国道361号線  −その2−


 
高遠町は、天竜川の支流である三峰川と藤沢川がきざんだ深い谷のなかにあり、北、東、南の三方を山に囲まれている。ふるくからの城下町で、その城址は、現在は公園になっている。そこには、約1500本のコヒガンザクラが植えられており、サクラが開花する時期になると、見事な景観となる。

 今回、私は、サクラの開花時期に合わせて出かけるつもりであった。それで、4月後半になると、毎日、高遠町の公式ホームページをチェックしていた。
 2003年の満開宣言は、4月22日月曜日に出された。けれども、その週は仕事が忙しくて、どうしても出かけることが出来なかった。歯噛みするような思いで週末を迎え、26日金曜日の夜に、もう一度、高遠町の公式ホームページをチェックしてみた。すると、サクラは「落花さかん」であるという。満開宣言から5日間も経過しているのだから、無理もない。けれども、まだ少しは花が残っているのではないかと期待して、出かけてきたのであった。
 杖突峠から、高遠に向かう途中の道では、標高が高いため、まだ花が残っていた。けれども、降りるにしたがって、だんだん花が散ってくる。高遠に着いたら、サクラは完全に散っていた。


高遠城址公園から見た高遠の町


 どうも面白くない。
 「落花さかん」というと、枝には、まだいくらか、花が残っているところを想像してしまうではないか。しかるに、いまは、完全に散ってしまっている。枝には、一輪の花も残っていない。これだったら、「完全に散った」、あるいは「今年の見ごろは終わりました」と表現するべきではないか。

 しばし、呆然と立ち尽くしていると、観光バスがやって来た。バスから降り立った人たちも、花がすべて散っているのに、驚いていた。バスガイドの女性も、ばつが悪そうだ。でも、誰も文句を言うことなく、サクラの散った公園を散歩している。
 みんな大人だなあ、と思う。私などは、40才をとうに過ぎているのに、なかなかここまで、大人にはなれない。つい、旅行を主催している側の旅行代理店か、バスガイドに、文句のひとつも言ってしまいそうなところだ。
 結局、私は、高遠城址公園には、入らなかった。なんだか、騙されたようで、やたらとくやしかった。



勝間のシダレザクラ



 しばらく国道152号線を走って、勝間というところに行った。ここには樹齢130年の、シダレザクラの巨木があるのだ。シダレザクラの開花時期は、コヒガンザクラに比べると、若干、遅い。そういうことまで、前もって高遠町のホームページで調べてきている。
 シダレザクラの巨木に着くと、花は咲いていた。しかし、ややピークは過ぎているようだ。カメラを持ったおじさんがいたので、いっしょにサクラの写真を撮る。

おじさん「どこから来たの?」
私   「東京からです。」
おじさん「ほう、東京からバイクで。すごいね。私は、(これまでに)何回か、このサクラを撮っているけど、いつもだいたい城址公園のサクラが終わってから、1週間くらいで、満開になるんだよ。」
私   「そうなんですか。じゃあ、ちょうど今ごろですよね。」
おじさん「けど、今年はすごく暑い日があったよね。だから例年より、(開花時期が)ちょっと、はやまってしまったみたいだねえ。」
私   「そうだったんですか。残念だなあ。」


 まあ、木が相手では、文句の言いようもない。紅葉とか、花というものは、地元の人でもなければ、ベストな時期に見ることは、難しいものだ。あきらめて、シダレザクラを観賞しつつ、写真を撮る。
 勝間のシダレザクラは、本当に見事な巨木だ。サクラというと、ソメイヨシノを想像してしまうが、シダレザクラも、なかなか美しいと思う。

 それにしても、サクラくらい、日本人に愛されている花は、他にないだろう。サクラの花はピンクというイメージがあるけれど、花びらを見ている限り、どうみても白である。つぼみとか、おしべの部分がちょっと赤っぽいので、遠くから見ると、ピンクがかかって見えるのだ。でも、完全にピンクだとしたら。例えば、モモみたいな色だとしたら、こんなに、日本人に愛されなかったのではないか、と思う。

リンク
高遠町公式ページ


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