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「キネマの天地」

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作品DATA:「キネマの天地」


1986年 松竹 135分
製作総指揮奥山 融   録   音鈴木 功
製   作野村芳太郎 調   音松本隆司
プロデューサ杉崎重美、升本喜年、島津 清 照   明青木好文
監   督山田洋次 編   集石井 巌
脚   本井上ひさし、山田太一、朝間義隆、山田洋次 助 監 督五十嵐敬司
プロダクション
コーディネータ
内藤 誠、田中康義 スチール赤井薄旦
宣伝担当梶原時雄、大西 洋
撮   影高羽哲夫 進   行玉生久宗
美   術出川三男 製作主任峰 順一
音   楽山本直純 協   力京浜急行、(株)熊谷組

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
喜八 渥美 清 園田八重子 美保 純 留吉 佐藤蛾次郎
島田健二郎 中井貴一 床山茂吉 石井 均 看守 石倉三郎
田中小春 有森也実 礒野良平 レオナルド熊 馬道刑事 粟津 號
ゆき 倍賞千恵子 川島の恋人 津嘉山正種 犬飼刑事 財津一郎
弘吉 前田 吟 古賀英二 坂本貞美 彰子妃殿下 桃井かおり
島田庄吉 下條正巳 小山田淳 広岡 瞬 戸田礼吉 山城新伍
貞子 三崎千恵子 井川時彦 田中 健 華やかな女性歌手 木の実ナナ
満男 吉岡秀隆 長野キャメラマン 油井昌由樹 帝国館弁士 松田春翠
屑屋 笹野高史 猪股助監督 冷泉公裕 同 支配人 人見 明
城田所長 松本幸四郎 照明班長 じん 弘 若い売り子 田谷知子
川島澄江 松坂慶子 正兄 山田隆夫 呼び込みの男 関 敬六
小倉監督 すまけい 生田キャメラマン アパッチけん 脚本部 北原 若尾哲平
緒方監督 岸部一徳 同 助手 光石 研 同 池島 巻島康一
小笠原監督 なべおさみ 守衛 桜井センリ 女事務員 マキノ佐代子
岡村監督 大和田伸也 トモさん 笠 智衆 医師役 加島 潤
佐伯監督 柄本 明 小田切 平田 満 泥棒役 星野浩之
内藤監督 堺 正章 安五郎 ハナ 肇 浅草の客 藤山寛美
佐藤監督 山本晋也


作品解説:「キネマの天地」


松竹大船撮影所50周年記念作品
 松竹が総力を挙げて製作した記念作品で、オールスター総出演という作品です。(松竹の総力を挙げて、ということは、恒例の「男はつらいよ」の製作を止めていることからも分かります。山田監督や寅さんこと渥美さんが本作の監督、主演ということですから、当然といえば当然なのですが、「寅さん」と言えば松竹の稼ぎ頭でもある作品でありますので、それだけ力の入れ方もよくお分かり戴けるでしょう。また、上記キャスト一覧をご覧戴ければ、大物俳優さんもぞろぞろ名前を連ねています。)そんな中で山田洋次監督が絶賛した新星が誕生しました。それはもちろん、有森也実さんです。当初、本作のヒロイン小春は藤谷美和子さんが演じることになっていました。が、ある事情で降板。急遽主役に抜擢されたのが有森さんでした。(藤谷さんがもしも降板しないで小春を演じていたら、有森さんはどうなっていたでしょうかねぇ... 少なくとも、本作に出演するということはなかったでしょう。ということは、ここまで大きな女優になっていたでしょうか... 或いは、山田監督の頭の中に元々有森さんの名前があったそうですから、別の作品に出演することになっていて、そちらで評価されていていたか... こればかりは何とも言えませんが、ここまで大きな話題作品になったかどうかとも考えてしまいます。)
 
「星空のむこうの国」で映画主演という経験があったとはいうものの、無名の新人女優(といっていいでしょう)が松竹の看板作品の主役を務めるということになり、当時たいへんな話題を集めました(藤谷さんの降板劇がなかったら、ここまで本作が話題にならなかったでしょう...)が、有森さんは山田洋次監督の期待(松竹の期待も含む)に応え、堂々と主役を務めました。相当なプレッシャーがあったことでしょう。しかし有森さんは主役を見事に務め、そして、演技が高く評価され、映画と同様に彼女は一躍シンデレラ・ガールとなりました。まさに、映画のストーリーとダブっています。(ストーリーと同様に苦悩することも当然あったことでしょうが... でも、こういう作品では共感もできるのですよね〜)往年の日本映画全盛期では、主役に抜擢されてそのままスターになるという人もいましたが、最近では非常に珍しいことです。こういう点も有森さんに日本映画の伝統を受け継ぐ往年のスターの面影を重ねたくなってしまう一因なのかもしれません。それにしても、現在の松竹の低迷ぶりには、本作に登場する日本映画界の偉大な先人たちはどのように感じているのでしょうか。(松竹さん、打開策は本作の物語の中にあるような気がするのですが...)それにしても、着物姿の有森さんって、清楚なイメージがあり、まさに日本人女性と言うことを感じさせてくれます。
 蒲田撮影所、そこは映画に青春を賭けた者たちが集う青春が詰まった場所であった。浅草の活動小屋(今で言う映画館)で売り子をしていた娘・小春(有森也実)が松竹キネマの監督に見いだされ、大部屋女優として蒲田撮影所にやってくる。彼女は夢を作ることに命を賭けた人たちに囲まれ、人を愛し、憎しみ、苦しみながらも役をもらって、打ちひしがれ、苦悩し、それを乗り越え、やがてトップスターへと成長していく。昭和初期の松竹には後に日本映画界を支える大監督、大女優たちが大勢いましたが、彼らの若き日の姿を再現しつつも、一人の若い女優を中心に見事に描かれています。
 多少の楽屋落ちという所もありますが、日本映画の歴史上に名前を残す監督、俳優さんたちに扮する俳優陣も見所の一つです。(それぞれ思い入れも深かったりしていることでしょう)日本映画の若い時代をダイナミックに描いたということも評価できます。しかも、主演の有森さんはもちろん、出演者の誰もが力一杯演じていて、日本映画界の先輩諸氏に対するメッセージも感じ取れます。
 松竹は看板である「男はつらいよ」をパスして本作を大船撮影所50周年記念作品として全力を注いで製作した作品ですが、新星・有森也実さんを産んだだけでなく、映画に対する情熱は変わっていないということをアピールした傑作です。(が、最近の松竹さんは全く元気がなく、大船撮影所も閉鎖ということになり、残念です。本作を製作した頃を思い出して立ち直って欲しいものです!!)
 尚、ヒーロー作品ファンの方のために、一口情報を記すと、松坂慶子さんは「ウルトラセブン」のゲストや、「忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ」に出演していましたし、「世界忍者戦ジライヤ」で貴忍麗破を演じた田谷知子さんや、「重甲ビーファイター」の向井博士の笹野高史さんも本作品に出演しています。更に、山城新伍さんも、「白馬童子」でヒーローを演じていました。それぞれ何の役かは上の一覧をご覧の上、本作を見て何処に出ているかを捜して下さい。(ということで、一見した所ではヒーローとは関係ないと思える「キネ天」や有森也実さんが、こういうところでヒーローの世界につながっていくのです。これも面白いものですね。)
 本作では製作を担当した野村芳太郎氏(「砂の器」や「鬼畜」の監督と言った方が分かりやすいでしょう。)が2005年4月8日に亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
Written By MEICHIKU



脱線メモ:「キネマの天地」


 本作製作の背景には、松竹=角川提携作品「蒲田行進曲」のヒットによる影響が大きいと思われる。タイトルに反し、太秦撮影所を舞台にしたこの作品(時代を現在に置く限り、蒲田撮影所が存在しないのだから当然といえば当然だが)、活動写真華やかなりし頃のヒット曲『蒲田行進曲』を主題歌としていた。この曲の一節に使われている有名なフレーズこそ本作のタイトルである。「蒲田行進曲」の大ヒットにより、撮影所がフル稼動していた栄光の時代を娯楽大作として製作しようと松竹首脳陣が考えたことは想像に難くない。
 なお、本作の主人公のモデルは田中絹代であり、松竹ゆかりの監督らしき人々が登場するものの、役名はそれぞれ変えられてある。なお、田中絹代の実名を用いてその半生を綴った作品が、この後、東宝で製作されている。市川崑監督・吉永小百合主演の「映画女優」である(常に切れ味の鋭いラストを用意する市川崑監督作品にしては、「西鶴一代女」の撮影風景を持ってきたこの作品のラストはオリジナルに遠く及ばない、と感ずる)。
 私事になりますが、この作品、新潟SY松竹(現在ではビルに改装され、その中に新潟松竹・ピカデリーという2館の映画館が入っている)という劇場で、公開前の試写会にて見ることができました。当時学生だった私は(年がばれますな)、開映ぎりぎりに劇場に着いたものの、空いている席は左右両端の最前列から2つほどしか見当たらず、やむなく2列目に付いたところ、ほどなくして私の前の席に座った人がいました。それから司会による作品案内が始まり、主演女優の紹介がありました。その紹介の声と同時に立ち上がり舞台に上がっていったのが、私の目の前に座っていた主演女優こと有森也実さんその人であったのです。手を伸ばせば触れるくらいのところにあの有森さんがいたとは!(注・むやみに他人に触れることは法律で禁じられています)。舞台挨拶の有森さんはスクリーンとはまた別の魅力を持った快活なお嬢さんといった印象でした。
Written By G.I.A.


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