このたび、上記の本を書き上げ出版しました。(製作/印刷 トッパンアイデアセンター札幌・凸版印刷株式会社北海道事業部 装丁/市川草介 本文253ページ・口絵12ページ)
この本を紹介させていただきます。
私は20年に渡る細々とした画業の中で、ニコラ・ド・スタールという画家の作品と生き方に関心を持ち続け、傾倒してきました。
その思いの機が熟したのでしょうか。3年前に北海道大学文学部芸術学科講座の研究生となって、北村清彦教授の御指導を受ける幸運に恵まれました。研究生としての3年間は、スタールを知るためのより深い情報収集の手段を学び、文字に落とし、焦点を絞り、推敲を何度も繰り返すという、もどかしさや悔しさの日々でした。
しかし、到達点を過ぎた今振り返れば、それがどれだけ貴重で潤沢で豊かな時間だったかとしみじみ思うのです。
ニコラ・ド・スタールは42歳で身を投げて自死するまで、正当なる画家であり続けました。数々の手紙やエピソードから見る彼の人間性。作品解説を通して知る芸術的感性。自己課題であった具象と抽象の対立。医学的・哲学的見地から見た彼の不安と絶望。
それらの人間関係がどう作用したのか。などを、この本は時系列で追求しています。
すべてに調和を求め続けたスタールにとっての最終目的は、彼の考える生と死の調和地点に、自らの意思で辿り着くことだったのかもしれません。
「幸せな生活は労働の中にあり、不安の中にあり、書物の中にある」(本文228ページより)というスタールにとって、労働、不安、書物のバランスが崩れ始めて絶望へ変貌したあと、次なる調和を求めるなら、生と死においてしかなかったのかもしれない、と私は考えるに至りました。それは悲哀や諦観の果て・・・ではなく、画家としての意思と力量による創造的なものであったのです。
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