自閉症

1998年(2006年一部修正)

学校教育では、長らく自閉症は、「情緒障害者」と規定されていたが、2006年3月31日の学校教育法施行規則の一部を改正する省令で、

障害の原因や指導法が異なることから、「情緒障害者」の分類を整理し、「自閉症等」の者を独立の号として規定することとする。

と改められた。

以前は、自閉症は自閉という心理的メカニズムが強い子でありこの心理的要因をなくせば自閉症は良くなると考えられて、療育の場でも盛んに遊戯療法などが取り入れられていた。

しかし、現在では、自閉症は知覚や認知の処理過程の障害であり、そのため精神機能の発達に遅れやかたよりが起こったと認識されるようになった。

知覚や認知の処理過程の障害とはたとえば 聞いたことばが脳の中で単なる雑音や騒音としてしか知覚成立しなかったり、あるいは、知覚は成立しても、その意味を知る機能である認知の処理がうまくいかなかったりといったことである。

医療の場で自閉症は高次の中枢神経システムの障害であることが明らかにされてきているわけで、わたしたち教育の場でも、インプットの段階で情報に手を加える等、自閉症の児童の知覚や認知の特性を考慮した指導のありかたを検討、実施していく事が必要である。

●知覚(味覚・臭覚・痛覚・触覚・筋肉運動感覚・平衡感覚・視覚・聴覚等)の
  障害


外界から感覚器を通して送られる刺激が脳で抑制されるため、正しく受け止めることができない状態にあるといわれる。 そのため、他からの働きかけに注意を向けることが困難で母子関係を初めとする、対人関係もできにくい。

特定の感覚を忌避したり、特定の感覚に没頭したり、聴覚入力等 知覚の成立の困難さもある。

●認知(見聞きした事から、出来事の意味を知る機能)の障害

外界から感覚器を通して送られてきた刺激を統合して、それを意味あるものとして、認知することの困難。
聴覚からの入力、すなわち聞こえる音を認知し理解し予測をたてることが困難で、音を聞いても、それがどんな意味を持つのか次に何がおこるかを、予測することができにくい。


ことばの習得や使用に関して言えば、聴覚からの入力のみでは意味的な理解に基づく習得や使用に困難があっても、視覚的情報との結びつけや暗記力の活用によるパターンとしての入力等により、それが容易になるといったことはあるようである。
TEACCH、行動療法等システム化した指導の場では勿論のこと、視覚シンボルや絵カード等の使用は障害児学級、養護学校の中でも主流になってきた。
   


形の認知が意味の認知に優先
遊び等を見ていてもごっこ遊び(象徴遊び)は成立しにくい。「ミニカー並べ」に代表されるように、用途ではなく形、色の分類、順序等、パターン認知を特徴とする遊びが得意分野のようである。
 
ものごとの流れや筋道の理解が困難
ものごとの全体を見て理解するのではなく耳にしたり目にしたりしたことの一部に反応するために、特定のことにこだわったり怒りを爆発させたりすると言う結果を招くこともある。


指向性注意の障害
日常活動の場面場面でも多数派が大切なところだと認識している事に注意を向けていくということがうまくできない 。すなわち全体に気を配りながら、注意を適切な方向に向けていくことが困難で、場に応じた行動ができにくいという結果をまねきがちである。


知的操作はできるが、知能を活用することは困難
漢字、計算等は一定できても、量や単位の概念 抽象的概念論理的思考など概念、思考には弱さが見られるということも少なくない。


特別な才能
時折、絵や音楽や文字や数の操作等に優れた才能を持つ人がいることが報告される。映画レインマンやマーキュリーライジングの主人公等がそうだ。又、全体的知的発達水準に比べると特定の能力だけが突出しているように感じられ子もいる。漢字・計算・絵画・ジグソーパズル等に才能を見せる子たちである。


良く聞くハイパーレキシア(hyperlexia)は、
「単語の理解は、文章の理解よりも優れており、単語や文字に幼少時から強い興味を示す。5歳までには単語理解能力が優れていることが判明し、文章の理解は逆に劣る。言語発達は遅延し、特に聴覚からの情報の理解が苦手で、問題点を推論したりまとめたりすることができない。」
という状態像である。
LDなどでは以前から読書障害(dyslexia)のある子の例が報告されていた。これは言語システムの中の構成要素である音韻(音声)機能の障害だというのが通説になっている。書かれた単語も会話中の単語も音節分解ができず、書かれた単語の文字と会話中の単語の音韻を対応させることが難しい状態である。神経生物学的には側頭葉-頭頂葉-後頭葉領域の障害が示唆されているようだ。
hyperlexiaとdyslexiaが単純に読書(字)力の両極をなすものと考えるのは早計なのかもしれないが、同じ中枢神経系の機能レベルの問題ならば、優れた力を発揮する場合もあれば、その逆もありうるのではないかと思う。
さらに、他の能力に比べて漢字やアルファベットなどを覚える能力が高いのならば、形の認知が優先するという認知の障害(スタイル)の結果であるという考え方はできないのか、疑問に思う所でもある。    
    
教えて下さる方がいたらメールを下さい。お願いします。

自閉症における短所と代償的長所 (Edwards.D.R.&Bristol.M.M.1991)
短所 代償的長所
コミュニケーションの授受 視空間スキル
短期聴覚記憶 長期記憶、特に空間的記憶
硬さ(柔軟性の欠如) 構造化やルーティン化による上達
対人的孤立 自立的作業スキルを習得できる可能性
固執的行動と限局的な興味 根気強さ、習得した課題に取り組み続ける力
物や話題への固執 特別な物や話題への高い関心。教育的、職業
的、専門的スキルを発達させるために使える。

●指導の内容

自閉症に適した発達の場を提供すること。 言葉のスキルや集団行動のスキルを身につけさせていくこと 。情報に手を加え入りやすい形にして入れていくことが自閉症児の指導の基本。

具体的には、聴覚入力でことばの獲得ができなかったのであれば、成熟してきた視覚を活用して獲得させていく工夫をする。
 
例えば
文字の学習等も、それ自体を目的にするのではなく、弱い聴覚からの入力を補い言葉のスキル を身につける手段として位置づけるといったことである。

語句や文章を意味的にとらえて操作することが困難で暗記力で操作する という傾向がみられるなら、絵カード等視覚情報の活用で意味の情報入力を補う事は大きな意味を持つであろうと考えられる。
 
認知のスタイルを考慮するなら指導の方法としては、
内容を提示、理解させ、ともに喜ぶという保育指導の形式が、自閉の子には効果的であろうというのが一般的な理解になってきている。
保育指導(保育的アプローチ)が遊戯療法と大きくちがうのは課題を設定し実行させ評価するそのプロセスの主導権は保育者がもつということである。
遊戯療法の子どもの心によりそうその基本的な精神は尊重しながらも、一方で、スキルはスキルとして学ばせていく必要はあるだろうと思う。


知覚や認知のスタイルに合う指導、すなわち、視覚化、構造化、話し言葉に頼り切らない伝達手段の利用を基本に、家庭 学校社会での一貫した指導が必要なのではというのが、私の認識で・・・・す。
 
 
 お願い
このページの文については、今までに参加した研究会、学習会、ウェブ上、中根晃先生の著書等で学んだことを元に、私なりのまとめや現在の思いを綴っています。勉強のための作文です。思い違いなどご指摘頂けると有り難いです。    

●診断

世界的に影響力の大きい二つの診断分類の体系がある。
ICDー10(WHOの国際疾病分類)とDSMーO(アメリカ精神医学会の診断基準)である。
診断基準は、行動的に定義された基準であり、明確な脳障害があろうとなかろうと、自閉症と診断できるという事である


定義でいえば
1、以下の2〜4に示す3領域の障害あるいは異常行動に該当するのが、すべて3歳以前から存在する。     


2、全体的な精神発達に相応しない社会的相互関係の発達の質的異常

  ・たとえば、他人への関心が乏しい。
  ・視線が合わない。
  ・他人への共感性が欠如する。
  ・関わられることを嫌がる。
  ・模倣あるいは社会性のある遊びの欠如あるいは異常


3、言語を含むコミュニケーション能力の発達の質的異常  
  
  ・例えば、喃語・ジェスチャー・指さしの発達の遅れ
  ・あるいは話し言葉の発達の障害、反響言語の存在する時期が長
   いこと。


4、反復的または常同的な行動

  ・たとえば、横目を使ってみる、手をひらひらさせる、身体をゆ
   する、ぐるぐるまわる。
  ・あるいは執着的な行動、興味および活動のパターン(たとえば、
   物のにおいをかぐ、感触を楽しむ、回転運動を好む、特定の物
   をもつことに執着する、習慣などの些細な変化に対する抵抗、
   発展性の乏しい遊びの反復)  

TEACCHその1 情緒障害と自閉性障害
TEACCHその2 自閉症スペクトル障害
TEACCHその3 心の理論

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