ダウン症児の言語指導

 ダウン症の子を担任をしている時は、普通学級ではみんなの輪の中で活動出来ることを、障級では知的発達や生活面、学習面の力をつけることを目標にした。ことばの教室では、言語の発達にマトを絞った指導を考えていく必要がある。ダウン症児の言語発達の特質は何なのか、そして何よりも、一人ひとりの性格や今の知的発達や言語の発達の様子はどうなのか。ひとつひとつ確認しながらの指導が必要である。

一般的な特質


(1)言語発達全般の遅れ
  ●理解面
   初期の言語(まんま・ねんね等)は半年
   名詞は1年以上             
   動詞、大小、色名、2語文等は2〜3年
         程度遅れることが多いという報告がある。

  ●表出面
   有意味語の発語は1年
   2語文の表出は2年4ヶ月〜3年4ヶ月
         程度遅れることが多いという。

 
すなわち、日常の生活に密着した初期の言語に比して、その後の抽象思考に必要となってくるであろう非日常的な言語の獲得が遅れることが多いということなのだろう。

(2)発音の不明瞭
  単音の発音に比し単語レベルでの発音が不明瞭これについては、語音弁別や音節分解等の発達の遅れが影響しているという説がある。
  又、微細運動が苦手な子が多く口腔周辺、構音機能の成熟の遅れも発音の 不明瞭さの原因でもあるだろうとのことである。
  さらには、同時処理に比し継次処理の能力が弱い傾向にあるとも言い、特に 聴覚的継次処理の弱さは語彙の獲得そのものにも影響を及ぼしているのではないかと考えられる。

(3)視覚的刺激の認知、受容が得意
  動作模倣、表現が上手である。ということは、視覚シンボルやマカトン等のサ イン言語が有効であるという事であろうか。
  

指導の内容

(1)言語の理解
   なまえことばの獲得(命名)が遅れるということは、象徴機能の獲得
が遅れということであろうか。すなわち、事物とことばの対応の理解に
困難があるという事で、その段階の子には、マッチングや仲間集め等
の視覚認知の力を活用しての遊びを数多く取り入れてやることが大事
なのではないだろうか。

(2)言語の表出
   得意な動作模倣の力を活用させたい。親や指導者も常に動作と言語
を同時に発することで、コミュニケーションをとりながら、自然な形で音
声言語の発達が促せるのではないかと考える。

(3)発音の改善
  ●構音機能の発達の促進
    口腔機能の未熟に関しては「かむ」「のみこむ」「すう」等 食事の
指導の時間を大切にするとともに、スルメなど舌、顎、口唇の機能を
高めるようなおやつの活用 (・・?  も有効であろう。
   又、笛等を使った呼気のコントロールの仕方、ウエハース等のおか
しを使った口唇や舌の動かし方等の練習も、子どもの状態によって
は必要になってくるかもしれない。

  ●構音指導
    語音弁別や音節分解等の発達の遅れがあるのではという説が
ある。仮にそうであれば、個々の音の弁別、音節分解、音の抽出等
の学習を得意な絵や文字等を活用してのゲーム的な組立で指導す
るという事も意味があるであろう。
   構音そのものの練習については、構音器官の成熟や知的発達を
待ち、一般的な指導に準じて開始するということで良いと思う。
   
   

B君への指導

B君は検査の結果では聴覚的短期記銘力はやや弱かった。しかし、視覚記銘は強く視覚的なものであれば継次処理も得意な分野であるようだ。中でも、動作模倣は最も得意とするところである。咄嗟にことばが出て来ない時はおもむろに立ち上がって巧みなボディランゲージでその様子を詳細に表現してくれるひょうきん者のB君であった。

しかし、結構、頑固な一面も。 (;^_^A
机上での学習を避けようとするB君を如何に机上学習コースに導くかが指導当初の一番の課題であった。3音節程度の発音を明瞭にすることを目的としたゲームから始め、次第に、助詞を意識した短文作りの学習へと進むことができるようになっていった。因みに助詞の省略や使用の間違い、発音の不明瞭さはあるが、語彙そのものは多く、しゃれや冗談も大好き、実に豊かで楽しい会話のできるB君なのであった。

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