我輩はワキガである
我輩はワキガである。かなり臭い。
普通のワキガ人は自分のワキガに気付かない。しかし我輩は普通のワキガではない。天才ワキガだ。天才の我輩が己のワキガに気付かぬワキガない(ウマイ!)。
さて、それでは凡愚な非ワキガ人たちに、我輩が何故自らのワキガに気付いたか教えてやろう。
それは先ず、現在の社会的地位だ。
我輩ほどの天才が一介のサラリーマンで、しかも40間近にもなって平社員などというのは、ワキガだからに決まってる。我輩は当然仕事も出来るし、頭の回転が早いから人望も厚いし、人柄は温厚だし、人情の機微もわかる。こんな素晴らしい人間が平社員でいるのはおかしい。理論的に考えてこの差別待遇の理由は、ワキガ以外に考えられない。
次に我輩の彼女いない歴だ。
二次元の女性をカウントしなければ、という条件付ではあるが、我輩の彼女いない歴は、これ即ち年齢である。我輩ほどの立派な男が三次元の女性と付き合ったことが無いというのは世界レベルでおかしい。間違っているとしか言いようが無い。我輩は色々な女性に訊いてみたが、「かっこいいよ!チップもくれるし!」とキャバクラで言われたのだから外見に不備は無いはずだ。性格もいい、天才、外見も人並み以上、そんな我輩に彼女が出来ない七不思議も、ワキガという仮説を立てれば即解明。まさに鬼才の論理である。
こうして考えてみると、我輩に友達がいないのも、小中高とイジメられ続けたのも、訪問販売で買った寝具が1/50の値段で高島屋で売っていたのも、さっき中学生にカツアゲされたのも(今年4回目)、我輩のアパートの家賃だけ他の住人より2000円高いのも、全てが「ワキガへの差別」で説明出来る。
ちなみに先ほどこの理論を上司にぶつけてみたところ、答えに窮した彼は我輩に辞職を迫った。これは明らかなワキハラ(ワキガ・ハラスメント)である。裁判になれば我輩の勝利は確実だ。しかしあの上司は頭がおかしい。最後の言い訳が「君はワキガなんかじゃない。昇格出来ないのは能力も実績も無いからだ」である。バカらしい。誰がそんな話信じるか。我輩は誰にも劣ってなどいない。
聡明なる我輩は、上司の愚かさを立証し、且つ、自らのハンデを克服する素晴らしい手段を思い立った。それは病院での治療である。医師に我輩がワキガであることを証明してもらい、治療する。まさに一石二鳥。人類の歴史において、ここまで効果的な戦略を組み立てられたのは我輩以外にいないだろう。本当に自分の才能が怖い。
しかし病院での我輩の扱いは散々なものだった。
あろうことか医師は我輩はワキガではないと言い張ったのだ。なんという無能!なんという傲慢!彼には医師としてのプライドは無いのだろうか?さすがの我輩も頭に血が上り、医師の顔に脇を押し付けて言ってやった。
「臭いだろ?なあ、臭いだろ?ワキガだって認めちまえよ?」
しかし医師は頑なに抵抗した。
「く、臭い!」
「だろ?ワキガは臭いだろ?」
「他人の脇を押し付けられたら誰だって臭いじゃないですか?あなたはワキガじゃありませんよ」
馬鹿げてる!
我輩ほどの天才が、己の肉体的欠陥に気付かぬわけがないだろう。なんたるヤブ医者だ!ケアが必要なのは貴様の脳だ!こんな医療ミスが横行するとは、この国の医療はどうなっているのだ?
我輩はワキガだ!ワキガでなければならないのだ!
なあアンタ、我輩の脇は臭いだろ?
我輩はそれ以外は完璧なんだろ?
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