バイオソルジャー
テーマ
脚本×2 1(2)
演出×2 2(4)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 18

監督:M.フレバロードフ 
公開年:2007年
「雪深い山間に作られた実験施設で事故が発生した。グッドヴィン隊長率いる特殊部隊が調査へ向かう。そこで彼らが見たものは…。生物兵器と化した人間たちに、銃とコマンドサンボで立ち向かう兵士たちの戦いを描くロシア産SFアクション。」というのは、TSUTAYA DISCAS」の説明文です。
以上の説明文でもお分かりのように、最初は、「バイオハザード」ばりの展開で、というより、ほとんどパクリのような感じで話が進みます。実験施設に入った特殊部隊員は、大勢の遺体とゾンビのような奇妙な動きをする研究員たちの姿を目にします。
ところが、特殊部隊員に同行した研究者が「隊員全員が何らかのウイルスに感染した」と告げ、絶望して自殺します。
そこから、なんと驚愕のストーリーが展開されます。
(ネタバレですので、もしこの映画を見る予定のあるかたは、読まないほうがいいかもしれません)
上記のDISCASの説明は、まったく嘘っぱちです。
「生物兵器と化した人間たちに、銃とコマンドサンボで立ち向かう兵士たちの戦いを描く」・・・映画ではありません。兵士たちは、同行の研究者が自殺したあと、驚くべき行動に出ます。「全員がウイルスに感染した」という自殺した研究者の言葉を鵜呑みにして、隊員のだれにも、その兆候が出ていないのに、簡単に「皆で死ぬこと」を決定します。その方法は、自殺するのではなく、残った6〜7人の隊員がくじを引いて、1対1のタイマンで、殺し合いをするというものです。その直前まで、反発しあっていた部分はあったにもかかわらず、力を合わせて任務を遂行しようと努力してきた隊員らが、なんと殺し合い!!
そして、1人、また1人と死んでいきます。まあ、前半「バイオハザード」、後半「ストリート・ファイター」のような展開です。
感情移入も、緊迫感もサスペンスも迫力もあったものでありません。観客は、混乱してよく訳の分からない状態に陥ります。
ところが、最後には、殺し合いを提案した隊長が、残った男女2人の命を助けようとするような行動にでます。(それくらいだったら殺し合いなんかするなよ!という突っ込みが入りそうです)。
サスペンスとしての爽快感ゼロ。だいたい、その実験施設で何があったのか、映画の中盤、後半では、謎解きなどそっちのけで、訳の分からない殺し合いに終始します。
ひょっとして、映画制作の途中で、大幅な路線変更を強制させられたかのようなできばえです。いったい、何を考えているのか。理解不能です。
現代のロシア映画は、意外な掘り出し物もいくつもありますが、ダメな作品もたくさんあります。なるべく、ロシア映画はみるようにしているのですが、今回は、大はずれでした。


パイレーツ・オブ・カリビアン
/デッドマンズ・チェスト
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 62

監督:G.ヴァービンスキー 
公開年:2006年
2003年に公開され、ヒットした「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」の続編。お馴染みの3人、ジャック・スパロー船長のジョーニー・デップ、ウィル・ターナー役のオーランド・ブルーム、そして、エリザベス・スワン役のキーラ・ナイトレイの面々が今回も大活躍。
1作目は、ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」をベースにしたお話で、それはそれで楽しく見られたのですが、2作目の今回は、大幅なパワーアップが図られています。いろんな仕掛けやデジタル処理など、前作では、必要最小限に抑えられていたものが、今回は爆発しています。特に、海の怪獣「クラーケン」のど迫力や、敵役のデイビー・ジョーンズをはじめとする幽霊船「フライング・ダッチマン号」の面々のメーキャップやCG処理は素晴らしいものがあります。
特に、後半の「死者の宝箱」を巡る争奪戦は、40分前後はあったでしょうか、息もつかせぬ展開の連続、そして適度に笑いをとりつつ、かなり見せます。
3作目も予定されており、次を早く見たいという感じで終わっています。完結した物語としては、今ひとつですが、こんなのもありでしょう。
物語としては単調です。というか、元々それを重視していない作りですね。主人公3人が、それぞれキャラが立っているので、その魅力的なシーンを見せること、1作目より、増大したデジタル処理のアクションをふんだんに見せること、などを主眼につないで作った脚本という感じがします。まあ、常に物語がしっかりとなければいけないという訳でもないし、そうでない作りを否定するものでもないのですが・・・。
今回の作品で、物語の味付けとなっている、ウィル・ターナーとその父親との再会も、悪くは無いんですが、型どおりといえばそうだし・・・。
と、ここまで書いてきて、思い当たったことがあります。1作目でも、ちょっと書いたことなんですが、強いて言えば「ディズニーの限界」とでもいうものでしょうか。やはり、この映画は、基本的に「子どもに見せる」ために、「子どもと一緒の家族づれに見せる」ために作られているということではないでしょうか。ですから、子どもが理解し難い内容を排除した結果、登場人物の描き方がステレオタイプになり、深みが感じられません。これは、「ハリー・ポッター」の映画などでも感じることなんですが、子ども向けの映画としては良い出来でも、「大人の鑑賞には堪えられない」ということでしょうか。
ですから、総合点数の「62」は、大人としてみたらとしての点数です。子ども映画として評価すれば、もっといいかもしれません。


パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 52

監督:G.ヴァービンスキー  
公開年:2003年
ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」を元にしたディズニー実写映画。映画の所々にアトラクションで見かけるのと同じような仕掛けもあり、映画を見て受ける印象はアトラクションと同じようなイメージです。そのあたりはディズニーも狙っているのでしょう。
<ネタばれ注意>
この映画の見所は、なんと言ってもジョニー・デップの怪演。自分の海賊船を取り戻すために、取引をしたり、だましたりと、あの手この手で立ち回るジャック・スパロウ船長を、目の下を黒く塗る独特のメイクと大げさな演技で楽しげに演じています。「ロード・オブ・ザ・リング」で注目されたオーランド・ブルームもカッコよくていい感じなんですがノーマルな性格設定ということもあり、ジョニー・デップには完全に食われてしまいました。
物語自体は、海洋アクションというより、コメディ色の強いもので、家族で楽しむのにはぴったりの映画。さすがにディズニー映画、ツボは外しません。
海賊船の沈没現場で救助された少年の持つ謎の金貨、成長した少年と助けた総督の娘との淡い恋心など、導入部分はこれからの冒険を予感させ、なかなかいい感じで始まりましたが、途中がちょっとダレました。
これは敵役のバルバロッサ船長と海賊たちが「呪われた海賊たち」であり、刀で斬りつけられても銃で撃たれても死なないという設定のため、アクションがさっぱり盛り上がらないこと、それと「呪われた海賊たち」を完全に悪役として描いていないため、物語の展開としては迫力に欠けやや物足りない感じとなったものと思われます。
逆に見ると、そのあたりの設定が、親子で楽しめるディズニー映画としては、楽しく見終わることも出来て、狙い通りなのかもしれません。私にとっては不満も多い映画ですが、一緒に見に行った子どもたちには好評でした。


パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 44

監督:G.ヴァービンスキー 
公開年:2007年
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ3作目。2作目の「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」の終わり方からして当然の続編。前回、決着が付けられなかった、さまざまな点に一応の決着をつけた形。
帆船同士の戦いなど、CGを駆使した映像には、さらに磨きがかかって・・・といったところですが、2作目と比べると、インパクトが弱くなったかな。
元々、この映画は、難しいことを言わずに、アトラクションとして楽しめばいい類の映画ですので、気軽に見に行ったのですが・・・。
物語の中盤にかけての部分で、眠くなりました。一緒に見に行った妻は、本当に寝てしまいました。これで終わり・・・「ワールド・エンド」・・・というのはあんまりですので、もう少し書きます。
眠くなった理由は、2作目までもそういう傾向はあったのですが、味方と思っていた人物が、次の場面では、敵と思っていた人物と一緒にいる、とかいう具合に、物語が複雑で理解できず、展開も速すぎて追いついていけず、セリフだけがやたらと続いて、アクションシーンが途切れてしまうためだと思います。それを補うためでしょうか、劇場では、登場人物の関係などを示すリーフレットが渡されましたが、それをよく読まないと理解できない映画では、本末転倒でしょう。あくまでも、映画の中で理解できるようにして欲しいですね。
それと、このシリーズはジョニー・デップ演じるキャプテン・ジャック・スパローのキャラクターが命だと思うのですが、2作目と比べると、ちょっぴり影が薄くなってしまいました。2作目では、はちゃめちゃな性格がうまく生かされたエピソードがたくさんあったのですが、今回は、物足りなかったですね。
ラストの海戦シーンは、迫力満点なのですが、2作目の追いかけっこと比べると、展開が単調でした。それに、ちょっと長すぎて、途中から退屈してしまいました。やっぱり、ディズニーランドのアトラクションのノリなんでしょうか。映画としてのバランスを考えると、長すぎますね。
ラストは、といっても、長いエンドタイトルのあとなんですが、まあ、あんなものでしょう。定石ともいえるでしょう。先日見た、「ククーシュカ ラップランドの妖精」のエンディングを思わせますが、「ククーシュカ」の方が、より深みがありますね。
4作目を作りたいようですが、さらに条件は厳しくなるでしょうね。でも、がんばってください。


初恋のきた道
テーマ
脚本×2 10(20)
演出×2 10(20)
映像 10
音響
主演 10
助演
おすすめ度 10
総合点 97

監督:Z.イーモウ  
公開年:1999年


恥ずかしながらチャン・イーモウ監督の映画は初めて見たんですが、シンプルでいいですね。
原題「我的父親母親」は、私の父親、母親という意味なんでしょうか。ちょっと叙情的過ぎるかもしれませんが、親への愛情がこもった良い話ですね。
都会から田舎の小学校に赴任した若い教師への想いを、料理に託して伝えようとする18歳の少女の物語という筋だけをとらえると、「なんか甘ったるい映画」と見えるかもしれませんが、この映画の場合は、初々しいチャン・ツィイーの姿から感じる「恋」のきらめきと、40年連れ添った夫を亡くして嘆き悲しむ老婦の姿から感じる「愛」のすばらしさを見るだけでいいと思います。極論ですが、物語の筋は付け足しといってもいいかもしれません。チャン・ツィイーという素材の輝きを使い切ったチャン・イーモウ監督のセンスに脱帽です。
少女の顔だけを延々と見せる手法は、決してアイドル映画の乗りではなく、不必要なものをカットして主体を強調するやり方だと思います。
物語としては省略されてほとんど語られていませんが、見終わったとき夫婦の40年間の軌跡がすべて分かったような気がします。それを強く感じさせるのが「恋」のきらめきだと思います。
今どきの日本の夫婦ですと、「恋」というとすぐに「不倫」の方へ行ってしまいがちですが、そうでない夫婦の「恋」と「愛」を描いたとても温かい映画だと思います。
チャン・イーモウ監督は映像に凝る人なんですか? 緑や紅葉の中を走る赤い服を着た少女の絵がとても綺麗です。でも、かなり加工をしてあるようで、少しやり過ぎかな。


パッション
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 35

監督:M.ギブソン 
公開年:2004年
原題通り「救世主(キリスト)の受難」を扱った映画。ユダの裏切りによって捕らえられて、ゴルゴダの丘ではりつけになるまでの12時間を克明に描き、そして復活までを見せる。
なんか重そうで、それに公開前のPRでは、残酷描写の部分だけがクローズアップされていたので、映画館では見ませんでしたが、レンタルでようやく見ました。
キリストの話は欧米の人たちには周知のことでしょうから、いきさつの説明は何もなく、物語は捕らえられたところから始まります。M.ギブスン監督は、ゴルゴダの丘に向かうキリストを、いわゆるリアリズムで描きたかったのでしょう。キリストを描いた、ほかの宗教映画では、象徴的に描かれるこのシーンがかなり克明に延々と続きます。普通の宗教映画では、宗教心を高めるためのエピソードをいくつも散りばめるものですが、この映画では、ゴルゴダでのキリスト「自身」の受難そのものを描いているといった感じです。
重そうな十字架を背負ったキリスト役の役者さんは大変だったでしょうが、このシーンが延々と続くことで、かえって単なる作業員の木材運びのようになってしまい、宗教的な訴えの強さというのは、かえって薄れてしまうような気がします。
宗教映画は難しいと思います。普通に作ったら日曜学校の教科書のようなものにしかなりません。宗教映画を見て少しでも面白くするためには、奇跡、スペクタクルといった視覚で引き付け、そして宗教の素晴らしさをちょっぴりでもいいから伝えるように作るのが一般的でしょうか。
いずれにしても、宗教映画は、見た人に、その宗教の素晴らしさを啓蒙することが目的になっている訳です。でも、この映画は、そうでないかもしれません。
キリスト教というのは、一言で言えば「愛」の宗教だと、私は思っています。「愛」という概念を創造したことで、キリスト教は普遍的となり、多くの信者を獲得することができたのです。もちろん「愛」という概念は、一般の日本人がイメージする「愛でる」「恋愛」「夫婦愛」等々に使われる「愛」ではなく、「至上の愛」つまり「神への愛」です。「神への愛」を最高のものと規定したことで、それ以外の「人間の愛」は、「獣の愛」として下位に置かれるものの、人間にとっては、とても到達し得ない「至上の愛」という最高の目標が出来たことになります。神職者を除く一般の信者にとっては、「至上の愛」に少しでも近づくこと、近づこうと努力することが、「獣の愛」をより素晴らしいものに出来るといった論理です。かなりはしょった強引な理屈ですが、私はそう感じています。
そういった観点で見ると、この映画は、観念的には、キリストの死が最大の愛と理解できるものの、リアリティという名の残酷描写やマリアの母性みたいなものを変に強調したため、一般の人には「愛」が伝わらなかったのではないでしょうか。
あちらこちらで登場する「サタン」の存在も、「神」と「サタン」の対決という陳腐な設定のように思えます。いらなかったのではないでしょうか。
そして、最後に、あの「復活」は失笑ものです。テレビの前でずっこけてしまいました。あれをストレートに映像で見せるということは、復活が単なる人間の生き返りになってしまって、評価を大きく落としてしまいました。


ハッピーフィート
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像 10
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 50

監督:G.ミラー 
公開年:2007年
この映画のすごいところは、なんといっても「CG」です。
まるで実写のようなペンギンたちの造形、画面いっぱいに広がる無数のペンギンたち、そして、リアルで迫力ある「海」や「雲」、「氷河」など、自然の表現…現在のCG技術の最先端を見ることが出来ます。これまでも、実写映画の中で、まるで実写みたいに使われてきた、さまざまなCG技術の結晶です。全編CGの映画はいろいろありますが、「リアル」という点では、この映画が最高かもしれません。是非、映画館の大画面でごらんください。
それと、この映画は、音楽とダンスが散りばめられたミュージカルでもあるんですが、ポピュラーな曲を中心に、選曲もいいですね。でも、若い人や、ましてや子どもたちにとっては、よくわからないでしょうが。
物語は、皇帝ペンギンたちの恋愛や夫婦愛、家族愛を描きつつ、氷河をすべるスピード感ある表現やアデリーペンギンの5人組のコミカルなやりとり、そして恐ろしいカモメやトドの攻撃などを織り交ぜながら、テンポ良く進みます。
ペンギンたちがみんな同じ格好をしているので、最初は、キャラクターの見分けがつかないのではと、危惧しましたが、結構うまくやっているようです。
CG映像など技術的には、最高の映画なんですが、テーマや構成については、突っ込みどころいっぱいの映画でもあります。
まず、テーマがよく分からない。映画の後半を見ると、魚の乱獲による地球環境の破壊の問題ともとれるのですが、それにしては、あまりにも底が浅い。確かに、魚の乱獲は大きな問題ではありますが、見方があまりにも一方的で、まるで「魚を食べるな」と言っているみたいです。ましてや、1匹のペンギンの訴えを、人間が聞いて論議が沸き起こり、解決に向かうという表現は、安易すぎます。第一、言葉が分からないのに、ペンギンの訴えが人間に伝わるというのは、子ども向け映画と割り切っても、非現実的ではないですか。ついでに、主人公の皇帝ペンギン、マンブルが背中に発信機をつけて登場するシーンは、ペンギンたちの位置を知りたいための人間側の方策であるという説明ではありますが、印象としては、なんとなく「人間の手先」に映って見えます。
映画の構成も、環境問題を持ち込んだことで、最後はばたばたと急いで、強引にまとめたという印象です。もっと違うテーマ、ペンギンの成長や冒険といったものに絞ったほうが、子ども向けにもよかったのではないでしょうか。そして、せっかく、素晴らしい音楽とダンスを見せたのですから、安易な環境問題で終わるのではなく、最後も最高のダンスで盛り上げて終わるべきではないでしょうか。最後の見せ場が弱いため、物足りないエンディングとなりました。


バトルフィールド・
アース
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 5(10)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 46

監督:R.クリスチャン 
公開年:1999年

ジョン・トラボルタが惚れ込んで制作したという、ちょっと変わったSF作品。彼が信仰している新興宗教の教祖が原作者だという話もあるようです。そういえばそんな感じもするなあ。
ほかのSF作品と違うところ。どうやらジョン・トラボルタ扮する地球を侵略した異星人のほうが主人公のようだということ。また、その異星人が人間に比べてふたまわりほど大きいこと。これは新鮮な印象でした。
人間側の反乱も定石どおりとはいえ、きちんと描いてあり、楽しめないわけではないのですが、どうしても変な感じが最後までつきまといます。

上でも書いてしまいましたが、主人公が人間でなく異星人である(ようだ)ということで、見ている側からは感情移入がしにくい映画ですね。いっそのこと、完全に異星人の話にしてしまうか・・・でも、そうすると、ますます異様な映画になるかも。


ハート・ロッカー
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 5(10)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 43

監督:キャスリン・ビグロー 
公開年:2008年
イラク戦争・・・じゃなかった。戦争は終わっていることになっているので、イラク戦争後に駐留するアメリカ軍の爆弾処理班のお話。「アバター」と競ってアカデミー賞で作品賞など6部門を受賞した映画。
冒頭、ガイ・ピアースが処理班の班長として登場するもののあっけなく殉職。後任として班長に着任するジェレミー・レナーと同じ班の2人との話。
テロリスト(ということになっている・・・くどいけど)が仕掛けた爆発物の物語なので、スリルは満点、ハラハラドキドキ。映画的には盛り上がりもあって作りやすいとはいえます。
ある映画評論家の方も書いていましたが、イラクで苦労しているアメリカの人たちにとって、「兵士たちはこんなに大変な状況で任務を果たしているんだ」と共感できる映画なのでしょう。そういう意味で、アカデミー賞などアメリカの各賞を受賞したのは、当然かな・・・・・。でも、巷で言われていた対抗馬の「アバター」が3Dを除くと、あの程度の出来なので、元々勝負にならなかったとも言えます。
でもなー。アカデミー賞に選ばれた映画にしては、ちょっと出来が悪いですね。
(ネタバレオンパレードです。ご注意を!)
前半、爆発物処理のあれこれを見せる部分、例えば、爆弾の起爆の信号を携帯電話で送るとか、処理班が3人でチームを組んで、テロリストの狙撃手がいないか、起爆係が近くにいないかなど警戒しながら処理を進めるところなど、細かく描写されていて、なかなかの出来です。
でも、中盤あたりから話がおかしくなっていきます。
班長のジェレミー・レナーの独断専行や無鉄砲さも、映画として面白さを出すためにはいいんでしょうけど、今起きているイラクの現実を伝えるという意味では、マイナスではないでしょうか。爆発物処理班が班長の独断で、テロリストを追ってイラク人の村に行くというのは、「おいおい、チョッと待ってよ。それはないでしょう」と突っ込みを入れたくなります。駐屯地を一人で抜け出して、イラク人の家にピストルを構えて押し入るというのも、同じように感じます。また、DVD売りの少年の遺体に爆発物が仕掛けられているのを見つけるシーンなども、テロリストの非道さを強調するための描写とも言え、この映画の戦意高揚への貢献度は、あの有名な「グリーン・ベレー」並みかもしれません。
エンディング近くで、爆弾を体に巻きつけられたイラク人に対して、主人公が言う言葉・・・「ごめん、助けられなくてごめん」。これを聞いて、私はこれがこの映画の主張なのかもしれない、イラクをなんとかしようとして行ったのに、どうにもならなかったという気持ちの吐露なのかなと勝手に考えていましたが、エンディングを見てそうでないことが判明しました。
家族の絆より、戦場の仲間の絆の方が重くなった主人公は再び、戦場に向かいます。それは、現実かもしれませんが、「テロとの戦いには意味がある」という結論でもあります。
最後に、私もわかりやすいように「テロリスト」という表現をしていますが、「テロ」というのは、あくまでもアメリカ人の視点、そしてそれを鵜呑みにした大方の日本人の視点であり、反対側から見ると「戦争の延長」「戦闘行為」かもしれません。そういった、引いた目がこの映画には感じられません。まあ、戦いの当事者である今のアメリカでは困難なのかもしれませんが・・・・。


パーフェクト
ストーム
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 41

監督:W.ペーターゼン
公開年:2000年


大嵐に遭遇したカジキマグロ漁船の乗組員たちの物語。実話をもとに製作したそうです。ジョージ・クルーニーが船長を熱演。なかなか様になっています。
この映画の最大の売りは、コンピュータグラフィックで作られた「波」です。ビデオで見たんですが、劇場で見ればかなりの迫力で圧倒されたでしょう。ただ、昨今の映画では派手なコンピュータグラフィックが普通になっているだけに、地味な印象はまぬがれません。
ほかにも売りがあれば良かったんですが・・・。

コンピュータグラフィックを除けば、あとはメチャクチャです。
まず、大嵐が来ているのが分かっているのに操業を続け、嵐への突入を決意する船長以下乗組員たちの動機づけが「たくさんの金を稼ぐこと」。実際もそのようなものでしょうし、実話をうたっている映画だけに仕方がないかもしれませんが、多くの人に見せる映画としてはもっと違った誰もを納得させる動機づけが欲しいところです。そうでないと、無茶をして遭難した馬鹿な漁師たちの話という印象しか残りません。第一、「板子一枚下は地獄」の世界だけに、本当の漁師はもっと安全第一なんじゃないですか。そのあたりのリアリティに首を傾げたくなります。
それに、話を盛り上げるアクションシーンとして必要なのかも知れませんが、大嵐のなか海に落ちた同僚を助けるため自ら海に飛び込み救出するシーンが再三出てきます。本当だったら自殺行為だと思うんですが、それがいずれも成功してしまいます。それはないんじゃないですか。また、投光器のアームのようなものに船長がしがみついて切断作業をするシーンも、本当だったらとっくの昔にはじき飛ばされているような状況のなかで成功してしまいます。まるでスーパーマンです。
途中で出てくるヨットと大型タンカーのような船。主人公たちの漁船との絡みは全くなく、「波」を見せたいがための演出にしか思えません。第一、あの大型タンカーはどうなったんでしょうか?
ほかにもいろいろありますが、基本的に脚本と演出にリアリティが欠けています。


バベル
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 38

監督:A.ゴンサレス.イニャリトゥ 
公開年:2007年
菊地凛子がアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたとして、盛り上がった映画。
モロッコで少年が試し撃ちしたライフルの弾が、バスで旅行していたアメリカ人夫婦の妻に当たったという話から、メキシコ、日本での、それぞれの物語にリンクしているというふれこみの映画。
時間軸に関係なく物語が展開するという作りは、最初とまどいますが、なかなかの手法だと思います。最近わりと見かけますが、このたぐいの映画にはぴったりですね。
この映画で、一番印象に残ったところは、本筋ではないのですが、モロッコの通訳の描き方が、とても好意的に描かれていたことです。
日本で、この映画を紹介するとしたら、「菊地凛子がアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたとして、盛り上がった映画」。ただ、それだけですね。まあ、芸能マスコミお得意の「作られたブーム」といった感じで、映画の方も、あまり期待しないで見たのですが、もっと酷かったですね。
(私のサイトは、だいたいネタバレなんですが、今回は特にそうです。ごめんなさい)
まず、なんといっても、監督が描きたかったこと(と思われること)、または、配給会社が観客にアピールしたかったこと(と思われること)が、ことごとく空振りしているということでしょう。「モロッコ、メキシコ、日本のそれぞれの物語が同時並行で語られる・・・」というフレーズ。確かに、その通りの作りなのですが、とくに日本の物語との関連としては、使われた銃の元来の持ち主が日本人だったということだけ。「えっ!たったそれだけ?」といった感じです。また、モロッコ、メキシコ、日本のそれぞれの舞台で語られるそれぞれのテーマや苦悩が、巧妙につなぎ合わさって・・・ということは、まったくありません。別々の話を、ただくっつけただけといった印象です。特に、日本での物語は、なくてもいいですし、そのほうがモロッコの方に集中できていいですね。
次に、「バベルの塔をモチーフに、それぞれの孤独な魂が・・・」というフレーズ。これも、文章にすれば、その通りなんですが、ひとつひとつの話が薄いですね。これは、モロッコ、メキシコ、日本と舞台が3か所あるため、それぞれ3分の1に薄まったという感じです。その「孤独」についても、アメリカ人夫婦の孤独は、「赤ちゃんが突然死したときに、夫が逃避、夫婦の間に大きな亀裂ができた」というもの。確かに、子供の死というのは、夫婦にとって悪夢ですが、では、そのとき、夫はどのように逃げたのか、それに対して妻はどうしたのか、という説明がまったくありません。まるで、「そのくらい描かなくてもわかるでしょう」といった省略のしかたなんですが、私には分かりません。そこを、もっと掘り下げないと、夫婦の孤独は理解できないし、観客に感銘を与えることができないと思います。第一、夫婦の危機をなんとか解決しようとして、小さな子供2人を残して、はるばるモロッコまで旅行するというのが、日本人の私としては、理解できません。アメリカでは普通のことなんでしょうか?
「孤独」が分からないという点については、日本部分も同じです。菊地凛子扮する聾唖の女子高校生(日本人から見ると、とても高校生には見えませんが、欧米人から見ると高校生に見えるんでしょうね)の孤独は何だったのでしょうか。確かに、映画の中で、すべてを明らかにする必要はありませんし、暗示とか省略は否定するものではありませんが、やはり、よく分かりません。多分、「母親の自殺が父親のせいだ」と思い、父親との関係に悩んでいるのかもしれません。しかし、その部分を徹底的に描いていないため、物足りなさが残ります。また、聾唖者という設定も、聾唖者ゆえの苦しみを描くという方向ではなく、外国人から見た、日本の女子高校生の風俗という描き方なので、どぎつく、後味の悪さが残ります。
と、ここまで書いてきて、こんな(私にとっては)些細(というのは言いすぎですが、もっと深い孤独を示して欲しかったという意味です)と思われることが、孤独な現代人にとっては、「孤独」なのかもしれないと、思い至りました。うーん!でも、もっと突っ込んで描いてほしい・・・でも、孤独な人からみれば、それ以上は突っ込んで欲しくないのかもしれません。・・・そういう意味では、監督や脚本家は、現代の孤独をよく理解しているのかもしれません。でも、私はよく理解できません。時代遅れになったのかな、と悩んでしまいます。
この映画は賛否両論あるようですが、どうやら、その理由は現代の孤独を理解できるか、そうでないかの違いなのかもしれません。私には理解できませんでした。


パラノーマル・アクティビティ
テーマ
脚本×2 2(4)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 36
監督:オーレン・ペリ 
公開年:2009年
(ホラー映画のネタバレは厳禁でしょうが、この項目、ネタバレ満載です。ご注意を)
低予算で作ったホラー映画が大ヒットして話題になった作品。
夜、物音や気配などがして何か霊に取り付かれているのではないかと感じている女性。その恋人の男性がその正体を突き止めようと、ビデオカメラとマイクを女性の自宅にセットして、深夜の異変を記録しようとします。そして、そこに映っていたものは…というお話です。
最近のホラー映画のひとつの傾向として、「ブレアウィッチ・プロジェクト」に代表される「ドキュメンタリー風」の映画で、プロットとしてはアイデアもよく面白そうだと期待していました。
でもこの映画、面白くありません。
低予算で、舞台が家の中だけ、それもベッドルーム中心…というのは、特に悪くはありません。それでも、脚本と演出がうまければ、第一級のホラー映画を作ることは可能です。あの「ブレアウィッチ・プロジェクト」のように…。
しかし、この映画は、展開が単調で、ホラー映画としての怖がらせ方も一本調子…ですから、それほど怖くもありません。あのスピルバーグ監督もリメイクを検討したという宣伝もなされましたが、彼が作ればもっともっと面白くなったことでしょう。アイデアがいいだけに残念ですが、力不足です。
それと、一番問題なのは、映画そのものではなく、公開前にテレビで盛んに流された映画のCMです。CMに使われているのは、ちょっとよくわからないでしょうが、エンディングそのものです。ホラー映画(に限りませんが)で、見る前にエンディングを見せられたらたまりません。また、DVDには別エンディングのバージョンもありますが、さすがに公開版のほうが、いくらかいいですね。
それからもうひとつ、日本と欧米では、幽霊(霊)の描き方が大きく違います。日本では足がなくて、恨みをもって…というイメージですが、このなかに出てくる霊(なんでしょうね)は、足音はするは、足跡は残すは、しまいには○○は引っ張るはと、ハードな印象で、
その違いがよくわかります。

ハリー・ポッターと アズカバンの囚人
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 69

監督:A.キュアロン  
公開年:2004年

ベストセラーのファンタジー小説「ハリー・ポッター」の映画化第3作。
1作目の「ハリー・ポッター 賢者の石」を見て、特に面白いと感じなかったため、2作目はまったく見ていません。しかし、今度は面白いかもと思い、家族で見ました。
原作を忠実に描こうと必死だった(と思われる)1作目と比べると、3作目は「映画としては」ましになりました。
多分、大幅に原作を割愛し、映画的に面白い部分をふくらませたのだろうと思いますが、おかげでテンポも出てきて、最後まで楽しめました。
原作が面白いのでしょうけど、脚本は、伏線もいろいろ張り巡らせて、ストーリーも二転三転・・・工夫されており、よくできましたというところです。
それと演出。冗長になりがちな映画をうまく引き締めていると思います。原作のファンからすると、物足りないかもしれませんが、小説と映画は別物です。文章を元にそれぞれの読者が想像を巡らせる余地が多い小説に対し、映画は映像と音声という具体的なイメージをリアルタイムで提示するもので、成り立ちがもともと違います。
原作を持つ映画を製作する場合、常に「原作に忠実」と「映画的に面白い」の間でのバランスの取り方が難しいと思いますが、がんばったほうだと思います。
「家族の愛」というテーマが、1作目より分かりやすく描かれており、見終わったあとの気持ちも温かくなります。
1作目は、子ども向け映画としては優れていると思いますが、大人の鑑賞に堪えるかという点では疑問です。それは、原作があくまでも子どもを対象にしたファンタジー文学だからであり、同じファンタジー文学でもたとえば「指輪物語」とは違う点です。
今回の3作目は、対象を1作目より上の年齢にシフトしています。それでも、子どもが十分楽しめる作りにはなっており合格点といえます。


ハリー・ポッターと死の秘宝PART1
テーマ
脚本×2 5(10)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 56

監督:デヴィッド・イェーツ 
公開年:2010年
映画「ハリー・ポッター」シリーズもこれで完結。といってもPART1とPART2に分かれているので、あと1回ありますけれども・・・。
いよいよヴォルデモードとの最終決戦とあって、映画では冒頭から“ハードモード”で始まります。敵の追っ手を逃れながら、ヴォルデモードを倒す唯一の方法である「分霊箱」を探す旅に出ます。ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が、時には反発しながら、力を合わせて目的に向かって進んでいくという、ファンタジー物語の「王道」をまっしぐら。今までのしリーズの中では、どちらかというと時間をあまり感じさせないテンポの良さ、速さで、一気に見せます。
最後のPART2に向かって「全開」といった感じで、見せ場の連続。一気にもっていこうという意図はよくわかりますし、それしかないのかもしれませんが、反面、「一本調子」といった感じにも見えます。
長い長いお話の最終章ですので仕方ないのかもしれませんが、魔法学校とか人間の世界とかは、ちょっぴり描かれるだけで、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人と敵との戦いがどんどん進みます。前回の映画までは、それなりに学校での話しや色んな先生のエピソード、謎の解明などを織り交ぜていて、それなりに広がりがあったんですが・・・。主人公3人のキャラクターが立ちすぎて、脇役が少しかすんでいる感じがします。
まあ、PART2で、そのあたりの不満をぱっと解消する素敵なエンディングを期待したいと思います。
でも、「分霊箱」を探して壊す旅なんて、ますます「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」に似てきましたね。「指輪物語」がすべてのファンタジーの元祖だから仕方のないことかもしれませんが・・・。


ハリー・ポッターと  不死鳥の騎士団
テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 56

監督:D.イェーツ 
公開年:2007年
ハリー・ポッターシリーズの第5作目。今回は、ハリーたちが「ダンブルドア軍団」を結成して、宿敵、ヴォルデモート卿と対決するというお話。ハリーたちがヴォルデモート卿に対決するために、密かに魔法の練習を続け、それが効果をあげるという展開は、定石どおりとはいえ、愉快です。また、魔法省から「魔法大臣の地位を横取りしようとしている」という嫌疑をかけられて、ホグワーツ魔法学校のダンブルドア校長が姿を消し、新たに魔法省からいじわるそうな女性の先生が送り込まれるというエピソードが加わり、ハリーたちとその先生との対決も見ものです。
今回は、これまでより「バトル色」が強いかなと思います。ヴォルデモート卿との対決シーンなどは、まるで「スターウォーズ」か「ロード・オブ・ザ・リング」のようでもあります。その分、1、2作目などにあった、魔法学校での子どもたちの様子を描いた、ほんわかとした「ファンタジー色」が薄れたような感じがします。まあ、物語を展開していくうえで、このような変化は当然なのかもしれませんが・・・。
そして、前作の第4作目には姿を見せていなかった、ハリーの引き受け家族のダーズリー一家が元気な?姿を見せているのが、うれしいところです。でも、ダーズリー家の子どもが成長していて、最初は「誰だろう?」と思ってしまいました。
今回も、家族で見に行きました。最初の30分ぐらいが、物語を進めるために説明的になりすぎ、ちょっとたいくつしました。眠くなりました。しかし、中盤からはテンポもよくなりました。特に、魔法省から送り込まれてきた先生のキャラが、ステレオタイプとはいえ、なかなかのはまり役で、子ども向けの映画としても分かりやすく、楽しめました。そして、ヴォルデモート卿との対決は、迫力もあり楽しめました。
毎度おなじみネタバレ注意
でも、ハリーがキスをする中国系の女の子の描き方が中途半端で、あれは何だったのでしょうか?映画の中で、ハリーが異性として初めてキスをする相手という、普通だったらかなり大きな役になるだろう、この女の子は、最終的に、ハリーたちを裏切ることになりますが、映画では、そのあと何のフォローもなく消えてしまい、ちょっと可愛そうな気がしました。次回作で、なんらかの展開があるんでしょうか?
それと、このハリー・ポッターシリーズのように、話が続いているシリーズ物の場合、見に行く前に、前回までの展開をもう一度、復習していくことが必要なようですね。前半が分かりにくかったのは、そのせいもあるかもしれません。反省!


ハリー・ポッターと
炎のゴブレット
テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 53

監督:M.ニューエル 
公開年:2005年
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」に続く、シリーズ第4作。今度は、三大魔法学校対抗試合の選手に、17歳という年齢制限に満たない14歳のハリーがなぜか選ばれるというお話。
おなじみのハリー、ロン、ハーマイオニーが登場、それぞれのキャラが良く出来ています。14歳という設定にはとても見えないけど、欧米の子ども達は日本の子ども達より大人に見えることもよくあるし、ましては映画の中で10歳や20歳設定年齢が違う役なんて、ざらにあるので、ぎりぎり何とかなっているというところでしょうか。それにしても、ハーマイオニー役のエマ・ワトソンは大人っぽくなりましたね。ハリー・ポッターでのイメージが強烈過ぎて、将来ほかの映画に出ても苦労しそうな、ダニエル・ラドクリフと比べると、ポスト・ハリーポッターが楽しみです。
トリックや謎解きを絡めた変化に富んだ構成や、ハリーの父親への思いと大人へ向けての成長の一つの過程を見せて、最後には感動的すら与える、大人の鑑賞に堪えられる作品だった、3作目の「アズカバンの囚人」と比べると、少し子ども向けに戻ったかなという感じです。
ただ、話を進めるためでしょうか、ダーズリー一家や意地悪な金髪の男の子(すみません名前を忘れてしまいました)など、おなじみの登場人物が出てきません。確かに、物語の進行上、必要は無いでしょうが、「ハリー・ポッター」のようなシリーズの映画では、おなじみの面々が、ちょっとでも出てくると、ファンは満足するものです。そのあたりのサービスが欲しかった気がします。そのためという訳ではないでしょうが、物語の展開が、平板になった感じはします。三大魔法学校対抗試合がほとんどになるため、場面展開が少ないのも、平板な感じを受ける理由かもしれません。
それと、細かいところですが、三大魔法学校対抗試合の課題のひとつにドラゴンとの戦いがあり、4人の選手に対し、魅力的な4頭のドラゴンが登場します。ここは、見せ場になるなと期待してみていくと、ハリーの対決は描かれていますが、ほかの3人の選手がどのようにドラゴンと戦ったのかが、まったく省略されています。魅力的なドラゴンたちでしたので、期待していたのですが、肩透かしです。ここは、10秒でもいいから、ほかの3人が戦う様子を入れるべきではなかったでしょうか。
私は原作をまったく読んでいないので、原作を読み込んでいる人からすると、見当はずれのところもあるかもしれません。そこが、人気小説などを基にした映画の難しいところですが、映画として評価するときには、原作とは別物として見るしかないと思います。だって、表現方法がまったく違うのですから。


パール・ハーバー
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 52

監督:M.ベイ  
公開年:2001年

ご存じ、日米開戦60周年に合わせて製作されたロマンスあり、アクションありの戦争映画。TV・CMで繰り返し流れていた日本の艦上爆撃機からの爆撃のCGシーンが印象的ですが、実際かなりの迫力で、戦闘の再現という意味では予想以上によくできていたと思います。以外と実写をたくさん使っていますし、CGシーンについてもそれほど嫌みもなくうまく使っています。
映画の構成は、ほとんど「タイタニック」と同じで、前半がラブロマンス、それがだれそうになってきたところでタイミング良く大スペクタクルに移るというもの。オーソドックスな構成であり、ロマンスとアクションをそれぞれちゃんと作ればいい作品になるんですが・・・。

アクションシーンは予想外にいい出来だったこの映画。でもドラマ部分といいますか、前半のロマンスの部分は「タイタニック」と同じでクサイですね。最近のアメリカ人(そして日本人も)は、このような話が好きなのでしょうか。「やっぱりみんなが好きなものはメロドラマだよ」ということなのでしょうか。イギリスで死んだはずの若者が恋人の元に返ってくるところまではいいと思うんですが、その後の葛藤の描写はワンパターンです。ましてや最後には、恋人を奪った形になった友人が戦闘で死んでしまい、また元の鞘に収まってめでたしめでたし・・・。なんじゃこりゃ!? 古い表現で申し訳ありませんが、これでは日本のかつてのトレンディードラマのノリです。間に挟まった女性の気持ちはどうなるんでしょうね。私には理解できません。
それと、私が日本人だという訳ではありませんが、最後の日本本土初空襲は、「負けっ放しでは・・・」という気持ちは分かるんですが、物語が強引でくどいですね。アクションを盛り上げるため、そしてつじつま合わせのため、主人公たちはまるでスーパーヒーローになったように活躍し、ご都合主義のオンパレードです。このあたりも最近のアメリカ映画の悪い癖ですね。


ザ・バンカー 
巨大地下要塞
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 36

監督:R.グリーン  
公開年:2001年


第二次世界大戦末期、ドイツ軍歩兵の小隊の数人の兵士が連合軍の攻撃から逃れて、ある掩ぺい壕にたどり着きます。掩ぺい壕には老人兵と少年兵の2人がいるだけ。でも、この掩ぺい壕は何か変。実は、地下には迷路のようにトンネルがあり、謎が隠されていたのです・・・。という出だしはなかなかホラーとしてそそられるものがあります。
掩ぺい壕の中だけで話が進み、時折よくわからないんですが捕虜か脱走兵かの虐待のシーンが織り交ぜられ、サスペンスを盛り上げます。
イギリス人の監督、俳優で作ったドイツ軍の物語という変な映画ですが、使用する銃は戦争後期の突撃銃MP44など、兵器考証的には見るべきものがあります。
「劇場未公開だけど、ひょっとしたら掘り出し物かも・・」と思って見ましたが、やっぱり「コケました」。
監督のコメントによりますと、戦場を舞台にしたホラーの構想が浮かび、勝ち組の連合軍よりも負け組のドイツ軍のほうがイメージにあうということで、このような設定になったそうです。コンピュータゲームの傑作「ウルフェンシュタイン3D」やマイケル・マンの映画「ザ・キープ」を思わせる設定ですが、内容があまりにも中途半端です。最初の思わせぶりな伏線も、それが生かせないまま終わった感じです。なにを言いたかったのか分かりません。ホラーはある程度、謎が残ったほうがいいんですが、いくら何でも分からないことだらけです。
劇場未公開映画は、やはりはずれも多いですね。だからこそ未公開になるんでしょうけど・・・。がんばれ!


パンツァー    鋼鉄師団
テーマ
脚本×2 0(0)
演出×2 0(0)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点

監督:ボブ・カールスハー
公開年:1999年


いやー思いっきりはずしてしまいました。映画になっていません。唯一の見所は、現存する第2次世界大戦中の戦闘車両の動く姿がみられることだけです。

見た感じでは、ミリタリーコンベンションの延長のようなもので、マニアの方々に集まってもらって戦争ごっこをしてもらい、そのまま撮ったような感じです。
従って、テーマも支離滅裂、何がなにやら分かりません。脚本や演出もないに等しく滅茶苦茶です。
まあ、あまり期待してはいませんでしたが、ひどすぎました。


ヴァン・ヘルシング
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 72

監督:S.ソマーズ 
公開年:2004年

バチカンの秘密組織の命を受けてモンスター退治をするヴァン・ヘルシング教授とドラキュラたちとの死闘を描いたアクション映画。
この映画、ホラー映画ではありません。アクション映画です。そして、一言で言えば「全編クライマックス」です。したがって、ストーリーとか物語の緩急などは眼中にありません(そう思えます)。観客を飽きさせないように次から次にアクションシーンがやってきます。
では、最近はやりのハリウッドアクション映画のように、物語に深みもなく、感銘もなく、ただ飽きさせないだけの映画かというと・・・・・。
そういう面はあるかもしれませんが、ここは従来と違う映画へのチャレンジと、好意的に考えたいと私は思っています。例えば、「キル・ビル」。ちょっと見には、エピソードをつぎはぎしただけのスプラッター映画ともとられかねない映画ですが、独特の編集を加えたスタイリッシュな映画と私は考えています。それと同じように、この「ヴァン・ヘルシング」も、アクションの楽しさを伝えるために、あえて従来の映画の手法を無視したのではないかと私は感じています。
映画は楽しければいいんじゃない・・・そう感じさせる作品です。
あまり難しいことを考えずに、楽しんで見ればいい映画です。
しいて言うと、主人公のヴァン・ヘルシング教授が目立たないかな。最後を除いて、画面が前編暗い色調のため顔が良く見えないということもあるのでしょうが・・・。かえって、ドラキュラのほうが、いい感じです。まあ、敵役が魅力的なほうが、映画は面白いんですが。


非常戦闘区域
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 46

監督:D.カルパルソル  
公開年:2002年

スペインの国際平和維持軍の兵士たちが、内戦のコソボで対面した危機を描く戦争アクション映画。
ポーランドの平和維持軍の活動を描いた「デモンズ・ウォー 戦場の死神」や、セルビア軍とボスニア軍が対峙する中間点に取り残された兵士たちの戦いを非情に描いた「ノー・マンズ・ランド」、イギリスの平和維持軍を描いた「ウォリアーズ/インポッシブル・ミッション」など、コソボ紛争を描いた映画は最近多いようです。
それぞれの映画の描き方は違いますが、共通して語られるのは、内戦に対してほとんど身動きのとれない、もしくは積極的に動くわけにいかない平和維持軍の苦悩する姿です。
それらの中では、この「非常戦闘区域」は、割と派手なほうですが・・・・。
スペイン軍現用の装備は、ライフルの「セトメ・モデルLC」や新型迷彩服、防弾ジャケットなどよくわかってGOOD。
上で、「派手」と書きましたが、私が見たいくつかのコソボ紛争をテーマにした映画の中では、この「非常戦闘区域」は、ゲリラとの銃撃戦もたくさんあり、「平和維持軍」とも思えない派手な立ち回りが目立ちます。実際、現地ではそのようなこともあったかもしれませんが、劇的効果を高めるための誇張のようにも思え、ややリアリティを損なう感じです。
最初に描かれていた平和維持軍としての苦悩が、後半では派手なアクション映画に変わってしまった感じです。
それから、瀕死のスペイン軍の兵士を仲間の兵士がナイフで殺害するシーンも、理解に苦しみます。
いずれにしても、コソボ紛争は、ついこの間のことだけに、映画としては後味の悪いものにしかならないようですね。


ヒストリー・オブ・バイオレンス
テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 64

監督:D.クローネンバーグ 
公開年:2006年
冒頭、うさん臭い男2人の会話の長回し、何かあるなと思わせたあとの、バイオレンス現場のショッキングなシーン。最初のつかみが素晴らしく、ぐいぐいと引き込まれていきます。
話は、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作で、アラゴルンを演じたヴィゴ・モーテンセンが主人公で、自分が経営する小さな飲食店に押し入った2人組の強盗を、すばやい動きで射殺し、一躍街の英雄になったものの、その直後から主人公の黒い過去を知っているというマフィアが周辺に現れて・・・・といった物語。
全体の構成としては、冒頭、前半、中盤、後半と適度にバイオレンスシーンを入れ、あきさせないようにしているところが、うまいというか、計算的というか。おかげで、一気に見せてくれます。
モーテンセンの演技は、ちょっと表情が分かりにくいところもありますが、過去を捨てて、真人間として生きていきたいという男を頑張って演じています。でも、一番印象的なのは、主人公にまとわりつくマフィアのボスを演じたエド・ハリスでしょう。左目周辺に大きな傷を持つ、異様な形相で、相手をにらみつけるところは、迫力満点です。
この映画、テーマが難しいところですね。バイオレンスをやめようとしても、自分と家族を護るためバイオレンスを繰り返してしまう男の苦悩と、暴力の怖さ、逃れられない過去、そして家族とは・・・といったところでしょうが、途中で挿入されるバイオレンスシーンでは、どうしてもある種の「快感」を感じてしまい、観客としては戸惑ってしまいます。単純にアクション映画と割り切ることも出来ず、といってバイオレンスを完全に否定しているわけでもなく、人によっては中途半端と感じるかもしれません。
それから、この監督は、ホラー関係も多いからでしょうか、理詰めで映画を作るタイプに見えます。 バイオレンスシーンを適度に挿入していく構成や、途中で2回描かれる夫婦のセックスシーン。1回目は、夫婦の「日常」の表現、2回目は離れようとする妻をなんとか引きとめようとする「男のあせり」の表現ともとれますが、そのあたりの説明がなんとなくついてしまうところが合理的で、「上手い」反面、「いやみ」に感じられるかもしれません。
最後、家族のシーンで、セリフもまったくなく、ストンと終わるところは、この終わり方しかないかもしれませんね。


ピースメーカー
テーマ
脚本×2 5(10)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 59

監督:M.レダー  
公開年:1997年


「アイズ・ワイド・シャット」を見た後、その関連という意味でニコール・キッドマンが出ていたので、ビデオを借りて見ました。コソボ問題や核ミサイルを織り込んだ物語は最近のアクション物によくある話。キッドマンとジョージ・クルーニーのコンビもこれまでにどこかで見たような感じで、物語がややあっさりしすぎかなと思いますが、テンポよくまとめてあり意外と面白かったです。
中盤の見せ場、カーアクションは、アクション物には欠かせないものですが、主人公の怒りの感情がよく出ていてひと味違う迫力満点の出来でした。

この種のアクション物では多少のご都合主義は仕方がないと思いますが、あまりにもリアリティに欠けます。大統領の命を受けテロリスト対抗チームの総指揮をとっていたキッドマンが、いつの間にか現場スタッフになってかけずり回る姿は、荒唐無稽な映画としてはアリなのかもしれませんが、リアリティのなさが物語の緊張感を大いに損ないます。
それと、混迷を深めるコソボ問題を絡めて物語に深みを出そうとしているのはわかりますが、それだけに後味が余りよくありません。この種のアクション物はもっとスカッとした設定の方が楽しめると思います。


ビッグ・フィッシュ
テーマ 10
脚本×2 9(18)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度 10
総合点 89

監督:T.バートン 
公開年:2004年
見たかった映画だったのですが、映画館で見逃したのでレンタルで見ました。
子どものころ、色んな楽しい話をしてくれた父親の病状が悪化して明日をも知れない状態。大人になった息子は、父親の話は単なるほら話だと思っており、子どものころ父親が家を空けがちだったこともあって、反発する気持ちを抱いていました。しかし、父親の話が実は事実を基にしていたと少しずつ分かりかけてきて、父親と息子が理解しあえるようになるというお話。
「シザーハンズ」「スリーピー・ホロウ」「マーズアタック」など独特の世界を展開するティム・バートン監督は、それぞれのシーンをファンタジックに描きます。そして、父親のほら話の真実が次第に明らかになるにつれて、観客の心の中には感動が広がります。原作もいいのでしょうが、なかなかの手腕です。
見た後、幸せな気持ちが広がります。お勧めです。
「ビッグ・フィッシュ」とは「ほら話」という意味。そのほら話の中に真実があります。
チャン・イーモウ監督の「初恋のきた道」などもそうなのですが、この映画も、実際に父親もしくは肉親を亡くした経験があれば、より共感できるといった映画です。
子どもは、親の真実を理解できるようになって、初めて子どもから大人になると感じさせる内容です。自分もそんな父親になりたいですね。


HERO
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 49

監督:鈴木雅之 
公開年:2007年
テレビの人気ドラマの映画版。木村拓哉が型破りの検事に扮し、松たか子の事務官や同僚の検事らと、様々な事件に取り組む姿を描くドラマで、テレビでは、なかなか楽しませてもらいましたが、映画化がどうなっているか興味を持って見ました。
映画化という点では、がんばっていると思います。基本的に「タダ」のテレビと違い、映画の場合はお金を出して見てもらわなければならないため、テレビの延長というだけではなく、いかに観客にサービスするかがポイントの一つとなります。
その点では、韓国ロケで、人気スターのイ・ビョンホンの友情出演や、松たか子と松本幸四郎の親子共演、テレビのスペシャル版の後日談なども織り込んで、丁寧に作ってあると思います。テレビ版を知らないと分かりにくいところも多々ありますが、そこはファンへのサービスを重視したということで、一応納得できる作りではあります。
映画の中盤までは、良く出来た「映画化」という感じで見ていました。検事にしては、みんなヒマそうにしているとか、法廷の描き方など、けちをつければいくらでもありますが、それも映画を面白くさせる「演出」の延長と考えれば、ギリギリ納得できるところではあります。
そして、クライマックスの法廷シーン。大物代議士役でタモリが出てきたときに、ちょっと不安が頭をよぎりました(別にタモリが悪いというわけではないのですが)・・・。そして、その不安は的中しました。
検事の木村拓哉が、法廷で証人の大物代議士につかみかかります!! 
いくらなんでも、それはないでしょう。
そして、松本幸四郎扮する被告の弁護人。法的正義からみると、被告に非があるという状況ではあるにしろ、法廷では何の弁護もせず、ただ検事の演説を聞いているだけです。心情的に検事に同調しているところはあるという設定ではあっても、そこは、少しは弁護をすべきではないのでしょうか。それでないと、その前に弁護人が強調していた、「冤罪を作ってしまう危険を感じ、検事を辞めて弁護士になった」というセリフと矛盾します。法廷ドラマとしての面白みは、このクライマックスシーンには少しも見られません。
そして、極めつけは、同僚の検事たちが、「証拠の写真を見つけた」といって、突然、法廷に乱入するシーンです。ドラマとしての盛り上がりを表現したというところなんでしょうけど、あまりにも現実離れしています。
全体的には、丁寧に作ってあるだけに、途中までは「60点以上あげられるかも」と甘い評価をしていましたが、クライマックスの法廷シーンで台無し。落第点となりました。


HERO
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 81

監督:C.イーモウ  
公開年:2003年
チャン・イーモウ監督が戦乱の中国を舞台にして作った歴史スペクタクル映画。秦の始皇帝を狙う3人の刺客を倒したという男が、始皇帝との謁見を許され、始皇帝に3人を倒した様子を語る。話が進むにつれて、とうとう始皇帝から10歩のところまで近づいた男は・・・。
どちらかというと田舎の素朴な人々の話が多かったチャン・イーモウ監督ですが、「初恋のきた道」あたりから、世界を含めより多くの観客に受け入れられやすい映画を作るようになってきたように思います。
今回は、アクション映画。ワイヤーアクションも初めて。剣劇もこれまではなかったような気がします。いろいろ新しいものにチャレンジしていて、それをうまくこなしていると思います。
主人公のジェット・リーは、さすがにアクション映画をたくさんとっているだけに、動きがよくカッコいいですね。ほかの3人の刺客たちも、それぞれの味を出していて、魅力的です。
アメリカのスペクタクル映画とは、一味も二味も違う、アジアンテイストいっぱいの映画です。
とくに注文をつけるところはありません。従来のチャン・イーモウ映画のファンからすると、「変わってしまった」という印象をうけるかもしれませんが、今、チャン・イーモウ監督は過去の栄光にすがることなく、いろんなことに挑戦しているのだと思います。


ブエナ・ビスタ・   ソシアル・クラブ
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 9(18)
映像
音響 10
主演
助演
おすすめ度 10
総合点 88

監督:W.ヴェンダース
公開年:1999年


これはヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画です。普段、どちらかというとテーマを強く訴えるといったスタイルのドキュメンタリー映画もしくは番組を見慣れている目からすると、キューバの音楽が流れる合間に、演奏する老ミュージシャン達が自分の生い立ちや音楽について語るというシンプルな作り、ゆったりとしたリズムが逆に新鮮な印象を与えます。こういう作り方もあるんですね。
この映画を見て思うこと・・・「音楽って本当にいいものですね」
一度は忘れられたキューバの老ミュージシャン達が、ひょんなきっかけから再び脚光を浴びるようになるまでの、とまどいや喜びなどがよく描かれています。
ことさら力を入れないで淡々と描かれますが、最後にカーネギーホール公演で客席から舞台にキューバの国旗が渡され、老ミュージシャン達がやや控えめにでも誇らしげに国旗を掲げる姿には胸が熱くなるものがありました。
人間の人生の重みのようなものが感じられるいいドキュメンタリー映画です。

特に注文をつけることはありません。ただドキュメンタリー映画ですので、点数や順位は他のフィクション映画とは同列に語れません。その点どうかご了承を。


プライベート・
ソルジャー
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 5(10)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 48

監督:J.アーヴィン  
公開年:1998年
第2次世界大戦のバルジの戦いは有名ですが、その前に「忘れられた戦い」ヒュルトゲン攻防戦というのがあったんですね。知りませんでした。
日本未公開のTVムービーなので、多額の制作費をかけた最近の劇場用の戦争映画と比べて、戦闘シーンでは見劣りするのは仕方ありませんが、それなりに頑張っています。
びっくりしたのは主人公の古参兵や新兵たちのメイク! まるで死人のような顔面蒼白というか真っ白。ちょっとやりすぎとは思いますが、異様な迫力があります。
卑怯な手段をとってまでも生き残って戦場から逃れたいという主人公の古参兵のキャラクターは、「プラベート・ライアン」などの戦争映画に多い、必死になって義務を果たそうという主人公とは対極にありますが、それもありかなと納得させられます。 戦争映画としては異色ですが、どこか気になる映画ではあります。
脚本がどうにも納得いきません。リアリティがないんです。例えば、主人公の古参兵が新兵を連れて偵察に出かけるシーン。途中までは分隊で行きますが、その後なぜか経験が全くない新兵1人を連れて先に進みます。そして、敵と遭遇すると、あっさりとその新兵を置き去りにして逃げてしまいます。なぜ、そのような行動をするのか、どう考えても分かりません。卑怯な主人公の性格を印象づけるためだけの、無理な設定のように見えます。このように、ストーリーにちぐはぐなところが多く、しらけてしまいます。
上でも書いたように、他の戦争映画と違うものを狙った意欲作と言えるだけに、細かなところをしっかり作れば、もっとよかったのにと残念です。
それと軍装にはあまり詳しくないんですが、ヘルメットとか戦闘服とかおかしくないですか。現用のドイツ軍のものなどに似ているような気がします。


フラガール
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 74

監督:李相日(リ・サンイル) 
公開年:2006年
次々に炭鉱が閉鎖され、活気を失っていく街を救おうと、炭鉱から湧き出る温泉を活用したレジャー施設を作り、その目玉として地元の女性によるフラダンスを導入した「常磐ハワイアンセンター」の実話を基にした映画。
フラダンスの先生として呼ばれた元SKDのダンサーと、フラダンスに必死に取り組む女性たちとが、次第に心を通わせていく様子を軸に、レジャー施設に批判的な炭鉱街の人たちや組合などの姿を絡ませて描いています。
この種の映画によくある、いわゆる「スポ根映画」の変形みたいな映画かなと思って見ましたが、なかなかよく出来ています。もちろん、女性たちのフラダンスが次第に上達していく姿は、定石どおりに押さえた上で、炭鉱の閉鎖という時代の波に潰されていく人たちの困惑や苦悩といった側面もしっかり描いています。この部分が、的確に描かれているため、単なる「スポ根映画」には、なりませんでした。また、深読みかもしれませんが、単に昔の苦しい時代を描いただけにとどまらず、国民の中に格差が広がり、いわゆる「負け組」が急増している現在の日本の姿も重なって見えます。
元SKDダンサー役の松雪泰子も、ややステレオタイプな役作りではありますが、寂れた炭鉱街に流れ着いた女性の姿を熱演しています。新人の蒼井優も輝いていますし、その兄役の豊川悦司や、母親役の富司純子らも、なかなか良い味を出して、映画を引き締めています。
物語後半に差し掛かるところで、松雪扮する元SKDダンサーがバスの中でしみじみ話すシーンで、彼女の言葉が東北弁になって、生徒の女性たちと次第に心を通わせてきている様子が、さりげなく描かれていて、GOODです。
また、この種の映画の大きなポイントであるフラダンスの踊りですが、速成の技ですので、専門家的には今ひとつかもしれませんが、映画的にはあれで十分合格点だと思います。そして、何より、最後にフラダンスをたっぷり見せる。これは、映画のお約束であり、そこをしっかり見せたので、気持ちよく見終わることが出来ました。
よくできた映画だと思います。
主役、脇役ともに、キャラクターがしっかり描かれていますが、子連れでフラダンスに頑張る女性など、一部もう少し、生活や人柄などを描いたほうが、より映画に深みがでたとも思いました。しかし、そこは、監督の判断の部分ですし、キャラクターに強弱もうまくいっていますので、改めて注文をつけるほどではないでしょう。でも、南海キャンディーズのしずちゃんは、映画の客寄せで、いろいろクローズアップされた割には、今ひとつだったかなと思います。


ブラックバード・フォース
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 33

監督:A.バローリ 
公開年:2007年(制作は2003年)
珍しいイタリアの戦争物というか、民族間で激しく対決したコソボ紛争に派遣されたイタリアの国際安全保障部隊の物語。
同じ状況を描いたイタリアの「ブラックバード・ライジング」という映画もあり、続編というわけではないので、勝手に同じような邦題をつけたのでしょう。
物語は、イタリアの部隊が、民族の違う夫らから殺されると訴える女性を保護するが、乗っていた装甲車が地雷にあって動かなくなり、民家に逃れるというもの。民族間の根深い対立や、きれいごとではやっていけないと主張する女性の言動など、シビアな雰囲気が伝わってきます。
(ネタばれ注意)物語は、保護した女性を乗せた装甲車がトンネルの落盤事故の影響で部隊から離れてしまい、その挙句に地雷を踏んで、乗っていた兵士や女性が民家にたてこもるという、いかにもといった展開で新味はまったくありません。
そして、国際安全保障部隊が住民を射殺し、保護した女性は逃げてしまい、最後は簡単に救出のヘリコプターがやってきて唐突に終わります。何かよくわかない結末で、観客は放り出されてしまいます。それだけ、民族紛争の根は深いということなのかもしれませんが・・・もう少し何とかしてもらいたいところです。
でも、今のイタリアの人たちにとって、一番身近な戦争、紛争がコソボだということはよくわかります。陳腐なアクション映画で、映画としての出来は今ひとつですが、その事実に向き合っていることは、評価したいと思います。振り返って、日本の映画界が、自衛隊のイラク派遣を描くことがあるのでしょうか。多分無いでしょうな。
最後に映画で出てきた銃器について。「ブラックバード・ライジング」と同じで、イタリア軍現用のライフル「ベレッタAR70/90ライフル」が出てきます。これは、その前モデルの「ベレッタAR70ライフル」の機関部を大型化して強化したモデルで、ちょっと無骨ですが、いかにも頑丈そうです。華奢で壊れやすそうな日本の自衛隊の89式ライフルよりは、頼りになりそうな印象を受けます。


ブラックバード・ライジング
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 36

監督:C.ボニヴェント 
公開年:2005年(製作は2003年)
民族が激しく対立しているコソボに派遣されたイタリアの国際安全保障部隊の物語です。
資料によりますと、イタリアのテレビムービーのようですが、イタリア軍の全面協力を受けているのか、戦車(レオパルドT)、装輪装甲車(センタウロB1戦車駆逐車)、各種のヘリコプターなどが動員され、登場する車両では劇場映画顔負けの充実ぶりです。
ストーリーの方は、コソボへの派遣がいやで、一刻も早く帰国したがっている若い兵士が、セルビアとコソボの住民の血で血を洗う殺し合いに苦悩しながら、成長していくという姿を中心に、民族対立の根深さを感じさせるものとなっています。でも、ちょっと盛り込みすぎかな・・・?
それから、イタリア軍の話ですので、使用しているアサルトライフルは当然、「ベレッタAR70/90」です。日本公開の映画の中では、初登場かもしれません。
(ネタばれ注意)コソボ紛争というと、ついこの間の話で、実際にイタリア軍が関与しているから、映画にするのは難しいのでしょうけれど、ストーリーがイタリア軍のPRっぽくなっているのが、ちょっといやな感じですね。
それなりにセルビア側の兵士の残虐行為(民族浄化と称したレイプなど)や、コソボ側の民族解放を牛耳っている男の非道さなどが描かれ、一方的な描写にならないよう気はつけているようです。でも、それだけに中途半端な感じを受けます。とくにセルビア側の男性とコソボの女性の恋愛物語は、とってつけたような話で、ましてやその結婚を簡単に親が許すのは、物語上ちょっと無理があると思います。
そして、何よりエンディング。どう決着つけようもなかったのでしょうが、「コソボの未来は分からない。しかし、全力を尽くした」というモノローグだけで終わるのはあんまりです。
最後に、この邦題「ブラックバード・ライジング」。あの「ブラックホーク・ダウン」にあやかったのでしょうが、どういう意味なんでしょうか。


ブラックホーク・
ダウン
テーマ
脚本×2 5(10)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 53

監督:R.スコット  
公開年:2001年


ソマリア内戦に米軍が介入して、敵の将軍の根拠地を急襲。作戦は成功したと思われたが乗っていたヘリコプター「ブラックホーク」が墜落「ダウン」したため部隊は苦境に立たされます。結局、米軍兵士19人が死亡したという失敗した作戦を再現したのがこの映画。兵士の死体がソマリアの民衆に引きずられるというニュースで流れた衝撃の映像はよく覚えています。
映画の宣伝文句のように、全体の8割以上が戦闘シーン.。アメリカ軍特殊部隊の「第75レンジャー連隊」と「デルタ・フォース」の隊員たちが予期しないアクシデントで、どんどん窮地に至る15時間の戦闘を割と淡々と描いていきます。
「仲間をあとに残さない」というアメリカ軍の伝統的な信条を貫こうと苦闘する隊員の姿を軸に戦闘シーンが続きます。

この映画で描かれているのはアメリカ軍の「希望の回復作戦」です。負け戦と勝ち戦の違いはありますが、何となくアフガニスタンで展開された「不屈の自由作戦」とイメージがだぶりますね。いろんな見方があると思いますが、タイミング的に、あの9・11のあと次から次に出てきた「国威高揚映画」の一つという受け止め方ができます。もちろん、映画の企画はその前から進んでいたんでしょうけど・・・。
実際の戦闘をモデルにしているだけにソマリアのほうにも遠慮したのでしょうか、ソマリア側の事情も少し描かれています。それだけに、見方によってはソマリア側に感情移入することもできます。でも一方では、アメリカ側の死者が19人に対して、バタバタ倒れていくソマリア民兵の姿は、まるで西部劇の騎兵隊とインディアンの戦闘のようで、差別意識が顔を表しているようにも見えます。このため、単純にアクション映画として見た場合、私は混乱しましたし、なんといっても爽快感はすこぶる損なわれます。
また、アメリカ側の弾はよく当たるのに、民兵の弾はほとんど当たらないのも、実際それだけ特殊部隊隊員の技量は優れているんでしょうけど、映画として見た場合、「緊張感」は削がれます。「フロントライン・戦略特殊部隊」の項でも触れたように、その「緊張感」が戦争映画としては一番のキモだと思うんですが。
最後に、戦闘シーンの連続は、いつ見ても同じようなシーンで、見るほうにしてみれば疲れますね。


PLANET OF
 
THE APES 猿の惑星
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 46

監督:T.バートン  
公開年:2001年


ご存じ、1968年製作の「猿の惑星」のリメイクもしくはリ・イマジネーション版(監督によると・・・)。
なんと言っても驚かされるのは、最新技術による特殊メイク。確かに、女性の猿はどう見ても猿に見えないので、「前の方が良かった」という評価も分かりますが、確実に30数年前より進化しています。それにメイクだけでなく、猿たちの動きもリアルです。よくまああんな動きが出来るものです。

元々の「猿の惑星」がSF映画として良いできだったので、比べるのも何ですが、大きな差がありますね。
「猿の惑星」のチャールトン・ヘストンは決して演技のうまい人ではないと思うのですが、異境に放り込まれたとまどいや苦悩が良く描かれています。それに比べて「PLANET OF THE APES 猿の惑星」の方は、そのあたりは通り一遍の描き方で少しもの足りません。
猿の女性も、今回の作品の方がより強く主人公に思いを寄せる設定になっていますが、最初の作品の方が、同じようにとまどい、苦悩が良く描かれています。
それになんと言っても結末はあんまりではないですか。まだ、前回の作品の方が、絶望の中に少しだけ救いがあったような気がします。これではお先真っ暗です。どうせ、リメイクではなく、「リ・イマジネーション」というなら、ハッピーエンドで良かったと思うのですが。最後の最後で、前回の作品に引っ張られすぎたような気がします。残念。


フランドル
テーマ
脚本×2 3(6)
演出×2 3(6)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 35

監督:ブリュノ・デュモン 
公開年:2007年
冒頭に出てくるフランドル地方の風景。これは素晴らしいです。ゆったりとした映像が続きますが、うっとりと見入っていました。このまま、フランドルの映像がずーっと続けば、それだけで満足したかもしれません。
でも、映画は、よくわからない、イラクのような場所での戦いのシーンへと移ります。カンヌ国際映画祭の審査員グランプリを取ったんだそうですが、よさがわかりません。映画紹介には「美しくも荒涼たるフランドルの風景をバックに、不条理に満ちた戦場に駆り出され狂気のままに罪を重ねる男たちと、その罪を自らの全身で受け止める一人の少女の姿を叙事的でありながら寓意に満ちた筆致でセンセーショナルに描き出す。(allcinemaから転載)」とありますが、わかりません。
この映画、戦争の狂気を、ものすごく観念的に描いています。ヨーロッパ映画では、戦争をわりとリアルに描いているのをよく見かけるので、ちょっと違和感があります。リアリティのカケラもありません。
もちろん、監督はリアルに描こうとははなから思っていないのでしょうが、架空の戦場というのは、なんか難しいですね。現実に戦争が行われているだけに、どうしても実際の戦場を連想してしまいます。でも、この映画の戦争の描き方は、イラクっぽい戦場、イスラムの描写など、類型的すぎますし、兵士もライフルの肩付けもしないで撃ったり、ひょこひょこと兵士らしくない歩き方だったりで、まだ、日本のサバイバルゲームのほうがリアルに思えるほどです。また、フランドルに残る少女の苦悩も、わかるようなわからないような・・・。
でも、一つだけリアルというか、すごいなと感じたのは、戦場で射殺される兵士のほとんどが頭を撃ち抜かれているところです。ぞっとしますね。


ブレア・ウィッチ・
プロジェクト

テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 69

監督:D.マイリック・E.サンチェス
公開年:1999年


最近は国内でも「欧米並に」信じられないひどい事件が多発しているように感じますが、この映画は、その「本家特にアメリカでよく発生するたぐいの「狂気」の事件を題材にした映画ですね。
「狂気」の発生する過程がよく分かるように描かれています。ドキュメンタリー映画を作っていた青年たちの残したフィルムとビデオをつなぎ合わせたような構成も、このテーマにはぴったりです。
特に優れていると感じたこと。それは、音響の使い方です。深夜に異様な物音がしますが、ライトの用意が間に合わないので画面は真っ黒のままです。映画を見ている人は、当然全神経を耳に集中します。そうすることで、青年たちと体験を共有することになり、恐怖が増します。恐怖映画のお手本のような作りといえます。そういう点では良くできていますのでお勧めです。
「狂気」の発生する過程がよく分かるといいましたが、そこが恐怖映画としての弱点ともいえます。同じようなテーマの映画としてキューブリックの「シャイニング」があると思いますが、「シャイニング」と比べたとき、あまりにも合理的に作られているため、恐怖という点で弱いと思います。わかりやすく言えば「先が分かる」ということです。亡霊たちが本当にいたのか、それとも幻覚だったのか分からなくなってしまう「シャイニング」の方が見終わったときの不気味さは格別です。それと、「シャイニング」でジャック・ニコルスンがタイプライターで打っていた文字を見たときのショック、そういった演出面を比較しても、物語が一本調子で物足りなさを感じます。
でも、低予算でこれだけの出来の映画を作ったスタッフの情熱とアイデアには心から脱帽です。


ブレイド2
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 4(8)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 47

監督:G・デル・トロ  
公開年:2002年
1作目を見ていないんですが、カッコいい主人公のいでたちとすごそうなCGに惹かれて見てみました。
「バンパイア」と「バンパイアと人間の混血のバンパイアハンター」だけでも大変なのに、「スーパーバンパイアのリーパーズ」まで出てきて、訳が分かりません。
なおかつ、敵同士のはずの「バンパイア」と「バンパイアハンター」がいろいろ思惑はあるにしても手を握り「リーパーズ」退治に出かける。ますます訳が分からなくなりました。
続編映画は1作目をちゃんと見てから見るべし!!
もっとスカッとした映画かと思っていたのですが、3者の関係、事情が絡み合い鬱々とした内容になりました。
それと、主人公のウェズリー・スナイプス。カッコいいし、アクションもいいんですが、今回は(1作目をみていませんが)リーパーズに食われた感じ(実際に食べられた訳ではありませんよ)でした。
でも、あのリーパーズが人間を食べるところの特殊メイクというか、あの造形はおもしろいんですが、せっかくの仕掛けが出し方がまずいためショック効果がそがれてしまいました。残念。


プロデューサーズ
テーマ
脚本×2 0(0)
演出×2 0(0)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 23

監督:S.ストローマン 
公開年:2006年
1968年のメル・ブルックス監督のコメディ映画をブロードウェイでミュージカル化し、それを再びメル・ブルックス制作で映画化したもの。
落ち目のブロードウェイミュージカルのプロデューサーが、舞台が完全にこけたら、集めた出資金を返さなくてもいい場合があると聞いて、プロデューサー志望の会計士を誘い込んで、出資金を騙し取ろうという姿を描いたドタバタコメディ。
こけること確実と選んだ脚本は、ヒトラー礼賛のめちゃくちゃなミュージカル。映画のなかで劇中劇となる、このヒトラーミュージカルは、なかなかの見もの。多分、ブロードウェイの舞台と同じようなものだと思いますが、思いっきり笑わせてくれます。
でも、これは映画ではありません。
ブロードウェイの舞台と基本的に同じ脚本、演出でミュージカルを演じているのを、映画のスクリーンで見せているだけです。舞台は、トニー賞12部門を獲得したというだけあって、最高に面白いものだと思います。でも、それをそのまま映画化するのは、企画として論外です。舞台としては100点満点、映画としては20点です。映画黎明期ならともかく、なんでこんな企画が通ったのでしょうか。
映画は映画としてのリアリティ、舞台は舞台としてのリアリティがあります。その違いをまったく無視したこの映画、いろいろと無理があります。
まず、役者の演技。映画は基本的に実際の生活と同じ、自然な演技を求められます。それに比べ、舞台は昔からの伝統を引き継いだ上で、観客に聞こえるようにと言うこともあるのでしょうか、実際の生活とは少し違う抑揚のある演技となっています。「プロデューサーズ」では、すべて舞台と同じ演技であり、映画として見ると、リアリティはまったくありません。これまでのミュージカル映画をみると、物語を進める部分では、普通の映画の演技ですが、歌と踊りの部分では、舞台を思わせるものとなっています。これはこれで、変といえば変ですが、映画として成り立たせるためには、ギリギリのところなんだろうと思います。そのあたりの葛藤もなく、単純に舞台をそのまま映画にしてしまったような気がします。
また、舞台をベースにしているだけに、映画的な場面転換があまりなく、同じ場所でしゃべりまくるといったシーンが随所にあります。これも、舞台としてみるとなんの違和感もありませんが、映画としてみると退屈です。
そして、ミュージカル映画の醍醐味、歌と踊りです。この点についても、劇中劇のヒトラー礼賛のミュージカルの部分を除けば、映画ならではの広がりもあまりなく、舞台の大きさに閉じ込められたようなスケール、演出です。このあたりも、舞台でならOKですが、映画としてみると物足りません。
要するに、これは映画ではありません。ありません。


フロントライン
戦略特殊部隊
テーマ 10
脚本×2 9(18)
演出×2 9(18)
映像 10
音響
主演
助演
おすすめ度 10
総合点 90

監督:オリー・サーレラ 
公開年:1999年


第2次世界大戦のロシア戦線、ドイツ兵(実は違ったのですが・・・)、そしてペーペーシャー(といっても分からないでしょうが、短機関銃の名前・愛称です)。ペキンパー監督の傑作戦争映画「戦争のはらわた」(ひどい邦題ですが・・・原題はCROSS OF IRON・鉄十字)を連想させる内容に、思わずビデオを借りてしまいました。
見てびっくり! 何と、珍しいフィンランド映画。フィンランドの戦いといいますと、私が十数年前にボードウォーゲームで1年間も楽しませてもらった注目の戦線です。それだけに、わくわくしながら見せてもらいました。
結論を最初にいいますと、すばらしい出来です。
最初の方で、主人公の分隊が村に入っていく場面では、クルマに積まれた死体、死体を運ぶ兵士、呆然と立ちつくす老人などの映像が、まるでフェリーニの映画のようです。フィンランドの美しい自然の中を進む自転車部隊(これも戦争映画では珍しい)を追った映像は、1カット、1カットが丁寧に撮影され、基本をしっかり押さえた映像の教科書のようです。
そして何よりも、戦争映画に必要なもの。緊張感の持続です。これがなければ単なる戦争ごっこの映画です。この映画では敵兵がいるかもしれない建物を検索する様子や、先発隊(下手すると囮となり戦死する)を出して、それを息をのんで見守る本隊の姿など、戦争の実体がリアルに描かれ、戦争の怖さや悲惨さが伝わってきます。主人公の婚約者の乗ったトラックがゲリラに襲われ、味方が次々に倒されていくシーンも、まるで自分がその場にいるような恐怖を味わいました。
そして、ラストシーン。ハッピーエンドではないのですが、「愛」と「哀しみ」と「救い」が何のセリフもなく、静かに描かれています。しゃべりすぎの感がある最近のアメリカ映画にはない数々の良さにあふれたこの映画。地味ですが、映画の分かる人に是非見てほしい映画です。
作品の内容について、特に文句をつけるところはありません。でも、この邦題だけは何とかならなかったものでしょうか。単なる戦争アクション映画と思って見た人は、失望するかもしれません。派手な戦闘シーンは最後にあるだけですから。
それから、武器や戦争に関心のある者としていいますと、時代考証で、戦闘服などは正確に再現されているようですが(ユーティライネン著のフィンランド空軍戦闘機隊に写真がいくつか出ています)、銃器については疑問に感じることがあります。フィンランド軍には有名なスオミ短機関銃(これに痛めつけられたソ連軍にも大きな影響を与えた)がありますが、映画の中ではスオミ短機関銃と思われるものを持っている兵は2人ぐらいで、あとは主人公を含めて、何と敵のペーペーシャー(PPSh41短機関銃)を持っています。敵の武器をろ獲して使うということはよくある話ですが、主人公には軍事上の伝説にもなっているスオミ(フィンランド語でフィンランドのこと)短機関銃を使ってほしかったと思います。マニアックついでに、主人公の使うピストルもフィンランド制式のラチM1935ではなくて、一見似ているドイツのルガーP08でした。残念・・・。
(と当時書きましたが、その後、フィンランド軍はP−08を正式採用していたことが分かりました。考証は正しかったのです。)

スオミM1931サブマシンガン(フィンランド) PPSh41サブマシンガン(ソ連)L−35ラチ・ピストル(フィンランド)ルガーP−08ピストル(ドイツ)


プライベート・
ライアン
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像 10
音響 10
主演
助演
おすすめ度
総合点 71

監督:S.スピルバーグ
公開年:1998年


この映画の売りは、戦闘シーンにおけるリアルな映像と音響です。今までにない迫力と臨場感が感じられ、見るものを圧倒します。このような痛そうな映像と音響は初めてです。
ライアン二等兵を探しに敵地に赴くというシンプルな物語はわかりやすく、スピルバーグ監督の演出も最後まで盛り上げてくれます。

この映画が、SFやホラー、荒唐無稽なアクション映画であればもっと高得点をあげていいと思います。しかし、この映画は第二次世界大戦という現実の戦争をテーマにした戦争映画です。スピルバーグ監督が作り上げたスプラッター映像を平気で見ることはできません。
「戦争の現実を体験してほしい」というなら、これまででもドキュメンタリー映画等でいくらでも悲惨な映像は出せたでしょうし、フィクション映画でも「プライベート・ライアン」と同じような描写はできたでしょう。しかし、そのような描写をなるべく出さないように規制してきたのは、一方で戦意を喪失させないようにという配慮があったことは考えられますが、結局は人類最大の罪ともいえる戦争に対する畏れのようなものがあったのではないかと私は思います。
戦争映画は、たとえそれが娯楽映画であったとしても、戦争という行為を賛美するものは認めたくありません。その境界線は微妙なものがあるのはわかりますが、「プライベート・ライアン」の場合、一見、「反戦争」のように見えて、その実、スプラッター描写で観客を引きずり込み、祖国のために戦った兵士たちを讃える「好戦映画」に思えます。このため、「テーマ」の点数は0点です。
戦争の怖さ、悲惨さを訴えたいなら、このような過激な映像を使わなくても、いくらでも表現できます。例えば、「戦火の彼方」「無防備都市」等。押さえた表現の中に、ぞっとするような怖さがあります。
ところで、ビデオでも見たのですが、2度目ということを割り引いて考えても、映画館で見たときのようなショックがありませんでした。なぜなのか、よくわかりません。
追加
DVDでまた見ました。映像特典でスピルバーグ監督のインタビューなどを見ました。スピルバーグ監督は若い頃から戦争映画を撮っていたんですね。
戦争の姿を再現したかったという彼の意図はよく分かりますし、それはかなり成功していると思います。でも、彼の父親も戦争に行っていたということもあって、自国の戦争を真っ正面から否定しにくいといった印象は拭えません。確かに戦争の悲惨さを描きたいという意図は分かりますが、それが結果として「正義の戦争」につながる時、「好戦映画」の危険な罠があるような気がします。
ただ、再現映像と音響のすごさを見ると、エッポックメイキングな戦争映画だと思いますので、以前採点した63点を見直して71点に修正したいと思います。


ヘドヴィグ・アンド・アグリーインチ
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 79

監督:J.C.ミッチェル
公開年:2001年

性転換に失敗して、股間に「怒りの1インチ(アグリーインチ)が残ったロックシンガーという、恐れをなすような内容。思い切って見てみましたが、とても楽しめる作品でした。
解説を読んでみると「オフ・ブロードウェイで人気を博したロック・ミュージカルの映画化」とのこと。なるほど納得。おもしろいはずです。
舞台と同じ、監督・主演のジョン・キャメロン・ミッチェルの個性が強烈 。すさまじいメイクに最初はびっくりしましたが、感情移入もスムーズにいきました。音楽もいい曲ばかり。ミュージカルならではの単純明快なストーリーと楽しめる音楽に、十分酔わせてもらいました。
特に文句を付けるところもありません。刺激的なタイトルと内容に、レンタルの棚から取るのをためらう人もいるかもしれませんが、思いきって見て下さい。


ボーイズ・ドント・  クライ
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 66

監督:キンバリー・ピアース
公開年:1999年


「性同一性障害」という問題について真正面から描いた意欲作。こういう映画を出してくるところがアメリカらしいですね。
アカデミー賞の主演女優賞を取ったヒラリー・スワンクの熱演。何となく狙っているような感じはしますが、新鮮ではあります。
それと、ジョン役のピーター・サースガードのキレ加減は怖いですね。

実話だそうですから仕方がないのかもしれませんが、あの結末はどうにかならなかったんでしょうか。同じ時期にアカデミー賞を取った「アメリカン・ビューティー」もそうですが、「希望」のようなものが描かれながら、最後は悲惨です。問題提起型の映画で、そのような終わり方をする映画は過去にもたくさんありますが、「性同一性障害」という意欲的なテーマを扱っているだけに救いが欲しかった気がします。前向きな気持ちで映画を見終わりたかったのに、これでは「性同一性障害」についてのマイナスイメージだけが残ります。実話にこだわらなくてもよかったんではないでしょうか。


僕の彼女はサイボーグ
テーマ
脚本×2 6(12)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 61

監督:クァク・ジェヨン 
公開年:2008年
いやーはっきり言ってやられてしまいました。というのは、私がこの映画を見てみたいと思ったきっかけは、ある方の映画批評サイトに、この映画のことが「ラブコメの傑作」「今年ナンバーワンのトンデモ映画」「アホ度100、9割がたドン引き間違いなしの異様な映画」などと書かれてあり、「採点不能」!となっていたからです。「採点不能」・・・・??? とても気になり映画館へ足を運びました。
「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督が脚本を書いて、基本的に日本人スタッフで撮った作品です。ストーリーとしては、「ターミネーター」をベースにしたラブコメといったところでしょうか。映画の中では、サイボーグ役の綾瀬はるかが、ぴったりのはまり役。元々、ちょっととぼけた感じのキャラクターともあいまって、彼女がいなければ、この映画はなかったと思うほどの熱演です。また、小出恵介のほうも、韓国映画にも良く出てくるキャラクターといった感じではありますが、表情がいいですね。
あと、クライマックスの大地震のシーンは、日本映画としてみれば、なかなかの出来ではないでしょうか。元々、そんなシーンがあるとは期待していなかっただけに、うれしかったです。
タイムトラベル物の宿命として、ストーリーとしての矛盾はたくさんありますが、それは文句を言っても仕方ない話ですね。
映画の出来としては、「まあ、がんばりましたね」といったところで、最高でもなく、最低でもなく、ほどほど。何が「採点不能」なのかは、分からずじまい。でも、あの映画批評サイトの管理者としては、一人でも多くの人に映画を楽しんでもらおうという気持ちだったのでしょうから、そういう意味では、それを見て、少なくとも1人(私)の観客は増えた訳で、「やられてしまいました」。まあ、楽しめたので、よかったですが・・・・。
比べても仕方ないかもしれませんが、同じ監督の「猟奇的な彼女」と比べると、エンディングの満足感が今ひとつですね。タイムトラベル物なので仕方がないかもしれませんが、物語をうまくつなげるために必死にストーリーを運んでいるという感じで、余韻が足りないです。また、終わり方としても、ちょっとできすぎかな。ハッピーエンディングにしたかった気持ちはよく分かりますが。
それと、中盤で挿入される主人公の男性の子どもの頃の回想?シーンは、どう見ても昭和20〜30年代で、いいシーンなんですけど、時代設定がズレているので、ちょっとしらけてしまいます。最近、昭和を取り入れる映画の企画が多いようですが、サービス精神旺盛なのは分かりますが、ちょっとやりすぎでしょう。アニメ「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲」と比べると、雲泥の差があります。
いずれにしても、がんばって作っているのですが、設定やストーリーに、どこかで見たようなシーンがたくさんあります。パロディといって済ますには多すぎます。そういう意味で、もう少しオリジナリティが欲しかったと思います。


ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 9(18)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 81

監督:エドガー・ライト 
公開年:2007年
お馬鹿な、刑事コメディ映画だろうと思って見たのですが、いやーなかなか本格的なコメディ、それも上質のコメディでした。
ストーリーは、イギリスの都会の凄腕刑事が、その能力の高さゆえ同僚、上司に煙たがられて田舎の警察署に左遷。のんびりとした田舎の警察署に最初はくさっていた主人公でしたが、村で次から次に人が死ぬことに気づき、捜査を進めると・・・という話です。
脚本、演出とも冴え渡っており、隅から隅まで神経が行きとどいた、よくできた映画です。いろんな映画のパロディもちりばめられており、笑わせてくれます。
そして、この映画の最大の特徴は、さすがイギリスならではの「ブラック・ユーモア」。(ネタバレ注意・毎度のことですが・・・)なんといっても、主人公の警察官が善良な(?)おじいちゃん、おばあちゃん、おばさんたちと銃撃戦を繰り広げるなんて話、ハリウッドでは企画が通らなかったんじゃないかと思わせるような、痛快な映画です。教会の神父さんもやられてしまいます。人によっては、不謹慎と眉をしかめるかもしれません。コメディじゃないので、比べるのは無理があるかもしれませんが、カンヌグランプリを取ったイギリス映画「if もしも」を思い出しました。あちらは、学園紛争華やかなころの時代背景で、学生達が親や教師に向かってライフルや機関銃などで銃撃するという話なんですが、「毒」のある話という点で、連想してしまいました。イギリス人って、こういう話がうまいですよね。
殺人者たちの動機が、「なんちゃって」というような動機だったり、主人公の撃つ銃弾が、うまい具合に肩とか手に当たりすぎるとか、わりと先が読めるストーリーだったりしますが、そんなことは全然気になりません。コメディのよさを殺すようなものではないからです。なかなかの傑作コメディ、気軽に楽しんでください。


ホテル・ハイビスカス
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 77

監督:中江裕司  
公開年:2003年
「ナビィの恋」の中江裕司監督、4年ぶりの作品。劇場で見逃したのでビデオで見ました。
おばぁのすてきな恋の逃避行を描いて、さわやかな感動を与えた「ナビィの恋」のあと、どんな映画をものにするのかと興味津々でしたが、さすが、中江監督!只者ではありません。
前作で沖縄ブームの火付け役になった「おばぁ」を脇役に据え、今度は元気200パーセントの女の子、「美恵子」を主役にしたことで、この映画は成功です。 「美恵子」役の蔵下穂波ちゃんの天真爛漫な冒険に付き合いながら、どんどん映画に引き込まれていきます。
「ナビィの恋」がヒットしたからでしょうか、今回は予算も多かったようで、映画を見ていると、カメラワークや画面の色調など、じっくり取り組めたような印象を受けました。より洗練されたという感じですね。
大人のファンタジーだった「ナビィの恋」と比べると、今回は沖縄本土が舞台だけに、沖縄に駐留する米軍についての描写も少しあります。割とあっさりとしたものですが、この場合、テーマは別のところにあるので、これでいいと思います。
亡くなった私の義父は沖縄出身で、私自身2回ほど沖縄に行ったことがありますが、この映画、沖縄の空気、色をうまく伝えていると思います。
テーマ的には、前作の「ナビィの恋」より、かなり軽い感じですが、これは仕方がないことでしょう。映画の中に出てくる「沖縄」の人たち、風土を楽しんで見ればいいと思います。
「ナビィの恋」で出てきた面々が、あちこちに姿を見せており、それを見つけるのも楽しみの一つです。次回作もこの調子でがんばってほしいものです。


ボーフォート レバノンからの撤退
テーマ
脚本×2 8(16)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 76

監督:J.シダー 
公開年:2007年
私は、事前の情報をあまり仕入れないで映画を見るほうなので、この映画も失礼ながら「B級の戦争アクション映画」かなと思ってレンタル店から借りて見ました。(ということは、DVDのケースの説明もあまり見ないということですね…)
イスラエルの戦争映画というと最近では「ケドマ 戦禍の起源」を思い出しますが、この「ボーフォート」は、「ケドマ」とは違う意味で、優れた戦争映画だと思います。
物語は、レバノンに侵攻したイスラエル軍の要塞「ボーフォート」に駐留する部隊の話。国際的な非難を受けて、「ボーフォート」からの撤退が決まったものの、その時期がいつになるのか分からない中で、敵対するヒズボラからの攻撃が続き、一人また一人と犠牲者が出ます。その中で、重圧に押しつぶされそうになりながら、必死に部下をまとめようとする若い指揮官の姿を描きます。
(以下、ネタバレ注意)
冒頭、基地の近くに敵が仕掛けた爆弾を処理するために、一人の兵士が派遣されます。このエピソードは、かなり長い時間をかけて紹介されており、悲劇的な結末が戦争の悲惨さを印象付けます。また、この兵士の父親が、テレビのインタビューで「私達は自分の子どもに、(戦争が)危険だということを教えられなかった」と後悔の言葉を語るところが、この映画のテーマを示しています。
撤退が決まっているため、駐留部隊は反撃することもなく、派手な戦闘シーンはありませんが、重苦しい空気が流れるボーフォート要塞の様子が淡々と描かれます。
そして、撤退終了。任務を終えた若い隊長が、道端で銃を置き、ヘルメットを取り、防弾チョッキを脱ぎ、弾帯を外し、スモックを脱いでいく姿を延々とカメラが追います。この隊長の泣きそうになりながら、ぐっとこらえ、そして安堵した表情で映画が終わります。
私は、いろんなところで書いていますが、悲惨な戦争を忘れないために、戦争の現実の一部を切り取って伝える・・・それが、戦争映画のひとつの使命ともいえます。そういう意味では、イスラエルの現実をしっかりと伝えた、優れた戦争映画であると私は思います。
派手な戦争アクションを期待した人にとっては、退屈極まりない映画かもしれません。また、イスラエルとレバノンの関係について、ほとんどの人がよく知らない日本人にとっては、構図が分かりにくく、理解が困難な映画かもしれません。でも、これが、ヒーローでも、正義でも、悪でもない、戦争の現実ではないかと、私は感じました。イスラエルの人たちにとっては、同様の状況が今でも続いているともいえます。
面白いと感じたのは、ヒズボラからの砲弾の着弾を、要塞内で放送するところです。ヒステリックに叫ぶのではなく、淡々と冷静に「着弾!」などとマイクで喋っているのが、戦地の日常をよく伝えていると思いました。
面白い形のヘルメットカバーなど、イスラエル独特の軍装が興味深いところです。また、戦車のメルカバや、M113と見られる装甲兵員輸送車などが出てくるほか、私は知らなかったのですが「ナグマホン」という戦車ベースと思われる装甲車など、装備面では、見どころいっぱいです。


捕虜大隊
シュトラフバット
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 7(14)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 71

監督:ニコライ・ドスタル 
公開年:2004年
2004年にロシアでテレビ放送された作品で、DVDのケースの説明によりますと、ロシアではかなりの人気を博したとのことです。DVDでは、BATTLE1からBATTLE5まで5枚に分かれ、11話まであります。
物語は、第2次世界大戦中、ロシア(当時はソ連)で政治犯や犯罪者により結成された「シュトラフバット」(懲罰大隊)の話です。政治犯や犯罪者は「人民の敵」ということで、軍の上層部からは戦死して当然という、ひどい扱いを受け、大隊は戦闘のたびに大きな損害を出します。
主人公は、一時、敵(ドイツ軍)の捕虜となったことから、降格されて懲罰大隊に送られ、その大隊長を務めています。軍人としての誇りを持ちつつも、上層部から押し付けられる無謀な作戦を部下に命じる苦悩、そして、何とか部下たちを助けようとする姿などが描かれます。
脇役も、中隊長を務める、ひとクセもふたクセもある元強盗犯や、自分を投獄したものたちへの恨みを持ちつつも勇敢に戦う政治犯など、個性あふれるキャラクターがいっぱいです。
この作品のいいところは、全編に流れる「怨嗟」でしょう。ロシア人にとっては、第2次世界大戦でドイツから国を守った戦いは「大祖国戦争」と呼ばれる誇りある戦争といえますが、その裏に、この懲罰大隊という血塗られた歴史があり、その非人間性、上層部の無能ぶりを徹底的に批判しています。このTV映画が、現在もチェチェンなどで戦っているロシアの国民に受け入れられたとすれば、それは、今の政府のあり方を疑問に思う層も多いということでしょうか。
映画的にも、師団長など上層部の登場シーンは、常にいすに座っておしゃべりしているという描き方で、無能ぶりをさらけ出そうという意図がよく伝わり、いいと思いました。戦闘シーンも、たくさんではありませんが、TV映画にしては、T−54あたりの改造ドイツ戦車も登場し、迫力あるもので、なかなか見ごたえがあります。
そして、最後に無信仰の主人公たちが、キリスト教の救いを受けて死地に赴く姿は、感動的でもあります。ソ連時代には、とてもこのような表現は出来なかったでしょう。また、ドイツ軍の将校が、ロシアの作戦を批判して、「このように兵力を無駄使いする軍隊はみたことがない」と言うシーンにも、びっくりしました。なかなか、肝の座った作品だと思います。
11回シリーズの長尺のTV映画ですから、1本の映画としてのまとまりは、いまひとつかもしれません。でも、それだけに、早く次を見たいという気持ちが高まり、一気に見てしまいました。
とても面白くて、大きな不満はありませんが、邦題の「捕虜大隊」は、どうかと思います。原題の「懲罰大隊」と邦題の「捕虜大隊」では、ニュアンスが大きく異なります。タイトルバックの映像が、捕虜になったソ連兵士の映像なので、勘違いしたのかもしれませんが、ここは原題のままとして欲しかったところです。
武器としては、モシン・ナガン・ライフルやPPsh−41サブマシンガン、DP軽機関銃、マキシム重機関銃、それに対戦車銃などが、快調に作動しています。でも、懲罰大隊の兵士が一番使っているのは、ろ獲したドイツ軍のMP−40(38)サブマシンガンだったのは、史実通りなのかもしれませんが、懲罰大隊らしくていいですね。
なお、5本目の一番最後のエンドクレジットは、必見だと思います。製作者の訴えたいことがよく出ています。


ホワイトアウト
テーマ
脚本×2 4(8)
演出×2 5(10)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 52

監督:若松節朗  
公開年:2000年


公開初日に見に行きました。「踊る大捜査線 THE MOVIE」に続く 織田裕二の主演作品だけに若いカップルを中心に大勢の観客が詰めかけていました。
厳冬のダム周辺の映像は圧倒的な迫力で迫ってきます。織田裕二も体当たりの演技でがんばっており、ファンにとっては「待ってました」といったところでしょう。
「スケールの大きなアクション映画を」という熱意はよく伝わってきます。
しかし、残念ながら採点のどの項目も「OK」という7点を付けることができません。
まず、主演の織田裕二にうまく感情移入できません。これは脚本の問題だと思いますが、遭難者救助で死亡した友人の恋人への負い目という、この映画のテーマとなる部分の描写が足りません。例えば、織田裕二が友人の恋人に会いに行きますが、映画ではすれ違いに終わります。でもここは、2人が直接会って、織田裕二に対して恋人が恨み辛みを投げつけるといった描写のほうが、織田裕二の受ける傷の大きさも印象づけられるし、それだけに彼がテロリストに捕まった恋人を助けようとがんばる姿にもっと感動させられると思います。また、最後に恋人役の松嶋菜々子が織田裕二の気持ちを知って流す涙の意味もわかりやすくなります。
このほか、テロリストに占拠されたダムを一人で守るという設定にはやはり無理がありますね。「ダイハード」の場合は主人公が一応プロの刑事という設定ですから分かるんですが、全くの素人がライフルを持つテロリスト集団をうち負かすというのでは、スーパーマン過ぎます。
それと、最後になるにつれて「ご都合主義」のオンパレードです。確かにエンディングに向けて勢いで多少の「ご都合主義」は許されると思うんですが、ちょっと多すぎますね。なぜこれがいけないのかと言いますと、これによって物語のリアリティが無くなるということです。「踊る大走査線」の面白さは、コメディでありながらリアリティがしっかり確保されていたからだと思います。
また、サスペンスを盛り上げるためでしょうが、物語全体がちょっと重苦しくなりすぎました。例えば、表現が悪いかもしれませんが、テロリストを倒していくときに客席が一体となって「さあ、次はどいつだ」といった感情の高まりが欲しいところですが、人質を持ち出されてすぐにその気持ちがしぼんでしまいます。サスペンスは後回しにしても、もっと爽快感が欲しいところです。
不平不満ばかりになってすみませんが、もう少しがんばって欲しかったと思います。これでは「シュリ」に勝てません。


ホワイト・バッジ
テーマ
脚本×2 7(14)
演出×2 8(16)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 73

監督:チョン・ジョン 
公開年:2004年
ベトナム戦争をテーマに、その後の精神的後遺症に悩む元兵士を描いた韓国映画。10年以上前に公開された映画ですが、「ブラザーフッド」など最近の韓国の戦争映画のヒットを受けて、ビデオ公開されたものと思われます。
ベトナム戦争では、韓国軍は多くの兵士を派遣し、被害もかなりに上りましたが、その辺の事情や、その後の状況などが良く分かる映画です。
戦闘シーンも、チャチな感じはなく迫力満点ですが、なんといっても、戦争後のドラマは心にずしんとくる重みです。
最近の韓国映画では、ハリウッドに追いつけ追い越せと、資金をかけた大作が目立ちますが、反面、ドラマ面では、感情の強調などにくどさが見られるなど、辟易させられることも多いと感じます。その点で言えば、この映画は、抑えた演出で戦争の狂気を鋭く描いており、お勧めです。
なかなかいい映画ですが、どうして今まで日本公開されなかったのでしょうか。
最近の「韓流」の影響で、ようやくいろんな映画が我々の眼に触れるようになったんでしょうが、それだけ隣の国とはいえ、以前は文化的な交流が限定的だったということでしょうか。
今の韓国映画ブームも、これまでにこのような優れた作品を作ってきた結果であり、日本も負けてはいられないなと感じさせる映画です。
それと、現実問題として、簡単に戦争をしてはいけないという思いも強く持ちました。


香港国際警察/NEW POLICE STORY
テーマ
脚本×2 5(10)
演出×2 6(12)
映像
音響
主演
助演
おすすめ度
総合点 64

監督:B.チャン 
公開年:2004年
ジャッキー・チェンおなじみのアクション映画。1985年の「ポリス・ストーリー/香港国際警察」と同じようなタイトルで、ちょっと混乱しますが、このところハリウッドを中心に活躍していたジャッキー・チェンが、久しぶりに香港に帰ってきた映画ということで、ヒットした前作のイメージを引き継いでいこうということなんでしょうか。
新機軸を出そうというジャッキー・チェンの意気込みの表れでしょうか、トップシーンが意表をつきます。なんと、酔いつぶれて街角で反吐を吐く主人公(もちろん、ジャッキー)の姿があるではありませんか。今までに彼の映画ではなかった出だしです。なぜ・・・?というところから話が展開します。マンネリにならないように、なんとか見てもらいたいという意味では、このやり方は正しい選択かもしれません。ジャッキー・チェンらしくないと否定するむきもあるかもしれませんが、私は支持します。本当は、若い頃と同じようにアクションを前面に出して頑張りたいところでしょうが、さすがに年齢は隠せないところです。カンフーシーンも1か所だけと、ちょっとさびしいですが、その分、相棒のシウホン(巡査1667号)が若さでがんばっています。また、敵役の若者達も、はやりの「韓流」スター顔負けのキャラクターをそろえ、ジャッキー映画に新たな魅力を注ごうという意欲が感じられます。
敵役も非情で憎々しい反面、今の若者のある面を象徴するような感じで、よかったと思います。
物語も、やや強引ではありますが、伏線も適度に張り巡らされて、頑張っています。
ハリウッドでは、今ひとつの出来の映画もあったと思いますが、ふるさとの香港に帰ってきて、元気いっぱいのジャッキー・チェンを楽しませてもらいました。
上にも少し書きましたが、ジャッキー・チェンも50歳を超え、アクション面で肉体的な衰えはあると思います。しかし、それは仕方のないこと。年齢の割には頑張っていると思います。いつかは、アクション路線を変更しなければならないときがくるでしょうが、もうしばらくは大丈夫でしょう。サービス精神いっぱいのジャッキー・チェンですから、いろんなアイデアで頑張り続けてくれることでしょう。
さて、昔のようにアクションで、ぐいぐいと引っ張っていくようなことが難しくなっているのか、今回の映画では、銃撃シーンがふんだんにあり、私としてはうれしいところです。なんといっても、びっくりしたのは、多分映画初出演?の「アムテック・モデルATR30アサルト・ライフル」です。オーストリアの「ステアーAUGアサルト・ライフル」に似たブルパップ式のライフルで、オーストラリア(オーストリアではない)の軍用ライフルのトライアルで、そのAUG(オーストラリアの制式名称はF88)に敗れたライフルです。もちろん動画を見たのは初めてで、快調に作動していました。そのほか、ライフルではイギリス軍用の「L85A1」、アメリカ軍用の「M16A3」、ドイツ軍用の「G3のプラスティックフォアストック」。サブマシンガンでは、おなじみのドイツの「MP5A4」、ピストルは、これもおなじみのオーストリアの「グロック17」と、ふんだんに出てきました。