18:〜大木編2〜
「おっ、おい落ち着け野村雄三!わしだ、雅之助だというのがわからんのか?!」
城の廊下でチャンバラごっことなってしまった雅之助と子供雄三。
相手はおもちゃのように真剣を振り回してくる。
「おじちゃんは悪者、僕は城の兵士。僕がおじちゃんを切るんだからじっとしててね!」
「全く、お前まで妖術にかかるとは……一体どうなってるんだ?」
雄三と決闘出来るのは嬉しいが、こんな場所で、ましてや相手が子供の姿では
どうしようもない。
雅之助はぼやきながらも受ける一方だった。

「雄三くんっ!!」
突然、子供野村の後ろから呼び声がした。
「面白そう、ボクもまぜて!チャンバラごっこ!」
現れたのは子供利吉だった。
本物の忍び刀を携えてニコニコと笑っている。
「利吉かっ!半助の奴は何をやっておる…!」
また厄介な奴が増えた…、とばかりに雅之助は頭をかいた。
子供野村も子供利吉の方を見て無邪気に微笑んだ。
「雄三くんはつよ〜い兵士だから、一人で二人を相手に出来るよね。
ボクは雅之助のおじちゃんと一緒に悪者になるよ」
と利吉は雅之助側にまわった。
そして小さな声で雅之助に告げた。
「(子供の野村先生の気はなんとか私が引きつけておきます。大木先生は西側の三
の間へ行っててください)」
「(何だ?!利吉正気に戻ったのか?)」
「(詳しいことはあとで!子供の野村先生にやられて逃げる振りして行ってください。
土井先生もそこに…)」
「(……よし)さぁ小僧、かかってこい!」
「よぉし、悪者なんかやっつけてやる!」
子供野村は刀を構え、雅之助の方に走ってきた。
振り下ろされた刃を紙一重でよけ、思い切り廊下に転んだ。
「うわぁコイツにはかなわねぇな!わしは逃げるとするか。小僧、あとはこの利吉くんが
相手になってくれるそうだ!」
慌てて逃げていく振りをして、雅之助は再び屋根裏に飛び上がり、利吉に言われた
通り西側三の間へ急いだ。

 

19:〜大木・土井編〜
雅之助が三の間へ到着したとき、既に半助はそこに待機していた。
「大木先生!利吉くんに会ったのですか?」
「そうだ。利吉がここに半助が居ると教えてくれたからな。今利吉は野村雄三と
チャンバラごっごをしておる」
「野村先生…って、利吉くん同様子供の姿にされてしまったんですよね?
二人共大丈夫だろうか…」
半助は利吉から聞いたことを雅之助に話した。
既に子供にされた野村雄三に出会っていたので、雅之助はさほど驚かなかったが、
その妖しい妖術とやらに二人共頭を悩まされた。
「相手の顔も分からないって言うし…これから一体…ん?」
「なんだ、どうした半助」
半助は壁の隙間に挟まっている紙切れを見つけた。
小さく畳まれている紙を開いてみれば、そこにはこの城の見取り図がすっかり
描いてあった。
「利吉くんの字だ!」
「彼奴、ほんっとにしっかりした奴だな。お、此処に文字が…」
紙の端には小さく忍者文字でメッセージが書かれていた。
「三階…西…三…三階の西側三の間と言うことか?!この上の部屋だ。
この部屋に手がかりがあるに違いない!」
「行ってみるしかなさそうだな」
「その前に利吉くん達の様子を見てこなくちゃ!」
何とか手がかりが掴めてきそうな予感…たが油断はできない。
相手がどんな姿だか分からないからだ。
もしかして、どこかに潜んでこちらの様子を窺っているのかも知れない…
二人は再び利吉のいる場所へと戻った。

 

20:〜大木編3〜
利吉は焦っていた。
ごっこといっても、相手は本気でかかってくる。
しかも、この騒動を聞きつけて、他の子供達も何人か集まり、
チャンバラごっこに加勢している。
子供野村をはじめ、相手の子供達を傷つけるわけにはいかず、うまく交わすか、
受ける一方だ。
仲間は仲間を呼び、子供野村は何人もの子供を味方に付けて利吉を斬りつけてくる。
しかし、利吉側には誰一人として味方に付こうとする者は居ない。
「(もしかして…私が正気に戻ったことがばれたのか?!)」
利吉がそう感づいたときにはもう遅かった。
周りをすっかりお子さま忍者に取り囲まれていた。
子供野村は笑いながら言った。
「利吉くんは裏切ったからね、みんなでお仕置きするよ!」
「しまった…」
お子さま忍者は楽しそうに武器を構えた、その笑顔とは裏腹にものすごい殺気を放ち
ながら。
「其処にいる利吉くんのお連れさんも一緒にお仕置きしてあげるからね」
「大木先生?!」
利吉が振り返ると其処には雅之助が立っていた。
「どうやら随分とマズいことになっているようだな利吉」
「私が正気に戻ったことが分かってしまったようです!野村先生たちを敵にまわして
しまいましたが、戦うわけにも行かないし…どうすればいいのでしょうか?!」
雅之助はにやりと笑い、木刀を構えた。
「遠慮することはないぞ利吉、此奴等は敵だからな。打ちのめせばいいまでだ。
さぁぼうずども、まとめて片付けてやるぞ!」
そう言うと木刀を振り上げて子供たちに向かって走り出した。
「やめて大木先生!この人たちは悪くは……」
利吉が止めに入ろうとすると、急に煙幕が立ちこめた。
雅之助が煙り玉を投げたのだ。
利吉は、自分の視界が一瞬遮られた時、不意に誰かに抱きかかえられた
感じがした。
「ここは大木先生に任せて!」
「土井…先生?!」
煙の中から半助が現れ、利吉を抱えて走り出したのだった。

「私のメモ、見て頂けました?」
半助は利吉を抱え、どこかに向かって走っていた。
「ああ、書かれていた例の部屋にも行ってみたよ。だけど其処には誰もいなかったし、
三階には大人すら居ないんだ」
「おかしいな…私たち忍者はその部屋に連れて行かれたんですけど、その部屋には
この城の者らしき男が沢山居ました。其処なら手がかりが見つかると思っていたんで
すけど…」
「兎に角、今からもう一度その部屋に行ってみる。君もできたら何か思い出してくれ」

こうして二人は例の部屋に到着した。
中へはいると、奥の方に妖しい祭壇があるだけで他には何もない。
「もう少しこの部屋を調べてみよう」
半助と利吉は手分けして手がかりになる物を探し始めた。

 

21:〜全員編〜
二人が例の部屋の捜索を始めて間もなく、勢いよく戸が開いて雅之助が入ってきた。
「大木先生!子供たち、どうなりました?!」
「ああ、催眠煙でぐっすりのところを地下牢にぶち込んでおいた。あとは此奴だ」
見ると、雅之助の腕に抱えられている子供が、しきりと暴れていた。
「早く下ろさんか!」
「お前にもこんなカワイイ時期があったんだな」
雅之助はニヤニヤしながら、抱えていた子供野村をしたに下ろした。
「のっ野村先生!」
「ああ、迷惑を掛けて済まなかったな」
「正気に戻られて…?」
「いや、戻ったと言うよりも──」
どうやら雄三は、体を子供にされてしまったのも、それも作戦のうちだったらしい。
利吉から手がかりを見つけるのに手こずっていたため、自ら乗り込む作戦に出たとい
うのだ。
騒ぎを起こしたのは、周りの注意を引きつけるためだという。
「じゃあ、野村先生は妖術使いの顔をご存知なのですね!」
「勿論だ。実は奴自身も子供の姿に変化している。あの騒ぎの中に混じって
いたんだぞ」
「ええ!!」
半助と利吉は驚いた。
勿論、妖術使いも子供の姿に変化していたとは気付く筈もなかった。
「しかし、わしが奴等を牢にぶち込んだときは既に奴の姿は無かった…次にどんな罠を仕掛けて待っているやもしれん。気を付けろ」
「とはいっても、この先一体どうすれば…」
一同この事に頭を悩ましていたその時、城の裏手から物凄い轟音と共に、辺り一面地響きがした。
「な、何事だ?!」
慌てて裏に廻ってみると、あちこちから火の手が上がっていた。
「これは一体…」
「もしかしてこの城を敵に回している他の軍勢が?!」
「それとも城の残っている手がかりを消すために奴等が火を放ったのか?」
ともかく、城全体に火がまわるのは時間の問題。
牢に閉じ込めた子供達を救い出さねばならない。
「早くこの城から脱出せんと巻き添えを食うぞ!」
一刻を争う城の火災、牢に向かおうと部屋を出ようとしたとき、
背後に人の気配を感じた。

「慌てるな、それは儂が放った火だ」
「え?」
一同、一斉にその声のする方を振り返った。
「あ…」
「…父上…?!」
「山田先生?!」
そこには山田伝蔵が立っていた。
手には何本か蝋燭を持って……。
「そ、その蝋燭は?」
「うむ、じつは子供にされるという妖術は、この蝋燭の煙を浴びると解けるらしい。詳しいことはまた後だ、兎に角今はこの蝋燭と共に城に火を付ける」
今さっきあちこちで上がった火の手は、伝蔵の仕業らしい。
一人でここまでやるとは…と感心しているヒマはない。
全員手分けして火の中に蝋燭を投げ込み、その独特な色の煙を上げさせた。
「奴め、燻りだしてくれる!」

 

22:〜全員編2〜
伝蔵の持ってきた蝋燭とともに、城の中は煙まみれになった。
城内は火事でパニックに陥っていた。
捕らえられなかった子供たちが、蝋燭の煙を浴びて次々に幻術が解けていく。
大人に戻った雇われ忍者や、城の兵たちが慌てて城外に飛び出していった。
伝蔵たち皆は、その流れに逆らって地下にある牢に子供たちの救出に向かった。
「いいか野村雄三、ヤツを見つけたらすぐ教えろ!」
「わかっている。逃がさないように引っ捕らえろよ!」
伝蔵と半助が牢をあけ、子供を誘導している間に、雅之助と子供野村は子供たちをチェックしていた。
「くそっ、ヤツめ、どこに行った…?」
閉じこめられていた子供たちは殆ど解放し終わったが、肝心の幻術使いの姿がない。
「お〜い大木先生、もう子供たちは全員一階へ上がりましたよ!」
伝蔵は階段の上から呼びかけた。
「わかりました〜!それじゃ逃がさないようにしっかり見張っていてください!」
「全員に蝋燭の煙をかけて幻術を解いておきます!こちらは任せてください」
伝蔵と半助は子供たちをあつめて蝋燭の煙を浴びせた。
煙を浴びた子供たちは、たちまち元の姿に戻った。


「おい、ホントに半助たちが逃がした子供達の中にはいなかったんだろうな?」
空になった牢の中を探りながら、雅之助がいらだたしく言った。
「いなかった。一人一人チェックしていた!だが、奴もしっかり牢に閉じこめた筈なんだが…」
「まぁ、大人を子供に変えちまう奴だからな。牢を抜け出すこともたやすいのかもしれん」
だとしたらまたやっかいなことになる。
そう考えた二人はいったん伝蔵たちのところに向かうことにした。


伝蔵達は、元に戻った忍者に今までのいきさつを簡単に説明した。
そしてその忍者達を全員逃がし終わった後に、雅之助と子供野村が戻ってきた。
「山田先生、土井先生、どうやら奴に逃げられてしまったようです、不覚でした…」
「それよりも利吉を見なかったか?さっきから姿が見えんが…」
「え?そちらと一緒ではなかったんですか?」
雅之助と子供野村はびっくりして辺りを見回した。
確かにさっきから利吉の姿を誰も見ていない。
「ま、まさか…」
あたりは以前煙に包まれていて、視界は悪い。
見回すが、走って逃げる人影しか見あたらない。
「まさか利吉、やつを一人で追って…?」
「そんな無茶する子じゃないですよ。もしかしてまた敵に捕まって…」
すると、城の裏側から爆発音が聞こえた。
それと同時に、子供の叫び声…。
「うっ、裏か?!」
一同すぐに駆けだし、音のする方に向かった。

 

23:〜全員編3〜
城の裏側に回ってみると、そこには子供利吉ともう一人、子供がいた。
その子供は、一見するとごく普通の子供のようだったが、利吉以上にものすごい殺気を漂わせていた。
鋭い目つきに、髪の毛は子供なのに真っ白だった。
「奴だ!」
子供野村は叫んだ。
「奴って、あの子供がそうか!?」
「そうだ、間違いない!」
子供利吉は、もう一人の子供と怒鳴りあいながら刀を振り回していた。
「まるで子供のけんかのようですが」
「土井先生そんなのんきなこと言ってる場合じゃないでしょう?!利吉を助けないと!」
子供利吉と子供の姿の妖術使いは、刀を振り回したり、つかみかかったり、勝敗はつきそうもない。
「とにかく奴を元の姿に戻す。子供のままじゃすばしこくてならんからな」
伝蔵はそう言うと雅之助に蝋燭を手渡した。
「わしが奴を捕まえておくから、大木先生はうまく奴に煙を浴びせてください。土井先生野村先生は利吉を応戦して!」
「わっかりました!」
半助、子供野村、伝蔵はすぐにその場を飛び立った。
雅之助は蝋燭に火をつけ、煙を起こした。



「まったく、やっかいな人物を敵にまわしてしまったようだ」
子供幻術使いは利吉につかみかかりながら言った。
「忍術学園を敵に回して、いい思いをしたものはいないよっ」
利吉はその腕をするりとすり抜けて言い返した。
「お前、ハタケシメジタケ城に味方するふりをして、どうせこの城も乗っ取る計画だったんじゃないのか?」
「まぁそんなところだな」
「こうまで幻術の腕が達者なのに、悪用するとろくなことがないぞ!」
「達者だから悪用するのさ」
燃えさかる煙の中を巧みに駆け抜けていたが、子供幻術使いの動きは半助と子供野村によって封じられていた。
半助と子供野村は、子供幻術使いの周りに手裏剣やまきびしを投げ、行く手を遮っている。


雅之助が煙を持っていた袋に詰め、口を縛った。
そして弓矢を取り出し、矢の先に袋を取り付けた。
「これで用意は完璧だな」
雅之助は、半助と子供野村に合図を送った。
その合図に軽く頷き、二人は子供幻術使いの両側に飛び降りた。
「もうそろそろ忍者ごっこは終わりにしたらどうだ?」
半助が子供幻術使いを見下ろした。
「おっ、お前ら!さっきからよくも…」
「準備は出来たようですね。それではお遊びは此処まで…」
子供利吉は不敵な笑みを浮かべると、子供幻術使いに大きな跳び蹴りを喰らわした。
胸にまともに喰らった子供幻術使いは、そのまま後方へ吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされたその体を、待ち構えていた伝蔵が抱きとめた。
「大木先生、お願いします!」
伝蔵は雅之助に向かって叫んだ。
「よっしゃ!」

 

24:〜全員編4〜
雅之助は用意していた矢を、子供幻術使いに向かって放った。
矢は、真っ直ぐに向かってきた。
伝蔵に抱えられ身動きが取れず、その場でもがくことしか出来ない。
「くっそぉ!!」
子供幻術使いは叫んだ。
矢は、命中した。
しかし、命中したと同時に物凄い爆発が起こった。
「なにっ?!」
爆風に飛ばされた伝蔵はひらりと身を翻して着地した。
「何だ?どうした??」
慌てて当たりを見回す。
敵の姿はない。
ただ、煙がそこら中に立ちこめているだけだった。
「どういう事だ?自爆か?」
爆風で吹っ飛ばされた子供野村が起き上がりながら言った。
雅之助が駈けてきて、奴の居た場所で立ち止まった。
「いや、矢は確かに奴に命中している。此処に血が転々と垂れているぞ」
確かに、地面には血が垂れていて、それは城の外へと向かっているようだった。
「あの爆発は奴の目くらましだ。逃げられたな」
「逃げられはしましたが、もう幻術は使えないでしょう」
同じく爆風に飛ばされた子供利吉が起き上がりながら言った。
「どういうことだ?」
「大木先生の放った矢が刺さる時、私も一緒にコレを投げておきました。もう二度と幻術が使えないようにね」
利吉は不敵に笑いながら、棒手裏剣を数本取り出した。
「目が見えなきゃ奴だって幻術使えないでしょう?」
「お前……」
「可愛い体して、恐ろしいコトするなぁ…」
「だが目が見えなきゃ幻術は使えないだろう」
伝蔵は利吉の傍にやって来て言った。
「しかし良くやったな、利吉。こんな利吉を見てると昔を思い出す…」
「頭撫でないでください!子供なのは体だけなんですからっ!」
恥ずかしそうに顔を赤らめる利吉は、本当にただの可愛い子供に見える。
「父親から見れば、子供っていくつになってもまだまだこんなイメージなんだろうなぁ」
半助は微笑みながらそんな光景に見とれた。
「本当に。お前にもこんな可愛い時代があったとはおもわなんだ。ほれ、オジサンがダッコしてやるぞ〜」
「やめろ、気持ち悪い!誰が命がけで幻術にまでかかって乗り込んだと思ってるんだ!」
ふざけて子供野村を抱き上げる雅之助に、こっちも全然変わらない、と半助は苦笑した。

 

25:〜結び編1〜
「まぁ、一応は一件落着ということで、戻りますか」
「そうしますか」
一同は、焼け落ちた城をあとにして、学園に向かった。


「でもほんと、凄い幻術使いもいたものですね」
半助が溜め息混じりに伝蔵に言った。
今でこそ子供の姿の利吉に見慣れてしまったが、最初に出合った時のあの衝撃と言ったら…。
「噂には聞いていたが、これ程までにとはなぁ。勢力を拡大させる前に捕らえておいてよかったですな」
「全く」
「ところで、山田先生はどうしてあの城のことが分かったんですか」
後ろに歩いていた子供野村が伝蔵に尋ねた。
「そうですよ、蝋燭で術が解けることも知っていたし…」
子供利吉も隣から付け加えた。
「うむ。学園からの帰り道、たまたま立ち寄った茶店でとある侍からこの噂を聞いてだな、なぜか嫌な予感がしたもんでな。ほれ、この前利吉から手紙を貰っただろう?その手紙にこの城のことが書いてあったから…」
「そういえば、秋休みにはちょっとだけ戻れるっていう内容の手紙を出したっけ」
子供利吉はその手紙のことを思い出して頷いた。
「それで、ちょっと土井先生に相談しようと学園に戻る途中、慌てて学園の方へ向かっていく大木先生と野村先生を見かけたのだ。これはただ事ではないなと、直感したのだ」
「流石、親子ですね」
半助は感心した。
「でも父上が来て下さって、本当に助かりました。私たちだけではとても解決出来ませんでしたよ」
「なに、お前たちも良くやった。かなり手強い相手だったがな。かなり被害も被ってるようだし…」
伝蔵はそういって子供利吉をひょいと抱き上げた。
「あ、やめてください父上!子供みたいだけど子供じゃないんだってば…」
そう言いかけて、子供利吉ははっと気付いた。
子供野村も気付いた。
「も、元に戻るの忘れてた!!!」

 

26:〜結び編2〜
「ちちうえっ!!蝋燭!蝋燭残ってませんか?!」
子供利吉の姿も、子供野村の姿にも、皆すっかり慣れてしまったせいか、元に戻ることをすっかり忘れていた。
伝蔵は荷物を探り、青ざめた。
「しまった…蝋燭全部使ってしまったわい…」
「え、え〜??!!」
半助も、受け取った蝋燭はすっかり火に投げ込んでしまったので、一本も持っていない。
「山田先生、その蝋燭はどこで入手されたのですか?!」
子供野村が焦りながら聞いてきた。
「この蝋燭は城の中で手に入れたのじゃ。あの幻術使いに反対して囚われていた家老と出合い、その人に聞き出して手に入れたもので……」
「じゃ、じゃあ…城が焼け落ちたと言うことは…」
「もう蝋燭がないの?!」
子供利吉もすっかり泣きそうな顔をして伝蔵の足にすがりついていた。
そんな子供利吉の頭を撫でながら伝蔵が苦笑いしながら言った。
「ま、またどこかで幻術を解く蝋燭を捜すから、もうちょっと我慢すれば…」
「そんなぁ、困りますよっ。私だって仕事がまだ残ってるし、ああ、このまま戻らなかったら私は一体…っ」
子供野村も頭を抱えて悲痛の声を洩らしていた。
「ああ、この姿のまま生徒の前に立って実技を教えることになるのか?!なんで蝋燭のこと気付かなかったのだ…」
その様子を見ていた雅之助が笑いながら言った。
「お前ら本当にそそっかしいなぁ。少しは自分第一に考えろ!」
そういって胸元から一本蝋燭を取り出した。
「あ!」
「それは!」
「こんな事だろうと思って一本頂いて置いたんだ。どうだ?欲しいだろう?」
雅之助は、子供の届かない高さまで蝋燭を持ちあげて、ふざけている。
「よこせ雅之助!くそぅ、こんな姿じゃなかったらお前なんか…」
「蝋燭!いじわるしないでくださいよっ!!」
自分にすがりついてくる子供二人に笑いながら、雅之助は蝋燭を胸元に再び収めてしまった。
「お前らそのカッコウの方が可愛いぞ。しばらくそのままでいろ」
「ふざけるのもいい加減にしろ!この姿のまま生徒の前に立てるわけなかろう!」
「そうですよっ!残ってる私の仕事、誰がやるって言うんですか!」
「ははは〜、悔しかったらわしから奪ってみろ!」
雅之助は楽しそうに走り出した。
「待て〜!」
そのすぐ後を子供二人は追いかけた。
その姿を見た伝蔵と半助は溜息をついた。
「どっちが子供で、どっちが大人だか分かりませんね」
「まったく」

そして、オジサンとお子さま二人の追いかけっこはしばらくの間続いたという。

                              めでたしめでたし。

 

■あとがき■
と、とうとう完結しました!本当に長い時間かかってしまいました。
更新がまちまちなら連載するな!と自分によ〜く言い聞かせております…。
ノってるときはすぐ出来るんですけど、ノリが悪いと本当に滞っちゃって…。
しかも、ラスト書いたの何ヶ月も前なのに、今頃更新してるし(汗)。
楽しみに読んでいてくださった方々、本当にスミマセン。
でも、ここまで読んでくださって本当に有難う御座居ました。
これ、原稿用紙に起こしたらどれくらいの長さがあるのかな?
長編で、しかも連載やったの初めてだったので、楽しい反面苦労もしました。
しかしイベントやメールなどで「面白いです」と言われると、ホント嬉しくて
また頑張ろうという気持ちになりました。
コレに懲りずに、また連載小説始めちゃったら、その時はまたお付き合い
くださいませ。力の限り、時間の限り頑張りたいと思います。

この小説に関する感想・質問等メールや書き込みお待ちしております。
どうも有難う御座居ました。