ナイト&デイ
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 74

監督:ジェームス・マンゴールド 
公開年:2010年
トム・クルーズとキャメロン・ディアス主演のアクションコメディ。トム・クルーズ扮するCIAのエージェントが、ある任務を遂行するためにキャメロン・ディアス扮する一般の女性を利用します。しかし、CIAからは裏切り者と思われ、一方悪の組織も出現して双方から追われることになり、結果としてエージェントは女性と一緒に逃避行を続けることになります。突然訳のわからない状態になり混乱する女性は、最初はエージェントを怪しみ反発しますが、逃避行を続ける中で恋する気持ちが次第に湧き上がってきて・・・といった内容。
よくあるストーリーですが、「007」などスパイ映画のエキスをいっぱい注ぎ込み、良質のアクションコメディに仕上がりました。
主人公の撃つ銃は百発百中、仁王立ちになって撃っても敵の弾は当たらない、どんな困難な状況でも超人的なパワーを発揮して切り抜けるなど、ご都合主義のオンパレードで、突っ込みどころ満載の映画ではありますが、それが笑いとうまく組み合されてうまくいっていると思います。まるで能面のように、どんな危機でも表情を変えずに立ち回るエージェントをトム・クルーズはうまく演じ、それがコミカルな味にもつながっています。また、キャメロン・ディアスも終盤にかけて豹変し、愛車を運転して追っ手をうまく振り切ったり、オートバイの上から2丁拳銃で撃ちまくり追っ手を撃退するシーンなどフル回転です。いずれも「とんでもない」シーンではあるのですが、そのとんでもないシーンによって観客に高揚感を与え、「やったー」といった気持ちにさせてくれます。アクションコメディとしては定石ですが、うまい演出だと思います。
それと、劇中で繰り返し表現される逃走シーンの省略もうまいです。「ブタイン・ゼロ」とかいう薬を飲まされて、ヒロインが気を失っている間に逃走が済んでしまっているという表現は、それをそのまま描くと映画がだれてしまうところを、省略という手法でテンポよく進めています。これはかなり効果的だと感心しました。
以前もどこかで書きましたが、良質なコメディは定石をうまく描ききること・・・それをきちんと作り上げた快作だと思います。
この映画の前に見た「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」。アクションシーンの描き方については、どちらの映画も「とんでもない」シーンの連続なんですが、羽目を外しすぎてめちゃくちゃになってしまった「特攻野郎」に対して、「ナイト&デイ」は、一部はみ出しすぎたところもありますが、ぎりぎりのところで表現を押さえ、うまくコメディと融合させています。
銃の表現についても、銃に不慣れな女性がパニックになって弾が切れるまで撃ちまくるシーンなど、なるほどと思わせるところもあり納得です。


NATTU
ナトゥ踊るニンジャ伝説
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 36

監督:大森一樹  
公開年:2000年


タイトルからもわかるように、インド映画の快作「ムトゥ 踊るマハラジャ」に惚れ込んで、自分たちでもマサラムービーを作ろうとした作品。ウッちゃんナンちゃんのナンちゃんたちスタッフが楽しんで作っているのがよくわかる。
圧巻は、やはり本場インドのダンス、群舞。やはり素晴らしいです。

残念なのは、インド側のレベルと日本側のレベルがあまりにも違いすぎること。
踊りはもちろんのこと、演技面でもその差は歴然。
テレビであれだけ光っているナンちゃんが、映画の演技となると小学生以下のレベルになってしまう。これは、映画とテレビを形作っているものの違いによると思います。映画は演劇の延長線上として演技を求められ、出来上がったものは時空を超えた作品として定着するのに比べ、テレビでは、たとえそれが録画したドラマでも、受け止める側は無意識に「テレビの特性である、今」を感じるため、演技でないものも違和感なく見ることができるのだと思います。
しかし、今回は映画です。中途半端にテレビ感覚を持ち込むより、映画に徹したほうがよかったと思います。
ダンスでも、日本の一流の人たちを連れていって、インドのダンサーたちに真剣勝負を挑むぐらいの気構えが欲しかった。この出来では、単なるお遊びで、それに付き合わされた観客はしらけてしまいます。


ナビィの恋
テーマ 10
脚本×2 9(18)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演 10
助演
おすすめ度 10
総合点 90

監督:中江裕司  
公開年:1999年

恋のすばらしさ、切なさ、そして強さをチャンプルーな沖縄の風土の中で見事に描ききった傑作です。
60年前に引き裂かれた恋人が戻ってきて心乱れるナビィおばあちゃん。長年尽くしてくれた年老いた夫を置いて、恋人とともに新天地に向かう姿は、見ようによってはひどい話とも言えますが、それだけに恋する相手と連れ添うことの大切さを強く訴えます。
年老いた人たちの恋と若者の恋を対比させて描く脚本はよくできています。映画を見る人は純愛を貫き通すナビィおばあちゃんの姿に応援する一方、ナビィおばあちゃんを何とか止まらせようとマッサージ機をプレゼントし、それでもかなわぬと知って妻の出発を静かに見送る夫の恵達おじいちゃんの姿に涙します。
沖縄のこの2人は本当にいい味を出しています。
ナビィおばあちゃんが出発した後、どうなったんだろうと心の隅に思いつつ迎えるハッピィエンディングは暖かく、見終わった後の「しあわせ度」は100パーセントです。


特に文句を言うことはありません。この映画を見てしあわせになってください。


ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 73

監督:A.アダムソン 
公開年:2006年
C.S.ルイス原作のファンタジー小説「ナルニア国物語」の映画化。同じくトールキン原作のファンタジー小説「ロード・オブ・ザ・リング」の映画版が大ヒットしたことから出来た企画なのか、それとも、その前からあった企画なのか。「ロード・オブ・ザ・リング」大好きの我が家としては、特撮スタッフの一部が同じらしいので、家族全員で見に行きました。
冒頭、なんだろうと思っていたら第二次世界大戦のバトル・オブ・ブリテン。ドイツ軍爆撃機(He111)の登場です。私、映画を見る前になるべく予備知識を入れないで見るほうなので、一瞬、違う映画が始まったのかと思いました。最初のこの部分で、兄と弟の対立や父親が戦いに言っていることなど、手際よく説明されていて、導入部としては合格です。戦争による空襲という現実を冒頭で描いたことで、そのあとのファンタジーにも深みがでました。うまい方法ですね。
ファンタジーというのは、「あんなことができたらいいな」とか「ヒーロー、ヒロインになりたい」などといった、子どものころに夢見たことをベースに自由な発想で描かれるものだと思います。でも、だからといって、子どもだけのものではなく、昔子どもだった大人にとっても、昔を思い出してわくわくしたり、胸がしめつけられるような思いをしたりと、楽しめるものが多くあります。
衣装だなの奥に、雪に覆われたナルニア国がある・・・という設定。それだけで、見ている方は楽しくなります。あなたも、子どものころにそんな空想をしたことはありませんでしたか。
元々が子ども向けの7部作のファンタジーの導入部とあって、物語はシンプル。「ロード・オブ・ザ・リング」のように、続くという形で終ることないのでいいと思います。エンディングは、最初の「スター・ウォーズ」(エピソードW)に似た感じですね。
主人公が子ども4人ということで、ちょっと頼りないですが、心配した戦いの部分では、強すぎず、弱すぎず・・・まあ、描き方としてはギリギリの選択でしょうね。
なんといっても、注目は4人兄弟姉妹の末っ子、ルーシー。年齢のワリには大人びた発言もありますが(イギリスの子どもってああなんでしょうか)、とっても可愛くて、物語の核にもなっていて、いいですね。ほかの3人がやや地味なのをルーシーが救いました。
戦闘シーンは、どうしても「ロード・オブ・ザ・リング」を思い出させるような感じで、それをスケールダウンした格好ですが、「ロード・オブ・ザ・リング」のときより、コンピュータ操作の群集キャラなどは進化しているようです。
ディズニー制作ですので、暴力表現などストップがかかったと思われるところもありますが、大人も子どもも、家族で楽しめる良質なファンタジー映画です。
実は、最初「ナルニア国物語」を見に行く予定は無かったのです。というのは、先に見た人に感想を聞いたところ、「単なる子ども向けの映画で、退屈だった」という評価だったため、二の足を踏んでいたのです。でも、「ナルニア国物語」は、映画館の大スクリーンで見たほうが迫力があるよねということで見ました。見てびっくり。なかなか良い映画ではないですか。確かに子ども向けという感じはしますが、十分大人の鑑賞に堪えます。かえって「ハリー・ポッター」の方が、3作目を除いて、原作のファンにはいいんでしょうけど、そうでない大人にはちょっときついものがありました。
この「ナルニア国物語」。どうやら、映画評やネット、口コミで、かなり酷評されたようで、それを受けた感想もよく見られます。主人公が子どもで弱弱しい点や、「ロード・オブ・ザ・リング」と比較してしまうと、物足りなくなるのでしょうが、この映画の場合は、これ以上派手にしたり、展開を複雑にすると、主人公の子ども達が本当に浮いてしまいます。これはこれでいいのじゃないかと、私は思いました。
大人になっても、心の中に少しでも子ども心を持ち続けている大人たちに・・・お勧めの映画です。


南京!南京!
テーマ 10
脚本×2 8(16)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 78

監督:陸川 
公開年:日本未公開
日本未公開の中国映画で、もちろんDVDも出ていませんので、通常でしたら我々は見ることができません。でも、YouTubeのおかげで(著作権上は問題があるにしても・・・)、そしてそれに日本語字幕を付けてくださった方のおかげで、我々は見ることができます。
タイトルの通り、日中戦争での「南京大虐殺」をテーマにした映画です。これについては、事あるごとに、日本と中国の間で論争となる問題ではありますが、陸川監督は「これまで中国で南京大虐殺についての映画はたくさん作られたが、後世に残る映画になるためには戦争の狂気を描かないといけない」として、何と「加害者である日本兵の視点」もふんだんに加えた映画として製作したといったようなことを述べています。
この姿勢は、正しく、そして素晴らしいと思います。人類最大の悲劇である戦争。それは、勝者と敗者はあっても、それが即、正義と悪と決め付けられない、というか正義と悪に分けられるのかといった難しい問題です。そもそもそれ自体が残虐で異常な状態である戦場で、「虐殺」といった行為は、勝者であれ、敗者であれ、そして、計画的であれ、偶発的であれ発生していることは想像に難くなく、様々な映画でも描かれてきました。
この映画の中でも、便衣兵(ゲリラ)として大量の中国兵を射殺するシーンや女性への暴行、そして子どもを窓から投げて殺すシーンなど、日本人としては見るのがつらいシーンが次々に出てきます。でも、それだけでしたら、「悪魔のような日本兵」を描いただけの、従来からある中国映画でしかないのでしょうが、上にも書きましたように、陸川監督は「日本兵の視点」を重要な要素として取り入れています。目の前で展開される事象に、とまどい、「でも戦場だから仕方がない」と自分を納得させようとし、苦悩する日本兵の姿が生身の人間として描かれています。そして、それが結果として「戦争の狂気」を浮かび上がらせています。
中国側からすれば、「鬼」のような存在の日本兵の心情に理解を示すなんてとんでもないという反論も出てきそうな内容の、この映画を製作した陸川監督とそれを支えた俳優、スタッフ(日本人も多数参加)に敬意を表します。
戦争アクション映画ではないのですが、冒頭の戦闘シーンは、「プライベート・ライアン」の手法を参考にしているようですが、なかなかの迫力です。日本軍の九五式軽戦車も実車ではないかと思うほどの出来です。足回りなどは本物かもしれません。
素晴らしい映画ですが、最後の日本軍の勝利の踊りは、日本人からすると「???」です。陸川監督は「軍国主義」を表現した」と説明していますが、どう見てもあれは「阿波踊り」です。これは、何かの勘違いでしょう。


20世紀少年
テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 63

監督:堤幸彦 
公開年:2008年
浦沢直樹さんの人気漫画「20世紀少年」の実写版の映画。原作漫画の方は、毎回楽しみに見させていただいていたので、実写版になると聞いてびっくり。ただ、漫画があれだけ面白かったので、映画ではどうかな・・?と思っているうちに、劇場で見逃してしまい、レンタルビデオで視聴しました。
原作漫画の方も、話が過去や現在、未来にしょっちゅう行き来するため、「あれ?どうなっていたんだっけ?」と思うことがしばしばでした。それだけに、映画化は難しいのではと思っていました。
結果として、映画では、原作を忠実になぞる方法を取りましたが、この映画の場合、それが正解・・・というか、それしかないと思います。そういう意味では、「頑張った」と思います。「ともだち」が誰なのかという謎でひっぱっていく原作の雰囲気もよく出ていました。出演者も、原作のイメージに合った人ばかりで、よくキャスティングできたなと思います。このキャスティングだけでも、かなりの部分で成功だと思います。
あれだけの長い物語ですから、3部作にしたのも当然。原作ファンとしては、一応満足です。
漫画の場合は、ストーリーがよくわからないと、見かえすことができます。でも、映画では、そういう訳にいきません。人物の描きわけについても、少年時代と大人になってからをオーバーラップして描くなど、工夫していますが、映画を最初に見た人には、かなりわかりづらいと思います。
ストーリー自体もかなり込み入っており、「ともだち」がだれだったかもこんがらかってしまいがちですので、原作ファンならよくわかることでも、そうでないとチンプンカンプンになることは容易に想像できます。また、かなり長い物語なので、ストーリーもかなりはしょって、物語の展開に追いつくだけでも至難の業かもしれません。そういう意味で、原作ファンか、原作を見たことのない人かで、この映画の評価は180度違ってくるかもしれません。
また、全体的な印象として、紙芝居的な平面的な感じも受けてしまいます。もう少し、強弱をつけて、もう少しスタイリッシュに描くことも必要だったかもしれません。
まあ、そこまで考えると、「20世紀少年」の映画化はかなり難しいし、完全な成功にはなりえないかもしれません。でも、そんな困難のなかで、このような映画を作ってくれたことには、素直に感謝しています。


ノーカントリー
テーマ
脚本×2 9(18)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 85

監督:J.コーエン、E.コーエン 
公開年:2007年
最初、こんな映画に作品賞など4部門を与えるなんて、アカデミー賞もどうかしているのではないか・・・と思いながら見始めた映画でしたが、恐るべしコーエン兄弟!完璧に計算されつくしたすごい映画でした。
物語は、麻薬の取引で何らかのトラブルがあり、銃撃戦の末、多数の死体が転がる現場を見つけたベトナム帰還兵の男が、多額の現金を持ち逃げしたところから始まります。現金の奪取を依頼され、追い掛け回す殺し屋が、異様な風体、キャラクター、そして牛を殺すための圧搾空気を使った殺人道具などで公開時にも話題になりました。
現在の日本でもそうですが、わけの分からない殺人事件が次から次に発生し、もうどうしようもないアメリカの現実を描いたところが、アカデミー賞の審査員の共感を得たのではないでしょうか。それに、ベトナム帰還兵や虚無感を漂わせる保安官など、配役もうまくはまっています。
そして、この映画のすごいところは、暴力、バイオレンスの演出のうまさでしょう。私もバイオレンス描写にそれほど弱いわけではないのですが、途中2〜3か所、たまらずにVTRをとめてしまったところがあります。もちろん、それは、単純に血が吹き出るとか、腕がちぎれるといったような、直接的な描写のことをいっているのではありません。「あっ!もうすぐやられる」とか「このあと、すさまじいシーンが出てきそうだ」とか、サスペンスを盛り上げるだけ盛り上げて、そのあとに、予想どおり暴力描写があったり、暴力を暗示する表現にとどめたり、もしくは、「ありそうだ」と思わせて、実際には暴力が行われなかったりと、そのあたりの配分が、計算されつされているのです。ですから、その重圧に耐えられなくなり、VTRをとめてしまうのです。このような緊張感が最初から最後まで続きます。こんな、経験はあまりありません。面白いけど、怖い映画です。
最近のハリウッドのアクション映画などの場合、多くの人が脚本に介入して、練り上げる方法で作られることが多いようで、結果として、退屈もしない代わりに、格別面白くもないという映画が増産されているように感じます。その点、この映画は、兄弟による脚本、演出ということで、1本芯が通った最高の出来になったようです。
この映画、暗示されるテーマを深読みするとか、意味を考えるとかいう見方もあるでしょうが、それより、前編に流れる「緊張感」を味わう映画ではないでしょうか。でも、この映画を映画館で見なくて良かったかもしれません。映画館だったら、逃れられないので、もっと疲れたかもしれません。それとも、もっとよかったかな?


ノッティングヒルの
恋人
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 59

監督:R.ミッシェル 
公開年:1999年


「ローマの休日」のハッピーエンド版。他愛もない大人のおとぎ話といった映画ですが、ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラントの主演の2人がさわやかで、恋愛の素晴らしさがよく描かれています。なんといっても、映画を見終わった後の気持ちよさがいいですね。
禁じられた恋、忍ぶ恋もいいかもしれませんが、私はこんな明るい恋の方も好きです。

妻は「女性向けの映画としてはいいんじゃない」と言っておりましたが、脚本がダメです(この点については妻も同意見)。2人の恋のスタートとなる突然のキスは、意外性があって印象的かもしれませんが、リアリティがありません。そこに至る必然性という何らかの描き込みがないと見ている人にはわかりません。
脚本上のこの欠点は、ほかにも途中で何回か出てきます。有名女優(役の上での)の気まぐれということかもしれませんが、彼女の言動が突然変わるところなどは、まるで昔のテレビではやった「トレンディドラマ」の物語展開と同じ、単に見ている人を惹きつけるためだけの脚本です。
おとぎ話にも、見ている人を納得させるだけのリアリティが必要です。


 ノー・マンズ・ランド

テーマ 10
脚本×2 10(20)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度 10
総合点 89

監督:D.タノヴィッチ  
公開年:2001年

ボスニア紛争をテーマに、戦争、内戦の非情さを鋭く描いた反戦映画の傑作。
セルビア側とボスニア側、それに双方の陣地の中央にある塹壕に取り残された兵士たちの三すくみ。そして、塹壕内でもセルビア兵とボスニア兵、それに気絶している間に対人地雷を体の下に仕掛けられたボスニア兵の三すくみ。それが、戦争、内戦というものの、どうしようもない状況を如実に物語っています。この仕掛けによって、戦争の不条理を示すとともに、テクニック的にも緊張感の持続が図られ、映画の成功に結びついたといえるでしょう。
それに、監督はボスニア側の人のようですが、映画ではボスニア、セルビアのいずれにも偏らず、中立の立場で描いているのも、単なるプロパガンダ映画になることなく、成功した理由の一つでしょう。
いずれにしても戦争をしている側、手をこまねいて臭い物にふたをしようとする国連、スクープに躍起になるマスコミ、それぞれに鋭い批判が浴びせかけられています。一応、マスコミの世界に身を置くものとしては、タノヴィッチ監督が記者会見で述べた「マスコミの報道は、倫理をもっておこなってほしい」という言葉が強く胸に響きました。
エンディングもずしりと重い物が心に残ります。今年の最初に、良い映画を見せてもらいました。
とくに文句をつけるところはありません。強いて言うと、国連やマスコミの描き方が画一的かなとも思いますが、わかりやすく整理すると、ああなるのかなとも思います。