女社長 赤巻紙環(あかまきがみ たまき)さんの話はとても示唆に富んでいます。
「人生なんてどう転ぶか本当にわかりませんよ。まさか銀行支店長だった夫が、女性専用車両を女装専用車両と間違えるなんて、普通じゃ考えられない話じゃありませんか」
赤巻紙環さんのご主人は、たった一文字の間違いで地位も名誉も全て失ってしまいました。寄せて上げるブラ(Gカップ)を着けて女装した50絡みのオヤジが女性専用車両に乗り込んだというニュースは人々の嘲笑の的となり、環さんのご主人は社会的に抹殺されてしまいました。お嬢様育ちの環さんが仕事をされるようになったのはそんなご主人の代わりに家計を支えるためでした。
「占いは全く儲かりませんでした。『死ぬ』って言うだけじゃダメだったんです。ああいうのは『死ぬわよ!』の後で『幸運になるアイテム』を抱き合わせで売らないとお客さんも納得しないんですよね。大金を払う事によって人はその額に見合った効果を得られると信じてしまうんです。だから『死ぬ』っていう占い師は儲かるんですね」
赤巻紙環さんの言葉には本質を見抜く洞察力が秘められています。
「結局、今の発電事業は何も無い私だから始められたんです。逆転の発想ですね。まさか人の静電気で発電するなんて、誰も考え付きませんよね」
赤巻紙環さんが発明した静電気発電所は、原子力に代わる安全な発電法として、いまや全世界が注目しています。原理はいたって簡単。静電気体質の人を集めてドアノブに触ります。それによって発生した静電気を蓄積し、近所の水力発電所で増幅してもらう。ただそれだけです。
「頭の固い人たちがいるんですよ。『それは水力発電だろう』っていう人たちがね。今は確かに静電気を水力発電で100兆倍に増幅してもらうので、100w作るのに500kwの電力を消費しています。だから、『じゃあ最初から水力発電だけでいいじゃないか』という逃げの発想をする人も多いんです。でもね、それじゃあ何も進歩しないじゃありませんか。私は賭けてみたいんです!人間の持つ(静電気の)力が無限大だということに!」
赤巻紙環さんはいつも前向きです。
「静電気発電は冬場の季節産業なので、これからの課題はそこの克服ですね。それでは主人の裁判の時間ですので私はこれで…」
彼女のご主人は女性専用車両に女装して乗り込んで痴漢をした容疑で訴えられています。本当に赤巻紙環さんには驚かされる事ばかりです。