LDや周辺児と思われる児童への指導
 わたしの教室では

指導に際してはその子の認知のスタイルをさぐるためにWISC、KーABC、ITPA、フロステイック等からテストバッテリーを組む。また、子どもの教室での様子を把握するためには担任の先生によるPRSテストの記入も大いに役立っている。
指導の内容としては、教科の直接的学習だけではなく プレイやソーシャルスキル的な取組みを組み合わせることが不可欠のように思う。

プレイ

 身体、感覚機能の育ち・情緒の安定

この教室に来ていた子の中にも、高学年になっても歩き方、走り方がギクシャクとしている子、ボデイイメージが弱く避難訓練で机の下にもぐる事ができにくい子、はさみや糊の使い方がぎこちない子等々、感覚の統合、中枢神経系の発達の未熟を想定させる子もいた。

乳幼児の身体機能の発達の様子を見ていると、這う、歩く、走る、跳ぶなどの身体全体を使う大きな運動の発達とコップやスプーンを口に運ぶ、指先で物を掴む、ボタンをかける、ひもを結び等の小さな運動の発達は相関あるいは連続的発達の関係にあるように思う。

身体全体を動かす運動、指先を使うゲームなど、保護者や担当者と一緒に遊び、楽しさを味わわせる事で苦手意識を和らげる一助にしたいと考えている。

●輪っかけんけん ボーリング パターゴルフ 大型積み木の平均台
  跳び箱ジャンプ マット転がり 紙風船 縄跳び トンネルくぐり 野球
 (投げる・とる・打つ)等、狭いプレイルームでもけっこう遊べる。

●木のビーズ通し、ブロック遊び、バランスゲーム、箸を使用しての小玉運
 びリレー、線結び迷路、紙細工など、個人指導の利点で友だちの目を気
 にすることなく苦手なことも結構楽しんでやっている。

ソーシャルスキル

対人関係の未熟さ、状況の認知や社会的な判断力の弱さ、衝動性のコントロールの不足、フラストレーション耐性の弱さなどを併せ持っている子どもがいた。
その児童についてはこんなエピソードがある。体育の時間マラソンをしていて、突然担任に

「せんせーい! みんなが ぼくばっかりおいかけてくるーー!!」

おにごっこでは、おいかけてくる児童をひっかいたり噛んだりすることもあった。

その児童については、他者の認識やその場の状況の理解、社会的なルールの理解を通して、自己を再認識させ、自らの行動パターンを学ばせていくのがことばの教室での目標の一つになると考えた。

●ロールプレイ風のなりきり遊び,会話遊び
 その行動が周りに及ぼす影響に気づかせ、どうすれば良いかについて考
 えさせた。又、友だちと遊んでいる時のトラブルの場面や大事なものがな
 くなった時の場面を想定して会話遊びもした。

●勝ち負けのはっきりしたゲーム
 ルールを知りそれを守ることの意味や、負けても我慢することを知らせ、
 ゲームの楽しさに気づかせるようにした。クラスでのマラソン、おにごっ
 こ時のエピソードから、おいかけっこゲームである双六遊びを選定した。

●思い込みの解消のための事実確認
 「ことばの教室に持ってきた筆箱が無くなった。取られた。」
 とパニック状態になりかけたことがあった。結局、教室に忘れて来ていた
 のだが、思い込みを解消するためには、その場その場でその勘違いに
 気づかせ確認させてやることが一番の手立てであろうと思われた。

●状況の認知のための学習
 3コマまんが、DLM系列カードなどを使い場面の理解や人物の気持ち、
 せりふを考える学習をした。
 コミュニケーション能力としては、相手の感情の読みとりの力も大きなウ
 エイトをしめる。まんがの他に表情のはっきりした絵本のせりふを考えさ
 せる等の指導もおもしろかった。

学習

2年生進級の時点でまだ「ひらがな」の読み書きが不十分で、理解言語、表出言語とのギャップが大きい子がいた。
ITPAでは自動水準、表象水準ともに聴覚音声回路の弱さが歴然としていた。自動水準の配列記憶能力の数の記憶の落ち込みと表象水準の連合能力であることばの類推の弱さは、その児童の実態を如実に表しているものと思われた。
すなわち、「ひとつひとつの文字はなんとか拾い読みができても、それをつなげて一つのことばとして認識することは困難」であるということ。
又、視覚運動回路を使う「絵の類推」はできるのに「ことばの類推」ができないということからも、類推思考そのものの弱さというのではなく、聴覚音声回路の弱さに起因した「ことばの類推」の弱さがあるのではと考えた。
しかしながら、表象水準の視覚運動回路での落ち込みも見られ、概念形成そのものにもなんらかの弱さがある事も推定、以下の指導内容を計画した。

●文字と音との結びつけの強化
   あお あか あめ (同じ音から始まることば集め)
   かいぞく かいだん かいぶつ (同上)
   あさ かさ くさ      (同上)
   詩の音読  例  しっぽ
            しっぽ
            ぞうのしっぽ
            しっぽ
            しっぽ
            かばのしっぽ
            しっぽ
            しっぽ
            ぶたのしっぽ
             以下 くび くち はな等で創作

●少ない音節から始めて、文字と音の意味を確認
   か  から  からす
   しろ  しろくま  しろうさぎ
   まど  まどガラス  まどガラスふき
   

●聞き書きの練習(文字数と音節数の確認の後、意味の確認)
   たくさんの  たぬきが  たいこを  たたいてる
   はがいたい  はぐきに  ばいきん  はいりこむ
 
●ことばの概念の確認(上位、下位概念等)
   絵カードを使い仲間集めをした後、文字化

ともすれば、LDということばが先行してしまいがちだ。
しかし、その子がどの様な認知や情報処理の特性を持っており、結果として学習や対人や社会性の面ではどのようなつまずきを持 っているのかを把握し、指導の場に活かしてい く事が、LDであるかどうかを考えるよりも重要であろうと思う。
とかく、我が儘で我慢ができず努力不足の子等々、誤解されやすい子ども達である。「そうではない」と言い切り、指導の内容や方法を保護者やクラスの担任に提案していく事も私たちのつとめだと思う。


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