
CORMYR
The Land of the Purple Dragon
■コアミアとは
フォーゴットン・レルムに最強と誉れ高いコアミア王国は、同時に人間という種族が手にした中で最も完成された王国であると謡われています。コアミア王国はシー・オブ・フォーレンスターズの西端、ドラゴン湖の北部に位置し、そこよりさらに北のストームホーン山脈を越え、アンオーロック砂漠までに及ぼうかという広大な版図を有しています。
コアミアは別称「森の王国」とも呼ばれており、かつてその国土となる土地の大部分は針葉樹の大森林に覆われていました。古き者に「エルフの森」と呼ばれるその森林も、長年の苦難に満ちた開拓の果てにいくつかの大きな森と、それをつなぐ緑の農場で占められるようになりました。それと共に、森に潜んでいた恐るべき怪物なども大半が駆逐され、コアミアは都市ならずその国土の大部分が安全な「真の領土」を持つ王国として樹立されています。これはレルム全土でもほとんど見られないほどに珍しいことであり、結果としてコアミア王国をして人間族の手による「フォーゴットン・レルム随一の王国」であると評されることにつなかっているのです。
コアミアの経済は実に裕福です。開拓を経たその国土は東西南北共に豊沃なる農地に満たされ、周辺の都市や諸国に上質の麦や大豆を輸出しています。そして何よりもコアミア産の木材は、レルムのハートランド屈指の名産品として重宝され、この森の王国の重要な財政源となっているのです。
また、コアミアは隊商貿易にも力を注いでいます。レイク・オブ・ドラゴンを介した内海沿岸諸国との海上取り引きを始め、東の大国センビア、北東のデイルランドとの貿易などが盛んに行なわれています。その通商領域は最大で北東の月海を越えた地域まで、西方のバルダーズゲートを含めた剣の海岸の諸都市にすら及んでいるほどなのです。
コアミアは湿潤な土地でもあります。雨の恵みは常にこの国の大地を潤し、枯れることなくその緑を生かし続けてくれています。ですが、レルムのハートランドの例に漏れることなく、コアミアは長く厳しい冬を迎える土地柄でもあります。夏の雨と同じように、冬の雪はコアミア全土をたびたび覆い尽くし、その冬季の前には怪物たちすらその動きを留めるほどです。そして周囲を山脈に囲まれている土地柄か、コアミアのこうした季節の移り変りはとても激しいものとなっています。冬は一面の雪に覆われ、春は穏やかな暖かさと共に新芽が生まれ、夏は肌を露出するほどの暑さが訪れ、秋となれば心地よい風が実りを伝える。こうしたコアミア独特の明確な季節の変容については、昔から賢者たちの論議の種となってきました。ある者はこれは千年の歴史を持つ紫の竜の王国に対する神々の恩恵なのだと言い、またある者は荒らぶる星の海を南に、大砂漠アンオーロックを北にする特異点に位置するゆえなのだと言います。ですがコアミア王の助言者ヴァンジャーダーストはそれについては明確な答えを出しておらず、今だにこの論争の決着はついていません。
そしてまた、コアミアを代表する名物の一つに霧があります。季節に変わりなく時としてコアミアを覆い、そして流れゆく濃い霧は、一説によると北のハイ・ムーアから流れてきた魔法の霧であると言われています。
★コアミアの政情
コアミアは君主制国家です。現在の国王はアゾーン四世であり、彼は豪放かつ油断のない性格で知られる強練な支配者です。アゾーン王は武闘王と呼ばれ勇名を馳せたライガード二世の息子として生まれ、幼い頃より卓越した力と知恵、そして父をしのぐほどのカリスマ性を有していたと言われています。実際、彼がコアミアの王として即位したのはデイル暦1336年のことであり、その当時アゾーン王子はまだ、二十代であったとさえ噂されています。
また、アゾーン王には一つの有名な逸話があります。それは、彼が頻繁にお忍びで市街へと現われ、人々に混じって生活しているという話です。しかし国王たるアゾーンの肖像画はそれこそコアミアのどこにでもあり、子供でも王の顔を認知できると言われているのですが、そんな庶民には決してわからぬような変装をして王は城から抜け出すそうです。噂によるとそれは魔法の仕業ということですが、王の知恵袋であり後見人でもある魔法使いヴァンジャーダーストは自らの君主のそのような所業を烈火のごとく非難すると言われており、そうなるとこの王のお忍びの噂もまた、レルム全土に勇名を馳せる英雄王の伝説の一つであるのかもしれません。ですがそういった噂話は彼の民衆がこよなく愛するものであり、そのためにこの前どこどこにアゾーン王が現われた、そしてこんなことを言ったのだ、という風聞はコアミアの各地で消える事無く続いています。
言うまでもないことですが、アゾーン王は最高の君主でもあります。その王たる技量はレルム世界に並ぶものとてなく、それは王の仇敵たる魔国セイやゼンティル・キープも認めざるをえない事実です。アゾーンの支配哲学は完璧であり、彼の築き上げた軍事力は比類なき強力なものです。そしてそこへ王の作戦と指揮が加わるとき、軍勢はまさしくレルム最強の破壊力をもって王国の敵を粉砕するのです。
アゾーン王には強力な補佐官が存在します。それこそは彼と共にその勇名を欲しいままにする天才魔導師であり、コアミア宮廷魔術師の称号を持つヴァンジャーダーストです。彼は王の知恵袋であり、護衛であり、参謀であり、親友であり、師であり、そして時には目付け役でもあります。ヴァンジャーダーストの力はかの賢者エルミンスターや、北の大魔術師ケルベンと並ぶほどのものと言われており、その力はアゾーンの王国に害を為そうとする数多くの邪悪な魔術師や魔女を退け、あるいは思いとどまらせてきました。
アゾーン王の政治手腕は公明正大なものであり、文句を挟む余地はありません。民に対する税は安く、そしてあろうことか、王の親族たる貴族、コアミア各地の領主たちに対する税は比して高額なのです。このことは彼の家来たちにとって常日頃から不満(と、王に対しての不評)の種となっていますが、反して領主たちの支配する人々の絶賛が王だけでなく彼ら自身にも寄せられてくるために、結果として臣下たる彼らもまたそれぞれの立場に満足しているようです。
コアミア王国の、そしてアゾーン王の紋章は「紫の竜」ことパープルドラゴンです。白地に抜かれた獰猛なる紫の竜の姿はレルム中央はおろか世界的に有名なコアミアの印であり、地方の小都市ですら、彼と彼の王国の紋章に対しては相応の敬意が払われます。また、この紋章ゆえにコアミア王国は別名、「紫の竜の国」と呼ばれることもあります。
★コアミアの歴史
コアミア王国の起源は驚くべきことに1300年をさかのぼった先にあり、伝説のオヴァスカイア一族による探険植民を原初にすると伝えられています。オヴァスカイア家はコアミアの始祖たる聖なる一族であり、その千年の血統はなんと七十代を数え、現在のアゾーン王に至るまで連綿と継承されているのです。
発祥当時のコアミアは、竜の湖に面する小さな町一つという規模でした。これはレルム世界の常でもあるのですが、やがてこの小さな町(現在のスーザイルであると言われています)に端を発した人々の情熱が時を経て、遂には現在のコアミアの基盤となる森林開拓を成功させます。
現在の形で王国が平定されるまでは長い時間が必要でした……そしてそれを現実のものとして成し遂げたのはかの勇猛なるライガード王であり、彼はその生涯を侵略者と無法者の討伐と駆逐に捧げた建国の英雄として知られています。
そして彼の息子たるアゾーンの時代となり、コアミアは新たに数多くの領土を手にしました。ゴンディガル率いる賊軍よりエアラーベルを解放し、政情不安のティルバートンをデイルランドより独立させ、果てはレルム全土を揺るがしたタイガンの侵略をも食い止めることに成功したのです。
コアミアの大地は平穏です。それはアゾーン王の戦士たち……有名なコアミア・パトロールが彼の王国を休む事無く監視しているゆえなのです。無法者は絶えません。西の沼地から、東の森林から、北の荒野から……種族を問わぬ侵入者がコアミアの豊沃な大地を狙って山岳を下り、攻撃を繰り返しています。ですが、それら無法な侵略者に明日はありません。コアミアの戦士団が、次には騎士団が、最後には竜王の指揮する世界最強の軍団が、邪悪なる軍勢を破砕し、本来あるべき大地へと追い返すのです。
「余の王国は平穏だ。しかるに余の軍勢はどうか。
忙しいことこの上なし……この謎をどう解く、私の魔術師よ?」
「「「紫の竜王・アゾーン四世
★コアミアの政治
アゾーン王は各地に執行官たる領主たちを送り、そこから間接的に王国全土を支配しています。領主たちはアゾーン王が自ら任命した貴族たちで成り立っており、多くは彼の親族に当たります。このことがコアミアの支配体制を確固としたものにしています。
王は領主たちに各々独自の交易を推奨しており、そこで得た利益のほとんどを自由にさせています。そのことが各地の領主たちの(良い意味での)競争意識を生み、結果として交易は洗練潤沢なものとなり、コアミアの経済をより良いものへと変えていっているのです。
ですがアゾーンの臣下に対する支配は、その民への姿勢に比べて遥かに辛辣です。領主たちは交易を行い、そして彼ら自身の兵士を持つことができる一方、国に対する高額の債務を言い渡されています。だがアゾーンは民に対する徴税の程度をおおやけに明言しており、必要以上のそれを彼らの民に求めさせることは許さないため、臣下の執行官たちはそれぞれの家財をもって国へと返還しています。このことに反抗する支配者は少なからずいましたが、往々にして露骨なる態度は王の監査官たちの目に触れ、結果として彼らの身代の没落、あるいは処罰へとつながってきました。ゆえに現在の領主たちは皆、この王から与えられる責務をそれぞれ手際よくこなしています。
★コアミアの軍事力
コアミアの主戦力は歩兵師団よりなり、その規模は常時一万二千を数え、戦時には数万を越えると言われています。彼ら「紫の竜戦士」たちは日頃はコアミア各地域と都市の守備を行い、戦時召集と共に一糸乱れぬ団結力をもって要所に結集、歴戦の将軍たちに率いられて勇猛に戦います。軍には王の名のもとに厳しい規律があり、それは決してレルムに多く見られる「掠奪者」の軍勢ではありません。またコアミアには軍艦数十隻に及ぶ大艦隊、さらに王都とその宮殿を護る親衛隊などがあり、さらには、アゾーンの懐刀と呼ばれ恐れられる最強の集団、戦闘魔術師団ことウォー・ウィザーズが存在します。
★コアミアの魔術団
王の片腕にしてコアミア最強の魔術師であるヴァンジャーダーストを頂点として、コアミアには周辺諸国に名を轟かす魔術師団が存在します。それこそがウォーウィザーズ、古き伝説を継承した最強の戦闘魔術を心得とする無敵の魔術団です。その規模は謎のベールに包まれており、コアミアの国民ですら詳しい内情を知ることはありませんが、ウォーウィザードは一人一人が選びぬかれた熟練の魔法使いよりなっており、彼らはヴァンジャーダーストの秘法たる攻撃呪文の奥義を授けられ、個々で騎兵の一部隊にも匹敵する力を持つと噂されています。いずれにしろ彼らの実態は謎の霧に覆われており、コアミア各地で時として見かけられる「黒と紫のローブ」を身につけた魔術師は、彼の民にとって畏敬のまとであり、そして何よりもコアミアに害意を持つ者にとってこれ以上もない恐怖の対象であることに間違いないでしょう。
★コアミアの国民
コアミアが人類至上比類なき強固な王国であることは間違いなく、それはそこに生きる民の意識にしっかりと根付いています。彼らは自らの祖先が切り開き、作り上げたこの大地を、王国を誇りにしており、そして今現在の自分たちが生きる町を、その領主を、王を信じています。それこそが「コアミアの力」とも言うべき強さの原動力であり、その確固とした地盤があるからこそ、コアミアは(そしてアゾーン王は)ここまでの勢力を維持し、現在もなおさらなる発展を遂げようとしているのでしょう。
そして(意外なことかもしれませんが)、コアミアの国民は解放的であり、非常に信頼できる善き人々です。彼らは平和を愛しており、そして隣人の苦難を黙って見ることができない性質を有しています。つまるところ、コアミアの民は自らが幸福であるがゆえに、周囲の日常である血流の惨事を他人事として捉えることができないのです。
武力に平定された安全な領土にいるために、コアミアの人々の心は開かれています。彼らには(今彼らの環境がそうであるために)善がどういうものか、秩序がなんたるものかがわかっているのです。そしてそれが存在しない場所がどれだけ危険か、そのことも同じように理解できるのです。
例を挙げましょう。コアミアの北西に位置するデイルランドは、レルムに名を知られた豊沃なる緑の世界です。しかしそこの人々は常設する軍隊など必要と考えず、それぞれの町のつながりも確固としないまま、結果として一つの共同体となって立法を定めることもありませんでした。ゆえに、デイルランドは北西の脅威、悪夢のムーン・シーに位置する魔のゼンティル・キープを始めとする数々の侵略者の攻撃に常時悩まされ、時としてそれは数千単位での罪もなき人々の虐殺、あるいは内乱という幾多の悲劇を生んできたのです。
ですがしかし、コアミアではそのようなことは起こり得ません。パープルドラゴンの王国には規律正しく強大な軍隊があり、その存在自体が大いなる障壁として外敵の侵略を防いでいるのです。この鉄の理論がコアミアの民の自負するものであることは明白であり、それはそのまま軍事大国コアミアの勇名となって、今もレルム世界に轟いています。
★コアミアの冒険者たち
コアミアでは冒険者たちは珍しい存在として見られます。無論レルムの伝統である冒険者、探検家の存在はこの郷土にも深く根付いていますが、それでもやはり、確固とした支配体制による平和が維持されているこの国では、冒険者の働くべき役職が少ないことが事実なのです。ゆえに大きな都市などでは、冒険者の姿(あるいはそう名乗ること自体が)珍奇な対象として見られることもままあり、それが警備の兵たちの(そして領主の)あらぬ興味を引いてしまうことも少なくありません。
ですがそれでも、コアミアの国内に冒険者を必要とする場所が一つも存在しないわけではありません。北西のストームホーン山脈とハイ・ムーア、東のサンダーピークとバスト・スワンプ、西のテュンの沼地、そして南の湖を越えた先、ウェストゲート周辺の無法地域……コアミアの国境付近にはこれらの危険地域が現存し、そこにはやはり数多くの冒険者たちが暮らしています。そして、コアミアが周辺諸国から見て遥かに裕福であるがゆえに、彼らに払われる報酬もまた比類なく、ゆえに一獲千金を夢見る者にとってこの国はそれを掴むチャンスを与えてくれる場所ともなるのです。
ですが、忘れてはならないこともあります。国内にほとんど危険がないゆえに、コアミア国境には駆逐された怪物たち、邪悪がたまっているということを。そして彼らもまた、コアミアへの侵略を日夜企んでいるであろということを。そして最も重要なことは、法外なる報酬を持つことになる冒険者たちの存在を、王国の領主たちが自らに課せられた国への債務に対する格好の財源にすることを思いつかないわけがない、ということでしょうか。
All Text BY Noグッチ軍曹

