アメリカ大統領演説:194586

16時間前、アメリカの航空機が広島という日本軍の重要拠点に一発の爆弾を投下した。この爆弾の威力はT・N・T二万トンを上回るものだ。これまでの戦争の歴史において使用された最大の爆弾、イギリスの「グランド・スラム」と比べても、二千倍の破壊力がある。

日本はこの戦争を、パール・ハーバーの空襲からはじめた。かれらはすでに何倍もの報いを受けてきている。であるのに、いまだ戦争は終わらない。この爆弾により、われわれの軍隊が有する大きくなりゆく戦力を補うものとして、新しく、革命的な規模の破壊を、いま、付け足したのだ。現行のものはすでに生産体制に入っている上、さらに強力なものの開発も行われている。

つまり原子爆弾だ。宇宙の根源的な力を利用したものである。太陽の力の源となる力、それが、極東に戦闘をもたらした者たちの上に解き放たれたのだ。

1939年以前から、科学者たちの間では原子力の利用が理論的には可能とされてきた。が、その現実的なやりかたはだれにも分からなかった。1942年までには状況が変わり、われわれの承知のとおり、ドイツは、軍事的エネルギーとして原子力を登用する方法を精力的に探していた。それに、かれらは全世界を奴隷化するという希望をかけたのだ。ドイツ人たちがV-1やV-2を手にしたときはすでに手遅れだったこと、及び、原子爆弾に至ってはまったく手にすることができなかったこと。われわれはこの点、神の思し召しに感謝すべきかもしれない。

研究開発の争いは、陸・海・空の争いと同様、われわれにおぞましいリスクをもたらすものだった。が、いま、われわれは研究開発の争いに勝利し、ついで、他の戦いにも勝利しつつある。

1940年初頭、パール・ハーバーよりも前から、軍事的に有用な科学的知識は、アメリカ合衆国と大英帝国の間でプールされてきた。この協定がわれわれの勝利に添えた力の数々はきわめて貴重なものだった。この、一般的なポリシーの元に、原子爆弾の開発は始まった。ドイツに対抗すべく、アメリカとイギリスの科学者たちが手を取り合って原爆開発の競争に突入したのだ。

必要とされた知識は多岐に及んだが、それについても、合衆国は数多くの著名な科学者の力を得ることができた。また、このプロジェクトには物凄い工業的・経済的資源が必要とされたが、それを、他の不可欠な軍事活動を過度に損なうことなく投入することができた。研究所と生産プラントは、すでに実体のあるスタートが切られていたのだが、それらが設置された合衆国は、爆撃の範囲外にあって、その点、イギリスはコンスタントな空襲にさらされ、また敵軍上陸の可能性も捨てきれなかった。これらの理由から、チャーチル首相とルーズベルト大統領は、この国でプロジェクトを運用するのが賢明だという点で同意したのだ。われわれは現在、大型プラントを2つと、それより規模の小さい研究所を多数、原子力の生産のために抱えている。ピーク時には被雇用者数が125,000人に達し、今なお、65,000人以上がプラントでの作業に従事している。その多くが、今で二年半、その場所で働いてきている人たちだ。だが、そこで何が作られているかを知っているものはほとんどいない。かれらはそれらのプラントに大量の材料が搬入されるのを目撃するだろうが、搬出されるものについてはまったく目にしないようになっている。なぜなら、この爆弾のコアはきわめてサイズが小さいためだ。われわれはこの史上最大の科学的投機に200億ドルを費やし――勝った。

けれども、もっとも驚くべき点は計画のサイズではなく、機密性でもなく、コストでもない。ひとりひとり専門分野の違う科学者たちがその知識を結集してひとつの研究を成し遂げたという点なのだ。設計にあたった産業、操作にあたった労働力、いまだかつてなかったことをやってのけた機械類に方法論。これらもまた劣らず驚くべき点であり、そのおかげで、多数の頭脳の結晶が物質的な形をとり、期待通りに機能した。科学も産業もともに合衆国陸軍の監督下でことにあたったわけだが、軍もまた、驚くほど短期間での知識を進める上で発生した多岐にわたる問題の管理に、ユニークな成功をなしとげた。このような団結が今後この世界に起こるものか、疑わしく思う。いま行われてきたことは、組織的化学における史上最大の偉業なのである。大きなプレッシャーが掛かっていたものの、仕損ずることはなかったのだ。

われわれはいま、よりスピーディーに、日本の各都市で展開されている生産計画を、ことごとく、徹底して壊滅させるための準備にとりかかっている。われわれはかれらの港湾を破壊し、工場を破壊し、通信を破壊する。そこに勘違いのないようにしよう、われわれは徹底的に日本の戦争遂行能力を破壊するのだ。

726日のポツダムで発布された最後通牒では、この強力な破壊は日本人の身に降りかからないことになっていた。日本の指導者たちはこの最後通牒を即座に拒絶した。もしいまなおわれわれの要求を飲まないとなれば、これまで地球上に一度も実現したことのないような破壊の雨が空から降るものと思っていただかなければならない。この空襲を支援するものとして陸海軍が続く。日本人がこれまでに目にした事のないほどの数の、十分に熟しきった戦闘技量の持ち主たちが。

軍務大臣は、このプロジェクトに終始タッチしてきた関係から、間もなく、さらなる詳細を伝える声明を公にするだろう。

その声明では、テネシー州クノックスビル近辺のオーク・リッジの用地、ワシントン州パスコ近辺のリッチランドの用地、及び、ニュー・メキシコ州サンタ・フェの軍事施設についても触れられるはずだ。こうした用地の作業従事者たちは歴史上最大の破壊兵器の生産に使用される原料の生成にあたってきたのだけれども、それに従事することによって危険にさらされてきたわけではない。なぜなら、かれらの身の安全のために最大限の注意が払われてきたからだ。

われわれに原子エネルギーを導き出すことができるようになったという事実は、自然の力をめぐる人間の理解に、新風を呼び入れるだろう。原子エネルギーは、将来、現在の動力源となっている石炭・石油・滝に代わる、供給源となるかもしれないが、現時点では、商業的競争力のあるものとして利用できまい。そういう時代がくるまでには、長い期間をかけた集約的な研究が必要とされる。

科学的知識を世界に伏せておくことは、この国の科学者の習慣であったこともなければ、政府のポリシーであったこともない。ふつうの場合であれば、原子エネルギーの研究に関するすべてが公開されるはずだった。

だが、現在の情勢下では、生産のプロセスや軍事的運用法などを明らかにするつもりはない。われわれを含む全世界を突発的な破壊から守る方法をさぐる、さらなる調査が差し迫っているからだ。

私は合衆国議会に以下のことを勧告する。迅速に、国内における原子力の製造と取扱に適切なコミッションを策定すること。私は熟慮の末、さらなる勧告を議会に発するであろう。いかにして原子力を、強力かつ実効的な世界平和維持手段とすべきかを。

プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト。 最新版はhttp://www005.upp.so-net.ne.jp/kareha/にあります。 Copyright © Kareha 2001, waived.