「犯罪被害者等基本計画」施策についての意見書 

 

 私たち「少年犯罪被害当事者の会」は、平成9年12月に子どもを殺された親たちで結成し、以来約30家族を中心に、一切の団体や宗教などにとらわれることなく、当事者の立場で少年法改正などを訴えてきました。

当時、事件に遭遇した私たちは少年法の壁に阻まれ、誰がなぜ、どのようにわが子を殺したのか、最低限のことすら教えてもらえませんでした。子どもを殺された大きな衝撃の中、思いもよらなかったこうした現実は、私たちの疲れた心と体に大きくのしかかりました。真実を知りたいと思っても、「刑事裁判」とはまったく性質の異なる少年審判が行われ、期日はもちろん、内容も一切私たちに知らされず、深い闇の中で終了し、加害少年たちの処遇はすでに決定していました。やり場のない怒り、悲しみ、苦しみ、恨み―。世の中に存在するあらゆる屈辱を受けなければいけない理不尽を味わったのです。

その後、少年法の一部改正が実現し、審判の通知制度や記録の閲覧謄写が可能になるなど、被害者の権利が認められました。そして、昨年12月には、「犯罪被害者等基本計画」が閣議決定され、理不尽に子どもを殺されながら一切の権利がなく、せめて加害者と同等の権利をくださいと必死の思いで訴えてきた私たちとしても、関係各位のご尽力に感謝している次第です。

しかし、一方で、今も少年による死亡事件は後を絶たず、理不尽な状況を訴える被害当事者の声はさらに増えています。そこで、わが子を少年たちによって殺された体験から、そしてこれ以上、子どもたちを被害者にも加害者にもしたくない、という強い願いから、当事者が共通に抱いている意見を緊急に取りまとめました。

 

一、損害賠償請求に関し、刑事手続きの成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施について

 少年審判しか開かれず、刑事裁判のない少年事件の場合は、どのように適用されるのでしょうか。また、基本計画案の骨子には、国による立替払いや求償も検討する、とありますが、刑事裁判さえ行われない少年事件では、被害者が民事訴訟を起こすときの費用や勝訴しても支払われない損害賠償金の一部も、国が立て替えてほしいと思います。たとえ民事訴訟で被害者が勝訴したとしても、加害者の都合で支払われない場合が圧倒的に多く、そこでも被害者は大きな負担を強いられます。国は、加害者に代わって損害賠償金を立て替え、その後、法的手段を以って加害者から取り立てる方法を取ってほしいと思います。加害者の責任を追及する意味でも、税金の投入は絶対するべきではないと考えます。

 

一、改正少年法の見直しについて

基本法には、「尊厳にふさわしい処遇を権利として保証する」とあります。しかし、私たち少年犯罪の被害者は、ふたを開けてみれば、基本法の前に少年法が立ちはだかり基本法が機能しないのではないか、という危惧が強くあります。被害者と加害者が対立する権利が生じた場合、どちらの立場を優先するかを明文化しないと運用する側も混乱するのではないかと思います。そのために、新しい基本法に対応するように、今後も継続して少年法を見直してもらいたいと思っています。

 

1検察官送致について

「原則逆送」の但し書きを削除してほしい

わたしたちはせめて、殺人・傷害致死・重大な障害を与えた場合などの、命に関わる事件はすべて逆送して刑事裁判の手続きに乗せ、一体どのような犯罪行為があったのかをまず事実認定をしっかりとしてほしいと思っています。家裁の審判では流れが決まっている上、期間も短く、複数の人間が関わっていることの多い少年事件では、事実認定をするための十分な時間を確保することができず、とても正しい事実認定はできないと考えます。また、家裁審判扱いだから、と警察の捜査があいまいであることも少なくありません。

私たちは必ずしも刑事処分や厳罰化を求めているわけではありません。大切な子どもがいつ、誰に、どのように殺されたのかという事実を知りたいのです。子どもに何があったのかという事実を認定されない限り、気持ちのやり場がないのです。事実を正しく認定した後、刑事処分がふさわしくないという結論が出たのであれば、家裁に戻し、保護処分とすればいいと思います。

国がきっちり事件の事実認定をしてくれることを切に望みます。

 

2逆送可能な年齢制限の撤廃

せめて命に関わる事件は年齢に関係なく逆送とし、刑事裁判の手続きに乗せ、どのような犯罪行為があったのかという事実認定をしてほしい

少年の年齢が14歳以下であるがために、人を殺しても何も責任が問われないケースも増えてきています。刑事裁判も刑罰もないと「殺された子どもの命は一体何だったのだろう」「まったく命の重さがない」と納得できません。事実認定をするために、年齢よりも犯罪行為の内容を重視してほしいと思います。

 

3少年審判の傍聴・意見陳述・情報開示

被害者が望む場合には審判や裁判に参加できる権利が必要

正確な非行事実を知るための記録の閲覧及び謄写は審判開始が決定してからではなく、捜査段階からできるようにしてほしいと思います。また、加害少年の非行の原因が、少年の成育歴に影響しているということであるのなら、社会記録を含めて公開が必要です。少年法の改正により、提供される情報は増えましたが、現実的には、事件直後の被害者は混乱の中にある上、法律を知らないため、どんな情報が得られるのか分からない人が多く、権利はあっても活用できていないのが実状です。 被害当事者がより分かりやすく情報提供を受けられるような環境と運用法を望みます。

また、被害者が審判や裁判に参加することによって、報復感情のために法廷が混乱するのではと懸念する意見が根強くありますが、そうした場面を考えるのならば、法廷についたてを置くなど混乱を回避できるような法廷整備を目指すべきであって、私たちにとって重要な権利を奪わないで下さい。またその理由に「報復感情」という言葉を使わないでください。傍聴や意見陳述は、被害者の権利でもあり、加害者の更生のためだけに行われるのではありません。審判傍聴の権利は確立されるべきですが、「傍聴ができるから、公開の裁判にする必要はない」など、そのことを理由に逆送率が下がることはあってはなりません。

また、最近、保護観察官が加害少年の出所前に被害者に話を聴きに来ることがありますが、加害者の情報を提供する場というよりも、出所準備のための手続きとしか思えない例を多く耳にします。加害者の更生のためという観点でのみ話を聞かれることで、さらに傷ついている被害者が多くいます。裁判の参加や加害者の情報提供など、望む権利ではありますが、色々な手続きがかえって被害者の負担になることがないよう望みます。

 

4保護者の責任について

加害少年が、精神的に未熟であるという理由で少年審判を受けた場合、加害少年の保護者の責任をもっと明確化するべき

少年審判しか開かれなかった私たちは、少年たちがそうした事件を起こしてしまった背景を作ってしまった、あるいは見逃してしまった親の責任も認定してもらいために、民事裁判を起こしました。親の責任を認める判決を受けることすら困難で、さらにようやく親の責任を認めた判決を受けたとしても、損害賠償金すら支払わない親もいます。現在、当会員は約30家族で、その内ほとんどが集団暴行のため加害者は150160人、親はその2倍の人数いることになります。しかし事件後、保護者として子どもの罪の責任を痛感していると感じられる親はたった1人です。少年も親も責任を問われないとすれば、殺された子どもの罪は一体だれが償うのでしょうか。こうした親たちの反応は、少年法のどこにも「保護者の責任」という言葉が記されていないからだと思います。子の犯した事件の重みを感じず、その責任と向き合わない親の元に戻った子どもは果たして自分の行いに向き合うことがあるでしょうか。少年は再犯を繰り返すことになってしまいます。少年が未熟であるならば、罪の責任の所在は保護者にもあると、少年法で明文化してほしいと思います。

平成18年3月2日 

少年犯罪被害当事者の会

 

法務大臣 杉浦正健殿