金順吉裁判

 これまでの経過

金順吉(キムスンギル)さんは、1945年に強制連行され、 1月より8月まで三菱長崎造船所で強制労働をさせられ被爆しました。

91年8月金さんは、長船労組 に次の事項を委任しました。
  @未払い賃金 の支給
  A徴用によって蒙った肉体的. 精神的苦痛に対する謝罪と慰謝料の支給
  B私同様に徴用された同胞の名簿を 公開せよ
  C被爆者健康手帳の取得に必 要な在職証明書の交付、
  以上四項目並びに本件に関係する三菱との交渉権。

そして、92年7月金さんは国と三菱を相手に損害賠償1000万七〇円(七〇円は帰りの船賃)、未払い賃金124円28銭(金順吉さんの日記で確定できる分のみ)の支払いを要求し長崎地裁に提訴しました。

 判決は、被告・国の不法行為責任について「違法なものであった」との事実認定をおこない、さらに、被告三菱重工株式会社については「旧三菱重工株式会社には不法行為があり、その限りでは旧三菱重工には不法行為責任がある」としています。また.未払い賃金についても「支払い義務を負う」としました。歴史の真実の前には、長崎地裁も事実を認めざるを得なかったのでしよう。
 しかし、判決は、国については「国家無答責任論」を追認し、三菱については「新旧三菱別会社論」により、金順吉さんの請求を棄却しました。
 このように不当な判決にたいし,金順吉さんは直ちに控訴しまLた。
 しかし、肺ガンにより体調を崩していた金順吉さんは1998年2月20目、ついに帰らぬ人となってしまいました。
 控訴審は、金順吉さんの長男金鍾文さんら遺族によって引き継がれています。

金順吉裁判 控訴審判決

 1999年10月1日、福岡高裁で金順吉裁判の控訴審判決が言い渡されました。
判決は請求を全面的に退けた一審の長崎地裁判決を支持し、金さん側の控訴を棄却するものでした。金さん側は上告する方針です。以下に「国と三菱の戦争責任と戦後責任を問う金順吉裁判を支援する会」の声明文を載せます。

不当判決に抗議する声明
〜歴史の真実から目を背けた不当な判決を糾弾する〜
                                      1999年10月1日
              国と三菱の戦争責任と戦後補債を問う金順吉裁判を支援する会
                            (代表)岩松繁俊 山口健次 高實康稔

 日本の侵略・植民地支配の暴虐の果てに、この長崎の地に強制連行され、強制労働を科せられ1945年8月9日に原爆被爆という未曾有の惨禍を体験させられた元徴用工・ 金順吉(キム・スンギル)氏が提起した裁判の控訴審判決が、本日10月1日福岡高等裁判所において言い渡された。
 韓国人元徴用工・金順吉(キム・スンギル)氏が、国と三菱重工を相手に未払い賃金 と損害賠債を求め裁判を開始したのは1992年7月のことである。爾来、この裁判は 提訴以来7年3ヵ月の歳月をかけて控訴審判決を迎えた。
 金順吉氏は失われた人間の尊厳を回復するために命を削ってたたかった。一審判決は、 被告・国の不法行為責任について「違法なものであった。」との事実認定をしている。
さらに、被告三菱重工株式会社については「かかる行為は国民徴用令に基づく徴用でも許容されない違法なものであったと言わざるを得ず、その限りで旧三菱重工株式会社には不法行為があり、その限りでは旧三菱重工には不法行為責任がある。」としている。
また、未払い賃金についても「支払い義務を負う」としている。
 まさに、国にも、三菱にも「不法行為があり、不法行為責任がある。」としているのである。
 今回の判決においてもこの事実認定は覆ることはなかった。まさに歴史の真実は明らかにされ、変えることのできない歴史的事実として確定した。このことはこの判決の最大の重要な点である。
 しかし、それならば「不法行為責任をどう償うか」が問題となるべきにもかかわらず、 判決はこの点については、一審同様、極めて不当な判断を下した。
 すなわち、国の不法行為責任については「国家無答責論」を追認し、「国が民法上の使用者責任等を負うことはなく、また、原爆投下後の処置について国が直接民法上の不法行為責任を負うこともない。」としている。
 また、三菱についてはいわゆる「新旧三菱別会社論」により「旧三菱の債務は新会社には継承されることはない。」として、金順吉さんの請求を棄却した。
 金さんにたいする不法行為を認めながら、請求を棄却したこのような判決は、歴史の真実に真正面から向き合おうとしない極めて遺憾な判決と言わざるを得ない。
 金順吉さんは一審判決後の1998年2月20日に肺ガンのために帰らぬ人となってしまった。さぞ、無念の思いだったことだろう。しかし、金順吉さんの遺志を継いだ遺族の手によってたたかいは続けられている。
 この裁判は、過去の歴史と真正面から向き合い、原告並びに韓国を始めアジア諸国の人々の心を癒し日本人として歴史の審判に耐えなければならない重要な裁判である。
 わたしたちは、福岡高等裁判所が、この裁判の歴史的な意義を自覚し良心ある判決を拾こなうことを期待したが、その期待は見事に裏切られた。
 控訴審判決は、単に一審判決を踏襲したに過ぎず、この裁判の歴史的な重要性に目をつぶった不当な判決と言わざるを得ない。
 わたしたち「金順吉裁判を支援する会」はこのような不当な判決に抗議する。さらに、最高裁に上告する決意を固めている原告を支援し、原告とともに判決のもたらした「事実の重み」をさらに上級審において訴えていきたい。さらに、「国家無答責論」や「三菱別会社論」などの論理を覆すべくたたかいを継続したい。
 わたしたちは原告を全面的に支援し、今後とも金順吉さんとその遺志を引き継いだ原告ともに最後までたたかいぬくことを宣言して、控訴審判決にたいする声明とする。
                                             


                      


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