環境問題交流会

馬頭の産廃処分場を考える

馬頭キャラバン隊との交流会を開催しました!


 栃木県馬頭町では県営の産廃最終処分場の建設計画が進められています。しかし処分場予定地は八溝県立自然公園の中に位置し、オオタカの生息やエビネ・キンランの植生など貴重な自然が残されています。また、予定地の備中沢は馬頭町の町営水道の上流に位置し、その下流である那珂川の流域には農業地帯も広がっています。そのため馬頭町では多くの住民が建設に反対の声を上げています。

 「環境問題を考える会」では現地でこの問題に取り組む「馬頭の自然と環境を守る会」のキャラバン隊「私の思い伝え隊」をお迎えし、10月30日(土)午後2時より南河内町中央公民館にて交流会を行いました。以下に概要を報告しますので、キャラバン隊の皆さんの訴えに是非とも耳を傾けて下さい。県営の産廃処分場は馬頭町に限らず県民全体の問題でもあります。私たちはこの問題にどう対処すべきなのか。この機会に皆さんも一緒に考えてみましょう。ご意見もお聞かせ下さい。


1.キャラバン隊によるプレゼンテーション

1)キャラバン隊からの挨拶(益子明美さん)

 みなさん、こんにちは。本日は雨の中また土曜日のお忙しい中、私たちのためにお集まりいただきありがとうございます。
 H2年に馬頭町の北沢地区に不法投棄された3万立米の産廃を処分するためと称し、町長は本年4月に80万立米の処分場建設を県に要請してしまいました。これを受けて県では6月議会で1億300万の建設計画と事業アセスの予算が組まれ、馬頭の備中沢に産廃処分場を作ろうとしています。
 馬頭町は人口13500人で農業と観光が頼り、少子高齢化が進み、美しい里山だけだけがある町です。この町に産廃処分場ができてしまったら、農産物の出荷も温泉旅館も打撃を受けるでしょう。
 このような地域に密着して生活している人々が多い馬頭町の現状を説明させていただき、産廃処分場を栃木県の問題として皆さんにも考えていただきたいと思いますので、よろしくお願い致します。


プレゼンテーションに先立ち、挨拶をするキャラバン隊の隊長で馬頭町議の益子明美さん

 

 

2)プレゼンテーション「私の思い」(川上礼子さん)

 馬頭町は八溝山系の麓で、人口は1万3千人余、那珂川の流れが作り上げた豊な自然に囲まれています。町の7割を山林が占め、農林業が盛んで、温泉など歴史のある観光地もあります。今、この馬頭町の備中沢(びっちゅうざわ)に産業廃棄物最終処分場の建設が予定されています。処分場問題は全国各地で起きていますが、代表的なものとして東京都日の出町の処分場があります。ここには東京都内各地から毎日10トントラックで100台以上のごみが運ばれています。処分場に入る焼却灰の中にはダイオキシン等の有害物や重金属類が大量に含まれます。そのダイオキシンは呼吸から飲み水から体内に取り込まれ、血液によって全身に運ばれます。その結果、精子の減少や子宮内膜症・不妊症の原因となり、また生殖機能障害への影響が欧米で報告されています。また、日の出町の谷戸沢処分場付近の集落ではがん死亡率が全国平均の約4倍との報告があります。

 廃棄物には家庭から出る一般廃棄物と企業の生産活動から出る産業廃棄物があります。排掃法では燃えがら・汚泥・廃油・廃プラ等、政令では紙くず・木くず・金属くず・建設廃材等、合計20品目が指定されています。一般廃棄物はリサイクルされるもの以外は全て焼却・埋立て処分されます。栃木県のごみの内訳を見ると、わずか9%が一般廃棄物で、残り91%を産業廃棄物が占めていることがわかります。企業から排出された産廃は一部がリサイクルされ、その他は直接、または中間処理(焼却・減量化)されて最終処分場に運ばれます。

 「ゼロ・ウェイスト」政策というのをご存じでしょうか。焼却・埋立てに頼らずにゴミを無くして行く「ゴミ・ゼロ社会」を目指すというものです。ゼロ・ウェイストの3大目標は、1.有害物質を排出しない。2.大気を汚染しない。3.資源を無駄にしない。というものです。実際にゼロ・ウェイスト宣言をしたオーストラリアのキャンベラ市では、2002年までにリサイクル率64%を達成し、焼却炉は全くなく、2つあった最終処分場を1つは閉鎖し、残り一つも2010年までに閉鎖を予定しています。ゼロ・ウェイストを目指すには具体的に、Local(地域指導)・Low cost(低コスト)・Low impact(低環境負荷)・Low tech(最新技術に頼らない)の4Lが重要とされています。それにより、リデュース(ごみの発生抑制)・リユース(再使用)・リサイクル(再生利用)の3Rが可能となります。この施策に沿ったゼロ・ウェイスト政策は地域住民を納得させ協力させる力があり、ごみ問題を確実に解決に導くものとされています。

 日本では一般廃棄物のリサイクル率は14%に止まっており、ハイテク技術で処分場の環境汚染を監視するというのも日本の悪しき例ではないでしょうか。日本では燃えるゴミと燃えないゴミに分けてしまいますが、キャンベラ市ではリサイクルできるゴミとできないゴミに分けるそうです。このような考え方の違いが日本のゴミ社会の原因になっていると思われます。しかし、日本でも徳島県上勝町がH16年9月にゼロ・ウェイスト宣言をしました。そこでは、2020年までに焼却・埋立てに頼らずゴミをゼロにすることが高らかに謳われています。私たちは馬頭町民として、栃木県民としてゴミ・ゼロ社会を希望します。上勝町の勇気ある宣言に学び、この考えを支持したいと思います。

 今回、産廃最終処分場が予定されているのは馬頭町の西部地区、備中沢というところです。それは管理型処分場というもので、山の沢を利用して穴を掘り、ゴムシートを敷いてゴミを埋め立てるものです。どんなゴムシートでも完全なものはありません。工事中の破損やゴミの重さ、化学変化による劣化や下地の空洞化によるトランポリン効果等で穴があき、有害物質が染み出して地下水を汚染させることになります。2年前に黒羽グリーンオアシス(一廃の最終処分場、築5年)を見学したとき、ゴムシートは随所に修復した跡があり、穴があいているのも確認できました(担当者は穴ではなく土の塊だと言い張っていましたが)。処分場では汚水洩れの他に焼却灰の飛散も問題です。焼却灰の粒子はスギ花粉より小さくて目に見えず匂いもないため、処分場から舞い上がった焼却灰が毎日のように生活環境に降り注いでも私たちは気づかないのです。これらは雨や霧の核となり、ついには飲料水の中に取り込まれます。更に、高く舞い上がった焼却灰は上昇気流に乗り、県内全域にも拡散することになります。

 備中沢は別名「美人沢」とも称される美しい沢です。ここでは標高200m以下では極めて珍しいブナの木が発見されています。県の環境アセスメントでも、植物ではイワタバコ・エビネ・ユウシラン等900種、鳥類ではオオタカ・フクロウ等46種、昆虫類ではタガメ・オニヤンマ等253種が確認されています。「守る会」主催で自然探索会を行った結果でも多くの貴重種が確認され、参加した子供たちも歓声を上げていました。しかし、県の(事業)アセス結果、ここは適地とされてしまいました。これらの貴重種も移植することで回避できると言っています。自然環境を切り取ったように移すことができるのでしょうか。命にはつながりがあり、単独では存在しません。あるがままの備中沢の環境こそ貴重なのです。私たちは多くの人に備中沢の美しい自然を知っていただきたく、これまでに4回の探索会を開催しました。このときお招きした専門家の先生方は口々に備中沢の自然を絶賛しています。また、この探索会がきっかけとなり「馬頭・県営処分場反対県民の会」が設立されました。

 このような貴重な自然を破壊し、生態系を狂わせてまで処分場は必要な施設なのでしょうか。世界各国、また日本でも住民主導のゼロ・ウェイストが有言実行されている現状にあって、焼却・埋立てというゴミ処理は理にかなったものなのでしょうか。そもそも、何故3万立米の不法投棄処理のために80万立米もの巨大な処分場を受け入れねばならないのでしょうか。代償の方がはるかに大きいと思います。なぜなら、予定地が上水場の水源地上流ということから、直接私たちの命に関わって来るのです。そればかりか、未来の子供たちに負の遺産を残すことになります。未来永劫処分場に集められた有害物はそこにあり続け、人々の健康を蝕んで行きます。そのことに一人の母親として耐えきれず、この会を結成しました。これからは環境負荷を減らすゴミ政策を県や国に求めて行くことが必要と考えています。これからも県内各地を訪れ、人々は自然の恩恵があって生かされていることを訴え、処分場やゴミ問題について共に考えて行きたいと思います。最後までご静聴ありがとうございました。


キャラバン隊の川上さんによるPCプロジェクタを使ってのプレゼンテーションに聞き入る参加者一同


2.質疑応答

以下、Qは参加者からの質問、Aは「守る会」の回答、Rは参加者からの提案を示す。

Q1:水道の上流なのに何故処分場を作るのか?
A1:県は処分場は安全という大前提で、処分場は問題ないという認識である。

Q2:何故町は反対しないのか?
A2:行政の巧妙な手法で、「不法投棄を放っておく方が危険。処分するには処分場を作るより他にない」という説明が行き届いてしまい、町の大半は諦めムード(行政に逆らってまで反対できない)になっている。

Q3:これまでの運動の経緯・町や県とのやりとりは?
A3:H10年に「反対同盟」で反対署名を集め、議会に提出したが否決された。それにより議会は賛成なのだと前町長が判断し、県に処分場の建設を要請してしまった。その後、私たちはH12年に「馬頭の自然と環境を守る会」を結成し、町民の6割以上の署名を集めて町と県に撤回の陳情書を提出した。更にH15年には周辺自治会の有権者の7割以上の陳情署名を県に提出。今年は環境省との話し合いも行い、担当課長から「不法投棄を処理するために県営の処分場を作るのはおかしい」との見解を得ている。

Q4:賛成・反対の住民比率はどうか?9000名もの反対署名が集まっているのに、何故議会に反映されないのか?
A4:反対署名は有権者の6割以上を占める。しかし、町長が助役を伴って各議員に圧力をかけたため町長側についてしまった経緯があり、民主主義とはほど遠い状況である。不利益を被る不安から署名をしたくてもできないという人も多い。本気で賛成するのは一部の地権者や利権者に限られているのではないか。

Q5:町長のリコールはできないのか。
A5:地域により住民に温度差がある。古い土地柄でリコールの協力がなかなか得られない。

Q6:環境アセスはどうなっているのか? 貴重な動植物は他所へ移せばよいと言われたようだが、代替地はあるのか?
A6:事業アセスのようなものが行われ「処分場を作れば公害を防止できるので問題ない」との説明だったが、とても納得のいくものではない。貴重種の代替地については具体的な話はない。これに対し私たちは住民主導による独自のアセスに取り組んでいる。
これまでに県は環境影響調査を2回行っており、最初は「事業アセス」と称して行われたが、「事業計画もない段階で事業アセスはおかしい」との住民側の追求に、次は「適地性アセス」と名称を変えて同じことを実施した。「適地アセスの結果によっては事業を止めることがあるのか」と聞いたところ、「やらない事業のために調査はしない」という回答だった。動植物の貴重種は環境が変わると生きて行けないので、代替地というものはない。茂原クリーンパークは住民アセスで作られたが、追跡調査をしたら周辺のカエル・ヘビ・トンボなど少なくなったと言われている。

Q7:処分場予定地の地権者はどのような人たちか?
A7:地権者は25人で、殆どが町内の住民である。「守る会」に地権者はいない。土地は売らないと言ってくれる地権者もいるが、実質的に危険な状況に追い込まれている。反対の声がなくなれば、土地を売られてしまう恐れが大である。

R1:茂原では土地を売れた人が賛成。売れなかった人が反対した。地権者は行政の圧力と反対運動の板挟みになると思う。相手方のことを十分考えて運動をするのがよい。

Q8:町営水道の上流ということが問題。町全域が利用しているのか?
A8:この地区は住民の6割が利用している。行政が安全と行っているから大丈夫。町は地下水と違う水源とも言っている。

Q9:行政が安全と言うのは信用できるのか?
A9:県は「何か被害を被ることがあれば100%保証する」とまで言っているので、町民は大丈夫と思い信用してしまっている。

R2:渡瀬遊水池での環境アセスの事例からも、ねばり強く運動の輪を広域(那珂川流域等)に広げることが必要だと思う。

Q10:不法投棄の3万立米を処分するために、80万立米の処分場を作るというのは理解できない。県は何と説明しているのか?
A10:不法投棄の処理に投資する費用を回収するために、他町の産廃も処理して利益をあげる必要があると説明されている。不法投棄は馬頭だけではなく、県は産廃処分に苦慮しており、北沢地区の不法投棄処分にこじつけて県営の大規模産廃処分場を作ろうとしている。このことを環境省に訴えたところ、対応した担当課長は「栃木県の対応はおかしい」と指摘した。

Q11:JAや旅館組合など他の地域団体は動かないのか?
A11:補助金等の関係がある上、反対運動に加担しないよう行政から圧力がかかっているので動けないようだ。

Q12:処分場を作らないとしたら、3万立米の不法投棄産廃の処理はどうするのか。
A12:不法投棄物の内容は建築廃材等が主であり、野焼き等がなければ実害のないことが確認されている。本来は代執行をしてもらいたいが、それを依頼すると巨大処分場の建設を持ち出されるので、当面このままで監視して行くのがベターと考えている。

R3:私は以前馬頭町に住んでいた者として補足説明をしたい。
馬頭町には2つの水源があり、東部の住民は水源が違うためこの問題に無関心である。馬頭町は山間部の沢づたいに集落を形成しており、一山越えると全く違ってしまう。古い町村が合併して町になったので、地域が変わると運動が広がりにくいのが実情。
北沢地区の不法投棄産廃について町では適正処理検討委員会(団体代表・専門家・公募委員等、計20人)を設置した。半年審議した結果は「投棄後既に13年が経過し、水質調査結果も基準値の1/10以下であることからこのままでも実害はない。したがって備中沢の最終処分場は白紙撤回すること」というのが多数意見だった。しかし、町長はこれを無視して「処分場を作って処分すべきだ」との少数意見を採用した。(民主主義とは名ばかり)
住民投票条例案も法定数を満たしていたが、議会で否決された。(9:7)
「守る会」の方々のご苦労はよくわかるが、これからも頑張ってほしい。ここに集まっている皆さんが町長と県に抗議して欲しい。



参加者からの多彩な質問に対し、丁寧に答える「守る会」の小林盛会長(馬頭町議)と質疑のメモをとる益子さん

 


プレゼンテーションに対する質疑応答の後には懇親会が行われ、うち解けた雰囲気の中で産廃処分場問題に対する理解と共に馬頭町と南河内・国分寺両町住民の親交を深めることができました。

 


●参加者の感想(アンケートより抜粋)

 一度破壊された自然は絶対に戻りません。馬頭の産廃処分場の件はよく知りませんでしたが、那珂川の下流域である水戸市に住んでいたことがあり、この川が汚染されることには反対です。今日の話を聞いて、馬頭町等の行政の対応に大きな問題があると感じました。(南河内町・Hさん)


●「環境問題を考える会」よりお知らせとお願い

 「出るゴミは処分しなければならないから産廃処分場は必要だ」と言う人がいます。この意見には2つの問題があります。1つは、必要なら自分の住んでいる地域に作ることも受け入れるのか、という問題。もう1つは、この意見にはゴミ問題を根本的に解決するビジョンがない、ということです。県営の産廃処分場建設が必要だというなら、それは馬頭町に限らず県民全体の問題ということになり、他人事ではありません。しかし、自然環境を損なわずに産廃処分場を新たに建設する場所など、もはや県内はもちろん全国どこにもないはずです。黙っていれば今後も排出され続ける廃棄物のために新たな処分場を作るのではなく、資源の再利用と廃棄物の発生抑制にゴミ行政を切り替えるべきではないでしょうか。現実に米国のシアトル市、オーストラリアのキャンベラ市、日本でも上勝町など世界中で自治体が焼却・埋立に頼らない「ゼロ・ウェイスト」に取り組んでいるではありませんか。

 今から7年ほど前、南河内町と国分寺町の境界に産廃の中間処理施設を建設する計画が持ち上がったとき、両町住民は一丸となって反対の署名運動を展開し、地域の環境汚染を阻止しました。その中心的運動体として「環境問題を考える会」が誕生したわけですが、私たちは単に迷惑施設として反対しただけでなく、焼却・埋立てに頼る従来のゴミ対策を見直すことも同時に訴えています。

 私たちはこれらの認識を踏まえ、「馬頭の自然と環境を守る会」の活動を可能な限り支援することにしました。その手段として、同会が現在取り組んでいる県内全域での反対署名活動に協力して行きます(目安:2004/12まで)。趣旨に賛同される方は当会事務局まで連絡下さい。県外の方でももちろん歓迎です。誰でもできる意思表示として、ごみ問題の真の解決のために是非ともこの署名活動に皆さまのご協力をお願いします。


環境問題を考える会
会員の皆さま、並びに
署名活動にご協力いただいた皆さまへ

栃木県馬頭町における産廃最終処分場反対の署名活動にご協力をいただき、ありがとうございました。お陰さまで皆さまから300名を超える署名が集まり、去る1/27に「馬頭の自然と環境を守る会」宛に発送したことをご報告致します。

現地では1/28夜、県による処分場建設計画案の住民説明会が行われましたが、肝心の福田富一知事は出席しませんでした。住民からは安全性等の追求が相次ぎ、時間切れで閉会したとのことです。翌朝の新聞各紙には一斉に取材記事が掲載されました。

私たちは、引き続き県と馬頭町民の交渉の成り行きを見守りたいと思います。「真の資源循環と持続可能な社会」を実現するために、今後ともご理解とご支援をよろしくお願い致します。

(2005.1.29 環境問題を考える会 事務局)


<Home>