市川市による三番瀬埋め立てキャンペーン本のウソ

〜「清水環境庁長官が人工干潟に理解」は事実と違う〜


石井伸二



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 別の文で市川市が三番瀬埋め立て推進キャンペーンの本(『三番瀬の再生に向けて──地元市川市の挑戦』)を出版したことをお知らせし、どんなことが書かれているかふれさせてもらった。
 この本は、なんとしてでも三番瀬の市川側(猫実川河口域)を埋め立てるため、いかにして人の目をごまかすか、ということ考えて書かれている。
 一つの例をあげる。1999(平成11)年10月21日、清水嘉与子環境庁長官(当時)が三番瀬を視察した。この視察について、この本はこう書いている。





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      清水嘉与子環境庁長官が現場を視察

  
 平成11年10月下句、清水環境庁長官が現場視察に見えることになった。
当日は、まず、市川市の直立護岸から海を視察、その後、船橋市の海浜
公園前の干潟を歩かれた。この日、職員は、精一杯現実を見て理解して
もらおうと努力した。過去の写真のパネルや海の模型を見せて、いかに
海の再生が必要かを訴えた。船を出して採ってきたヘドロ状の海の泥を
白いトレイに流しこんで見ていただいた。ところが、その泥が卵の腐っ
たようなものすごい臭いを発して、取り囲んだ関係者や新聞記者も思わ
ずのけぞるように離れていった。それを目の前に置かれて長官もさぞ困
ったに違いない。持ち込んだ職員も戸惑ってしまったほどだった。
 そのことがあってか、翌日の新聞には、「今のままでは問題がある。
ある程度造るのはやむを得ない。環境を取り戻す、創造するということ
も必要」と人工干潟に理解を示したと報じられた。これには、千葉県も
市川市もホッとしたものである。

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 これを読むと、清水環境庁長官が人工干潟に理解を示したと受け取ってしまう。しかし、肝心なことを隠している。それは清水長官が翌日(22日)の記者会見でこの発言を撤回したということである。事実はこうだ。


●清水環境庁長官をだました市川市長

 1999年(平成11年)10月21日、清水環境庁長官は、三番瀬の市川側で千葉光行・市川市長の説明を受けた。市川市長は、一部の深みにたまっていたヘドロ状の泥をあらかじめ採取しておき、長官に示した。その際、この海域の大半がヘドロ状であるかのように説明した。市川市長は、三番瀬を初めて視察した清水長官をダマしたのである。
 清水長官はこのインチキにまんまとひっかかり、人工干潟に理解を示す発言をした。これを新聞も大々的に報じた。
 「視察後、清水長官は三番瀬について『これだけの自然が残されているのは印象深い。(埋め立て)面積は最低限にしてもらいたい』と都心に近い東京湾に残された自然海域の感想を述べる一方で、『(汚染がひどい)今のままではいろいろな問題がある。ある程度造るのはやむを得ない。環境を取り戻す、創造するということも必要。縮小したかたちでやるのは、ひとつのチャレンジだ』と、面積に注文をつけながらも人工干潟造成に理解を示した」(千葉日報、1999.10.22)
 「視察を終えた清水長官は人工干潟について『(造成の)規模はできるだけ縮小してもらいたい』としながらも、『このままヘドロを放置しておいてはいけない。今の状況ではある程度やらざるを得ない』と話し、従来に比べ柔軟な姿勢を示した」(朝日、10.22)
 「人工干潟が肯定的に受けとめられたことについて、県側は『画期的なことだ』として、縮小の方向で検討を続ける方針だ」(同)


●自然保護団体などが清水長官に申し入れ

 清水長官の発言に対し、「千葉の干潟を守る会」の大浜清代表は、「これまでの三番瀬問題を理解されているのか疑問だし、(藤前干潟の問題で名古屋市の人工干潟計画を否定するなど)環境庁の研究をふまえていない軽率な発言で、干潟保全の動きを数年逆戻りさせるものだ。近々に長官にお目にかかって真意をうかがいたい」(読売、1999.10.22)ときびしく批判した。
 また翌日(10月22日)、多数の自然保護団体や自然保護愛好家などが環境庁長官に抗議や申し入れの文などを送った。
 たとえば、「千葉県野鳥の会」(富谷健三会長)は清水長官あての要請書でこう述べている。
 「新聞報道によりますと、このたびの三番瀬視察の際、人工干潟を容認されるような発言をなされておられますが、たとえ小面積であれ、人工干潟のもたらす弊害はこれまでの環境庁の見解でも重視されているところで、名古屋港の藤前干潟でもそのことが明確に示されております」
 「これからの地球環境を守っていくためには、すでに埋め立ててしまった海をできるだけもとの海、生命の源である海にもどし、人間と野生生物が共存できる環境を作っていくことが重要であると主張され、すでに諸外国では埋立地をもとの海にもどす作業が進められております。日本でも、環境庁の強い信念により、その一歩が進み始めてきたところであります。どうかこの信念を強く持たれ、埋立地の改造によりもとの海を取り戻すことができるような英知を集め、安易な人工干潟の造成は認めないよう、関係機関への適切なご指導ご助言をお願いいたします。そして、東京湾最奥部の貴重な干潟及び浅海域である三番瀬が、世界の宝物として末永く有効に利用されますよう、ご尽力くださいませ。よろしくお願いいたします」
 船橋市在住の荒木勉さんも清水長官に申入書を送った。荒木さんはこう書いている。
 「三番瀬の市川側は確かに汚いように見えますが、貴重な生物の生息の場であり、食物連鎖の一環を担っている。従って、東京湾の浄化に大いに役立っている。見かけだけで判断されては困ります」
 「今までの環境庁の方針と180度変更したことを言うにしては時間的な余裕がなさすぎ、人工干潟が今まで無理と言っていたのに、急に変更した技術的な根拠が見えない。環境を良くすることは環境庁のみならず、我々庶民の大きな目標でも有ります。その意味で、環境庁は我々の牽引役でありますので、今後は庶民の側に立った発言を希望します」


●清水長官はただちに人工干潟肯定発言を撤回

 環境庁(現環境省)の職員も、三番瀬や人工干潟に対する環境庁の考え方を長官に説明した。
 こうした結果、清水長官はただちに発言を撤回した。新聞も次のような見出しをつけて、発言撤回を報じた。
 「環境庁長官が肯定的発言撤回──三番瀬干潟計画」(朝日、10.22夕刊)
 「三番瀬埋め立て容認発言を修正──環境庁長官」(読売、10.22夕刊)
 「環境庁長官の肯定発言撤回 県は一転、困惑表情──三番瀬人工干潟」(朝日、10.23)
 記事の内容を紹介する。
 「(清水嘉与子環境庁長官は22日に会見で、東京湾の干潟と浅瀬『三番瀬』で県が埋め立て地先に計画している人工干潟について、『従来、環境庁はできるだけやめてほしいと言っており、県の専門家の検討を待ちたい』と述べ、21日に三番瀬を視察した際の『ある程度はやらざるを得ない』との肯定発言を撤回した。人工干潟に懸念を示していた従来の姿勢に揺り戻した格好だ。前日の長官発言を『画期的だ』と受けとめていた県側は、困惑を隠しきれない様子だった。清水長官は閣議後の会見で、前日の人工干潟の肯定発言について『ヘドロのたまっているところを見せられて印象を述べた。県の専門家で行われている検討結果を待ちたい』と語り、これまでの方針に変わりがないことを強調した」(朝日、10.23)

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 こうした事実をゆがめ、環境庁長官が人工干潟造成に理解を示したと書く市川市の姿勢は、ペテンもいいところである。こんな汚いやり方で市民や世間をだまそうとする市川市の姿勢は問題である。

(2003年4月)   


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