。また、それが「東京湾の原風景」の再生といいうるのだろうか。
 後述するように、土砂さえ投入すれば「干潟の再生」ができるというものでもなければ、「東京湾の原風景」ができるというものでもない。淡水の供給があり、土砂流出堆積過程を有する場所での干潟再生をまず優先すべきだろう。
 河口干潟の形成には、淡水の供給、土砂の流出堆積をもたらす河川が不可欠だが、それだけでは、風呂田氏の望むような干潟は形成されない。それは、これまでの全国各地での数々の人工干潟造成失敗の実例が示す通りである。干潟形成の諸条件を無視して無理矢理形状だけを整えても、それは一時的なものに終わり、膨大な予算が、国民の税金が波間に消えるだけである。


5.合意形成の方向性

 自然再生の具体的な方策を実施に移すとなれば、通常関係各機関や地域住民等の合意の形成が不可欠となる。だが、自然の再生や修復に要する費用の手当てはともかく、関係者の利害関係が錯綜して、合意の形成そのものが困難を極めることが通例である。
 産業廃棄物の不法投棄などの問題であれば、原状回復について異議が出ることはないだろう。だが、三番瀬円卓会議の経過を見れば明らかなように、全部で140回余もの会議が持たれて得られた合意として、市川市関連では塩浜地区全体が論議の対象となったが、風呂田氏の関心からすれば、合意点のうち、まず塩浜2丁目での護岸改修と水路の開削による塩浜と新浜の淡水供給と周辺部の湿地化から手をつけるべきではないのか。
 市川市が千葉県に提出した「市川市行徳臨海部まちづくり計画」は、三番瀬円卓会議の合意事項への巻き返しの側面を持つように感ずる。この計画に伺えるのは相変わらずの20世紀型開発事業の推進であり、自然はまちづくりの添え物でしかない。
 まずは異論のない合意を得られた部分から再生事業に着手し、自然の回復状態を確認しつつ、時間を十分にかけて次の段階へと進むべきだろう。
 干潟の再生には、上流域での自然状況の見直しも本当は必要である。海辺の再生を図りつつ、今後さらには上流域を含めた検討と再生プランの構築へと再生事業が進められることが望まれる。


6.自然再生の具体的な検討

 風呂田氏が熱望する東京湾の原風景の再生という考えについては、筆者も心底賛意を表する。だが、風呂田氏が再生を望む諸生物は、風呂田氏が主張するような方策で再生するのであろうか。
 筆者のようなアマチュア研究家というのもおこがましいような者が、海洋生物学を専門とするいわばプロに生物学に関する論議を展開するというのは傲慢不遜との謗りを免れまいが、それでも風呂田氏の論考を読んで「何か変では」との疑問を抱かざるを得ないのである。
 例えば、風呂田氏の自然再生の論考の中心に置かれているのは、「東京湾の原風景」であるヨシ原であろう。猫実川の河口に、現在アシ原は存在しない。では、河口沖に土砂を投入したら、例えば小櫃川河口のようなヨシ原が形成されるのであろうか。
 淡水域ではなく、汽水域にヨシ原を形成することはそう簡単な話ではあるまい。まして、猫実川河口は風呂田氏も強調しているように、ほとんど淡水が流入することのない水域であり、河口部での塩分濃度は2.3%という数値を示し、ほとんど海水といってもよい水質である。
 風呂田氏が、再生されるべき東京の原風景の象徴としてあげる生物のうちウミニナ、ヘナタリが足場の踏み場もないほど、膨大な数が生息する愛知県の汐川干潟。この汐川干潟の河口の最下部のヨシ原の写真を見れば明らかなように、塩分濃度の影響と思われる矮化現象が著しいし、枯死寸前にさえ見える。この汐川河口の塩分濃度はせいぜい1%前後である。
 汽水域ですらアシ原の形成が難しいのに、ほぼ海水といってよい猫実川河口にヨシ原をいかにして形成しようというのであろうか。
 そして、ヨシ原を核として、連鎖的に形成されていくいろいろな生物からなるヨシ原の生態系というものも、ヨシ原が形成されなければ100%とはいえないにせよ連鎖的に不可能に近いものとならざるをえない。

 風呂田氏が「東京湾の原風景」として復活を望んでいるいくつかの生物について考えてみよう。
 たとえば、クロベンケイガニである。クロベンケイガニは、ヨシ原によく見られる半陸地性の甲幅4cmほどのカニであるが、食性は植物食であり、巣穴もヨシ原の中に多い。
 たとえばトビハゼである。トビハゼは泥質の干潟が発達した河口域や内湾などの汽水域に生息する。同じ東京湾の多摩川河口での研究によれば、トビハゼの生息環境として6点の環境条件が必要であることが指摘されている。
  • 周辺環境に中州・ヨシ群落など遮蔽物が存在し、泥が堆積しやすく流出しにくい環境であること
  • 勾配は平坦で、干出時間の長い高潮帯であること
  • タイドプールや浅い澪筋が点在していること
  • 背後および周囲にヨシ群落があること
  • 汽水域であること
  • 保水性のある軟泥があること
 である。
 こうした条件を備えた環境を猫実川河口にいかにして作り出そうというのであろうか。
 この2種類の生物を取り上げただけでも、ヨシ原とその環境に深い関わりを持つ生物相の再生のためには、既存の埋立地を開削して行徳方面に向かって湿地を造り出すという提案の方がはるかに現実的な提案ではなかろうか。
 風呂田氏が外来種の疑いがあるというウネナシトマヤガイについては、氏が外来種だという根拠が極めて薄弱である。氏が根拠として挙げているベントス学会での報告とは、きちんとしたデータに基づいたものではない。このようなものを根拠として、外来種と決めつけようとするのは海洋生物学が専門の学者としては不自然さを感ぜざるをえない。
 ウネナシトマヤガイは、関東周辺からは化石として普通に確認される二枚貝で、昔から東京湾に普通にいたと思われる種である。したがって、外来種であるというのはほとんど根拠がない。
 風呂田氏が、千葉県のレッドデータに登載されているものを、あえてウネナシトマヤガイの名前をあげて外来種だと強調するのであれば、その確実な根拠を提示されるべきだろう。
 千葉県や市川市が改修を考えている直立護岸にもウネナシトマヤガイが生息しているし、置石護岸や砂を投入して人工干潟を作ろうとしている猫実川河口の護岸、干潟内にも多数のウネナシトマヤガイがいるので公共事業の計画上困るから、無理やり外来種にしてしまえというのが本音ではなかろうか。


 おわりに

 藤前干潟の保全をめぐる論議が最高潮に達したとき、名古屋市が埋立てた藤前干潟の前面に「人工干潟を造成する」という方針を出すことによって、事態を乗り切ろうとした。そのとき、環境省はすかさず「藤前干潟における干潟改変に対する見解について」(平成10年12月18日付)と題する文書を提示して名古屋市の「人工干潟の造成」という方針を厳しく批判した。その文書に専門家の一人として名を連ねていたのは、風呂田氏そのひとである。
 猫実川河口域の環境が、三番瀬の他の場所では見られない特異なものであることは風呂田氏も認めているところであるが、そうした他に類似したもののない環境に対し、リスクを負った改変行為を行なうことは許されないことであることを藤前干潟の問題で厳しく名古屋市に指摘されたことを忘れてしまったのだろうか。
 藤前干潟の保全に果たした風呂田氏の貢献は決して小さなものではないし、アナジャコの採取の方法なども風呂田氏の教授があってその後の採取器具の進化につながったのであり、私たちは風呂田氏に感謝と尊敬の念を抱いている。
 風呂田氏の論文の結語の精神を私たちも共有している。私たちは三番瀬、猫実川河口が現状でいいとは微塵も思っていない。
     「人間が傷つけた環境の修復は人間社会の責任である。」その修復に10年かかろうとも、あるいは100年かかろうとも、未来の世代への私たちの責任として微力を尽くし続けていきたい。
     環境修復の名のもとに新たな公共事業のネタづくりに加担することだけは絶対にしてはならないと思う。それは反省なき20世紀型環境破壊の更なる継続にほかならない。

(2005年8月記)



◎参考文献
  • 汽水域セミナー実行委員会『東京湾の汽水域環境復元の世紀』2004
  • 国土交通省港湾局・環境省自然環境局『干潟ネットワークの再生に向けて』2004
  • 西平守孝『足場の生態学』1996.平凡社
  • 鳥羽水族館『TOBA SUPER AQUARIUM』2005. No.47
  • 峯水亮『海の甲殻類』2000 文一総合出版
  • 渡部忠重・小菅貞男『貝』1996. 保育社
  • 岩崎敬二『貝のパラダイス』1999.東海大学出版会
  • 奥谷喬司編著『貝のミラクル』1997.東海大学出版会
  • 風呂田利夫「地域資産としての三番瀬の景相回復」2005.(第16回市川市行徳臨海部まちづくり懇談会配布資料)
  • 藤山家徳・浜田隆士・山際延夫『日本古生物図鑑』1982.北隆館
  • 小野佐和子・宇野求・古谷勝則『海辺の環境学』2004.東京大学出版会、ほか多数
  • 高島麗『カキ礁の生態系と生物多様性』2005. 三番瀬カキ礁講演会実行委員会












猫実川河口沖のカキ礁(2004年8月撮影)









シマハマツボ









ウネナシトマヤガイ









ウネナシトマヤガイ(1m2あたり300個体)









汐川干潟(愛知県)河口のヨシ原(黄色の部分)









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