8:〜野村・大木編〜
その頃、雅之助の所にやってきた雄三は、今までの出来事を話して聞かせた。
「……ということなんだが、お前は何か聞いていないか?」
「ふぅむ、知らぬわけでもないが、わしもその噂については気になってはいた…」
雅之助は腕組みをして考えこんでいる。
「しかし、利吉が…か…、どうにか利吉自身に聞きだせんものか」
「さぁ、すっかり子供に戻っていたかな。しかし忍術の腕だけは恐ろしいほどだ。子供
だと思って油断すると、生命を落としかねん」
少し考えこんだ後、雅之助は立ち上がった。
そしてにやりと笑う。
「何処の城の差し金か、利吉自身に案内してもらおうか」
「何か策でもあるのか?」
「さぁな。やってみなければ分からない」
「曖昧な奴だな」
二人はすぐに学園に向かった。

 

 

9:〜土井・小松田編〜
半助と子供利吉のかくれんぼは、第二段に移り続いていた。
なかなか半助を見つけられずに、泣きだしてしまった利吉の前に飛び出した半助の負
けである。
ただ、半助が飛び出したときに子供利吉が笑ったように見えたのは気のせいだった
のか────

「隠れてる方も大変だけど、こりゃ見つける方も相当大変だぞ〜!」
半助は焦っていた。
利吉がどこに隠れたかさっぱり分からない。
途中までは気配を追っていたが、なにしろ子供というものはすばしっこいもので、小さ
な身体を狭い隙間に滑り込ませて、あっという間にいなくなってしまった。
どこかに隠れて、不意に襲われたのならたまったものじゃない。
半助は一瞬ゾッとした。

その時!!

「助けて〜〜〜〜〜!!!」
事務室の方から大きな声が聞こえた。
「まっ、まさか小松田くんが?!」
慌てて事務室まで飛んでいったが、そこには座り込んでいる小松田以外、利吉の姿は
見当らなかった。
「大丈夫小松田くん?!何されたの?怪我は?!」
「どっ土井先生!利吉さんが急に現われて…」
小松田は震える指で戸棚を指さした。
「何?何か盗られたの?!」
「ぼくが内緒でとっておいたお饅頭…」
ガツン!と一発小松田の頭に拳を入れて、半助はその戸棚に近づいた。
そしてハッとした。
──盗られたのは饅頭だけじゃない…一緒に教職員の名簿も無くなっている……
かくれんぼをしたのは間違いだった。
これでは利吉の思うつぼだ。
かくれんぼとなれば、いくら呼んでも出てきてくれやしない。
「小松田くんも一緒に利吉くんを捜してくれ。かくれんぼをしてるんだ」
「かくれんぼ?分かりました〜!絶対お饅頭を取り返して見せます!」
小松田はそう意気込むと、部屋を出ていった。
「どのみち小松田くんだって狙われている…部屋でじっとしてても同じことだ」
半助も同じく部屋を出た。
──もしかすると、もう学園を出てしまったかも知れないな……そうなると厄介だ
万が一のことを考え旅支度をしようと、半助は一度自分の部屋に戻った。
だが、職員室に入ろうとしたとき、部屋の中に人の気配を感じた。
中を覗いた時、顔から血の気が引くのが分かった。
だが彼はまさしく───────

 

 

10:〜土井・利吉・大木・野村編〜
「…利吉くん!!」
半助は戸を勢いよく開いて名前を呼んだ。
「あ、土井先生!お待ちしておりました、じつは……」
それはまさしく18歳の姿の山田利吉だった。
── 一体これはどういうことだ?!
「利吉くん、帰ったんじゃ…ないのかい?」
「はい、土井先生に言い忘れていたことがあったもので…。じつは良くない噂を耳にし
まして、それを伝えるべく戻ったんです」
「う、噂?」
「私が、とある城に仕事で潜入していたときに城の兵が言っているのを聞いたのです
が、なにやら大人を妖しい幻術によって子供に替え、暗殺を計画しているらしいです」
どうやら、利吉自身もその幻術にかかっていることを、本人は気付いていないらしい、
と半助は悟った。
そうするとこれまた厄介だ、この事を利吉本人に話すかどうか……
「その城にとって都合の悪い城を潰す計画らしいです。しかしその中に忍術学園も…
って、土井先生聞いてますか?!」
「え、あ、聞いてるよ、聞いてる……」
腕組みして考えこんでる半助の顔を、利吉は覗き込んだ。
「で、その城ってどこの城か、利吉くんは知ってるの?」
「はい、噂によると……」
利吉の話が佳境に入ったとき、ガラリ!!と戸が開いた。
「土井先生はいらっしゃるか…って、利吉か?!」
入ってきたのは大木雅之助だった。
利吉の姿がいつもと変らなかったのを見て驚いた。
「土井先生、コレは一体どういうことですか」
雅之助の後から、雄三が半助に言った。
半助は口に手を当てて、何も言わないで、というジェスチャーをとった。
「どうしたんですか、大木先生も野村先生も……」
利吉が驚いたように二人を見た。
「あ、いや、その噂ってものが気になってな」
雅之助が話に加わってきた。
「それで、何処の城の差し金だ?お前は知ってるのか?」
「はい、ハタケシメジタケ城です。今戦をしようと企んでいる城の…」
──これで城はわれたな。
雅之助は雄三の方を見てにやりと笑った。
「それじゃ利吉、後のことはわしらにまかせて、お前は厄介だから大人しくしていろ」
「え?」
言うなり雅之助は利吉の首に手刀を一撃、突然のことに身構える暇もなく、
利吉は後ろに待機していた雄三の腕の中に崩れた。

 

11:〜大木・土井編〜
「しかし大木先生、一寸手荒な方法じゃありませんか?利吉くんが可哀相ですよ…」
「仕方ない、少量の眠り薬を盛ったとて効く相手じゃなかろう」
雅之助は利吉を担ぎ上げて、父伝蔵の部屋に連れて行った。


「それじゃ半助はわしと一緒にこい。ハタケシメジタケ城の偵察に行くぞ」
利吉を寝かせ、部屋から出てきた雅之助は半助に言った。
「え?何で私なんですか??」
「もし利吉がまた子供に戻ったら、お前じゃ対処できんだろう。さっきも散々振り回され
ていたようだしな」
皮肉たっぷりの言い方に、半助はムッとした。
だが元に自分は子供利吉に振り回されていたので、言い返すことは出来なかった。
「じゃぁ誰が利吉くんに付添ってるんですか?まさか小松田くんが?」
「いや、雄三がいるからな。あいつに任せよう。それじゃ半助、行くぞ!」
「え、ええ、あの…」
少々戸惑いながらも、半助は仕方なく雅之助の後についていった。
そして思った。
────やっぱりこの人には逆らえない…
と。

 

12:〜野村・小松田編2〜
あからさまに嫌がる半助を半ば強引に連れ出した雅之助、そんな二人を見送って
から、雄三は利吉のいる部屋へと振り返った。
振り返った先には小松田が立っていた。
事務員の装束は所々破れていて、体は埃まみれ、葉っぱまみれになっていた。
「ど、どうしたんだ小松田くん!何があった!?」
小松田は肩でいきをしながら答えた。
「かくれんぼっていつまで続くんですか〜?利吉さん全然見つからなくて、土井先生も
どこかへ行っちゃうし…」
雄三は返す言葉すら思い付かなかった。
頭をかかえて利吉のいる部屋へ、小松田を連れて戻った。


「へぇ〜、その城で子供を操って殺人鬼に育て上げるの?」
「殺人鬼とまでは言ってないだろう!」
眠っている利吉の傍で、雄三は小松田に事情を話した。
一応、小松田自身にも危険が迫っている、と言うことを知らせなければならない…。
「それで今土井先生と大木先生が城の偵察に行っているのだ」
「それは大変ですねぇ…。僕と野村先生は利吉さんの監視ですね!
それじゃお茶入れてきます!」
小松田は何か義務感にかられたように食堂に走っていった。
「…彼は、大丈夫だな」
廊下を駆けていく音を聞きながら、雄三は呟いた。


小松田は湯を沸かし、茶を入れる用意をしていた。
「利吉さんが子供になっちゃったということは、僕より年下かぁ…」
そんなことを考えながら、盆を持って部屋に戻ろうとしたとき、
さっきまでいた、あの部屋の方から大きな音が聞こえた。
「え?!何??」
小松田は部屋に駆け戻った。
戸は、開いていた。
中を覗くと、そこには多少争った跡、煙幕、割れた棒手裏剣が落ちていた。
そして二人はどこかに消えていた。

 

13:〜土井・大木・小松田編〜
一通り偵察をすませて、半助、雅之助の二人は学園へと帰路についていた。
ハタケシメジタケ城では、噂通り子どもが幾人も城内で飛び回っていた。
それは一見和やかに見えるが、彼らが全て小さな暗殺者だと思うと、ぞっとする。
しかし、大人を子どもの姿に変えるという幻術使いの姿はどこにも見えなかった。
二人はこれからの予定を立てつつ、学園へ戻ってきた。
そして、学園に到着した二人はパニックを起こしている小松田に出合ったのである。


「何?!利吉と雄三が居なくなっただと?!」
「はい〜、僕がお茶を入れに行った、ほんの少しの間です…」
半べそをかいている小松田に事情を聞いた二人は顔を見合わせた。
──雄三が連れだしたのか、それとも連れ去られたのか…
連れ出したにしては、手がかりを残してはいない。
しかし、もし連れ去られたのだとしたら、何故この場で殺らなかったのか?
目的は学園関係者暗殺ではなかいのか?
どのみち手がかりを探すにはもう一度ハタケシメジタケ城へ行く必要がある。
そしてどうにかして術をとく方法を見つけださなければならない。
「面白くなってきたな…」
雅之助はニヤリと笑った。
「さてと、どうせ此処でウロウロしていても始まらん。もう一度乗り込むぞ半助!」
「…仕方ないですね、やるだけやりましょう」
二人は武器庫から必要な武器を持ちだし、元来た道を引き返した。
勿論小松田秀作はお留守番である。

 

14:〜大木・土井編2〜
再び足を踏み入れたハタケシメジタケ城。
場内では子供が沢山飛び回って遊んでいる。
其処に監視をしている城の兵が2,3人。

「さてと、どうやって情報を掴むかのう…」
場内が見渡せる高い木の上で、雅之助、半助の二人は偵察を行っていた。
この城へ再びやってきたものの、利吉が此処に戻っているという可能性は少ない。
第一、野村雄三がいなくなった理由すらわからないのだ。
しかし学園にいないという事は、此処に戻ってる可能性も……
「とりあえずわしが内部に潜入して情報を探る。お前は子供達の中から利吉を捜せ」
「わかりました…くれぐれも気をつけてくださいね」
雅之助はひらりと木から飛び降り、城の方へ消えていった。
その姿を見届けると、続いて半助も木から飛び降り、城へ近づいた。


雅之助は城壁に添って、進入できそうな場所を探す。
するとすぐに、木が生い茂り、死角となっている箇所を発見した。
其処へ鍵縄を掛け、城壁を登る。
辺りを見回し、静かに城内へ足を踏み入れた。
その場の兵は手薄で、簡単に城内部へと入り込む事が出来た。
兵の目を盗み屋根裏にあがり、偵察を始める。
一つの部屋をのぞくと、其処には忍者らしき人物が数人座っていた。
農民の格好こそしているものの、彼らが忍者だと言う事は雅之助にもすぐ分かる。
しばらく様子をうかがっていると、城の者らしき人物が部屋に入ってきた。
そして仕事の説明を始めた。
仕事内容は、ある大事な巻物を某城に届けると言う事。
危険な仕事故、一つの仕事に忍者数人を雇ったという事を説明している。
「(ははぁ、奴らもフリーの忍者だな。利吉と同じように雇われ、子供にされ、暗殺の
手伝いをされられるというわけか…)」
───これは妖術を拝見できるチャンスだな……
そう思い身を起こしたとき、不意に後ろに人の気配を感じた。
「!?」
咄嗟に身構え後ろを振り返ると、其処には一人の子供がいた。
「なんだ子供か…と見逃す事はできんな、この場合…」
その子供は暗闇を腹這いでこちらに近づいてくる。
「(わしとした事が…こいつの気配に気づかんとは…)」
相手が普通の忍者なら静かに殺めていたであろう。
しかし相手は子供。
たとえ元大人だとしても、子供を殺める気にはとてもなれなかった。
「さてどうする…」
つぶやいて少し後退る。
すると子供は上半身を起こし、口に人差し指をあてて言った。
「今かくれんぼしてるから、おじちゃん静かにしててね!」

 

15:〜土井半助編3〜
城の大きな中庭では、子供達が戯れて遊んでいる。
半助はその中から必死に利吉を探した。
しかし、利吉の姿は何処にもない。
ただ、子供達の追いかけっこやら、鬼ごっこやら、楽しそうな声が聞こえてくるばかり。
─── 子供達は此処以外にも居る筈だ…
監視役の城の兵は2,3人と、非常に少ない。
半助も城内へ忍び込むことにした。

半助は静かに忍び込み、部屋を一つ一つ覗いていった。
何処の部屋も子供が数人昼寝をしているだけで、此処には監視役の兵は
居なかった。
しかし、やはり子供達の中から利吉を見つけることはできなかった。
───くそっ、利吉くんは一体何処に行ったんだ?!
些か焦りながらも、半助は虱潰しに部屋をあさった。
すると、一つだけ内側から鍵がかかり、開かない部屋があった。
───ここか?
半助はひらりと天井裏に上がり、その部屋の丁度真上辺りまでやってきた。
そして小さな穴から部屋の中を覗く…………

「(利吉くん!!)」
其処には子供利吉の姿があった。
そしてもう一人、城の兵らしき人物がいた。
子供利吉はその兵と何やら話をした後、持っていた包みを開き、中から小さな
巻物を渡していた。
「(あれは…教職員名簿!)」
───たしか小松田くんの居た事務室から持ち出されたあれか…?
城の兵らしき人物は、利吉の頭を撫でながら言った。
「よくやった山田利吉くん、あとでご褒美をあげるからね」
「わーい!!」
「それじゃ君のお部屋に行ってお昼寝しておいで」
「うん!バイバイおじちゃん!」
利吉は手を振りながら元気よく部屋から飛び出していった。
───利吉くんを追えば何か手がかりがつかめるかも知れない!
半助は天井裏をつたい、利吉を追っていった。

 

16:〜大木編1〜
「なぁぼうず、お菓子をやるから教えて貰いたいことがあるんだがな」
かくれんぼをしているというその子供と一緒に、雅之助は屋根裏に潜んでいた。
「お菓子をくれるの?!うん、何でも教える!」
子供は目を輝かせながらにこにこ雅之助を見つめている。
「山田利吉というガキを知らんか?こう、髪が茶色で目つきの悪い…」
「利吉くんなら、お城のおじちゃんと一緒に大事のお部屋に行ったよ」
「大事のお部屋?」
「良い子だけが入れるお部屋だって。そこに行くとお菓子をもらえたり、おもちゃを
もらえたりするんだって。良いなぁ、僕も大事のお部屋に行きたいなぁ」
───ふぅむ、妖しいと言ったら其処だろうな。そこで暗殺任務かなんか
吹き込んでおるのじゃろう。
雅之助はさっき学園で拝借した饅頭を一つ取り出した。
「よし、コレをやるからその部屋の所まで案内してくれ」
「うん。分かった!」
子供は饅頭を受け取ると素直に暗がりの中を進み始めた。
───それにしても子供は簡単なものだ。饅頭一つで情報を聞き出せるとはな。


子供はある場所で進むのを止めて振り返った。
「おじちゃん、この下が大事のお部屋だよ。僕たちはお城のおじちゃんに呼ばれないと
入っちゃいけないんだ。だから此処まででおしまい」
「ああ、十分だ。わるいな」
「でもおじちゃんもこのお部屋のは入れないんだよ」
「何でだ?」
「大人は入っちゃいけないんだ…」
その子供はそう言うなり雅之助めがけて手裏剣を投げてきた。
間一髪で避けたものの、子供はまるでおもちゃを投げて遊ぶように
雅之助に向かって手裏剣を投げてくる。
「お饅頭有り難う。おじちゃん、此処で死んでね」
「なっ、なんてことを言い出すんだこのガキ…ん?」
子供を押さえつけようとしたその時、ゴロゴロと二人の間に煙玉が転がってきた。
「なっ?!」
次の瞬間煙玉は破裂し、暗がりの視界を更に悪化させた。
狭い中のものすごい煙に絶えかねて、雅之助は板を破って下に降りた。
「くそ…やはり子供だと思って油断したら…」
「油断大敵火がぼーぼーだヨ」
屋根裏に空けたその穴から、子供も飛び下りてきた。
「僕とチャンバラごっこして遊ぼうよ、雅之助のおじちゃん」
「何?何故わしの名を?お、お前まさか……」
外見ではよくわからない。
よく分からなかったが、ただ、其処にいる子供は野村雄三だと直感した。

 

17:〜土井半助編4〜
一方こちら半助は、天井裏を伝い子供利吉を追っていた。
子供利吉は、一つの部屋の中へはいる。
どうやら此処は利吉の与えられている部屋らしい。
利吉のものであろう荷物が置いてある。

───さてここからどうしたものか、むやみに姿を現せば城の兵に見つかって
しまうし、かといって利吉くんが正気じゃないから連れ帰るわけにも……
そんな事を考えながら、天井に空いている小さな穴から部屋を覗いていた。
すると利吉が急に上を見上げ、その視線が半助の視線がぶつかった。
そしてにっこりと笑ってみせた。
───ま、まずい!利吉くんは私のこと気づいていたのか?!さすが利吉くん…って
感心してる場合じゃないぞ?!
半助は咄嗟に懐から眠り薬の入っている薬瓶を取り出した。
いざとなれば利吉を眠らせ……
「(土井先生)」
上を見上げながら、利吉は声に出さずに半助を呼んだ。
唇の動きで言葉は伝わる。
「(土井先生、もう大丈夫です、降りてきてください)」
───え?
「(大丈夫、私は正気です、精神は元に戻りました)」
利吉はそう伝えると、入口に錠をした。
───利吉…くん??
半信半疑ではあったが、半助は利吉を信じ、天井裏から部屋へひらりと飛び下りた。
「(利吉くん、正気に戻ったの?)」
「(はい、野村先生に叩かれて正気に…)」
「(叩かれた?!)」
見れば利吉の左目は青く腫れていた。
───野村先生め…利吉くんのこんっっなにカワイイ顔を…って
そんなこと考えてる場合じゃないぞ!!
「(そうだ、野村先生は一体どうなったんだい?)」
「(実は、野村先生も子供の姿に…)」
「え?!」
驚きのあまり思わず声を出してしまい、半助はあわてて口を押さえた。
利吉の話によると、どうやら利吉も仕事の依頼でこの城に来たらしい。
そしてそこで妖しい妖術にかかり、そのあとの記憶は全くないというのだ。
野村雄三を殺さずに連れてきたのは、ハタケシメジタケ城子供暗殺者隊の人手が
足りなくなったので、学園関係者を誰か連れてこい、という命令を受けたからだと
いう。
どうやら油断していた雄三を城まで連れてきたようだが、そこで利吉は雄三に
思いっきり叩かれ気絶。
気が付いたときに利吉本来の精神も目が覚めたようだが、既に雄三は妖術に
かけられた後だったというのだ。
「(私自身、よく覚えてはいないのですが、うっすらと記憶にあるのはこのくらいです)」
「(それで、子供の利吉くんの仕事内容はやはり忍術学園関係者暗殺なんだね?)」
「(はい。正気に戻ったときに、あの学園の名簿は偽物とすり替えておきましたが。
やはり忍術学園は何かと邪魔になるのでしょう。ハタケシメジ城は表向きはドクタケと
も手を組むほどの城ですからね。そのうち全ての城を侵略して、天下を取ろうなんて
企んでいるようですが)」
「(そうか…だが兎に角、この城をつぶさねばならないようだね。そして子供に変えら
れてしまった人達も助けなくては!利吉くん、その妖術使いの顔は分かるの?)」
「(それがさっぱり…相手は姿を現さないんです)」
「(それは困ったな…、ひとまず大木先生と落ち合おう。大木先生もこの城のどこか
に忍び込んでいるんだ)」
「(分かりました。では私は城の中を見て回りますから、土井先生は西側の三の間へ
行ってください)」
利吉はそう言うと、静かに部屋を出ていった。

続く