| おく霜をはらひかねてや青葉なる かもの羽がひも色かはるらん | 足利尊氏 |
| あしがものおのがあをばもうずもれて はらひもあへぬ霜になくなり | 綾小路前宰相 |
| あしがものあをばのこらず雪ふりて たまものとこもこほる池水 | 安嘉門院四条 |
| 小雨ふる椎の若葉の枝下ゆ 見おろす池に鴨があそべり | 伊藤左千夫 |
| 百伝ふ磐余の池に鳴く鴨の 今日のみ見てや雲隠りなむ | 大津皇子 |
| 葦鴨のすだく池水溢るとも 設溝の辺に我越えめやも | 不祥 |
| 水鳥の鴨の羽色の春山の おほつかなくも思ほゆるかな | 笠 女郎 |
| をしがものうきねのとこのなみまくら こほらずとてもさむからぬかは | 春日若宮神主祐茂 |
| おく霜を打ちはらひてやあし鴨の 青葉の色はつれなかるらん | 烏丸光広 |
| 水鳥のかもの浮寝のうきながら 浪のまくらにいく夜経ぬらむ | 河内 |
| 軽の池の浦廻行き廻る鴨すらに 玉藻の上にひとり寝鳴くに | 紀 皇女 |
| さる沢の池辺にたてるさをしかの かげにおどろく鴨のむら鳥 | 京極為兼 |
| 風吹けば入江の蘆の末さわぎ 鴨のはがひにこほる白波 | 権律師厳雅 |
| 霜のおく鴨のうはげよましていま 我だに袖の寒(さ)えわぶる夜に | 後伏見院(女房) |
| さゆる夜は名のみなつみの河かぜを いつはりなりとかもや鳴くらむ | 権律師守遍 |
| なつみ川かはよどこほる雪のうちに おりゐる鴨の床さむからし | 西園寺実遠 |
| 水鳥の鴨の羽色の青馬を 今日見る人は限りなしといふ | 大伴家持 |
| 見るままに冬は来にけり鴨のいる 入江のみぎは薄氷りつつ | 式子内親王 |
| あしがもの羽がひの山の春の色に ひとりまじらぬ岩つつじかな | 順徳院 |
| なげきつつひとりやさねんあしべゆく かものはがひも霜さゆる夜に | 花山院長親 |
| あしがものゆききもいまはやすからず たえだえ氷る冬の池みづ | 僧俊孫 |
| 朝日さす汀のこほりうちとけて むれつつあさる池のあしがも | 尊円親王 |
| あしがもの羽風になびく浮草の 定めなき世を誰かたのまむ | 大中臣能宜朝臣 |
| 鴨島の遊ぶこの池に木の葉落ちて 浮きたる心我が思はなくに | 丹波大女娘子 |
| なつみ川こほりかねたる早せきを うきねの床と鴨ぞ鳴くなる | 宗良親王 |
| 波たてばやどりぞかぬる蘆鴨の さわぐ入江の秋のよの月 | 宗良親王 |
| 竜田川いかにしぐれをはらひてか かもの青ばの紅葉ざるらん | 津守国冬 |
| いまや又かこのしまぶねきよすらん まつとびこえてかものたちぬる | 津守國冬 |
| 霜むすぶうらわのあしの冬枯に のこるはかものあをばなりけり | 頓阿 |
| 池水にしばし友まつあし鴨のこほればたへずよそにたつなり | 頓宗 |
| くろぐろと水立つ鴨の幾むれが 帯なして飛ぶ逆光になか | 中西悟堂 |
| 三日月も光増しつつ夕映の かがゆふ沖を鴨の列ゆく | 中西悟堂 |
| 猟場の池にうかべる幾万の 鴨の動きも律あるごとし | 中西悟堂 |
| 池水はこほりもやらであし鴨の うは毛の霜ぞまづむすびける | 二条良基 |
| 沖つ島鴨著く島に我がゐ寝し 妹は忘れじ世のことごとに | 火遠理命 |
| 蘆鴨のさわぐ入江の水の江の 世にすみ難きわが身なりけり | 柿本人麻呂 |
| 磯に立ち沖辺を見れば藻刈り舟 海人漕ぎ出らし鴨翔る見ゆ | 不詳 |
| 水鳥の鴨の棲む池の下樋なみ いぶせき君を今日見つるかも | 不詳 |
| 山の際に渡るあきさの行きて居む その川の瀬に波立つなゆめ | 不詳 |
| 水久君野に鴨の這ほのす子ろが上に 言緒ろ延へていまだ寝なふも | 不詳 |
| 霜はらふかもの羽かぜのさむければ みぎはの水やまづこほるらん | 藤原(尾藤)資広 |
| 柞散る岩間をかずく鴨とりは おのが青葉ももみじしにけり | 藤原伊家 |
| この池の木のはにあそぶあしがもの 青ばこきまぜ吹くあらしかな | 藤原家隆 |
| なれのみやしもにもかれで残るらん しげき入江のあしがもの声 | 藤原師兼 |
| 影やどす有明の月を池水の うきねこほると鴨や鳴くらん | 藤原為定 |
| 冬の池のみくさおしなみふる雪に おのれも白きかものむらどり | 藤原光経 |
| いけにすむかものはがひにおくしもの むすぼほれたるとこの月かげ | 藤原道家 |
| 山河のあさせもみえぬ淵にさへ うはなみたてて鴨ぞなくなる | 前伊賀守時家 |
| しげらずは夏とはしらじ蘆鴨の 入るべきほどにさむき川水 | 松永貞徳 |
| はらひあへずうは毛に霜はかかれども かものあをばの色ぞかはらぬ | 今出川公直母 |
| いはたがはわたせるごとにたちさわぎ うきねさだめぬかものむらとり | 源 家長 |
| やらのさき月影さむし沖つ鳥 鴨といふ舟うき寝すらしも | 源 実朝 |
| 夜を寒み鴨の羽がひにおく霜の たとひ消ぬとも色にいでめや | 源 実朝 |
| あし鴨の騒ぐ入江の浮草の うきてやものを思ひわたらむ | 源 実朝 |
| 鴨のゐるかるの池水こほる夜も 入江めぐりて波ぞのこれる | 源 時清 |
| 人の世は氷をふめるあし鴨の しらで長閑き浪のうきねや | 望月長考 |
| 吉野なるなつみの川の川淀に 鴨ぞ鳴くなる山かげにして | 湯原王 |
| 有明の海のにごりに鴨あまた うかべり舟は島原へ入る | 若山牧水 |
| わが舟に驚き立てる鴨の群の まひさだまらずあら波のうへに | 若山牧水 |
| 山の木に風騒ぎつつ山かげの 沼の広みに鴨のあそべり | 若山牧水 |
| 登り来しこの山あひに沼ありて 美しきかも鴨の島浮きけり | 若山牧水 |
| 鴨居りて水の面あかるき山かげの 沼のさなかに水皺よるみゆ | 若山牧水 |
| おほよそに風に流れてうかびたる 鴨鳥の群を見つつかなしも | 若山牧水 |
| 樅黒檜黒木の山のかこみあひて 真澄める沼にあそぶ鴨鳥 | 若山牧水 |
| あふ事も渚にあさる葦鴨の うきなをなくと人しるらめや | 藤原忠通 |
| この島の蒲葵樹の葉おとろへえて 鴨ぞ下りいる磯岩原に | 川田 順 |
| 寄る浪の飛沫の博てば鴨島の 或はなきて岩すりて飛ぶ | 川田 順 |
| うねり来て飛沫をあぐる浪の共 鴨の飛びたつ岩のうへより | 川田 順 |
| 八郎潟に鴨夥しくくだれりと 今朝の新聞にて読みしを思う | 川田 順 |
| 日向灘の大うねり浪岩をうち とどろと鳴れば鴨のこえ消ゆ | 川田 順 |
| 下りて来し鴨の一群れは蒼潮の 大きうねりにのりて漂ふ | 川田 順 |
| 男鹿半島の寒風山に吾がたてば 鴨のわたらふ湖空低し | 川田 順 |
| 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて 寒き夕は大和し思ほゆ | 志貴皇子 |
| うらうらと照れる日かげに水鳥の 鴨たちまへるつばさのかがやき | 尾山篤二郎 |
| 彼方にもこなたにもいて群遊ぶ 鴨てふ鳥はこえなかずけり | 尾山篤二郎 |
| 不忍の池水騒ぎ岸辺には 鴨むれをれど水をくぐらず | 尾山篤二郎 |
| 沖つ鳥鴨といふ舟は也良の崎 廻みて漕ぎ来と聞こえ来ぬかも | 不詳(山上憶良) |
| 沖つ鳥鴨といふ舟の帰り来ば 也良の崎守早く告げこそ | 不詳(山上憶良) |
| くわうくわうと鴨はよべどもよるべなき 池のまなかの水の上にして | 北原白秋 |
| 鴨の池鴨さはに居て声くらし 逆光線に片寄りにける | 北原白秋 |
| うららなる鴨の羽ぶりや翔けざまに 水切りて飛びてまたもうきたる | 北原白秋 |
| 夕凪の海波のあひさにいる鴨の かなしき声は空にとほれり | 北原白秋 |
| 平らにぞ凪青みたれ泛く鴨の かくろふ見れば大きうねり波 | 北原白秋 |
| 韃靼の海波のうねりに揺られいて 遊べる鴨か大きうねり波 | 北原白秋 |
| 揺れあがる波の平になりにけり しばしばとどまり鴨の確かさ | 北原白秋 |
| 風や冬とよみ飛び立つ大族(おおやから) 総立つ鴨の羽ばたき凄し | 北原白秋 |
| 日のうちも幽けくあらし引く水の かがよふ方へ鴨の寄り行く | 北原白秋 |
| 昼の林泉石のあさひにいる鴨の 一羽は黝しつれずれの鴨 | 北原白秋 |
| 引鴨の松風ばかり残りけり | 唖々 |
| 降る雪に田面の鴨のかぞへられ | 青城 |
| 沖の鴨夕波たちてちりぢりに | 草堂 |
| 蘆火消え鴨の下りつぐ水の音 | 真芳 |
| 鴨わたり雪の大野はたそがれ来 | 双二 |
| 鴨のこゑ思はぬ月の?(のき)にさす | たか女 |
| いやはての鴨のたむろはけぶらへる | 鳥頭子 |
| 鴨の列陸もはるかにつづきけり | 羽公 |
| ひつじ田にことしの鴨のきて散れり | 春光 |
| 鴨の群眠りて日南豊かにす | 芽村 |
| 蘆刈が鴨を翔たしめ刈りつげる | 山谷春潮 |
| 舞ひ上り百千の鴨は洲をかへぬ | 山谷春潮 |
| 鴨の陣日当るかたへ移りけり | 安住 敦 |
| 引くといふこと鴨にあり人にもあり | 安住 敦 |
| 手びさしに見えて尾越の鴨ならん | 井桁蒼水 |
| 剥製をならべて番屋鴨来る | 井沢正江 |
| 残りしか残されゐしか春の鴨 | 岡本 眸 |
| ゆく鴨の野のいとなみのはじまれる | 加藤楸邨 |
| 網代持てば時折鴨も拾ひ来て | 河東碧悟桐 |
| おもしろう鴨の滑りし氷かな | 岸田稚魚 |
| わたりきし鴨につききし曇なれ | 宮津昭彦 |
| 雌鴨なりさざなみにさへ隠るるは | 熊野英子 |
| 鴨の中の一つの鴨を見ていたり | 高浜虚子 |
| 鴨渡る明らかにまた明らかに | 高野素十 |
| ゆくすゑのことなど春の鴨を見て | 山崎正枝 |
| しんねりと残れる鴨に雪振り出す | 山田みずゑ |
| 風上にみな頭向け鴨の浮く | 市川 廉 |
| 湖の鴨いつしか数の定まりぬ | 志塚政男 |
| かかへ来て鴨や市場の端に売る | 小池文子 |
| 春雨や喰はれ残りの鴨が鳴く | 小林一茶 |
| 古利根や鴨の鳴夜の酒の味 | 小林一茶 |
| 鴨どもも立ち尽くしたり木なし山 | 小林一茶 |
| けごろもにつつみてぬくし鴨の足 | 松尾芭蕉 |
| 夏鴨や堤の人にいつも遠く | 松本弘孝 |
| みづうみのみづのひかりの尾越鴨 | 深谷雄大 |
| 楓の芽ほのかに紅し鴨帰る | 水原秋桜子 |
| 降る雪のいまは鴨さへかきくらす | 水原秋桜子 |
| 雪けぶり衝きてぞ鴨のたつ羽音 | 水原秋桜子 |
| 月くらき細江の鴨の羽搏ちたつ | 水原秋桜子 |
| 怒涛うち鴨を砂丘へ追ひ上げぬ | 水原秋桜子 |
| 初日さす波路をみれば鴨の群れ | 水原秋桜子 |
| 日輪がゆれて浮寝の鴨まぶし | 水原秋桜子 |
| 鴨高く翔けて立山をよぎりたり | 水原秋桜子 |
| 初鴨や穂高の霧に池移り | 水原秋桜子 |
| 月の鴨田を翔けきたり沼に入る | 水原秋桜子 |
| 鴨の羽の初日にひかり崎を越ゆ | 水原秋桜子 |
| 鴨翔けて河口に搏てる波に消ゆ | 水原秋桜子 |
| 夜の雪の田をしろくしぬ鴨のこゑ | 水原秋桜子 |
| 初鴨の四五羽に足らづ池ひろし | 水原秋桜子 |
| 水暗きところにをりぬ通し鴨 | 星野麦丘人 |
| 鴨啼くや上野は闇に横はる | 正岡子規 |
| 郷に入るしづけさ二羽の残り鴨 | 川島千枝 |
| 鴨渡る鍵も小さき旅カバン | 中村草田男 |
| 引く鴨を竹生島より見送りぬ | 藤上滋郎 |
| 鴨啼や風吹志はむ水の面 | 不詳 |
| 鴨徐々に殖ゆ背水の陣つくり | 北沢瑞史 |
| 鴨の斑の見ゆる高さを飛び去れり | 本井 英 |
| 澪すぢも鴨のなかなるもどり舟 | 木津柳芽 |
| 朝の櫂昼乾きゐて鴨渡る | 野沢節子 |
| 天空も水もまぼろし残り鴨 | 鷲谷七菜子 |
| 佐保河に鴨の毛捨るあらし哉 |