ヨシキリ
伊藤左千夫はヨシキリの居る場所の近くに住んでいたらしい。
私の好きな歌は

庭十坪市に住むまへど春されば あおじさへずり夏行行子 伊藤左千夫

そういう佇まいに満足している気持ちが良くわかります。

さみだれのまた降り出づる夜の音の 奥つ田闇に行行子鳴く 伊藤左千夫
葦切のきょろろと響く近きこゑ  蓄え置かむ器しほしも 伊藤左千夫
声遠くつねは聞きたる行行子 いま庭にして暫しまどひつ 伊藤左千夫
荒玉の長き年月住まひ居りし あやしこの夏葦切の鳴く 伊藤左千夫
庭十坪市に住むまへど春されば あおじさへずり夏行行子 伊藤左千夫
家近く鳴けば葦切ぬば玉の 夜も鳴くものと今年知りつも 伊藤左千夫
青葉さす槐の枝に身をかくり 声は鳴けども見えぬ葦切 伊藤左千夫
五月雨に茶を抹き居れば行々子 槐が枝にこゑ断たず鳴く 伊藤左千夫
柿若葉えんじゅ若葉の夕やみに 鳴くはよしきり声近くして 伊藤左千夫
垣外田の蓮の広田を飛び越えて 庭の槐に来鳴く葭切 伊藤左千夫
よしきりが庭に近鳴く五月雨の こもりの庵に夾竹桃の花 伊藤左千夫
雨晴ばれの夕風寒し揺れゆるる 柳にとまり葭切鳥鳴くも 小田観蛍
夕戸出の目に遠黒き柳原 葭切鳥はまだ鳴きてゐるかも 小田観蛍
葛飾はあやめ田どころ水どころ 葦あればなくよしきりの声 太田水穂
葭原に鳴く葭切の声まじへ 夜すがら絶えぬ河の瀬の音 中西悟堂
葭切の鳴くにあしたの雲ひらく 暁浪
葭切の巣は草の穂を綴りたる 十牛
葭切の巣や青蘆をたわめ寄せ 十牛
葭切の巣壺きよらに美き卵 白村
川船のギイと曲がるやよし雀 高浜虚子
舟揺れにたちまち慣れて行行子 鋼 つよし
行行子殿に一筆申すべく 波多野爽波
葭切の鳴きさかり葦に日は闌けぬ 春一
葭切や葦もひまなくうちやさぎ 春一
葭切のこゑのとぎれに風も絶え 春一
葭切のこゑの間遠に昏れそむる 春一
よしきりや汽車走らねば線路消ゆ 平松良子
葭切にランプ置く舟過ぎゆけり 昌勝
葭切や淡海の昼は濃くなりぬ 山口草堂
となり合ふ厨と厨行々子 山田和歌女
葭切やひくき日輪葭の上に 夜潮
てのひらに葭切の卵のせてきぬ 飴山 實
よしきりの現はれて啼く草嵐 臼田亜浪
葭切や文王魚籠をのぞき去る 永田青嵐
漁小屋に竹生えつ居鳴く葭切か 河東碧悟桐
葭切や屋根に男が立上る 金子兜太
葭切に深き葭叢茎わかし 江見 渉
葭切や晒布に重石拾ひ置く 高田蝶衣
麦の出来悪しと鳴くや行々子 高浜虚子
水車場に小走りに用よし雀 高浜虚子
葭切多弁百姓呑みし天竜に 高木山葵
葭切や未来を永劫ここは沼 三橋鷹女
造らるる舟にとびけり葭雀 山口誓子
行々子日高に着きて伏見城 召波
よしきりや空の小隅のつくば山 小林一茶
雷のごろつく中を行々子 小林一茶
行々子大河はしんと流れけり 小林一茶
一村の鼾盛りや行行子 小林一茶
行々子どこが葛西の行留り 小林一茶
よし切やことりともせぬちくま川 小林一茶
葭切や月の出に野のかき消えし 松村蒼石
能なしの寝たし我をぎやうぎやうし 松尾芭蕉
葭切や葭にしづみて暮るる家 水原秋桜子
葭切や揺れつつも鳴く葭のさき 水原秋桜子
野をわたる風あり鳴ける葭雀 水原秋桜子
葭切のきよらなる巣に葭の影 水原秋桜子
葭切の卵三つありよりそへる 水原秋桜子
つばなの穂葭切の巣に敷かれたり 水原秋桜子
沢の月に葭切鳴けり疑はず 水原秋桜子
林ゆき葭切をきけり池やある 水原秋桜子
葭切のをちの鋭声や朝ぐもり 水原秋櫻子
葭切や潮の早瀬に一漁村 水原秋櫻子
葦原のここだけいつも行々子 水沢三郎
道の上に跼む他なき行々子 石田波郷
葭雀二人にされてゐたりけり 石田波郷
葭切りのとほくにも啼く立咄し 川上梨屋
葭切の静まり果てし良夜かな 川端芽舎
葭切の葭にすがりて鳴き募る 浅野稲生
葭切の云ふところをも聞かむとす 相生垣瓜人
葭切もまた寝ね難き鳥ならむ 相生垣瓜人
葭切や午前むなしく午後むなし 相馬遷子
葭切の簾掛けよと啼きにけり 増田龍雨
葭切や糞舟の犬吼立つる 村上鬼城
一渡しすれば日出でつ行々子 大須賀乙字
行々子鳴きやむ岸辺風走る 大村四朗
信濃川は分流多し行々子 大谷句仏
葭切の上下に揺れる昼の月 中村草田男
よしきりの身を逆しまに鳴きやまず 渡辺 章
葦切のさからひ鳴ける驟雨かな 渡辺水巴
夜や更ける蛍の影のきゃうきゃうし 土芳
行々子鳴や夜川の笠の端 土芳
葭切の風をまともに葛西橋 島田公魚
夕潮のみちわたりけり葭雀 日野草城
川波と葭切の声と吹きたわむ 八木絵馬
よるべなく濁流はやし葭雀 百合山羽公
葭切やいつかきあてる鰻掻き 服部畊石
葭切や熱きアルミに熱き白湯 平畑静香
世話しいはしれた月日よ行々子 鳳朗
葭切や風みどりなる小旅行 傍島古林
揚げ泥の香もふるさとよ行行子 木下夕爾
松に来て聲はやすめず葭雀 木津柳芽
葭切も来てすみつきぬ菖蒲葺く 木津柳芽
葭切の声のこりたり庭の雨 木津柳芽
よしきりや漸暮て須磨の浦 寥太
よし切りや刃禰の河面何十里 寥太
剖葦や灯火もるる夜の川

木津柳芽の句を追加します いずれも 第三句集(昭和16年から22年までの作)「あさゆふ」から

行々子旅寝のさめし朝闇に
行々子晴れて日中の霧立てる
夕影やとんぼを嘴に葭すずめ
葭切の巣立や垣に松にくる
葭切や葭のひろごる松の中
葭切の日浅きこゑや軒菖蒲
夕潮にのりくる霧や行々子
葭切や片開きしてまた寝の戸