over the moon

MOON・・・
その夜、牛が鳴きました。
牛はひとりぼっちで鳴いていました。
かつて、牛にはたくさんのなかまの牛がいました。
けれど、100回前の晩、牛はなかまとはぐれてしまいました。

100回の昼を、牛はひとりで歩き続けました。
何を探していたのかはわかりません。
はぐれたなかまに会いたかったのか、
全然ちがう新しい友達を見つけたかったのか、
本当は友達なんてどうでも良かったのか、
ただゆっくりと 眠れる場所が欲しかったのか・・・。

この晩の牛はとても疲れていました。
おいしい草ならたくさんありました。
おいしい水をわけてくれる小川もありました。
けれど小川は、牛に飲める分だけの水を与えると、
いつもよそよそしく流れていってしまいました。
キラキラと光る水に、はしゃいで足を踏み入れてみても、
川はただ、いそがしそうに光を運んでいってしまいました。

牛はやっぱりひとりでした。
星空の見える木陰で眠っても、そよ風が牛を起こしていきました。

森では、ふくろうの恋人たちが鳴いていました。
・・・どこか遠くへ行きたいな・・・
そう思って、牛は広いくさはらをゆっくりと見渡してみました。

くさはらに、出口はありませんでした。
どこまでもどこまでも、ひとりぼっちのくさはらは続いていました。
100日歩いても、牛はだれにも会えませんでした。

空を見上げてみました。
手の届きそうもない、チカチカと光る遠い星空に、
大きな月が、まんまるく笑っていました。
出口は、ここにしかありませんでした。
そう・・・。広いそうげんは、空にだけ向かってひらいていました。

MOON・・・
牛は、もう一度鳴きました。
月を越えて、空を飛びたい。
MOON・・・
月がにっこりと語りかけてきました。
 ♪信じて飛ぶのよ over the moon・・・

牛に、空が飛べるのでしょうか?
牛は、空を飛んだ事なんてありませんでした。
もちろん、ふくろうのように空を飛ぶ方法だって知りませんでした。
でも、信じて飛べば、きっと飛べる・・・
とべる とべる とべる とべる
とべる とべる とべる とべる
ただそう信じて、MOON・・・
牛は、今夜もひとりぼっちで鳴いているのです。

この作品はミュージカルRENTにヒントを得たYさんの創作童話です

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