establish 2002/8/29-
LatteArtChronicle
foam Milk, Day after Day...


INDeX
CafescapeSputnik
No.3

西谷恭兵さん 北青山バール・ソルレバンテ


表参道駅近くの紀伊国屋跡地の真裏に、バール・ソルレバンテはある。カフェスケープスプートニクのために話を聞いた西谷恭兵さんは、ここに籍を置くバリスタのひとりだ。
ある程度バリスタ業界のことを知っている人ならば、僕なんかよりもよほど彼のことを解っているかもしれない。私的に「トップバリスタ」という括りかたはあまり好きではないのだけれど、まちがいなく彼はその中のひとりということになる。


「コーヒーの話をするのは、ひさしぶりですね。」

これまでも雑誌等への露出を経験されていますよね。

「選手権で2位を取ったときは、結構露出させてもらいました。」

西谷さんは2004年のジャパンバリスタチャンピオンシップ(以下JBC)初挑戦で2位入賞を果たしている。この時のチャンピオンは、バール・デル・ソーレ(六本木)の横山千尋さん、3位にはカフェロッソ(島根)の門脇洋之さんが入っている。

「雑誌への露出、CM撮影の協力もさせてもらいましたね。テレビのクイズコーナーのお手伝いなんていうのもありました。
LoSpazioあがってからは、個人で技術コンサルティング的なこともやりました。」

チャンピオンシップ入賞は、LoSpazioに在籍していた時でしたよね。LoSpazioのバリスタは、皆チャンピオンシップを目標に据えて技術を磨いていくものなんですか?

「スタッフもお客さんも”野崎目当て”でやってくるんで、「絶対、バリスタ。」みたいな。もちろん大会に向けてという意識はありますね。
でも今年はそうでもないみたいです。トラディショナルなイタリアンスタイルなので、ワールドバリスタチャンピオンシップ(各国のチャンピオンだけが出場権を得る、世界大会。以下WBC)自体がシアトルスタイルからの発足という方向性の違いもあるし。」

2006ジャパンバリスタチャンピオンシップ準決勝(トップ10人のバリスタによる)における野崎さんの試技は、個性を感じる印象的な試技でした。それだけに決勝に進出できなかったことは、あくまでひとりの観客として意外に思えたんですが。

「言葉は悪いですが、チャンピオンシップは得点稼ぎなんです。0−6点の加点事項の合計で、高得点を得ることが必要になってくる。
抽出も街々のお客様に支持されるものと、チャンピオンシップで支持されるものは多少違うので、普段お店で出しているものではなく、大会で支持されるエスプレッソというものを落とします。
そのあたりに、葛藤みたいなものはあると思います。」

ショットをチャンピオンシップに合わせて変えてゆくというのは、もちろん味の面でということですよね。チャンピオンシップで支持されるショットとは、一体どんなショットが・・・、

「よく言われているのは、アラビカ種100%が支持されている。ということですね。」

現在流通するコーヒーのほとんどは、アラビカ種とロブスタ種に分けられる。
あくまで一般的な既成概念になるが、アラビカ種はクリーンで良質であり、ロブスタ種は生産が容易で質が低いといわれるが、ブレンドにパンチや厚さを加えるために少量をに加える手法も有効とされている。

端的に言って味覚的にクリーンなカップが好まれる?

「そうですね。ロブスタ種が一概に悪いとは言え無いんですけど、日本の市場はまだ高品質のロブスタ種を入手するルートを持っていないので。
最終的には賛否両論なんですけど、WBCではロブスタの割合の少ない・・・というかアラビカ種100%が好まれています。僕はどっちでもいいんですけどね。(笑)」

いくら個性があって魅力的に映っても、それを審査員が加点要素として認られない部分であれば、直接勝ちに繋がっていかないという事になりますね。すこし実際のバリスタとして求められる能力とは、離れてしまう印象もありますが。

「最終的な印象点として、「そのバリスタのお客様になりたいかどうか?」という評価がされます。」

チャンピオンシップは審査員にとっても、かなり特殊な状況下に置かれますよね。個人的な趣向は除いて審査しなくてはならないし。

「世界的に見れば、審査側の技術レベルもまだまだ低いので。バリスタも育っていかなくちゃならないし、審査員も切磋琢磨・レベルアップしていって、ゆくゆくはJBC優勝者からワールドチャンピオンシップ優勝者を輩出していくだけの、組織とシステムを作り出さないといけない。」

ビックサイトで2006JBCを見たかぎりでは、始まったばかり・創成期という印象でした。
ワールドチャンピオンシップという括りで見たときに、日本全体としてのレベル、チーム体制・組織の成熟ということが重要になってくるわけですね。
西谷さんは初出場2位の2004年大会から2大会ぶりに、次回チャンピオンシップに出場すると聞いています。大げさな質問になってしまうけれど、今の時期にJBCに出る意義っていうのは何でしょう?

「あいつには勝ちたいとか、誰かを意識して大会に出ようとは思っていないんです。
前回は初めて出場して準優勝してしまったので、それからの二年間どれだ成果としてカタチしにて出せるかっていったら、もう一位しかないじゃないですか。だから。絶対にタイトルは取りたいと思っているし、結果は予選落ちか一位かしか考えられない。」

「オール・オア・ナッシング」ですね。でも、そこで「予選落ち」が出てくるのか、ちょっと謎ですが。

「これは自惚れていうわけではなくて、バリスタとしての自分のスタイルを大会で出すことができれば、予選は通過することはできる。もしミスがあれば、予選落ち。」

どうしても、競技会としての怖さはある。

「だから予選落ちか、優勝か。どっちかです、話おわっちゃうけど。
優勝するためにやるべきこと、勉強するべきことは、前々から構築しているし。もちろん、創作コーヒー(シグネチャービバレジ)も常にイメージができてるし。」

WBC・JBCでは15分の試技時間が与えられ、バリスタはプレゼンテーションを交えながら、エスプレッソ・カプチーノ・シグネチャービバレジを各4杯提供することが求められる。
エスプレッソ&カプチーノは完全にトラディショナルであることが要求され、シグネチャービバレジには、素材・製法ともに完全な自由が与えられている。シグネチャービバレジでは、ひらめきとそれをカップに昇華させる能力を問われる。

シグネチャービバレジは、創造の余地がある分、面白そうな分野にみえますが。
最近では凝りに凝った方向に偏ったシグネチャービバレジも出てきて、バリスタとしての日常の仕事にフィードバックが可能なのかという疑問もありますが。

「世界大会までいくと、アレンジコーヒーというより、なにか新しい物を作り出す息でやってるんで。
エルブジ(編注:世界的に有名なスペインのレストラン。)じゃないけど、料理界でも窒素ガスつかったりいろいろやってますけど、あくまでも競技会用として突き詰めてゆく部分ですね。」

お話を聞いていると、西谷さんにとって次回のJBCに出るのは、自分への挑戦という意味合いが大きいように感じます。

「純粋に一番になりたいというか・・・。
ビジネスを展開したいとか、箔をつけたいとか、そういうのではなく。
でないほうがいいとか、実績を棒にふるだとか、色々言う人もいる。チャンピオンシップそのものに否定的な人も居る。もちろんWBC・JBCに疑問におもう所も無いわけではないけど、自分を示す方法はとして、チャンピオンシップはひとつしかない。自分は闘争心もある、あくまで競うことは好きだし。」

やるからには、一番を。

「もちろん。」

バリスタひとりひとりがチャンピオンシップを意識することで、業界全体のレベルアップにつながっているのも無視できない事実だと思います。
自分以外のバリスタ達の技を目の当たりにして、情報交換を行い、自分のポジションというものを知ることができる。
この点だけでもある程度は、バリスタチャンピオンシップに実際的な存在意義を見出すことができるかもしれません。

「やっぱり目標としてチャンピオンシップに向けてのプロセス構築だったり、具体化していく努力というのは、ゆくゆく自分に帰ってくるものだとおもうし。
俺は絶対出るべきだと思う、みんな。負けたら負けたで、それでいいと思うし。」

過去にスマートとは言い切れない運営や、進行上のアクシデントがあったことなどに対して、少なからず否定的な反応もありますね。完全にクリーンでフェアであることは理想ですが、コンペティションである限りはそれを100%求めるのは難しくなってきますが。

「NHK受信料や年金を払ってもないのに、そこの不正にいちいち文句言ってしまうみたいなもんで、まず出るだけ出てから、言いたい事は言えばいい。でないと意味がないと思う。出場もしないのにWBC・JBCを批判するのは嫌だから。
俺は出るし、勝ったら勝ったで、言わしてもらうことは言わしてもらう。もちろん、無意味に敵を作りたくはないですけど。」


ラマゾコ(LaMarzocco、「マルゾッコ」も同じメーカーを指す。)から新しく出ているGB5が話題になっていますね。

GB5について。抽出とスチームのボイラーを分けたマルチボイラーのエスプレッソマシン・FB70をベースに改良された次世代エスプレッソマシン。積極的なコンピューター制御によって、格段に安定した抽出温度を実現、構造的モディファイも各所に施されている。
FB70/3グループがこれまでのWBC・JBC競技指定マシンだが、次回からFB80の競技用ソリッド仕様に更新される。GB5はこれと全く同じ基本スペックを持っている。

GB5はかなり注目を浴びているようですが、現時点の選択肢としては最高のマシーンなんですか?

「触ったことのないエスプレッソマシンもあるし、それはいえないけれど俺はチンバリが好き。やっぱり最初に触ったマシンだから。
恋の話じゃないけど、新しいものって良く見えるから、それを知ろうとすごく努力するんだけど戻ると思う、僕はこいつ(チンバリ・ドサトロンプレミアムM39)を使い続けると思う。」

エスプレッソマシンやグラインダーの違いが話題になることも多いですが、実際その影響というのは大きいものですか。

「相当でかい!・・・特にグラインダーは。
パラレルタイプとコニカルタイプ、どっちがいいって言うのは無いんですけど。違いっていうのは確かにあります。」

エスプレッソマシンの性能が上がって、仕事が楽になったりというのは・・・。

「カプチーノのミルクを自動で75℃に泡立てたりできるようにはなったけど、これはバリスタには必要がないから。自動洗浄ボタンとか、新しく付いた機能はいらないものも多い。抽出湯温はすーごい大事なんですけど、肝心な湯温設定ができなかったり。」

実際に抽出温度が3℃違うと、ショットのキャラクターはまるで変わってきますよね。

「マルゾッコは、0.5℃で違うって言うんですよ。ホントかよっておもうけど。焙煎したての豆での話しですけどね。
ただ何よりも気をつけることは、クリーンにする事、ちゃんと掃除する事が大事。進化してどんなに良くなろうと、掃除が行き届いてないと絶対にいいショットは落とせない。」

性能が問われる以前の問題、という事になっちゃいますもんね。
ぶっちゃけた話になっちゃいますが、マシンは高度な制御系をもった新しい世代に進化してきていますが、提供されるカップが劇的に良くなっているとか、そういうことはあまり感じられない気がします。

「確かにマシンの性能は、間違いなく良くなって来てるし、より緻密になってきている。
ただそれを使いこなせるだけバリスタがいないだけなんですよ。だから結局マシンが代替わりして、良くなったと言われても、結局味は変わらないじゃないか。と思われるのも事実なんですよ。まだバリスタには進化したマシンを使いこなすだけの技量がないんですよ。」

「こないだマルゾッコのGB5を使ってきましたけど、凄ぇー繊細ですよ、超リスキー。でもすごく美味しく出る。マシンは生まれ変わるたびに良くはなってますよ、間違いなく。」

マシン側のポテンシャルとしては、よりクオリティの高いショットが落とせるようになってきている。

「もちろん、グラインダーにしてもそうです。」


話を聞かせてもらっている間も、常連さんとつっこんだトークをでかい声でしていたかと思えば、恋の選択の相談に乗ったりと、色々な個性を見ることができる。
気さくに話かけてくる人には西谷恭兵としてフランクに接し、トップバリスタとして接してくる人にはそれとして格好もつける。それが西谷さんの流儀だという。

入り口の小さなテラスでおしゃべりを楽しむマダムの足元では、ミニチュアダックスがあくびをしている。正面に配置された蹄鉄型にショーケースには、訪れるたびに新しいドルチェが加わっている。前回はうっかりイチジクとマスカルポーネのタルトと目が合って、その誘惑に負けてしまった。
カウンターでエスプレッソを飲み干すなり、バリスタと一言二言交わして軽快に去ってゆく男性。バリスタが仕切るバンコの奥には、レストランスペースがある。きっちりと予約を入れてグループでディナーを楽しんでゆく人たちなど、訪れる人たちの顔もさまざま。

普段カフェを飲むときに、よく飲むメニューはありますか。

「なんだろう?コーヒーの中で一番好きなのは、サイフォンとかネルドリップのストレートだし。エスプレッソ自体はあんまり好きじゃないし、その時の雰囲気かな。
あ、でも業者が作ったアイスコーヒー美味い!いや、マジでマジで。」

(笑)ッ、自分で作れよ。。

「バリスタの発言として不適切?」

いやー、全然!(笑)じぇんじぇん大丈夫ですよー。

「出来合いのリキッド!間違い無いです。」

っ・・・、氷はガッツリ入れちゃう派です?

「もちろん。冷たいものは冷たく、温かいものは温かく。
絡めて話しますけど、世間のカプチーノの温度って言うのがあんまり好きじゃないんです。やっぱり温かいドリンクなので、ちょっと汗ばむぐらいが好きですね。」

「ミルクの甘みを生かして、ぬるめに仕上げる。」というスタイルは、結構浸透してきていますよね。カフェラテも同じように、好んで熱めに仕上げますか。

「結構熱くしますね、牛乳の甘み成分を壊してしまう。
カフェラテのオーダーがあっても、カフェラテとカプチーノとの境目はわかっていない事も多いので、一応説明して飲みたいほうを頼んでもらう。」

具体的にカフェラテとカプチーノの境目とは。

「泡があるか無いか、それだけです。
話としては、バールにはカフェラテは無い。マンマ(母親)がつくるものがカフェラテ。「カプチーノ・センツァ・スキューマ(泡の無いカプチーノ)」というオーダーでカフェラテとは言わない。」

ぢゃあ、実際に西谷さんに”カフェラテ”でオーダーすると、ミルクフォームはかなり少ないわけですね。

「とくに僕の場合は、全然少ないです。
しかも普通クレマを残しながらミルクを注ぐことが多いけれど、僕はクレマを壊して混ぜちゃいます。」


ショットを落とす上で、イメージみたいなものがあったらおしえてください。

「これは僕の中でのモットー・ポリシーだけれど。自分から生まれるショットの位置づけとしては、クレームの無い抽出を落とす。」

「自分の落としたエスプレッソやカプチーノで、人々に感動を与えたいとか何かのきっかけをつくりたいとか、そういうのはあまりない。とにかくクレームの無い抽出を落とすこと。」

カップを口にしている側からすれば、この答えはすこし意外だった。

「ただし、お客様が何かを求めてきたとき、「こんなエスプレッソを出してくれ!」と求められたときには、絶対に120%それに応える。そのための引き出しは常に用意してある。ただ常にそれを出し続けようとは思わない。」

確かに相手の求めているカップというものを理解しなければ、そのお客に対して最高のカップを提供することは、ほとんど不可能ですよね。

「僕にとっての究極って言うのは、「クレームの無い商品を作る」っていう自分にっての最低のライン、それと最高のラインの距離、そのふたつがほとんど一線上にあるくらい。
最低のラインの商品をつくる、最高のラインの商品をつくるっていうのは簡単なんですよ。その差ができるだけ少ないということが、自分にとっての究極なんで。
それはキャリアを重ねていかないとできないことだし、あせることなく、いま自分にできることをやっていくだけです。
バリスタがお客さんに合わせたエスプレッソを落とす。よく言われることだけど、でも難しい!」

「僕は世界一美味しいコーヒーを入れることよりも、世界一美しくコーヒーを入れたいと思ってる。」

おぉぉ・・・、あがってきた!!ちょっとしたショックでした。
今回のスプートニクは抽出温度高めです!(笑)

「マジで。結局嗜好品だし、好みもあるし。もちろんこっちは探るよ。ほりさげるけど、自分に何ができる事はなにかって言ったら、おいしいコーヒーを提供する以前に、美しくコーヒーを入れること。っていうのが僕の考え方かな。」
「スピリットみたいなものだけど。美しくコーヒーを入れることで、美味しくそれをつたえることができる、感じてもらうことができる。たとえば同じコーヒーを二人の人が提供するときに、差をつけられる部分っていうのはそこだと思う。」

カップを口にする前までの勝負ですよね。

「ドアを開けて、言葉を交わすところから始まるわけです。カップの中はもちろん大切なんだけれど、そこに至るまでの動作。
たとえば大理石と陶器のぶつかる音、陶器とシルバーがあたる音。すごく静かにやる人もいますけど、僕はバールということを意識して、こういう音を大事にしてる。」

カップのクオリティはもちろんとても大切ですが、口にしたときに非の打ち所の無いクオリティのカップでも、なぜか記憶に残らないカフェってあるんですよね。
普段のなんでもない瞬間に、あのカフェが飲みたい。って思わせるカップが、僕にとってはベストのカップなんです。そういう意識がすごくあって。

「よく言われるのが、味覚の記憶っていうのはすごく曖昧で、思い出そうとしても思い出せない。でもシュチュエーションの記憶っていうのは思い出しやすい。
それは味覚の記憶の差と、他の感覚の記憶の差だと思うんですけど。」

そういえば、西谷さんがバリスタになるきっかけみたいなものはあったんですか?

「よく聞かれる質問ですけど、ひょんなこと・・・じゃあないのかな。
FMIのバリスタセミナーを受けて、講師の山口さん(現・紀尾井町オーバカナルのバリスタ)に惚れて。というのも一連の抽出動作がカッコ良くて、飲んだ時の味も・・・さっきの話じゃないけどもう覚えてないよ。でもこういう風に作られたっつったら、旨く感じるしかないぢゃない。
「うっめー!これなにー?」みたいな。カプチーノも超可愛くかくしさ。俺が言いたいのはそういうことなんですよ、どれだけ味覚以外の部分に訴えかけられるかっていう。
それにやられて、バリスタやりたいなって。ホントそれですよ。」

ハマっちゃったわけですね。(↑)

「「もっともっとやりたい。」探してひっかかったのが、野崎さんのLoSpazio店舗での第1回セミナー、その第1受講者なんです。で、翌月の第2回セミナーでアシスタントやってたんですよ。それぐらいもう、次の日には「働かせてください!」って。」

ひょんなこと、どころか。ドラスティックです、出会っちゃった。

西谷さんは2006年11月中旬から、銀座オーバカナルで腕を振るうことになった。決断をさせたのものは、フレンチスタイルのカフェへの興味と、銀座という独特の場への挑戦。そして、いうまでもなく「人」の存在だったという。
(バール・ソルレバンテで西谷さんのカップに出会えるのは、11月12日までの予定。)

ポルタフィルターをヘッドに納め、ハンドルを小突いて増し締めを加える。ポンプが稼動してバルブの開く音、そしてエスプレッソが滴りはじめる。
確かに一連の動きと音の流れは、カップへのイントロダクションとして期待をたかめてくれる。
人の感覚に訴えかけてくるという点では、どこかアーティスティックでさえある。

「うまく伝わるか解らないけど、原価100円のものは100円で売りたいんです。ただし、お客様からいただく金額そうぢゃないわけで、そのお金はどこで生まれるかっていうと、自分が提供する空気じゃないけど、しゃべりだったり、そこで頂きたい。
そこが究極だと思う。どれだけ自分を評価してもらうか、そのためにやっているわけじゃないけれど、やるからには。難しいし、それはわざわざ言うことじゃないけど。言っちゃったけど。(笑)」

ほんの少し前まで世間には、バリスタとは旨いコーヒーを入れる人。という微妙な誤解があった。そしてそれは今も少なからず残っている。
しかし西谷さんが提供しているのものは、コーヒーのためのプロセスによって生み出される、新鮮でエネルギーに満ちた空気みたいなものだ。

「職人って呼ばれたく無いんです、職人気質という言葉もあまりすきではないし。
アーチストではないんだけど、見られたいのも事実。見せたいのも事実。」

青山通りへ出るあたりで、ふと世界のもつ色彩が鮮やかさが増していることに気づく。もしかしてその小さな変化は、ソルレバンテのカウンターを境にやってきているのかもしれない。

西谷さんの名刺には名前と連絡先の他に、たったひとつの言葉しか刻まれていない。


バール・ソルレバンテ
東京都港区北青山3−10−14
定休日:水曜日(不定休)
OPEN 11:00
CLOSE WEEKDAY23:00/HOLIDAY22:00
Tel.03-5464-1155


2006.10.16.
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