三好弁護士連載第3回

平成12年12月16日

序第1

1 連載と言いながら、第2回より10ヶ月程経過した。決してさぼっていたわけではないが、ここ10ヶ月程少年法をめぐる状勢の変化が激しく、手をつけられなかったというのが実情である。

2 平成12年11月28日衆議院において、少年法の一部を改正する法律が成立した。施行は平成13年4月1日である。改正内容については、不満という人もあろうし、これでは少年の健全育成の精神に反すると言う人もあろう。が、この改正が少年法の大きな変革であることを疑う人はあるまい。今回はこの改正された法律改正を中心に書いてみたい。

3 法律の内容に入る前に、改正の経過で目につく点をまず見てみよう。この改正案は自民党、公明党、保守党の与党三党の提案による、いわゆる議員立法であるが三党が何時提案を決断したのかは明らかでない。

4 どうも平成12年7月30日等2回目の当事者の会と日弁連子供の権利委員会が話し合った時には、未だあのような案が提案されるとまでは、多くの人は予測できなかったと思う。

5 それが三党提案の議員立法という形で(これは政府提案にするには、法制審議会に諮問するのが通常である。しかし、法制審議会に諮問するとなると、早急な結論は得られる状況にない。)提案されたのは重大な決断があったのであろう。勿論少年被害者当事者の会の努力も一つの原動力であったことは事実であろうが、それだけで三党が生命犯原則逆送、14才まで検送可という重大な決定をするというのも少し無理があるように思う。

6 又、民主党の動きも同様に、普通の場合とは異なる。当初、三党案が新聞に出たとき民主党は型どおり反対と伝えられたと記憶する。ところが、審議の課程で三党案反対でなく修正の態度となり、最初の衆議院の最終段階では三党案には反対の法務委員をさし替えてまでして改正賛成に廻った。自由党の賛成と共に、これで少年法改正案は圧倒的多数で可決されることになった。私には政界内部の事情はわからないが、民主党の態度変化を憶測すると、民主党は野党だけに当初は少年審判の実状がよくわからなかったのではないか、それが三党案が提案され、各種の情報が入って来るようになり、特に選挙区で少年審判の評判が恐ろしく悪いことがわかってくると、少年法の改正には反対できないという結論になって来たのではないかと想像する。民主党が賛成するか反対するかは。その法律の安定性に重大な影響を持つことはいうまでもない。勿論私は民主党が三党案に賛成されたことを心から喜ぶ。

7 私はこれまで少年法の欠陥として
  (1)すべての事件から検察官を排除したこと
  (2)被害者を審判廷から閉め出したこと
  (3)抗告権を加害者にのみ認めた
ことの三点をあげてきた。
まず、これらの点がどう改正されたかを見てみよう。


第2

1 検察官の関与

改正法案第二十二条の二
家庭裁判所は、第三条第一項第一号(罪を犯した少年)に掲げる少年に係る事件であって、次に掲げる罪のものにおいてその非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって審判に検察官を出席させることができる。
一故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
二前号に掲げる罪のほか、死刑又は無期、若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪

2 家庭裁判所は前項の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聞かなければならない。

3 略(内容、検察官の資料閲覧、謄写など)

4 上記の規定により、被害者が死亡した事件と短期二年以上(短期とは法律で定められた刑の最低が二年という意味)の罪につき、検察官の申出がある場合と、あらかじめ検察官の意見を聞いた場合の二つの場合とも、家庭裁判所の決定があって検察官は審判に出席できることになった。検察官が自分の意志だけで出席は出来ないが、家庭裁判所は検察官の出席を必要とするときは検察官に「審判に出席して貰えるでしょか」と聞かねばならないというややこしい規定である。後述の抗告受理申出権同様立法上の妥協の産物と思われるが、この点は読みながら思わず苦笑いがでるところである。

5 笑えないのは検察官が出席できるのは「非行事実を認定する為の審判手続き」に限定されていることである。否認事件が含まれていることは勿論だが、非行事実と犯罪事実とは同一なのか或は違うのか。一つの答えは同法第五条の二、に非行事実を次のように定義しいている(犯行の動機、態様及び結果、その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実)これを見ると検察官の関与する事実は犯罪事実だけでなく、かなり範囲が広いと考えてよいと思われる。

6 次に検察官出席事件に短期2年以上の事件と定めた点である。これも立法的妥協の産物と思われるが、これは問題がある。若年者の規範意識低下の具体的表れの一つとして脅迫、恐喝、強盗の3つがあげられ統計上も上昇カーブを続けている。右のうち強盗は短期五年で検察官出席事件に入るが、恐喝、脅迫は入らない。しかしこの二つの事件は割合処遇が困難なのである。今後の検討課題の一つと思われる。又、罪名は何であれともかく否認事件は検察官事件とする方が望ましい。

7 次に被害者にとって重大関心である被害者の在席権と意見陳述件権について述べる。

一 (被害者等の申出による意見の聴取)第九条の二 家庭裁判所は最高裁判所規則の定めるところにより第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る事件の被害者又は法定代理人若しくは被害者が死亡した場合におけるその配偶者、直系の親族、若しくは兄弟姉妹から、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは、自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させるものとする。ただし、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときはこの限りでない。と定められている。最高裁判所の規則がまだ定められてないから何とも言えないが、私は家庭裁判所の意見聴取は是非審判廷で行われるよう規定されることを望む。被害者等は、改正前の少年法により十二分に傷つけられているのである。私は、審判廷での意見陳述を拒む理由は何もないと思う。これ以上被害者らを失望させることのないことを切にお願いする。

二 審判廷への被害者らの在席権については何も規定がない。そして少年法二十二条二項は審判はこれを公開しない。と定めている。しかし、家事審判規則二十九条は審判の席には少年の親族、教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。と定めており、日本弁護士連合会は平成十二年三月、上記規定には被害者らを含むものと解し得る。との見解を発表し、最高裁判所、法務省にも通知されていると承知している。右見解によれば裁判官の許可により前記第九条の二の規定と相俟って被害者は審判廷に出席し、審判の模様を見守りつつ意見の陳述ができることになる。上記規則は司法権の独立の観点から究極的には書く裁判官の判断事項であろうが、意見陳述を認める以上出席をも認めることが審判をスムースに進めることになると思われるので、是非そのような運用をお願いしたい。

三 (抗告受理の申立)第三十二条の四 検察官は第二十二条の二第一項の決定がされた場合においては、保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し、同項の決定に関し決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り高等裁判所に対し、二週間以内に抗告審として事件を受理すべきことを申し立てることができる。と定められた。要するにこの規定は抗告権はないが、抗告を受理してくれと申し立てる権利が、検察官にはきびしい制限の下において存在するということである。これがどのように運用されるかはわからないので解説は控える。大体抗告受理の申立という言葉自体始めて聞いた言葉である。新法にはこれ以外、十六歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は、原則として検察官に送致しなければならない。旨の規定のほか大事な規定がいくつかあるが、私が従来より主張して来た三つの不合理は以上述べたとおりであるので、今回はこの程度にしそれ以外の紹介は次回に譲りたい。