シャケ餅

 島田河岸(もと豊田村向島田)に、荒川という大きな船問屋があった。

 ある年の10月末、思川にサケがたくさんのぼってきた。これを見た船問屋の主人は、召使いたちに言いつけて、サケをとらせた。山ほどとれた。あまり数が多いので、いくつものあき樽に塩づけにした。

 やがて年の暮れになり、餅をついた。正月のある日、予想外に来客が多くて、餅をふるまうのに、つけて食べるものがなくなった。思案の末、思い出したのは、塩づけにしておいたサケだった。生まきで焼いて薄切りにしたものを餅の上に並べ、皿が足りなかったので松葉にのせて出した。お客たちは、妙なものを食べさせると思ったが、案外な珍味でたいへん評判がよかった。

 それからは、この家では、正月に生まきでサケを焼き、松葉にのせて餅を食べるのがならわしになった。また、正月3カ日は、婦人は水神さまにさわりが

あるからと、男ばかりで料理をつくる家例だったという。言うまでもなく、シャケはサケの方言である。

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