芋エッセー

 

 

2003年 2月 10日 (月) 0:55 AM
焼きいも用の壺,ありがとう.そう叫びたい気持ちでいっぱいだ.
石焼きいもというのは,正直なところ,高い.僕は一時期,石焼きいもにかかる費用の食料費,いや生活費に占める割合が非常に高く,大変に危惧される状況に陥っていた.
だいたいにおいて,石焼きいもの車を見るとその都度購入していたのだから,エンゲル係数が跳ね上がりまくりである.
新宿の高層ビルの間で,仕事の休憩中に図らずも石焼きいも屋を見つけてしまったときは,結局購入してしまったばかりに財布の中身
がジュースも買えないぐらいになったこともある.いくら何でも買いすぎである.今だから言えるが,あの時は晩飯は芋だけなんて当たり前であった.いわゆる,どうかしていた.
話がちょっと逸れたが,石焼きいも好きにとってあのお値段は大変に頭が痛い問題である.しかし,その悩みも一挙に解決する代物があるというのだからありがたい.先日,結婚祝いであるものを頂いた.それが,冒頭にも書いた「石焼きいも用の壺」である.
商品名は若干違っていて,「ニューセラミックほっかほか石焼いも(石つき)」である.
簡単にそのセールスポイントを転記すると,「遠赤外線だから,うまさが違う.超耐熱素材のニューセラミックス使用だから高温に強く,その上熱伝導率が高いので,短時間で本物の味が手軽に味わえます.」だそうだ.
ニューセラミックスと書いてはあるものの,外見はそのような最新マテリアルを連想させるものではない.土鍋そのものである.色はどちらかというと信楽焼きのタヌキに近い.直径は24センチ,高さが14センチ程度で蓋がついている.土鍋を深くした感じか.
使用方法は至って簡単である.添付の小石(滅菌処理済み)をまず中に薄く敷き詰めその上に芋を並べて,直火にかけるだけである.石を使う,というのがまた泣かせる.本格的ではないか.名実ともに石焼きいもである.
まず十分程度強火で容器を暖めて遠赤外線を放出させ始め,その後は弱火にして2〜30分,じっくりと遠赤外線出し続けてお芋を焼いていく.後は時々箸を刺してみたりして様子を見て,だいたい40分程度でほくほくの石焼きいもが出来上がる.
これがうまいのだ.実に石焼きいもである.一時期石焼きいもがあまりの高いので,フライパンで焼いたり,ふかしイモにしたり色々やってみたりしたが,比べものにならん.うめー.
誕生日祝いに,妻の実家から自家製のサツマイモを大量に送っていただいたのだが,ものの見事に数日で石焼きいもへと消えていった.いやぁ,いい世の中になったものだ.ふっふっふ.
心の底からお礼を言いたいのである.
「石焼きいも用の壺,ありがとう.」
しかし,外で食べる石焼きいもは,それはまた野趣溢れていいものなんだよね.たまにはそれもよかろう.

 

2001年 11月 1日 (火) 12:40 PM
九州というのは,非常に罪深い土地である.
例えば,あるデパート,(仮にI筒屋としておこう.)の土産物売場を斜めにショートカットしようとしたとする.
しかし,結果的には斜めにショートカットどころか,何周分も歩かされていたりする.
かりにとんでもなく重い荷物を肩から抱えていて,それがめり込んで尋常ならざる痛みを伴っていたとしても,あるいはしばらく前 に職場で足の小指をしたたか打って生じた骨折がまだ癒えきっておらずしばしば激痛が走っていたとしても,である.

それはなぜか.イタルトコロにあるのである.
サツマイモにどうしようもなく関連するおみせが,それこそ右を見れば二つ,左を見れば三つ…といった具合に.
すでにサツマイモのぱっくんちょ(巨大なもの)を購入していた僕は,できたら土産物はこのぐらいにしておきたかった.
しかし,目を背けた先に見えたのは,サツマイモシュークリームの罪深き姿であった.そこで,何を思ったか五つも購入…

すでにサツマイモのぱっくんちょと,そしてサツマイモシュークリーム5コ也を購入していた僕は,
できたら土産物はこのぐらいにしておきたかった.
しかし,きびすを返した先に見えたのは,紅あずまをふんだんに使った量り売りのスイートポテト,生クリームたっぷりのマイルドスイートポテト,そしてマロンポテトパイ…何を思ったのか,3種類全部買った.おいおい,本当に食うのか?
重い荷物を引きずりながら,さらにイモのフクロをいくつも下げている俺…まあいいのだ.ひとつずつしか買っていない.これはある意味快挙かも知れない.

そして,すでにサツマイモのぱっくんちょと,サツマイモシュークリーム,紅あずまのスイートポテト,マロンポテトパイ,その他もろもろを購入していた僕は, できたら土産物はこのぐらいにしておきたかった…
し,しかし,わき目もふらずに突っ切ろうとしたその両岸に,こんどは,いかにも憎たらしく鮮やかでいとおしいまでの黄色と紫色をしたパッケージが連続して行く手を阻んでいるではないか.
ふと我に返ると,「博多ポテト」という名の黄色と紫イモのパッケージが我が手の中に…それもいくつも…箱入りまで…
そんなわけで,九州というのは,非常に罪深い土地である.
ちなみに,土産物は「このぐらい」で済んだ.あろうことか,そのほとんどは帰りの機内で消えた…

あ,紫色って書いたつもりだったのに,紫イモに…

 

2001年 3月 8日 (木) 1:45 PM
地下鉄日比谷線広尾駅の構内には,しばしば焼きいもの香りが充満していることがある.
地下鉄のドアが開いたその瞬間,どうにもその薄暗い鉄粉にまみれた地下駅とは似つかわしくない,かぐわしい香りが鼻をつくのだ.

2年ほど前だろうか,友達の家が広尾近辺にある関係で,初めて地下鉄広尾駅に降り立った瞬間,突如として香ばしい,そして甘い香りが鼻についた.
この香りはなんぞや?
焼きいもに間違いないという確信と共に,地下鉄の駅と焼きいもの関連性を頭の中に構築できずに,とりあえず階段を上ってみた.

すると,地上の改札を出てすぐそこに,焼きいも屋の軽トラがあった.
地上の焼きいも屋の香りが地下のホームにまで行くのは,通常考えづらい.
ただ,広尾駅は浅いところにあるが故に構造が特殊である.地下コンコースというものはなく,地上に面した出口は,階段で直接ホームへとつながっているのである.
おおかた,電車の行き来で換気されて,地上の香ばしい空気が地下へと入っていったのであろう.

ちなみにこれは拷問だ.充分焼きいもの薫りで燻煙された状態で地上に出るのである.
そこに焼きいも屋はある.あるといったらある.買ってくれとばかりに,イモが並べられている…

その後,2回,3回ぐらいはそれの世話になっただろーか?
いつしか友達も妹と住むようになり,広尾駅を訪ねることもめっきり減り,いもの存在は記憶の片隅に押しやられていた…

先日,某アーティストの主催する美術館(広尾)に行ったおり,ひさびさに件の焼きいも屋を目撃した.
もう,昔の頃の味は完全に忘れてしまっていたが,甘すぎず,舌触りも上々のいもをゲットした.こ,これは結構うまい.
広尾駅は,ますます危険になった.

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