三番瀬のラムサール条約登録をめざして

〜署名ネットが辻淳夫さんを招いて学習会〜



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 「三番瀬を守る署名ネットワーク」(竹内壮一代表)は(2003年)3月8日、「ラムサール条約学習会──藤前干潟の登録に学ぶ」を船橋市女性センターで開きました。
 三番瀬の2005年登録をめざし、藤前干潟を守る会代表の辻淳夫さん(日本湿地ネットワーク代表)を招いて開いたもので、参加者は約50人。
 学習会では、ラムサール条約の内容や登録の手続きなどを学んだあと、辻淳夫さんがパワーポイントを使いながら「日本の湿地 保全と再生」というテーマで講演しました。



講演要旨



日本の湿地 保全と再生



藤前干潟を守る会
代表 辻 淳夫




●ラムサール条約に登録された藤前干潟

(1) 藤前干潟は3年前、ゴミ埋め立て計画が中止になり、残ることになった。そこでは、環境省もがんばったが、名古屋市も苦渋の決断をした。干潟は昨年秋、ラムサール条約に登録された。

(2) 埋め立てが中止になって、全国から「良かった、良かった」という言葉が寄せられた。しかし、その後もいろいろとトラウマがつづいた。
 名古屋市は広報紙などで「藤前」の名前をけっして使わなかった。しかし今年になり、初めて「藤前」の名を使った。『広報なごや』1月号は、1面で「藤前干潟を環境先進都市の象徴に」というタイトルとつけて藤前干潟を大きくとりあげた。
 最近は、藤前干潟に対する関心が大きくひろがっている。地域新聞や企業広告などが干潟を紹介したり、写真を使うことが目立つようになった。

(3) しかし、問題もある。環境学習施設がつくられることになったが、それは、藤前地区ではなく、庄内川対岸の稲永公園につくられる。稲永公園だと、藤前干潟は見えない。そこで、私たちは「環境学習施設は藤前地区につくるべきだ」と名古屋市や環境省と折衝をつづけている。


●干潟を保全・再生するという場合、まず実態を見きわめる
  ことからはじめるべき
   〜三番瀬が死んでいるわけがない〜

(4) 三番瀬の埋め立てが中止になったのは、みなさんが長年にわたって奮闘されたことの成果である。東京湾は干潟の9割が埋め立てられてしまった。これ以上埋め立ててはならない。

(5) 干潟を保全・修復・再生するという場合、まず実態を見きわめることからはじめるべきだ。
 「生きている干潟」か、それとも「死んだ干潟」かを見る場合、たとえば諫早干潟は、潮受け堤防で閉め切られてしまったので「死んだ干潟」といってもよいだろう。
 しかし、たとえば藤前干潟は、ものすごく入りくんでいるところにあり、閉鎖的だ。干潟から海は見えない。しかし、私たちはそれを「死んでいる」とはけっして思わない。生き物もたくさん生息しているからだ。
 一方、三番瀬は広々としており、のびやかな開放感がある。藤前に比べると、とても羨ましく思う。三番瀬の猫実川河口域を「死んだ海」と言う人がかなりいたようだが、どうしてそんなことが言えるのか。三番瀬が死んでいるわけがない。


●「再生」の名によって新たな自然破壊が懸念
  〜自然再生推進法の問題点〜

(6) 昨年、自然再生推進法が成立したが、この法律は問題がある。その第一は、理不尽な自然破壊がまだ続いていることだ。「自然再生」を言う前に、まず破壊を食い止めなければならないのに、そういうふうになっていない。
 第二は、「再生」の名によって新たな自然破壊が懸念されることだ。「干潟の再生」と言いながら、じっさいは人工干潟の造成が目的だったりする。
 第三は、ラムサール条約の「湿地復元の原則と指針」を無視していることである。欧米先進国では、「湿地復元の原則と指針」が当たり前になっていて、それにもとづいて湿地復元が進められている。しかしそれでも、復元・再生は無理というのが共通認識となっている。私たちは、「湿地復元の原則と指針」の和訳がでるので、それまで法律を通すとは待ってくれ、と要望した。しかし、その和訳を見ないまま通してしまった。


●「開発自由」から「原則保全」への転換を

(7) 日本の国家湿地政策は、たいへん遅れている。その第一は、開発先行にたいして打つ手がないことだ。
 第二は、国設鳥獣保護区による縛(しば)りにとわわれており、ラムサール条約へ対応できないことだ。国設鳥獣保護区は指定できるところだけを指定しているというのが実態で、ラムサール条約の登録湿地を積極的に増やすことができないでいる。
 第三は、総合的な湿地保全政策の欠如だ。湿地保全の考え方が決まっておらす、ビジョンもない。たとえば、環境省のラムサール条約担当の職員はたった一人で、マンパワーがまったく不足している。これに比べると、国土交通省の陣容はすごい。カネは豊富にあり、人もたくさんいる。ものすごいカネをかけて立派なパンフレットもたくさんつくっている。

(8) 日本湿地ネットワーク(JAWAN)は「21世紀への環境政策提言」を発表し、環境省にそれを取り入れるよう要望した。  30年の歴史をふまえ、湿地保全の保全を考え直すべきだ。「開発自由」から「原則保全」への転換をはかるべきである。
 今は、NGOがかなり頑張らないと湿地は守れないが、これはアベコベだ。そうではなく、保全を原則とし、開発側がいろいろ苦労して説得するようにすべきである。


●「市民の科学」によって干潟の価値を実証

(9) 私たちがめざすものは次のような点だ。
 第一は、道理を通すということだ。泡瀬(沖縄)、諫早(長崎)、セマングム(韓国)の事業中止と原状回復をせまっていきたい。
 第二は、壊してきた者の手を縛ることである。自然再生推進法に期待している人たちは、公共事業への批判が高まる中で、新しい型の公共事業推進をねらっている。
 第三は、みずからを信じることである。市民やNGOが主導して「日本の湿地保全再生計画」をつくったり、実現していくことが必要だ。それを漁民や研究者などと協働して進める必要がある。海から漁民が消える前にやらなければならない。たとえば諫早湾では漁業者の離職が増えつつある。

(10) 藤前では、「市民の科学」によって干潟の価値を実証した。
 ひとつは、アナジャコの生息である。深さ3メートルを超すアナジャコの巣穴がたくさんあることや、その水質浄化力が大きいことなどを明らかにした。
 この点では、三番瀬の猫実川河口域も同じ状況だと思う。考えてみると、それは当たり前のことである。
 もうひとつは、人工干潟が代償措置にならないことを明らかにしたことである。藤前では、埋め立ての代償措置として人工干潟の造成が計画されていた。しかし、私たちは全国各地の実例を調べ、人工干潟と言われているところでも人工干潟の名に値しないことを証明した。生き物がたいへん少ないなど、成功例は一つもなかった。この調査結果は、埋め立て側の主張をひっくりかえす要(かなめ)となった。
 三番瀬でも「人工干潟の造成」が盛んに主張されているようだが、この「人工干潟」にはだまされないようにしたほうがよい。


●市民こそ未来を見ることができる

(11) ポール・コネットという方が、かつて、「政治家は次の選挙まで、行政マンは次の異動まで」と述べられた。子や孫のことを考えるのは市民しかいないということである。
 これはそのとおりで、たとえば名古屋市のある幹部は、私たちに対し、「異動があるので、私たちは10年先までは考えられない」と述べた。つまり、未来を見ることができるは市民ということである。
 といっても、政治家も行政マンも市民になれる。だから、こうした人たちとのパートナーシップが必要だが、その際は同じ視点にたつことが必要だ。
(文責・千葉の干潟を守る会)








学習会には約50人が参加。「湿地問題やラムラール条約のことがよくわかった」などとたいへん好評でした。








藤前干潟を守る会の辻淳夫代表。辻さんは、日本湿地ネットワーク(JAWAN)の代表も務めています。









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