探偵 神宮寺三郎「夢の終わりに」

短評

 「ファミコン探偵倶楽部」とは対極の位置にある名作。ジャケ買いしても損はない。

総評

 神宮寺三郎シリーズ第六作。「未完のルポ」のレビューで書いたとおり、兄に薦められて買ったものです。一年以上たってるのになかなか値段がさがらなくて二の足を踏んでたんですけど、もうこれ以上は下がらないだろうと思って、2,980 で手を打つことにしました。ちなみに、その日「黒の剣」は売りきれていました。そこはかとなく嬉しかったり。

 システム的には相変わらずのコマンド選択式です。それと、「未完のルポ」から採用されているザッピング。今回は神宮寺、洋子、熊野というお決まりのメンバー+美貴(被害者の妹)という4つの視点でストーリーが展開します。与野のジャーナリストとしての視点は好きだったんだけどなあ。オレが叩いた尾行モードはなくなりました。その代わり、現場検証などの時の捜索モード、および最近の推理 ADV で流行の推理モードが追加されています。まあ、話をうまい具合にまとめてくれる推理モードはともかく、捜索モードの方は存在意義に疑問符がつきますけれども。

 さてさて、要するにシステム面では特に見るものもないといってしまえるわけなんですが、「未完のルポ」で SFC 級と切り捨ててしまえた演出面が桁違いに強化されています。「未完のルポ」がアレだったんで、あんまり期待せずに電源を入れたんですが、オープニングデモが始まった瞬間、期待をはるかに超えるできであることが判明。

 このムービー、神宮寺が銃を撃つシーンを描いたもので、「ん?」と思わせるものがあるんですが(でもゲーム始めるまで洋子だと気付かなかった…この人顔と髪型変わりすぎ)、本編中にこういうシーンがあるんかなあと思いつつ始めると、いきなり「神宮寺が見ている夢だった」ということがわかります。でも、本作のタイトルは「夢の終わりに」ということで、この夢がゲームのクライマックスで絡んできます。

 ストーリー的には麻薬を扱ったものなんですが、もっと根本的なところをつくと、犯人を含む登場人物たち、ひいてはあるゆる人々が描いている「夢」と、その終わりに何を見るのかというものをテーマにしたものと言えます。話の進め方も非常にテンポがいいし、その展開もうまい。ちょっとネタバレを避けつつ例をあげます。神宮寺が犯人を追って山中湖の調査をする一日があります。このシーン、どう進めてもなんの手がかりも得られません。次の日、もっともおそれていた事態が発生します。その少し前に語られる思い出話のこともあって、ものすごくオレに不安感を与えてくれました。「ゲームなんだし」とか「薫殿理論があるだろ?」とか理性では分かっているんですけど、「シリーズで始めて語られるころの話」→「調査失敗」という流れが不安をかきたてるんです。久しぶりにゲームのストーリーを冷めた目で見ていないオレがそこにはいました。

 全体的に見て、ジャケットに書かれているとおり、「新生神宮寺」です。これまでのシリーズもゲームとして水準以上の出来ではあるんですが、「夢の終わりに」はスケールが桁違いに大きくなっています。「夢の終わりに朝が来る。ただ、それだけのことなのかもしれない」というエンディングでの言葉を借りるとすれば、「中央公園殺人事件」〜「未完のルポ」まで見ていた「ゲーム」という「夢」がようやくここに終わったのかもしれません。そんな感想を覚えた「夢の終わりに」でした。

 蛇足ですが、音楽関係も相当なもんです。ジャズとゲームミュージックを7:3で混ぜて適度に水で割った感じ。うまいこと薄められているのでBGMとして耳につきません。洋子編のピアノトリオなんか結構いい味が出てると思うんだけど、どんなもんでしょうね。あと、ゲームに主題歌を持たせることに批判的なオレが、珍しくあってよかったと思う主題歌「真昼の三日月」でした。「ナイツ」以来かな、ゲームの歌がいいなと思ったの。「Eyes On Me」はオレ日本人だから脚下。

-Apr. 2nd, 2000