失われつつある技術に目を向ける
トム・ディクソン「Beat Light」

『AXIS』2007年 Vol.125、Inspiration(連載記事)より
取材、文章=川上典李子

English

「デザインは果たして、世の人々が最も必要としているものを供給できるのだろうか」。新しいものを創造することとはどのようなことか、デザイナーが行なえることとは何であ るのか、と、トム・ディクソンは問う。その思いを確かめるべく、自身が教鞭をとる英国、RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)のデザインプロダクト科の学生たちとともに、生活環境の大きく異なる2つの国、ナイジェリアとインドを訪れるなどのフィールドワークを行なっているほどでもあ る。
ディクソンが関心を抱いているのは、我々をとりまく今後の環境でもある。そのために、普段は見逃されることが多いものや、デザイン界では忘れられがちな要素にも目を向けようとしている。2006年春のミラノサローネの際にTom Dixon Ltdより発表され、秋の100% Design Londonでも注目を集めていた「Beat Light」もそうした彼の考えを如実に示す一例だ。インドにおけるハンドメイド技術を用いた真鍮姓のランプシェードで、通常は水を入れる器をつくる技術が生かされている。この地の伝統的なクリエイションへの敬意からか、シェードのフォルムはインドの寺院の屋根のかたちに触発されたものだという。放っておけばやがて失われてしまうかもしれないものを、未来へと続くデザインの大切な価値へと展開させようとする、デザイナーの試み。デザイナーの役割、言い換えるなら、デザイナーができることは、従来からさらに拡大していることを、彼の活動から考えずにはいられない。
(『AXIS』Vol.125より)


   2007-2016 Noriko Kawakami Office All Rights Reserved.
本文の無断転載を禁じます