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第一番 「故郷春月」

鎌倉右大臣家歌合(釈阿俊成判)


左方−勝 女房(鎌倉右大臣)
 ★ふるさとは見しごともあらず荒れにけり影ぞ昔の春の夜の月

右方    さねとも
 ★夢のうちに月去りてけりふるさとの花もこほれる影のうつり香


右方申云、左歌、伊勢物語の「月やあらぬ春や昔の」とおけるは
人の面影にこそあるめれ。故郷になさむこと如何。
左方申云、春のさかりに「花もこほれる」とは心得申さず。

判云、右方申旨さは侍りなむ。なれど、「影ぞ昔の」とおける
下の句優には聞え侍らむ。月影にありし故郷の面影を見ること、
源氏にもあることなり。右歌、「花もこほれる」はさまで
心ゆかずとは覚え侍らざれど、上の句「月去りてけり」は
聞きなれず覚ゆ。月去りて後、何のをかしきことや侍らむ。
「影のうつり香」も優には侍れど、「春の夜の月」、勝に侍るべし。



第二番 「春曙」

鎌倉右大臣家歌合(釈阿俊成判)


左方−持 女房(鎌倉右大臣)
 ★海や空そらや海とも見えわかぬ霞も波も立ちみちにつつ

右方    さねとも
 ★あかつきはわかるる雲に結び置きし露をば花の盛とすらむ


右方申云、「春曙」の心うすくや。
左方申云、無指難。

判云、左歌、「春曙」の心うすしとあれど、「そらや海とも見えわかぬ」と
置けるはいとをかし。かすめる空の姿あはれに侍れば、右方申旨不可然。
右歌、「暁」「雲」「露」「花の盛」とあるは重畳ことごとしく聞こえ侍るを、
左方申無指難之由。あはれ歌知らぬ判者に侍るかな。以可為持歟。




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