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▼沢のほたる▼





千年隔てた和泉さまの心を色褪せることなく伝える、たくさんの和歌たち。
お気に入りの歌を思い浮かぶままに取り上げていきます。
(でも、なんとなく四季の移り変わりに沿っている節があったりもします)
コメントは歌から受けたとても勝手なイメージなので、必ずしも本来の意味とは一致していません。ご了承下さいませ。
ご参考までに歌の訳もつけてみました。ど下手な直訳だったり、ちょっぴり意訳だったりします。ですので、あまり信用なさらずにお願いします(笑)。


和泉式部集 霧鼠本
■巻一
あらざらんこのよの外の思ひ出に今一たびのあふこともがな
おもひきやありて忘れぬおのが身をきみがかたみになさむ物とは
しら露も夢もこの世もまぼろしもたとへていへば久しかりけり
くろかみのみだれもしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
くらきよりくらき道にぞ入りぬべきはるかにてらせ山のはの月
よの中に恋てふ色はなけれどもふかく身にしむ物にぞありける
春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし
しのぶべき人なき身にはある折にあはれあはれと言ひやおかまし
ものおもへば沢のほたるもわが身よりあくがれいづるたまかとぞ見る
あかざりしむかしのことをかきつくる硯の水は涙なりけり
■巻二
夕暮れはものぞかなしき鐘の音あすも聞くべき身とも知らねば
ながめつつことありがほにくらしてもかならず夢の見えばこそあらめ
岩つつじ折りてもぞ見るせこが着し紅染の衣に似たれば
枕だに知らねばいはじみしままに君語るなよ春の夜の夢
ねざめする身をふきとほす風の音に昔は袖のよそにききけん
ありとしもたのむべきかは世の中をしらするものはあさがほの花
つれづれと空ぞみらるる思ふひと天降り来んものならなくに
語らひし声ぞ恋しきおもかげはありしそながらものもいはねば
いたづらに身をぞ捨てつる人をおもふ心や深き谷となるらん
身よりかく涙はいかがながるべき海てふ海は潮やひぬらむ
■巻三
わりなくも慰めがたき心かな子こそは君が同じ事なれ
頼めたる人も無けれど秋の夜は月見で寝べき心地こそせね
竹の葉に霰降るなりさらさらに独りは寝べき心地こそせね
数ふれば年の残りもなかりけり老いぬるばかり悲しきはなし
いかにしていかにこの世にあり経ばかしばしも物を思はざるべき
友さそふみなとの千鳥声澄みてこほりにさゆる明け方の月
越えもせむ越さずもあらん逢坂の関守ならぬ人なとがめそ
見えもせむ見もせん人を朝ごとに起きては向ふ鏡ともがな
身の憂きも人のつらきも知りぬるをこは誰が誰れを恋ふるなるらん
世の中にあやしきことはしかすがに思はぬ人を思ふなりけり
■巻四
ともかくも言はばなべてになりぬべし音に泣きてこそ見すべかりけれ
中空にひとり有明の月を見て残るくまなく身をぞ知りぬる
空見れば雨も降らぬに音ぞするただ月の漏る雫なりけり
あはれ我が心にかなふ身なりせば二つ三つまで名はも見てまし
別れても同じ都に在りしかばいとこのたびの心地やはせし
何事も心にしめて忍ぶるにいかで涙のまづ知りにけん
思ひあらば今宵の空をとひてまし見えしは月の光なりけり
なく虫のひとつ声にも聞こえぬは心々に物やかなしき
 





王朝の歌人たちが詠んだため息モノの素敵な歌は、たくさんあります。
そんな歌と出会った時の感動を大切にしたくて、特別室を設けました。
と、ずいぶんエラそうに振ってますが、歌につけたコメントは鑑賞でもなく解説でもなく、単にお目汚しなボヤキです。
ゆく川の水のごとく、さらっと流してやってください。



待宵花集
■巻一
月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
空や海うみや空とも見えわかぬ霞も波も立ちみちにつつ
この世をばわが世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば
くだきけるおもひのほどの悲しきにかきあつめてぞさらに知らるる
心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
夜をこめて鶏のそら音にはかるとも世に逢坂の関はゆるさじ
我が恋は行方も知らず果てもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ
形見こそ今はあだなれこれ無くは忘るる時もあらましものを
かき乱す寝くたれ髪のまゆずみもうつりにけりな小夜の手枕
はかなくて今宵明けなばゆく年の思ひ出もなき春にやあはなむ
■巻二
今宵君いかなる里の月を見て都に誰を思ひ出づらむ
嵐吹く空にみだるる雪の夜に氷ぞむすぶ夢はむすばず
恋死なむわが世のはてに似たるかなかひなく迷ふ夕暮れの雲
君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる
春の夜は吹きまよふ風の移り香に木毎に梅と思ひけるかな
恋ひ死なん後は何せん生ける身のためこそ人は見まくほしけれ
吹く風ぞ思へばつらき桜花こころと散れる春しなければ
五月雨の空なつかしく匂ふかな花橘に風や吹くらん
道知らば摘みにもゆかん住の江の岸に生ふてふ恋忘れ草
橘の匂ふあたりのうたた寝は夢も昔の袖の香ぞする
■巻三
聞きみるもさすがに近き同じ世にかよふ心のなどかはるけき
皆人を寝よとの鐘は打つなれど君をし思へば寝ねがてぬかも
求むれどありがたきかな憂き身にはいはほのなかも山のあなたも
 



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