辞書なんかのはなし(その1)――いちおうアメリカ文学研究者の立場から

                                                                     

                                                                             「辞書と鋏は使いよう」――西川正身

 

あらかじめ予防線をはっておきますが、僕の専門はアメリカ文学研究であり、辞書学や英語学という分野には門外漢ですので、そんな者の話に学問的な厳密性を期待されても困ります。ぶっちゃけ、本を読んだり、「研究」したりするのに便利だと感じてきた辞書類についておはなしをするというのが主旨で、話もなるたけ随筆・随想・随意的にしたいとさえ思っています。辞書なんかのリスト (Cf. 2007ネットヴァージョン http://www005.upp.so-net.ne.jp/occultamerica/dictionaries.htm)は文末に掲げるので、それを見ただけのほうが役に立つ人もいるかもしれない。


1.標準的な英語大辞典の話を中核に

 unabridged

最初から屈折したかたちで話をはじめたい。誰でも辞書にない言葉に出会ったこと、正確には、調べようとした言葉が手近な辞書類に見つからなかったこと、はあるはずで、なんでも載っている辞書なんかがあったらいいなあとこどものように思ったことがある人も多いと思います。「非縮約」とか「非省略」とか「非簡略」という、耳慣れない、ワープロでもまったく変な漢字の組み合わせにしか変換してくれない日本語に「変換」されている言葉があります。英語の形容詞 unabridged ですが、この語はアメリカ英語では名詞として unabridged dictionary の意味ももっていて、こちらには英和辞典では「大辞典」という訳語が与えられています。現在日本で大辞典という呼ばれ方をしている英語辞典はイギリスの〔A-1〕〔A-2〕『オックスフォード英語大辞典』、アメリカの〔A-3〕『ウェブスター英語大辞典』と〔A-8〕『ランダムハウス英語大辞典』でしょうか。非省略・非縮約とは縮約していない、つまりは減らしていないという意味だろうから、いちおう単語はぜんぶ網羅したんだよということになりますが、そんな宇宙的な辞書はアルゼンチンの作家ボルヘスによって夢想されたようなもので、実際にはすべてのことばが網羅された辞典はどの国語でも存在しません。それは、言葉は生き物で、変化したり新しく生まれたりよその国から移住してきたりするからというだけではなく、辞書それぞれで、方針によって除外されたり、事情によって載せるのがはばかられる単語や表現があるからでもあります。たとえばいわゆる方言とか俗語とか学術専門用語のなかでも特殊なもの――使用がきわめて限られた言葉とか、とても差別的だったりエッチで口に出すのがはばかられるとされるような言葉 (taboo words) とか――は大辞典でもいれられないことが多いのです。あるいは固有名詞もとくに昔はいれられなかった。だからこそさまざまな辞典が有用になるということでもあるのですが……。

英語の辞書についての本をひもとくと、17世紀に小さなものがいくつかあったものの、最初のきちんとした(というのもずいぶん曖昧な形容ですが)英語辞典が出たのは18世紀のことで、Nathan Bailey An English Dictionary (1721) と同じベイリーの Dictionarium Britanicum (1730; 2版1736) があげられています。前者のタイトルに示されるように、いちおう語源記述が不可欠の要素と考えられた(永嶋大典氏によれば Etymological とあるのは「語源も示した」といった程度の意味だそうですが)。そして前者の増補版である後者のさらに再版が、最初の本格的英語大辞典(というのもえらく曖昧な形容ですが、それまでのイギリスの辞典が、ラテン語を中心とする外国語からの難解な借入語の解説および神話や伝説に現われる固有名詞などの百科事典的な解説を中心として発展したのに対して、ジョンソンが倣ったのはヨーロッパのアカデミー思想であり自国語洗練のための規範主義でした)とされるSamuel Johnson の有名な A Dictionary of the English Language (1755) の底本として利用されたとされています(資料を収集し終ったあと、整理の段階で参照したという言われ方もされる)。ベイリーの『ユニヴァーサル』で収録項目約4万、1736年の『英語辞典』2版で6万を超えていましたが、ジョンソンの辞典は、意味用法を例証する11万あまりの引用例文を挙げながら58千語をとりあげた。減ってるわけですけど、ベイリーにあることがわかりながら採らなかった語彙があるということなのです。たとえば「悪」「誤」の意味のギリシア語に由来する接頭辞 cacoに始まる単語をベイリーの辞典は22並べていますが、サミュエル・ジョンソンは cacochymy cacophony の2つしか残さなかった。ちなみにOEDはその後に生まれた医学用語とかも含めて(派生語も含めてではありますが)50以上のcaco- で始まる単語を英語の語彙として挙げています。文豪ジョンソンの辞典に対抗しさんざんな批判を加えて新しい辞典をつくったのがアメリカの Noah Webster (17581843)で、1828年刊行の A-6 An American Dictionary of the English Language, 2vols. でした。ウェブスターの初版は、ジョンソン博士の辞書の収録語数を12000上回り、一方、アメリカ特有の語義や語法(いわゆるアメリカニズム)を重視している姿勢を示そうとした。ただし、そもそもノア・ウェブスターは、大いに批判してみせたジョンソンの辞書を大いに参考にしたようで、いろいろ広範かつ大胆にパクっていたのですけど(定義のみならず引用例文の半分以上がジョンソンによるものだという調査もあります)。そして二人とも、自国の国語の使用を正しく導こうとしたという点では似ていて、言葉を網羅することではなくて選択することを辞書編集の仕事の一部としたのでした。それでも1840年の増補版ののち、死後メリアム社に買われて、1890年の国際版で25万語、1909年の新国際版初版で40万語を超え、有名な(いまでも古本屋で10万円近くで売られている)1934年の新国際版第2版では55万を称するようになり……というふうに、のちに述べるように20世紀のアメリカの標準的な英語辞典であったウェブスター大辞典の元版となりました。(実際、初版の定義が意外なほどたくさん現在まで受け継がれています。)イギリスのほうでは、18世紀から盛んになる中世文学・文献研究を明らかに大きな踏み台として、二重の意味で「歴史的」な大辞典が企画され、70年の歳月をかけて、1928年に完結します。『オックスフォード英語大辞典』、OEDです。さて、かつて英文科の先生で、荒地派の詩人であり翻訳者としても有名な加島祥造さんの『英語の辞書の話』は、僕の話のネタ本になるべく予定された優れた本なのですけど、「大辞典は非省略 unabridged の辞典と称されますが、それは英語の語彙を省略して(選んで)収めるのではなく、英語の全語彙を省略せずに収録しようとしたことを指します」と説明し、非省略を最初にうたったのはウェブスター初版の改訂版――An American Dictionary of the English Language (1864) ――からだとのことだ、という情報を与えています。そして、OEDが編集されることになって、「過去から現在までの言葉をすべて記録するのだという立場が打ちたてられ、ここではじめて非省略の態度が確立」した。OEDは……約四十一万語を収めるものとなっていて、この偉大な辞典は、英語の辞書界に、歴史原則 historical principles の方式と本格的な非省略 unabridged の方式という二つの大きな編集方針を確立したのでした。」(加島 77-78
 僕はおおむね素直な性格なので、そのまま信じていたのですが、ウェブスターの2版よりも1961年の3版のほうが45万と語彙が減っているのはなんでだろうなんでだろうという疑問はあった。あらためてunabridged の意味が不安になって、今回いろいろと調べてみました。松のことは松に聞け。辞書のことは辞書に聞け。ウェブスター初版にはこの語は見出し語としてあがっていないことを確認し、さて3版は形容詞と名詞をあげ、形容詞として 1: not abridged: COMPLETE <presented an ~ version of the play> <an ~ reprint of a novel>  2: being the most complete of its class <an ~ dictionary> 、名詞として an unabridged dictionary としています。第一の定義 not abridged unabridged という問題の語の語幹を使っているので、不完全といえば不完全な定義ですが派生語では許容される。いっぽう同義語をスモール・キャピタルで提示するのがウェブスターのやりかたで、complete と言い換えられることを示して、第二の定義ではそのcomplete を定義に入れています――「そのクラスの中でもっとも完全な」。用例がギュメと呼ばれるカッコのなかに示されますが、第一の定義の用例は芝居と小説にかかわる、第二の定義の場合は辞書です。そして名詞はこの2番目の定義の用例をそのまま定義としているわけです。OEDについては、この怪物のような辞典に近づく、近づきたいと思っていただく、のが今回の拙文の主目的なので、あとで親密に紹介したいのですが、こんな説明です(これは初版、1988年の20巻本の第2版〔A-2〕ともまったく同じです)。

   Not abridged, reduced, or shortened. In mod. use spec. of literary works.

   1599 Sandys Europa Spec. (1632) 111 In those places where their power remaineth yet unabridged.  1772 Mason Eng. Gard. i. 20 To the lawn [to] restore Its ample space, and bid it feast the sight With verdure pure, unbroken, unabridg'd. 1840 Ainsworth Tower of Lond.  (1864) 234 By which means your authority would be unabridged.  1864 Pusey Lect.  Dan. i.  (1876) 49 Daniel and Ezra use unabridged, and so, older forms.  1894 A. E. Waite Paracelsus' Writ. Title-p., Paracelsus the Great, now for the first time translated faithfully and unabridged into English.  


   b. absol. A copy of the ?unabridged edition? of Webster's Dictionary.

    1860 O. W. Holmes Prof. Breakf.-T. ii. 36 You small boy there, hurry up that 'Webster's Unabridged'!  1894 H. H. gardener Unoff. Patriot 302 I'm not sure that I've spelled some of these words right, but my unabridged is not handy.  

まず形容詞の定義をして、「abridge されていない、縮小、短縮されていない。現代の用法では(In mod. [=modern] use)、特に(spec.=specifically)文学作品に関して用いる」という説明があり、ウェブスターの場合は短い用例から推測される事実が、事実として述べられています。さらに用例も長くて多い。名詞とのいわゆる collocation を示すだけの無味無色のフレーズではなくて、実際の用例がセンテンス単位であげられています(実はウェブスターでも作家の名前とともに引いてくる用例もあります、特に2版は多い)。そして確かに最後の用例以外では実は文献についての形容ではない。次のb.の定義は absol. absolutely つまり、名詞を略した用法の形容詞、独立用法としての説明、くだいて言えば、名詞化した用法です。ここでは「ウェブスター辞典の unabridged edition の一冊」という定義を与えています。

 さて、OEDの定義と引用でわかるのは、第一に、形容詞であれ名詞であれ、ウェブスターの辞典が unabridged と呼ばれたのは1864年の改訂版以前だということです。1860年の用例はアメリカ作家Oliver Wendell Holmes の、かつては日本でよく読まれた The Professor at the Breakfast-Table というエッセー集からのものです(ついでながらホームズは、親の因果が子に報い〜、という蛇女の物語をオカルト+神学の枠組で扱った Elsie Venner などの “medicated novels” で近年再評価されるようになりました)。第二に、名詞についてはウェブスターに限定しているところからわかるように、OED自身は自身の unabridged 性について無頓着らしい(らしかった)ということです。説明としても初版以降の状況に照らせば不完全で、それは、ウェブスターだけでなく、今日目につくところでは戦後に出たランダムハウスの大辞典も unabridged と銘打っている事実がありますから。改訂者の不注意・無関心かもしれませんが、そのことはすなわち無頓着を示していると考えられそうです。

辞書のことは辞書に、と書きましたが、ウェブスターの序文を見ると、第一の問題はいちおう明らかになります。第3版序文の書き出しはこうです――Webster’s Third New International Dictionaryは、デザインを一新し、スタイルを作り直し、版を組み直した、まったく新しい仕事です。すべての行が新しいのです。この最新の非省略メリアム・ウェブスター unabridged Merriam-Webster は、1828年のノア・ウェブスターの American Dictionary of the English Languageに始まるシリーズの8番目のものです。1843年のウェブスターの死に際して、辞書の売れのこった残部と版権をジョージ・メリアムとチャールズ・メリアムが得ることになりました。二人は、ノア・ウェブスターの義理の息子であるイェール大学のチョーンシー・A・グッドリッチ教授によって編集された改訂版を、1847年に刊行しました。この1847年版が最初のメリアム=ウェブスターの非省略辞典 the first Merriam-Webster unabridged dictionaryとなりました。」最後の文に注をつけて、これに続くメリアム=ウェブスターのシリーズが、「一般に『非省略 Unabridged』として知られる」1864年版(American Dictionary of the English Language)、それから1890年版(Webster’s International Dictionary)1909年版(Webster’s New International Dictionary)1934年版(Webster’s International Dictionary, Second Edition)の4冊であることを説明しています。つまり、加島さんが言及している1864年版は、確かに一般に Unabridgedとして知られたものであった(1934年の第2版の序文では1847年版への言及はなく、一方、1864年版が「広くUnabridged として知られた」という事実が述べられています)。けれどもOEDの用例が示すようにそれ以前から Unabridged と呼ばれていた、どうやら1847年版から。シリーズの8番目と言う一方で、「1847年版が最初のメリアム=ウェブスターの非省略辞典となりました」と言う言葉は曖昧で、メリアム=ウェブスターとしては最初、ともとれる。ノア・ウェブスターの正統的継承者であることを重視しているのはメリアム社の当然の方針であるので、新しいと言いながら伝統を言うというところがあるわけです。19世紀にメリアム社はウェブスターの名を商標として登録しようとしましたが、成功しなかった。ウェブスターの名をどの出版社でも使えることになっています。それでメリアム社は自社の大型辞典の巻頭に、ノア・ウェブスターの肖像を掲げたり、それも真似されると「真正のメリアム=ウェブスター ウェブスターという名だけでは卓越性の保証とはなりません。この名はいくつもの出版社に用いられており、無用心な消費者を惑わすことに主として力を貸しています。云々」と囲みの注意書きを載せたりしてきました。「すべての行が新しい」というのは、古い活字の「版」をそのまま使わなかったというに過ぎず、前述のように、初版から変わらない、変えない記述が連綿とあるわけです。

 

英和辞典

結論を先延ばしにするようですが、ついでに、日本の英和大辞典や大辞典なみの語数を誇る辞典を見てみましょう。現代アメリカ文学の紹介者としてめざましい活躍をしている柴田元幸さんに、「僕のように現代アメリカ小説とかかわることが多い人間にとっては、『リーダーズ英和辞典』(研究社出版)はまさに『聖典』である」(柴田 1992)といわしめたB-1『リーダーズ』は、百科事典的な項目もおおいに取り入れた1994年のB-2『リーダーズ・プラス』を経て、第2版を1999年に出しました。「情報量は初版の約18パーセント増、総収録語数は27万となった」そうだが、初版の2659頁に比して2900頁となり、明らかに太っています。でも初版は「主見出し語・副見出し語・成句などの収録語数約26万」と言っていたので、数え方がちがうのでしょう。その『リーダーズ英和辞典』は unabridged を、形容詞としては、「縮約[簡約化]されていない,無削除の、完全な(complete); 《同種のものの中で》いちばん完全な; さらに大きなものに基づかない,親版の.」とさまざまな日本語に置き換えて説明し、名詞としてはAmericanismを示すアステリスク(星印)をつけ「大辞典(=dictionary).」としています。三省堂のB-3『グランドコンサイス英和辞典』(2001)は、携帯版は『リーダーズ』携帯版と同じA5判で3000頁を超し、「総収録項目36万を収める」もので、いかにも『リーダーズ』に対抗している。「口語、俗語、卑語もまた、現代の英語を理解する上では、重要な要素であるので、できるだけ多く収録した.その際に訳語もできるだけ対応させるように努めた」点が興味深い辞典ですが、unabridged については、形容詞として「省略していない、完全な」、名詞として「(削除縮小していない)大辞典」とあっさりしています。「大英和」と通称されてきた『研究社英和大辞典』は1927年の初版刊行以来日本の英和辞典をリードし、かつて英文科の学生は持っていて当然とは言わずとも引いて当然とされた時代がありました。2002年に出たB-4第6版『新英和大辞典』は収録項目26万ですが、概して説明や用例は丁寧です。unabridged については、1980年の第5版とほぼ同じ定義を与えて、「adj. 1 省略していない(unshortened), (略さずに)全部挙げてある,完備した(complete): an ~ version 無削除版 / You had better read an ~ text. 省略のないテキストを読んだ方がよい.  2 <辞書が>(同系列の辞書の中で見出し語や語義など)簡略化され(てい)ない,一番完全な: an ~ dictionary.  n. 《米》簡略化され(てい)ない辞典,大辞典.」としています。「簡略化され(てい)ない」のところは、第5版はそれぞれ「簡略化されていない」となっていました……う〜ん、どういう違いなのでしょう? 改訂者に語義についてのビミョーな迷いがあったのでしょうか? わかりません。ウェブスターで曖昧だった「そのクラスの中で」が「同系列の辞書の中で」と少し明確になっています。でも「同系列」っていうのもよくわからない(たぶん同じ研究社だけれど『リーダーズ』と「大英和」は同系列ではないのでしょう)。内容も大きさも研究社の「大英和」だけが大辞典だった時代に、アメリカの大辞典の翻訳というかたちで英和辞典界に登場したのが、小学館のB-5『ランダムハウス英和大辞典』でした。2002年末に第2版のCD-ROM版が発売されましたが、説明書の最初にはこう書いてあります――「この度はランダムハウス英語辞典をお買い上げいただき、まことにありがとうございます。ランダムハウス英語辞典は、英和辞典の最高峰『ランダムハウス英和大辞典』に和英機能とネイティヴスピーカーの発音が備わったデジタル英語辞書です。項目総数約20万語、派生語/成語をあわ.せると約345000語が、一枚のCD-ROMに収められています。また、用例約175000[sic]、現代英語の語法、口語、俗語、商品名および芸術作品タイトルも徹底収録され……。」訳語に工夫が見られると言われてきましたが、unabridged については、「 adj. (本などが)要約(簡約)してない,省略してない,短縮してない(not shortened); 完備した, 完全な(complete): an unabridged version of the play その劇の無削除版.――n. 辞典の親版: 見出し語や語義を省略していない,同系の辞典のうちで最も詳しい版.」と書かれています。ランダムハウスの元の英語版は初版A-7 The Unabridged Edition と銘打ち、第2版A-8 Random House Dictionary of English?Second Edition, Unabridged と名詞のunabridged が正式タイトルには組み込まれていました。英語版ではこうです――“adj. 1. not abridged or shortened, as a book. n. 2. a dictionary which has not been reduced in size by omission of terms or definitions; the most comprehensive edition of a given dictionary.” 訳語に工夫が見られると言われますが、この項目については同じですね。(よくわからないのですが、アメリカのRandom House 社は最近Webster の名を入れた辞書類をいくつも刊行しています。1997年には Random House Webster’s Unabridged Dictionary という、ランダムハウスとウェブスターとunabridged が並んで勢ぞろいする、頭がこんがらがるタイトルの辞典を出していますが、その前にコンパクト版Random House Compact Unabridged Dictionary (1996) まで出しています(実はこれとセットのCD-ROM版のタイトルがRandom House Webster’s Unabridged Dictionaryだったのでした)。これは誰がどう考えたって abridged と思えますが、サイズが小さいということらしい。それと、Random House Webster’s Unabridged Dictionary は新語1000語分はおいて31万5千のエントリーというのは、結局A-8第二版と同じです(日本語版はアメリカ版にない30000語を付け加えたと称していました)。)

実は実に新世紀初頭は大きな英和辞典が立て続けに出版されました。B-2〕『リーダーズ』2版は1999年でしたが、それを追って、三省堂のB-3『グランドコンサイス英和辞典』(2001)、研究社のB-4『英語大辞典』6版(2002)の前に大修館からB-6『ジーニアス英和大辞典』(2001)が出ました。しげしげと見てみるとこの辞典は英訳タイトルを付記していて(これ自体は珍しいことではない)、それはな〜んと Taishukan’s Unabridged Genius English-Japanese Dictionary というのでした。「はしがき」は、「「ジーニアス=ファミリー」の元祖とも言うべき『ジーニアス英和辞典』」の初版(1988)から話し出し、「本辞典をジーニアスファミリー[sic]の新しい一員として温かく迎えて,座右の書に加えていただければ幸いである」と結んでいます。この、自ら unabridged を名乗る英和辞典の、unabridged の定義は、形容詞として、「1 省略[要約]してない.  2 辞書が同系列の辞書の中で親版の[簡略化されていない] 」、名詞として、「大辞典. 親版辞典」です。子が親より大きくなるというのはどこでもあることでしょうが、子よりあとから親が生まれてくるというのはやはりへんで、abridge という言葉の意味にこだわるならば「はしがき」は自己矛盾するような記述に思えてしまいます。

 

中・小辞典

ここまで曲りに曲りながら曲りなりに調べてから、気分転換に文学部資料室(学部生も教員の許可で入れます)の英文の棚をぼけーっと眺めていると、煤けたような萌黄色の背表紙に WEBSTER UNABRIDGED の文字が浮かんだ、背が低いわりに分厚い辞典が目に入りました。国際版は3版も2巻本の2版も1版も自分で持っているので、なんだろうなんでだろう、それより前の版だろうかと期待してこっそり(というのはほんとは帯出手続きが必要だからですが)すぐ横の研究室に持ち帰りました。ほんものの国際版は、とくにA-4第2版は、両手で持っても2分ともたないくらいにヘヴィーなのですが、これは数十秒は片手で掴める感じ。タイトル頁にはこう書かれていました―― “Webster’s New Twentieth Century Dictionary of the English Language / Unabridged / second edition / Based upon the Broad Foundation Laid Down by Noah Webster / 1967.”  出版社はクリーヴランドの the World Publishing Company Merriam-Webster ではありません。ああ、これがあの本か、と思いました。加島さんは、このJean L. McKechnie 主幹の「大冊の辞典」を「新刊なのに安い値がついていたため」買いこんだそうです(1957年の2版)。加島さんがあとで調べると、この辞典は「ノア・ウェブスターの置いた広い基盤に基づいて」作られたというしごく曖昧な断り書きがあるのみで、非正統(すなわちメリアム=ウェブスター社が引き継いだとされる正統ウェブスター)の辞典であった。「ただしこの辞典は熟語や慣用句においては正統のメリアム・ウェブスター辞典をしのぐ特色をもっていると、後になって感じ」たと加島さんは述べています。本体は2100頁くらいですが、巻末に地図や外国語の成句だけでなく、発音記号つきの人名辞典なども付録についています。だいたいこの手の「事典」的な情報を、歴史的に考えればあらためて、載せるようになったのはアメリカの辞典で、OEDが固有名詞を排したのに比べて、1889年から91年に刊行されたA-7センチュリーの6巻本(のち1911年に12巻本)大辞典は、固有名詞と地図の巻を含むもので、タイトル The Century Dictionary: An Encyclopedic Lexicon of the English Languageが示すように百科事典的性格が強い辞典でした。それが、ランダムハウスなどは、さきほどの英和版の宣伝文句に示されたように、積極的に辞書本文に固有名詞を入れているわけです(そして挿し絵や同義語・反意語や語法の説明欄とかも含め、こういうアメリカの辞典のスタイルの影響を近年の日本の英和辞典は受けているように見えます。もっともイギリスでも、OEDに顕著なように言語名や普通名詞化したものを別として固有名詞を収録しなかったのが、1962年の The Oxford Illustrated Dictionary (1962; 2nd ed., 1975)あたりで変化を示し、ロングマンやコリンズの辞書は挿し絵だけでなく事典的要素を入れています)。McKechnieの辞典は巻頭にノア・ウェブスターの肖像画を掲げていたのでした。そして「ノア・ウェブスターの置いた広い基盤」という言い方で自己正当化を行なうわけです。それにしても、この辞典が unabridged を謳っていることは知らなかった。この辞書によるこの語の定義はこうです―― “not shortened; complete; specifically, designating a dictionary that has not been abridged from a larger work.” 「短くされていない; 完全な; 特に、それより大きな辞書から簡略化されたものでない辞書を指す。」 なるほど。World Publishing Company は、僕が学部学生の、それも1年生のときに、ふたりの教師から薦められた2冊の英英辞典のひとつ、Webster’s New World Dictionary, Second College Edition (1974) を出していた出版社でした。これも正統ウェブスターの辞典ではない中辞典です(ただし前記の辞典を親版にしているかどうかは不明)。(ちなみにもう1冊薦められたのはホーンビーの有名な『現代英英辞典 The Advanced Learner’s Dictionary of English』(開拓社)の新版(C-4A. S. Hornby, Oxford Advanced Learner's Dictionary of English)でした。OALDEEまで書いたと記憶しているが)、という長たらしい略称(誰が使ってるんじゃとそのときは思いましたが)まで黒板に書いて、その先生(仮にニシ先生と呼んでおきます)は、英和辞典の場合は定義と言っても定義ではなく訳語しか書いてないが、英英辞典は意味が書いてあるとおっしゃり、election という言葉をあげて、英和辞典では「選挙、選任、選択」といった日本語に置き換えられているが、英英辞典では “electing or being elected” つまり、選ぶことだけでなく、選ばれることも意味している云々。僕はおおむね素直な性格なので、そのまま信じたし、この辞典の黄色と緑色の鮮やかな表紙カバーの旧版は、ゲルマンというあだなの高校時代の英語の先生(僕が感化された英語の先生ナンバー1)に薦められてもっていました。いつのまにか使わなくなってしまったのは、文学作品を読むには語彙が少なかったからかもしれません。というか本音を言えば、英語がわかってくるとわざわざ能動・受動というようなことを教えてもらわなくてもわかりますし(要するに英和辞典の訳語にとらわれないことが肝要だ)、英和辞典だってどんどん適切で親切な説明を加えてくれているように感じた。しかし、思い返してあれこれ手にとってみると、最初にもつ英英辞典としてはやっぱりいいんだなあこれが。C-5ロングマンもいいですけど。ついでながらC-7 A. P. Cowie and R. Mackin, Oxford Dictionary of Current Idiomatic English, 2 vols. (1975) は、前述のホーンビーの英英辞典の「理想的補遺」であるという書評がカバーに引かれてますが、イディオムの辞書としては、C-8〕〔C-9バロンの辞典類と同様、役に立ちます。で、役に立ちますと書いて、結局、英語を書いたりしゃべったりするより、文学作品を「読む」時間が圧倒的に多いという僕の現在の状況から、自分は辞書のはなしを考えていたのだといまさらながら思い至りました。それを文学研究ということばで置き換えていたのですけど。英英辞典の入門というだけでなく、英語を書いたり英語を学んだりするのにはこういう辞典はやっぱり役に立つと思います。お勧めします。そういえばそんなことはゲルマンに言われていたような気もしてきた。彼は学生時代に図書館でOEDを引くために並んだということも言っていましたが、英語の力がなくてもとにかく使いださなければいつまでたっても英英辞典は使えないよ、ホーンビーの辞典は日本人に使いやすいすぐれたものだよ、と言っていたような記憶が蘇ってきた、ような気がしてきました。私ももう老人で往時茫洋、しかし、いまふと浦和駅前の、洋書もいくらか置いてあった古本屋で、高い棚にあった『名月記』を制服の女子高生にとってあげたのを思い出しました。別に自分で自発的にとってあげたのではなく、店のおばさんに、学生さん、とってあげてくださらない、と言われたからとったのですけど。それにしても高校生が「山月記」ならともかく『名月記』を読むとはびっくりでした。だからというわけでもないが、絶対に3年生だと思った(私は1年生だった)。しかし第一高女の制服ではなかった。本屋は高女の学生があひるのように歩くことから名づけられたという民間語源説 folk etymologyのあるアヒル坂の方ではなく……と、話がどんどん一、二の、アホになってきたので本筋に戻したいが、その古本屋でホーンビーの A Guide to Patterns and Usage in English なども買ったのである、たしか。当時は詳しい事情は知らなかったのだが、ホーンビーは長く日本にいて日本人のための英英辞典には何が必要かを考えて1941年に開拓社から出版し、戦後になってアメリカとイギリスが外国人向けの英語辞典に関心を向けたときにオクスフォード大学出版局版となって1948年に出版され、それから版を重ね続けているのでした。)さてウェブスターのニューワールドを久しぶりに開いてみて、僕は愕然とした。前述のように、この辞書は真正でない Webster’s Unabridged を出しているのと同じ出版社のものだが、unabridged についてとりあえず疑念のない説明を加えています―― “1. not abridged; complete  2. designating or of a dictionary that is not abridged from a larger work: an arbitrary designation for any of various large, extensive dictionaries n. an unabridged dictionary.”  問題は2番の定義の後半です。「種々の広範で大きな辞典を指す恣意的な呼称」、だったのかー。まあこの出版社としてはとりわけそうなのだろうが。 arbitrary 恣意的な、勝手な、呼び方になってしまったのですね、少なくとも実態としては。ちなみにホーンビーのような小さな辞典では、当然のことながら、unabridged のような単語は、載っていたとしても基本的には abridge されていないという、言葉の意味のレベルの説明にとどまります(実はロングマンにもホーンビーにも、abridged は載っていても unabridged は載っていませんでした。それはun+abridged で言葉の意味はわかるからでしょう)。そのへんは、辞書の使用目的ということと関わるわけで、僕はもともと文学作品を読む際に役立つ辞書の話をしようと考えていたので、いまさらながら自分の越し方偏向を思ったのでした。けれどもそもそも文学は可能態も含めて人間のあらゆる営みを包含するものなのですよね。だから役に立たないものはない。ただ、(仮に読書に限っても)役に立ち方が数量的、質的に違うということですね。

Webster’s New World Webster’s Twentieth Century の関係はわからないのですが、たとえば、C-2 Webster’s Collegiate Dictionaryという大学生用の辞典は、タイトルの下に “The Largest Abridgement of Webster’s New International Dictionary” と書かれていたように国際版の簡略版であって、定義もそのままで、ということは、ノア・ウェブスターそのままではないが、部分的には受け継いでいる、要するに大辞典の堅苦しい文章の定義を中辞典に凝縮しているようなものでした。つまり、unabridged を親版としてそれを小さくしたものだった。だからとっつきにくいのもあたりまえといえばあたりまえなのです。Webster’s Collegiate は第7版でも nude の一番目の定義は “lacking an essential particular” で、これは親版にはあった Lawという、法律の専門用語としての語義だということを示すlabelが省略されていることで、いっそう当惑させるものとなっています。同じわかりにくさはOEDに対するSOD(Shorter)COD(Concice)POD(Pocket)についても言えました。簡略するとかえってわかりにくいということがある。ホーンビーの辞典というのは、そういう、権威的な大辞典から降りてくる中・小辞典という辞書の成立とは逆の方向からつくられたと言えるのでしょう。それと関わることとして、現在よく使われる意味を中心にした辞書のほうがとりわけ英語を外国語として学ぶ人々には使いやすいのだということをホーンビーは主張した。そして、実はアメリカでも同じ大学生向けと称しても C. L. Barnhart, The American College Dictionary (1947) などは、親となる大辞典にとらわれることなく、具体的には単語使用頻度のリストをもとに、さらに各単語の語義の頻度のリストを用いて、現在の英語のありようの記録・記述こそを中心に据え、定義の文章もなるたけわかりやすい平易な文体にしたのでした。さらに固有名詞を積極的に多くいれ、図版も多くいれ、同義語・類義語の説明もわかりやすく加えました。「最も一般的で」「最も広く使われている」意味を最初に与えることに先鞭をつけた辞書は Funk & Wagnells 1913年の New Standard のようですが、まちがっていたら次回訂正します。それでも数多くある意味の中でどれが一番かということは容易には決めがたい。それで頻度表のような科学的ツールが武器となった。AHDの略称で日本でも利用者の多いC-1 American Heritage Dictionary の場合は、少なくとも初版は “the central meaning about which the other senses may most logically be organized” つまり、「他の語義が最も論理的に組織立てられるような中心的な意味」を第一に挙げようとしたようです。ただ、それもときに主観的な判断であることを編者は認めました。理屈っぽく配列方法を分類すれば(1)歴史原則、(2)頻度、(3)論理的連関、(4)以上のいずれかの折衷ですかね。そして方法のもとにある基本的な意識として歴史と現在ということになるでしょうか。これを「通時」と「共時」と置き換えることができるのか僕にはこわくて断言できませんけど。こういう流れの中で、自らunabridged を名乗る大辞典なのに現在中心主義で編まれたのがA-8  J. Stein, The Random House Dicitonary of the English Language (1966) だったのです。ランダムハウスはこれ以前に大学生用の中辞典をつくっていて、その定義がこの大辞典にそのまま利用されているものもあります。(実はウェブスター大辞典も第2版と第3版とでは単に収録語数だけでなく質的にも大きな変化があるのですが、それはあとで、次回に、たぶんスラングや語法の話のところで、述べることにします。)

文学作品を読むときの辞書、といったって、つねに最初から辞書を引き引き読むわけではない。宮本陽一郎さんは1.5回読みないし2回読みというのを学生に勧めてますが、1回目は辞書なしで、あるいは小辞典で読んで、次にはいろんな辞書にあたって精しく読むと言うスタイルです。英文に慣れるにはなるたけ辞書なんか引かないようにするのがよいということだって言えるのです。それでも辞書を引きたくなる・引かざるを得ない作品はある。そういう文学的熱中の対象となる作品との関係において必要となる辞書たちは、おのずと違った錚々たる(変わった)顔ぶれになるのではないだろうか。つい最近柴田元幸さんと飲む機会があって、ついつい辞書についてついでのようにたずねてしまったのですが、柴田さんはやはり『リーダーズ』を中心的に使っているようでした(電子辞書を愛用しているそうです)。まあそれは聞くまでもないことで、アメリカ文学を研究・翻訳している人は、今ではかなり年配の人まで、『リーダーズ』を愛用していると思います。少なくとも僕の周囲のアメ文の先生は皆そうです。他の辞典の話も出て、柴田さんは『グランドコンサイス』はほとんど(つ)かわないかんじでしたが、横からエガワ先生(と仮に呼んでおきます)が、ヴェトナム戦争関係で役に立った、なかなかいいと思う、というコメントをはさみました。辞書とのつきあいかた(親密度)はひとそれぞれ辞書それぞれということはあります。でも『リーダーズ』に載っていない俗語とか方言はあるし、事典も必要だし、ここまでの文学ではない話の流れで言えば、情報が不十分ということもあるわけです。反省もまじえていえば、中辞典もくだいてわかりやすいというだけでなく、妙に明快なこともあるということをあらためて認識した次第です。

 

再びunabridged

こうしてみてくると、実は辞書について使われるときunabridged という言葉は絶対的な「非省略」を意味しているのではないでした。相対的な意味であるし、さらには恣意的な場合もあることがわかってきました。コンサイスとグランドは矛盾形容(撞着語法 oxymoron)だと言った知人がいますが、comprehensive とかやっぱり辞書のタイトルに冠せられる言葉もアバウトなものです。

ここまで、僕は意識的に普通の辞典を引いて、調べてきたのですが、ことが言葉の意味ではなく慣用のレヴェルにあることがはっきりしたので、J-4 William and Mary Morris, Harper Dictionary of Contemporary Usage, 2nd ed., 1985 という慣用辞典を見てみると、abridged/unabridged という見出しで次のような説明が見つかりました。

 

Technically, any dictionaryeven a child’s elementary dictionaryis an unabridged dictionary if it has never been abridged, that is, cut down from a larger into a briefer edition. In actual practice, however, we think of an unabridged dictionary as being one that contains as broad a sample of our vast language as it is possible to fit between two covers. Usually this means a dictionary of approximately 400,000 entries.

 厳密に言うと、大きな版からより短い版に 「簡略」abridge されていなければ、どの辞書でも―― 子供の初歩的辞典でさえ――「非簡略の」unabridged 辞典である。しかしながら、実際の慣用では 、「非簡略の」unabridged 辞典というのは、我々の広大な言語の標本を、表裏のカヴァーの間に収 められる限り入れているものだと我々は考える。それはおよそ40万の見出し語の辞典を通例意味す ることになる。

 

しつこいようですが、少なくとも幻想としてはまとわりついているらしいのは、Leonard Louis Levinson が編んだ Webster’s Unafraid Dictionary (1967) language という項に採用した『リーダーズ・ダイジェスト』編集長の記事にもあらわれています(加島さんの本で「楽しみ辞典」のなかに言及・引用されている記事の孫引きです)。――

 

言語――ウェブスター大辞典 Webster’s Unabridged Dictionary には60万語以上の単語があるし、専門語を加えれば100万にもなるだろう……サミュエル・ジョンソン博士によって編集されて1755年に出た最初の英語辞典は58千語しか収めていなかった。そしてノア・ウェブスターによって編集されて1828年に出版されたアメリカでの最初の英語辞書は、ただの7万語であった。ということは、わずか百年しかたたぬうちに英語の語彙の量はほぼ10倍となったわけである。そしていまや、ミシガン大学のアルバート・H・マークウォート教授の説によると、次の2世紀のうちに英単語の数は200万語になるという深刻なる問題に直面している。

 

これは一種のユーモア辞典で編者のレヴィンソンはタイトルからして遊んでいる(ウェブスターの名を冠することも、unabridged のもじりのunafraid も)。そして引用とは、理論的には引用のおかれるコンテキストによって意味のずれを伴うもので、少なくともレヴィンソンはまじめに引用しているとは思えないのですが、僕はなかばまじめに引用しています。加島さんの言うように、「この記事を書いた人は省略 abridged辞典と非省略 unabridged辞典を一緒くたにして論じています」(加島 355)。というより、みんな基本的には「非省略」という意味でのunabridged な辞典として扱っている(「専門語」以外という譲歩はありますが、ウェブスターを権威としてまず掲げているわけです)。そしてアルバート・H・マークウォートは、American English (1958; 2nd ed., 1980 [一色マサ子訳『アメリカ英語』(研究社, 1960; 長井善見訳著『アメリカ英語』(南雲堂, 1985])などの著作のある実在の有名な学者です。そして、マジで語彙の増加について書いています。原著にあたる余裕がないので、一色マサ子の旧訳を、日本語がよくわからないところもあるのですが、引用します。――

 

 われわれはまた、英語の語いは過去数世紀の間に、非常に増えていたことや、いくつかの単語は、ほとんど世界各国から借入されたことも知っている。ある言語、おもにラテン語、フランス語、スカンジナビア語などのような言語は、現在の英語の語いに非常に貢献してきた。その上、歴史上のいろいろな時期の英語の辞書は、現在の一貫した辞書を反映しているようである[sic]。その上、およそ千年ほど前に使われた英語の辞書は[sic]、約3万7千語を含んでいる。中世英語[sic]すなわち500年前の英語、そのかなり完全な辞書は、5万から7万の記載事項をもっていたであろう。Shakespeare や、彼と同時代の人々のいた時代、すなわち現代初期の時代の英語の辞書は、少なくとも14万語を含んでいたようであり、現代英語の完全な辞書には、大約50万くらいの項目があることはよく知られている事実である。

 初期の英語の記録があまり断片的なため、古代、中世の英語[古(期)英語、中(期)英語というのが正しい――引用者]のために今挙げられた数は、実際に言語が所有していた数よりもずっと少ないという可能性を考慮してさえも、過去3世紀半の間に単語の数があきらかに4倍になったということは、語い増加への強い傾向を示す重要な証拠となる。この傾向が続かないという理由は何もない。

 それに加えて、最近の語いの増加は、借入よりもむしろ言語の中にすでに存在する要素の処理によることを見てきた。現在の新語の過半数は、複合語、派生的な接頭接尾語の付加、文法的機能変化の過程などで、かなり説明がつく。……1600年以来起ったことと照し合わせてみれば、今後2世紀に語いが2倍になることは想像に難くない。(223-224

 

「完全な辞書」というのは complete (=unabridged) dictionary ということでしょう。まあ、冗談めかした話はこれくらいにして、unabridged という曖昧な語の問題を棚上げしても、非省略方針ということはうかがえるのです。さきほど引用したA-3ウェブスター3版の序文は、辞書作りの「三元徳 three cardinal virtues」として「正確性 accuracy」、「明晰性 clearness」、「包括性 comprehensiveness」をあげます。第三の包括性については、「基本的な目標は標準的な英語の書き言葉・話し言葉の現在の語彙をカヴァーすることに他ならない」と断言し、新しい語彙だけでなく、古い語彙の新たな用法・形態・発音も広範に入れたことを説明します。しかしスペースの問題から、古い語彙について新たな判断をする必要があったことを認めます。そして「多くのobsolete [廃語・廃用になった]で比較的有用性のない、もしくは知られていない言葉が割愛された。そのなかには概して、1755年以前にobsolete になっていた言葉が含まれる。ただし若干のメジャーな著述家のよく知られたメジャーな著作に見つかる場合は除くが。」ウェブスターの定義は、のちに述べるOEDと同じ歴史原則に基づいて、古い語義から並んでいます。そして意味が変化して古い意味が使われない場合にも、その古い意味も載せてはいる。けれども(およそ200年を目安にして)使われなくなって久しい語彙は原則的には採らなかったというわけです。これが、第2版よりも第3版のほうが収録語数が少なくなった原因のひとつと思われます。けれどもある限定のもとに包括的に収録した事実は変わらないでしょう。前述のように、古い順に語義を並べる方式に対して、さきほども述べたように、「現代の用法として最も一般的なものから順次特殊な語義に及ぶように」(『研究社新英和大辞典』5版「凡例」)配列する方式があります(第6版は「検索」という言葉を使って趣旨としては同じことを述べています)。実は英和辞典は岩波書店刊の中辞典を例外としてみな史的順序ではなくて「頻度」順(あくまで括弧つきの頻度ですけど)に語義を並べていますし、英英辞典も中型や小型のものはたいていが「頻度」順です。大型のものでも、アメリカの辞典は昔は多くが「頻度」順でしたし、ランダムハウスの大辞典は「頻度」順です。ウェブスター3版なんかは現在の言葉の様相に焦点を置きながらも歴史的な変化の相もある程度は捉えようとしたがっているように見えます。けれどもそれこそスペースの問題もあって、ウェブスターの記述ではたいへんアバウトにしか変化はわからない。いつ頃どの意味だったのか、いつ頃変化したのか、ということはわからないわけです。辞書界において、歴史的な記述の原則をうちだしたのがOEDでした。OEDの初版13巻が収録した語は全部で414800語でしたが、そのうち独立した見出し語は25万語で他は従属語や結合語でした。第2版の20巻本は、収録語は615100、見出し語が29万、語義ではなくて語そのものがobsolete な見出し語は47100あります。単語の経歴を示す引用例は初版では186万、第2版では2436600となりました。初版の合計頁は15000頁を超し、第2版の場合は21730頁です。ウェブスター3版は同じ3段組で2700頁足らずです。これだけ比べても、収録語数が問題なのではないことがわかると思います。第一に語彙数だけでなく語義数が問題であるのだし、第二に言葉についての情報が問題である。

ある意味で自ら禁じてきた方面に調査の手をのばして、中世英文学者で辞典学者でもある忍足欣四郎さんの優れて文学的な一文を見つけましたので、OEDの話の前に、ここまでの話のまとめに引用します(早く引用できればよかった)。

 

「大型辞書と中型・小型辞書」(まとめ)

英語辞書の中には comprehensive 「網羅的な、抱括的な」とか unabridged 「簡略化されていない、最も完備した」と銘打ったものがある。だが、これらの辞書が文字通り「網羅的な」もの、つまり(分野を限定したにせよ)英語のすべての語彙を収録していると考えるならば、それは大きな誤りである。最大の英語辞書OED は、1986年に「新補遺」(全4巻)が完結し、本巻と合わせて48万8千語余が収録されることとなった(そして総ページ数は2万余、用例はなんと200万をはるかに超える)。読者の中には、この数字の大きさに驚かれる方があるかもしれない。けれども、それですら「すべての語彙」からは程遠いのである。

言語は言うまでもなく歴史的存在である。その流れの中では、人びとの祝福を受けつつ、呱々の声をあげる語もあれば、淋しく葬られていく語もある。何百、何千年という長寿を保つ語があるかと思うと、流れに浮かぶうたかたの如く、かつ消えかつ結んで久しく留まることのない語もある。歴史上誕生したすべての語を収録するとなれば、その数はあまりにも膨大なものになるので、OED ですら1150年に境界線を引き、それ以前に廃用になった語はとりあげていない。英語の文献的歴史は西暦700年に始まるとされる。この頃に英語の単語が初めてラテン語の勅許状に現われたのである。[・・・中略・・・]

英語はある日突然発生したというようなものではない。英語がいつ始まったかについてはさまざまな考え方があろうが、仮りにアングロ・サクソン人が初めて大きな集団を成してブリテン島へ渡って来た5世紀半ばに始まったとしよう。その頃には用いられながら、記録に留められることもなく700年以前に忘れられてしまった水子のような語も、少数ながら当然あるはずである。 

言語はまた空間的な広がりをもち、そのために生ずる英語の変種、つまり同一地域の人びとが共有する地域方言がある。イギリス英語もアメリカ英語にも地域方言があるし、さらにいわゆる連邦英語(Commonwealth English)のような変種もある。方言には、同じ社会階層の人びとが使用する階級方言があり、その中の特殊なものとして、無教育な人びとの口語体として卑語法が区別される。これと関連して(その内容は複雑・多様であるが)スラングという言語現象もある。上記の諸変種に属する語の、すべてとまでいわないにしても、大部分を OED が収録しているかというと、けっしてそんなことはない。

そのような観点からすると、単純に収録語数の点で比較してみても、「大辞典」と称する英和辞典では20万語台、各種の情報量に至っては OED に遠く及ばず、ページ数も2千台であるから、実質は「中型辞典」にすぎない。また、収録語数10万前後のいわゆる「中辞典」は「小型辞典」というほかないのである。したがって、英和辞典を引いてみたけれども出ていなかったという語のあるのは、当然すぎることである。確かに、英和辞典は現代の普通の文献を読むにはひと通り間に合うように工夫を凝らして編集されてはいる。しかし、古語・方言・専門語・俗語・卑語・使用頻度の低い語等は多かれ少なかれ省かれているし、特に「中辞典」クラスの中でも「学習者」向きのものはこの点で弱いのだということを銘記しなければならない。読者諸氏は、携帯用として「中辞典」を、机上用として「大辞典」をというように使い分け、さらに必要に応じて図書館などで大型の英英辞典を参照することが望まれるのである。(忍足 654-55 [「大型辞書と中型・小型辞書」]

 

論理が乱暴なところもあるような気もしますが、僕が書いてきたこととこれから書こうとすることに合致していて、思わず長々と引いてしまいました。辞書を引いても出ていないのは当然、というのは豪快な断定だ。大辞典と呼べるのはOEDだけだといっているようにも聞こえますよね。でもOEDにも載っていない語もある。3番目の段落なんかはなんだか「死語の世界」に想像力を運ばせるような文章じゃありませんか。

 

OEDの歴史原則

 ようやく紆余曲折してOEDの説明まできました。ほめつつけなす、けなしつつほめるというのが大人のやり方かもしれませんが、忍足さんがOEDについてもそれをやってくださったので、けなさない方向で紹介したいと思います。今回残された紙幅も時間も少なくなってきました。いろいろと悩んでいたのですが、angel という英単語についての加島さんによるOEDの説明の説明を援用して説明させていただきます(引用に続く説明は『英語の辞書の話』4450頁に拠っています)。OED2版の第1458頁から459頁にわたり3コラム以上をかけて名詞angel の記述があります。その1番の定義の部分を、CD-ROM版からペーストします。加島さんの説明は、初版の book form に対するものですが、この部分、(発音記号とか辞書全体で変わっている記述方式もありますが)基本的には変わっていません。

 

("eIndZ@l) name="mspell"Forms: 1?3 engel, 2?3 angel, angle, 3 enngell, -gle, angil, eangel, 3?7  angle, 4?5 aungel(e, -ell(e, -il, 4?7 angell, 5?6 angelle, 6 angele, 2? angel. pl. 1?2englas, 2?3 engles, 3?7 angles, 2? angels (4?5 -is, -ys, 4?6 -es). name="mderivation"[An early Teut.    adoption from L., (or, in Goth., from Gr.), afterwards influenced in Eng. by OFr. and L. With OE. £ngel:?angil, cf. OS. engil, OFris. angel, engel, ON. engill, OHG. angil,   engil, Goth. aggilus for angilus; a. L. angel-us, or Gr. 4ccek-o| a messenger, used by theLXX to translate Heb. mal'Qk, in full mal'Qk-yShZwQh ?messenger of Jehovah?; whence the name and doctrine of angels passed into L. and the modern langs. All other uses ofthe word are either extensions of this, or taken from the Gr. in the primary sense of     ?messenger.? The OE. form engel, with g hard, remained to 13th c., but eventually,       under influence of OFr. angele, angle (with g soft), and L. angelus, initial a prevailed;    the forms in au- in 14?15th c. show Fr. influence.]

    name="mI.1"I. 1.  name="mI.1.a"a. A ministering spirit or divine messenger; one of an order of spiritual beings  superior to man in power and intelligence, who, according to the Jewish, Christian,  Islamic, and other theologies, are the attendants and messengers of the Deity.

   c950 Lindisf. Gosp. Matt. xxii. 30 Sint suelce englas godes in heofnum [c1000 Ags. G., Godes  englas. c1160 Hatton G., Godes engles].  Ibid. John v. 4 Engel uutudliche Drihtnes+of-dune   asta?.  c1175 Cott. Hom. 227 Ta sende he his angel to ane mede.  c1200 Trin. Coll. Hom. 31  Do cam on angel of heuene to hem.  c1200 Moral Ode 94 Hwat sulle we seggen oder don tar  angles bed of dradde.  c1200 Ormin 3914 Godess enngless warenn ta Well swite glade wurr tenn.  c1230 Ancr. R. 92 Ure Lefdi mid hire meidenes, & al te englene uerd.  c1260 Signs bef. Judg. 153 in E.E.P. (1862) 11 Tat tan sal quake seraphin and cherubin, tat bet angles two.  Ter nis in heuen angil iwis tat to oter sal hab spech.  1388 Wyclif Ps. viii. 6 Thou hast maad hym a litil lesse than aungels. [Coverd. lower then the angels.]  1393 Langl. P. Pl. C. xxii. 150 Aungeles & archaungeles+Comen kneolynge.  1485 Caxton Chas. Gt. 239, I saw the aungellys mounte into heuen on hye.  1526 Tindale Matt. xxvi. 53 Moo then xii legions of angelles.   1605 Shakes. Macb. iv. iii. 22 Angels are bright still, though the brightest fell.  1607 Hieron  Wks. I. 392 ?Mahanaim?; because there the angles met him.  1712 Pope Spect. No. 408 34 Manseems to be placed as the middle Link between Angels and Brutes.  1742 Blair Grave 589 Its  visits, Like those of angels, Short and far between.  a1842 Tennyson May Queen iii. 25 All in  the wild March-morning I heard the angels call.  1858 Trench Parables xxiii. (1877) 389 The  tears of penitents are the wine of angels.  1865 R. W. Dale Jew. Temple ii. (1877) 24 An angel  strengthened Christ in Gethsemane.  


   name="mI.1.b"b. One of the fallen or rebellious spirits, said to have been formerly angels of God.

   c950 Lindisf. Gosp. Matt. xxv. 41 Fyr ecce sede fore?e~?earuuad is diwle & englum his.  c1160 Hatton G. ibid., Deofle and hys englen ?egarewad.  1382 Wyclif Rev. ix. 11 The aungel of depnesse.  c1400 Destr. Troy x. 4354 Tere onswaret opunly the aungell of helle.  1611 Bible  Matt. xxv. 41 Euerlasting fire, prepared for the deuill and his angels.  I Rev. ix. 11 The Angel of the bottomelesse pit.  1667 Milton P.L. i. 125 So spake th' Apostate Angel.  


   name="mI.1.c"c. A guardian or attendant spirit: lit. in sense 1; but also rhet. without implying any
belief  in their reality, as ?her good angel,? ?my evil angel triumphed,? ?angel of innocence, repentance.?

   1382 Wyclif Acts xii. 15 Forsoth thei seiden, It is his aungel.  1588 Shakes. L.L.L. i. i. 78  There is no euill Angell but Loue.  1594 I Rich. III, iv. i. 93 Go thou to Richard, and good Angels tend thee.  1717 Pope Eloisa 340 Bright clouds descend, and Angels watch thee round.  1875 Farrar Sil. & Voices ii. 43 Though the Angel of Innocence have long vanished, the Angel of Repentance takes him gently by the hand.  1879 Tennyson Lover's T. 29 I to her became    Her guardian and her angel.  


   name="mI.1.d"d. fig. A person who resembles an angel either in attributes or actions;  (a) a lovely,           bright, innocent, or gracious being;  (b) a minister of loving offices.

   1592 Shakes. Rom. & Jul. ii. ii. 26 O, speake againe, bright Angell, for thou art As glorious+As is a winged messenger of heauen.  1660 Stanley Hist. Philos. (1701) 87/2 Looked upon as Angels for Wit and Eloquence.  a1687 Petty Pol. Arith. i. (1691) 10 Many+do so magnifie the Hollanders+making them Angels.  1808 Scott Marm. vi. xxx, When pain and anguish wring the brow, A ministering angel thou.  1819 S.Rogers Hum. Life, A guardian angel o'er his life  presiding, Doubling his pleasures, and his cares dividing.  1858 Longfellow M. Standish ii. 58The angel whose name is Priscilla.  Mod. Not quite such an angel as he looks.  

 

 見出し語のすぐあとに( )parenthesesに入って発音記号があります。国際音声字母(IPA: International Phonetic Alphabet)が第2版では採用されました。品詞を示すn. は英和辞典と同様に名詞 noun ですが、本では12版とも sb.[=substantive] が使われています。これは noun substantiveに由来するもので、昔の文法で noun substantive noun adjective (今日たんにadjectiveと呼ばれるようになった)として区分された、なごりです。次に Forms 形態(語形)欄がきます。1-3 engel, 2-3 angel, angle とかずらずらならんでますが、112世紀以前(つまり11世紀まで)、212世紀、313世紀を意味し、どの世紀にどの綴りが用いられたか、あるいはどの綴りがどの世紀に用いられたか、が示されます。後半はpl. [=plural] 複数形が示されています。単数形・複数形ともに(発音はともかく)12世紀からはangel(s)の綴りが存在したことがわかる一方、17世紀までは安定していなかったこともわかります。書物・文献に異なった綴りのものが現われればずっと示してあって、そこでこの Forms の項目を見てゆけば、ひとつの単語がどの世紀にはどのように綴られたかが、すぐにわかる。つづいて[ ] brackets につつまれた語源欄がきます。L[=Latin]Gk[=Greek] という語源学以外の場でも常識的な略号だけでなく、英語の属するゲルマン語派のGoth [=Gothic]ON [=Old Norse]OHG [=Old High German]OS[=Old Saxon]などもろもろの略号が出てきて、知識がないと、あるいは凡例を見ないと、理解できないところもありますが、ゲルマン語群とかゲルマン語派とかいうものについての説明はいまは敢えて避けて、つまり兄弟間(というと近すぎますが祖先じゃなくて親類筋の言語といったらいいでしょうか)の違いみたいなものの比較情報はおいておいて、おおむねこんなことを述べています――[ラテン語経由とギリシア語経由があるが、後者の場合は「エホヴァの使い」を意味するヘブライ語をギリシア語聖書(LXXはローマ数字の70ですが、いわゆるセプトゥアギンタ、紀元前3世紀にエジプト王プトレマイオス2世の命によってアレクサンドリアで訳されたとつたえられるギリシア語訳旧訳聖書と外典、「七十人訳聖書」の略称です)に訳すのにギリシア語の4ccek-o| が使われ、そこからこの名と教義がラテン語と近代諸語に伝わった。この語の用例は、すべてここからの敷衍・外延であるか、あるいはギリシア語のもともとの「使い」の意味からきている。古英語(OE [=Old English])のハードGの音の engel というかたち(まあ「エンゲル」ということですね)は13世紀まで残存するが、ソフトGの音をもった古フランス語 angeleやラテン語形 angelusの影響で語頭のa が一般化した(つづりも変わり、音も「ジェ」になった)。1415世紀の au- で始まる語形はフランス語の影響を示している。] とまあこんな感じでしょうか。いま日本語に移していて気づいたのですが、フランス語形 angele angle とある、後者はangel の誤記ですね。念のため初版と2版の本の記述を確認しましたが、同じでした。さらに念のため、研究社の新しい語源辞典を引くと、「OE /-g-/ 13Cまで残るが,ME初期からOF angele, angel (F ange) (LL)の影響で /dZ/ となった」と書かれています(さらにOE eng- は音法則的には ing- となったはず、と補足もしてあります)。批判はなるたけしないようにと思っていたが、OEDでもこういう誤り(まあ誤植みたいなものだろうが)を犯し、しかも2版、CD版へと引き継いじゃっているんですね。

 OEDの紹介の途中ですが少しだけ英語の常識に属することですが補足的な説明を自制的にごくかいつまんではさんでおきます。まず、英語の時代区分について。古英語(Old English: OE)、中英語(Middle English: ME)、現代英語(Modern English: ModE)3区分です。中英語が1100年から1500年で、古英語は1100年以前、近代英語は1500年以降です。それから、イギリス史できわめて重要な年号は1066年、すなわち the Norman conquest ノルマン人の征服の年で、これによってフランス語の語彙が英語におびただしく流入し借入され、語彙だけでなく発音や文法にも影響を及ぼすことになりました。あと、ついでながら、研究社の『英語語源辞典』は、同僚の羽田陽子先生が参加しているからいうのではなく、たいへんよい本だと思います。語源辞典にありがちな、と僕のような学識不足の人間の偏見は言いたくなるのですが、専門の学者特有の無味乾燥な記述法ではない要素をもちこんでいるように思えます。

 さて、語源のあとようやく定義がきます。I. 1. a.(本の場合はa が省略されています)として、「つかわされる霊、あるいは神聖な使者。力と智において人間に優る霊的な階層のひとつ。ユダヤ教、キリスト教、回教その他の神学によれば、神の従者であり使者である。」という定義が5行ほど続きます。この定義が終わると、また行があらたまり、(本の場合は少し小さな字体で、CD版の場合は青い文字で、)次のような記載になります。

 

 c950 Lindisf. Gosp. Matt. xxii. 30 Sint suelce englas godes in heofnum

 c950 のc(本では斜体)はラテン語の circa の頭文字、about の意。この1行は、ほぼ西暦950年ごろの Lindisf. Gosp. (リンディスファーン福音書)の Matt. xxii. 30 (マタイ福音書2230節)には、 “englas godes” として、エンジェルという単語が用いられている、ということをいっています。(ここで語形欄に眼を戻せば、複数形の最初の語形はenglas、すなわち??世紀以前から??世紀まで、という記述があり、当然ながら合致しています。“englas godes” は現代風に書けば God’s angels です。)

 しかし、この1行はもうひとつ大切なことを語っています。エンジェルという単語が文献に現われた最も古い用例(初例)を示している点です。これまでのところ、エンジェルを「神のお使い」の意味で用いた最古の文献資料は、発見された限りでは950年ごろのリンディスファーン福音書なのだと語っている。続けて1000年ごろの用例、1160年の用例、と続いて(少なくとも1世紀に1個くらいの割合であげられればあげるようですが)1865年の用例で終わっています。最後の例から見ると、この単語のこの意味は現在でも用いられていることを示してもいます(ちなみにOEDのこの部分を含む分冊が刊行されたのは1884年でした)。実は廃義、廃語 (obsolete) になった場合は、語義や語の前に dagger 剣のマーク(? )を付け、さらに言葉でも Obs. label を指示し、最終例を挙げます。廃語のなかでも稀なものにはObs. rare. とし、rareのあとに1とか2とか数字をつけて、この語のこういう使用はいままでただ1[2]しか見当たらない、ということを示したりもします。(以上、加島 44-48頁の部分的には盗用的な要約です)。(なお、用例の  Lindisf. Gosp. は省略されたタイトルですが、こういう省略形は、巻末のbibliography 文献表を見れば、正式なタイトル(や著者の長い名前やら)が得られます。Lindisfarne gospels の場合はSkeat という有名な学者の編んだアンソロジーに拠っていることも示されています。詳しく調べると(とりあえず『リーダーズ』を引いてみると)、リンディスファーン福音書は7世紀末に成立したラテン語福音書の装飾写本であり、行間に10世紀のOEのノーサンブリア方言による語釈がある、ということがわかります。用例は、この手書きの語釈の部分なのですね。羽田先生から得た情報ですが、最近法政大学の図書館はこのリンディスファーン福音書のリプリント版を購入したそうです。かつては見たくても、大英図書館みたいなところに行かなければ、見られなかったものだそうです)。

 それから、1番のd までくると、fig. [=figurative] として、「属性もしくは行動において天使に似た人」という定義が挙げられています。もとの意味が対象をずらされて「比喩的」に使われている。英語を読み間違えるのは、加島さんも書かれているように、本来の意味が変わって用いられる場合というのが多くて、OEDはこういう点も figurative とか trans. [=transferred] 転義という label を与えて丁寧に説明してくれます。angel を人間に対して比喩的に使ったのは、OEDの用例で見る限りでは、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』が最初で、そのことは文学的な想像力と無関係ではないと加島さんは考えます。

 OEDは歴史主義の立場から編纂された辞書でした。それぞれの単語について、可能な限り過去にさかのぼって、語形と語義を古いところから呈示し、それを文献で実証して用例を最古のものから年代順に掲げる。ですから、OEDをみると、言葉の意味もわかるのだけれど、言葉の歴史もわかる。言葉の歴史もわかると言葉の意味がもっとわかる(こともある)。言葉の歴史が見えるというのは、たとえば英語史でよく例としてあげられる例に、昔は鳥一般を意味していた fowl が、その意味・地位を bird にゆずったことがあります。OED bird 1番は、こどもの鳥、ひなを一般に指す語で、古英語ではこの意味でしかなかったし、1600年ごろの文献にまで見られるし、北部方言には残存しているということを説明しています。1番の b から e はこの語が鳥以外の、たとえば若者や少女に使われた(る)場合が示される(ついでながら、この1番のb 以下は初例が次の2番の初例より時代的に遅いのです、だから、OEDも全部が全部歴史的に並んでいるのではなくて、語義のつながりでまとめられているところもあるのです)。2番になると、もともとは「ひな、わかどり」を意味していた bird 1300年ごろの南部方言で「鳥」の意味に拡大されて一般化したことが、チョーサーやジョンソンやを引き合いに出して、普通の辞書の定義をはるかに超えたかたちで説明されています。brid bird というこれまた有名な語形の問題も含めて、bird の項目をみれば、その豊富な用例に裏付けられたかたちで、知らない人からみるとおそるべき深遠なる学識を披露できる、ような知識を得ることができる、そういう宝庫なわけです。『ナルニア国物語』で有名なCS・ルイスは、ケンブリッジ大学英文学教授で、中世英文学についての研究も多いのですが、『語の研究』という、邦訳の副題を信じればヨーロッパの観念の歴史の研究の本で、いかにOED(彼の呼び方ではNED)が役に立ったかを繰り返し述べています。観念史というと Arthur O. Lovejoy を親分とする、辞書としては The Dictionary of the History of Ideas を産んだ、「観念史派」という、文学批評と思想史の学際的な立場の人々を思い起こすわけですが、ルイスが観念史派だったという話は聞いたことがないね。でもOEDを使って思索すると、観念史派の姿勢に近づくとは言えずとも、結実としては観念史派の成果と近づくところがある、ということはいえるのだと思います。哲学科の牧野さんによると、観念史と呼ぶのはまちがいで哲学のほうでは概念史と呼んでいるとのことですが、英文では観念史ですね。もちろん、観念論とは関係ない、世俗的な意味の観念です。

 idea (イデア、観念、概念、考え、意見、思いつき、アイディア)の場合もそうですが、しばしばいわれることですけど、ヨーロッパでは日常的な語と哲学的、専門的、形而上的な語が、意味内容はともかく隔絶せずに同じままだということがあります。では、日常から形而上へと転義したのでしょうか、それとも逆なのでしょうか。そういうことにもOEDは英語という言語に視座を置いてですが、答えてくれます。ただし、一般的に思想に深く関わる言葉には辞書が説明しえない淵があることがあります。

ある語がある時代にどのような意味をもっていたかを知るには、その時代の辞書を見るのがひとつの方法です。学部時代に、辞書を薦めた教師は二人とも英語学の先生で、僕が感化された教師ナンバー2の英文学の先生はときどき図書館でOEDを引いている姿が目撃されましたが、授業でOEDの名を挙げることはめったにない。これは大学院に進んで辞書引きに悪戦苦闘するようになったころも、個人的には肯定できる姿勢でした。辞書を引いても引いているふうをあからさまに見せないというのは、かっこいいじゃないですか(でも辞書の知識を積極的に授けていただきたかったと今は思います)。その先生の演習でアメリカの19世紀の小説家 Nathaniel Hawthorne の初期の短編を読んでいたとき、reason understanding という対語で教師につっこまれて「こういうときどうやって調べますか」と聞かれて、教わってないじゃんとは言えず、「辞書ですか」……ということで、古い辞書を宿題として調べる羽目になりました。しかし大学の図書館に、19世紀のウェブスターは初版以外なかったのです。神保町の辞書専門の古本屋に行ったりもしたのですが、結局国会図書館に行って、確か60年代以前の版を引いて、メモをとって持ち帰り、授業で報告しました。いま手元に当該辞書がないので確認できないのですけど、要するに、reason 理性とは直観的・霊的な認識能力であり、イギリスの哲学者 John Locke の認識論の範囲にとどまるunderstanding 悟性を超えた高次の能力なのでした。実は「理性」と「悟性」の対はイギリスにしろアメリカにしろ(ドイツにしろ)ロマン主義の文学を研究する者が必ずぶつかる概念なのだ、と今の自分は言えます。キリスト教正統の視点からアメリカ文学を論じたRandal Stewartというホーソーン学者は、人間の限界を示す原罪の教義を否定して人間の無限性を認めようとするロマン主義的な人間観を批判しましたが、アメリカにおけるロマン主義の明示的な表現であるアメリカ超絶主義の中心的作家Ralph Waldo Emerson が、この二つの言葉を通常理解される意味とはずらして使っていると非難しています。けれども当時の思想としては少なくとも英米共通に見られるものだった。国会図書館で見たウェブスターは、たしかイギリスの詩人・文学者Samuel Taylor ColeridgeThomas Carlyleの例を出して説明していたのでした。あとになってOEDになじむようになってから調べてみたのですが、OEDの記述にはこの「超絶主義」の痕跡は残っていませんでした。その先生がOEDには説明がないことをわかっていて僕をあちこちへ走らせたのか否かはわかりません。OEDがきわめて便利なのは、「歴史原則」による記述によって、言葉の履歴を知ることができるからで、どの時代にどういう意味だったかを、それも歴史的パースペクティヴのもとに、知ることができるのですが、この点でも限界はあります。当然です。

 

とりとめのないまとめ

さて、「自分の語学力の程度を考えもしないで、アメリカニズムがどうのとか、そうしたことをしきりと問題にする学生がよくいる」(西川 123 という西川正身大先生の言葉を肝に銘じつつ、アメリカニズムの辞書の話ぐらいはして閉じようと途中では思っていたのでしたが、もう延ばしに延ばした締め切りの前夜で、尻切れトンボで終わるほかないようです。もともとこの雑誌は学部学生のものであって、学生諸君がいろいろ勝手に企画して自由なことを書けばよいとずっと思っていたのになかなか活発にならないので、教師だって勝手気ままに書けるのだからということを示すべく、だから、結果としては良くてもよいし悪くてもよいという、まさに勝手に書かせてもらっているのだけど、駄弁になったところもありちょっとだけ恐縮しています。OEDの歴代編集主幹の一人であったスコットランド出身の William A. Craigie (1867-1957) が、アメリカの学者 James Hulbert と協力して編纂した、歴史原則に基づくアメリカニズムの辞書D-1 A Dictionary of American English on Historical Principles (1938-44) unabridged の項を引いて、つづきは次回にということにします。

 

     Unabridged, a.

1.      Not abridged or shortened, esp. of Webster’s dictionary.

 a1861 WINTHROP J. Brent 100 Their ‘dixtonary,’ as Shamberlain called it, of rascality is an unabridged edition.  1890 WIGGIN Timothy’s Quest 85 She was  perched on a Webster’s Unabridged Dictionary.  1908 LORIMER J. Spurlock 126  I came across the unbound sheets of a tremenjous big book, bigger than an unabridged Webstah.

2.  absol.  An unabridged dictionary, usually Webster’s.

    1860 HOLMES Professor 56 Hurry up that ‘Webster’s Unabridged!’  1875 ‘MARK TWAIN’ in Lotus Leaves 28 I had the Unabridged and I was ciphering around in the back end, hoping I might tree her among the pictures.  1902 HARBEN Abner Daniel 58 Well, the unabridged does not furnish it.

 

最後の最後にもう一言。この原稿を書いている途中で、インターネットでセンチュリーの大辞典が利用できることを知りました(http://www.global-language.com/CENTURY/)。企画したのはOED2版の編集に関わった人のようで、あれこれ理屈をこねた文書を載せています。これをきっかけにセンチュリーが再評価されるかもしれません。センチュリーの編集主幹William Whitney 1864年版のウェブスター改訂版の編集者であった人です。Charles Peirceチャールズ・パース(1839-1914) John Deweyジョン・デューイ(1859-1952) といった著名な執筆者を含み、挿絵に若きErnest Thompson Setonが参加してもいる。自宅には若いころ人からもらった12巻本のセンチュリーがあるのですが、開くと表紙から粉が落ち、手が汚れるので、最終巻の固有名詞以外はめったに引きません。文学部資料室にリプリント版があることがわかっているからでもあります。辞書類(のみならず研究書類)を、便利だと思ったものに限っても、すべて持つことは物理的・経済的に不可能で、どこにあるかわかっていることが大事で、根性を入れて調べるということが研究(や翻訳)では必要になります。でも電子メディアによって、以前とはかなり違った状況になっています。「読者諸氏は、携帯用として「中辞典」を、机上用として「大辞典」をというように使い分け、さらに必要に応じて図書館などで大型の英英辞典を参照することが望まれるのである」という文章を先に引きましたが、電子辞書は小・中・大の区別をしませんし、OEDCD-ROM版があります。便利なのは、複数の単語を組み合わせた検索や後方一致検索や引用作品・作者検索、語源検索など、紙の辞書ではできないような検索が可能なことで、OEDに限って言っても、検索機能のヴァージョンアップが勢いよく行なわれています。(話がさらにそれますが、研究書は近年絶版になるスパンが短くなっているので、眼にとまったときに買っておかないとなかなか再会できない。それでつい買ってしまいます。本棚をときどき整理して、ああこんな本ももっていたんだとちょっと嬉しくなることもありますし(まあ読んでなかったということなのですが)。もっともやはりインターネットで古書を買えるのでそうとう便利になりました――ひとつだけサーチエンジンの集合体をあげておきます―― )。 DAEは大学院時代から個人でほしかったのですが、高くて買えなかった。でも1995年に日本に帰ってきた頃からでしょうか、インターネットの古本屋でいろいろと値段を比較すれば、日本でかなり高価な本も、かなり安く入手できるようになりました。それで、カナダの古本屋から米ドルにして100ドルちょっとで4巻本を買いました。うちにあってよかった。

 

                                                                                                                                 200333日)

 

<辞書なんかのリスト version 1

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 〔
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・・・・・・以下略