1999.12.21

自閉症スペクトル障害

自閉症の診断基準をすべて満たしてはいないけれど、その内のいくつかの症状を持っているというのが自閉症スペクトル障害。器質的な脳機能不全に起因する発達障害である。
サブグループの分け方については各症候群どうしに重なり合う部分がかなりあるということで、絶対的なルールはなく境界線を引く事自体が困難である(ローナ・ウイング著「自閉症スペクトル」より)ということだ。


広汎性発達障害として、以下のように分類する場合もある。
(DSM-4)
・自閉性障害
・ レット障害
・ 小児崩壊性障害
・ アスペルガー障害
・特定不能の広汎性発達障害( 非定型自閉症を含む)


(ICD−10)
・小児自閉症
・非定型自閉症
・レット症候群
・他の小児期崩壊性障害
・精神遅滞及び常同運動に関連した過動性障害
・アスペルガー症候群
・他の広汎性発達障害
・広汎性発達障害、特定不能のもの


アスペルガー症候群も含めた自閉症スペクトル障害では、社会的相互交渉、コミュニケーション、想像力の障害 (以上ウイングの"自閉症の三つ組み")、反復的常同的動作等々の問題を有する。
以下ローナ・ウイングの著書を主として、他で学んだ事も加えてまとめてみた。


● 社会性の問題(社会的相互交渉の障害)
  孤立群…人に関心がうすく、他者の存在をたびたび無視する。
        他者との接触を避ける状態。まるで他人が存在しないかのように
        ふるまう。
        しかし、あらっぽい身体遊びには反応する子が多い。
  
  受動群…自分からかかわろうとしないが、求めに応じると言いなりになりや
        すい。
        おとなしいが、他者からの働きかけにはそれ相応の関係が持て
        る。
        そうすべき時には視線を合わせる事もできる。
        「問題行動」は少ないが、青年期に際立った変化が起き行動異常
        があらわれる事もある。
  
  奇異群…積極:人とかかわろうとするが、その仕方が相手のことを考えてい
           ない等、奇妙な印 象を与えやすい。かかわりへの欲求は強
           い。
        消極的:人とのかかわりに失敗経験があった為、かかわりへの欲
            求が失せてしまったもの。
            人との社会的やりとりの方法の理解の困難。


  形式ばった大仰な群…
        マニュアル的対応。人付き合いのルールが根本的に理解できず、
        知りえたルールに厳格にこだわって対処したりする。時間や状
        況の変化に応じてとるべき行動の微妙な違いに対応すること
        は困難。青年期後期から成人期に見られる。


本人自身に他人に親切にしたり援助しようとする気持ちがあるなしに拘わらず、他人の考えや感覚への理解が欠けるということである。  
カナータイプでは他者への関心が弱く、1人遊びや一方な要求が多い。
アスペルガーでは他者との関わりを持とうとはするが、他の人の表情やしぐさからその意図を読み取る事が苦手であるという。



 ・情報の入力の弱さ
  身体内の感覚が強すぎて、外界の情報が入りにくい。 様々な視覚・聴覚情
  報の中から有益な情報を弁別できずに、個々の刺激にばらばらに反応して
  しまう。
  言語的な情報(文字・音声)と、非言語的な情報(他者の身体の情報等)の
  どちらが入りにくいかによって出てくる問題が違う。
 ・情報の統合の弱さ
  主観的な情報を統合して、自我や自己像を形成したり、まとめたりすること
  が困難。
  客観的な情報を統合して自己の社会的存在を認識したり、他者を像として
  とらえたりすることが困難。



● コミュニケーションの障害
 言語(文法、語彙、単語の意味付け能力)自体には障害があることもない
 こともある。
 言語の使用の仕方には問題がある。
 エコラリア、遅延エコラリア。
 話し手のことばをそのまま真似るので人称代名詞が逆になる。
 特定の場で聞いた記憶を頼りに、場に応じた発語もある。
 わかった単語や語句を言い始めて、次の段階に進む子もある。
 助詞の使用の困難。
 アスペルガーでは初期には言語の遅れがあっても、語彙、文法共に発達
 をする人が多い。
 
 言葉の意味の理解に柔軟性を欠く傾向がある。(言い方がかわった場合
 や同じ発音で異なるふたつの意味を持つ単語等)
 文の中の1,2語にのみ反応してその他を無視してしまう傾向がある。
 冗談がわかりにくい。文字通りの解釈をしてしまう傾向があり、字面以上
 の意味や言外の意味の理解の困難がある。
 人の表情・身振り・行動の意味を、読み取ることが困難。
 不自然な口調と声量調節のできにくさ。


 等々、コミュニケーション機能そのものの弱さがある。
 カナータイプでは、オウム返しや独り言が多くコミュニケーションの手段と
 してことばを用いることが困難である。アスペルガーでは、ことばは流暢
 に話すことができても、コミュニケーション手段にならないことも多い。



●想像力の障害
 人の立場が自分と違うことを、想像しにくい。
 見立て遊び、ごっこ遊びの困難。
 登場人物や物の「ふり遊び」は困難でも、そのものになりきっての「ファン
 タジー遊び」は得意である。
 相手の言葉や表情から、その気持ちを読み取ることの困難。
 時間・空間的なつながりの中での相手の心の動きの推測も困難。
 ゆえに、相手が自分の意に反した言動をとると、咄嗟の理解ができにく
 く、即座に、ふさわしい対応もとりにくい。


 カナータイプではごっこ遊びや、おもちゃの本来の機能を生かした遊びが
 苦手で、ミニカーも走らせるのではなく並べたり、タイヤを回したりといっ
 た遊び方をすることが多い。
 アスペルガーでは、想像力の弱さは、論理的、抽象的な思考が苦手と
 いった形で見られる。

その他
● 反復的常同的動作
 なめたり、におったり、みつめたり、回したりの単純な反復的感覚的動作
 (幼 児・重度の成人)
 同一性の保持、反復的ルーチンへの固執 (手順・物・食べ物・ビデオ・音
 楽・CM)
 高機能、アスペルガー症候群では反復的ルーチンが特定の物への虜
 (限局した興味)になる事も。(時刻表・カレンダー・複雑な計算その他特
 定の物)

● 運動
 常同運動(ひらひら、ぴょんぴょん、くるくる等)
 指先は器用な子も不器用な子もいる。
 エコプラシア(反響動作)
 
● 感覚刺激反応
 音への奇異な反応と過敏さ。
 通常とは異なる視覚刺激への反応。細部よりは、全体的輪郭での識別。
 触覚、味覚、嗅覚や振動、苦痛、温度等、直接にからだがかかわる近位
 感覚に鋭い、又は鈍い。
 空腹や渇きへの通常と異なる反応。

● 特殊なスキル
 視空間スキルの高い能力(パズル、形のマッチング)。
 機械的記憶力の強さ。
 楽器の演奏、作曲、計算、カレンダー、読字、膨大な記憶、機械等の組
 み立て、パソコン操作、絵画。

● 不適切な行動、言動
 慣れない状況への困惑と恐れ。
 反復的ルーチンの妨げ。
 社会的なきまりの理解困難。
 感覚的入力への過敏。
 他人の思考や感情への理解の困難。

自閉症スペクトル障害のサブグループの各症候群間には重なり合う部分がかなりあるということだ。
医療の場でも、どのサブグループに当てはまるのかの診断に時間を費やすのではなく、その人が自閉症スペクトルであるかどうかを判断して、その上で能力のパターンをみきわめることが重要だとされる。
教育の場でも、当然、欲しいのはそちらの方の情報だ。

ところで、
言語・認知の遅れが伴わないアスペルガー症候群は、
「言語と認知さえ発達すれば自閉症スペクトル障害のすべての問題が解決するわけではない」
というその実態を解き明かすカギを持っているのでは? 
というのは私の直感に過ぎないのだが、その意味でも次回は「心の理論」について調べてみたいと思う。

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