2005年4月〜2006年7月の俳句

如月美樹

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2006年7月
短夜の散らばる髪と海の砂



『俳壇』2006年7月号発表作品

風の向かうへ

桜前線さかのぼりゆくふたり
山の名をよぶくちびるに春の風
いつの日か還る春野を見つくしぬ
糸底の残す水の輪夏隣
はつなつの鳥に微風の重さあり
梅酒含んでまた旅の夢を見る



2006年5月
できたての俳句キラキラ夏きざす



2006年4月
桜前線さかのぼりゆくふたり



2006年3月
雛の日のはらりと袱紗広げをり
春一番どこも開かぬ金の鍵
さくら満開何かがこぼれ落ちぬよう



2006年2月

春立ちぬ星に教へは請はずとも
冴返るいちにち口を聞かぬ日も
冴返る額におさまる真砂女の句



2006年1月

目閉ぢれば消えてゆく山茶花の赤
春隣テレビ塔なら越えてゆく



2005年12月

しばらくは娘でありぬ冬林檎
またここへ来てマフラーを巻き直す
冬薔薇の齧ればきつと甘さうな
はつゆきのやがてわたしの手のひらに
こぼれることば冬の窓開け放ち
指先に切り傷冬の月満ちる



2005年11月

ペン先の綴らぬ名前冬隣
差しのべる指先白く冬に入る
折り紙の折り目正しき冬に入る
うたごゑの消えるあたりに冬の虹
触れられぬまま凍蝶となりゆけり
空瓶のなかにも冬の来てをりぬ
嘘の間に間に寒月を振り返る
ほほえみのあとの沈黙冬薔薇



2005年9月

どなたかに呼ばれましたる星月夜
新涼の稲荷の鳥居くぐらふか



2005年8月

走り続けるならそれは南風
受け入るるなら白桃の濡らす指
ひとりなら歩き続ける蓮の花



2005年7月

髪洗ふ夢の続きと知りつつも
つぐなへる罪なら犯せ薔薇の夜
今日からは空見て暮らすみんみん蝉
下手とは夏の終りのあるところ



2005年6月

月涼し先に行かせてもらふから
短夜の愛を語るにもう少し
梅雨はじまつたばかり思ひだすことばかり



2005年5月

はつなつの夢の行方の定まらぬ
“ムーンライト・ソナタ”真夏が来る前に
イニシャルのクロスステッチ夏に入る
はじめてのこといくたびも聖五月
梅酒含んでまた旅の夢を見る
母の日のいちばん星はいつの間に
はつなつの彗星に尾のありしこと
夏の夜の千のグラスに金の泡



2005年4月


まぼろしの顔見るばかり朧月
歌声の届く気のして花曇
沈丁香る手紙など来なくても
花時の風にしたがふ髪の先
夢解きの夢覚まされし猫の恋
待つなんていや落椿うらがへす
横顔ばかり思ひだすさくらの夜
恋だの愛だの花びらひらひらと
もう顔も思ひだせない春の夢
蝶羽ばたいて閉ぢてゆく夢うつつ
花冷えのひとつセリフを聞き逃す
ひたすらに行く花屑を踏みしめて
言ひ訳に過ぎぬ沈黙春の雷
春愁のいくたびのぞく万華鏡
みづうみに浮かばせてゐる春の月
もう歌は届かない鳥雲に入る
最終の便春の星したがへて
龍天に昇ることばをひとつ持ち
春暁の星のかけらを置いてゆく
約束のなき春満月振り返る
行く春の折り鶴の羽根折れやすき
くちびると祈りと歌と春の空


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