| ■すっかりペースが乱される!の段■ |
は、とある仕事で忍術学園にやってきた。 その仕事とは、なんてことはない、頼まれた手紙を届けるだけなのだが。 この忍術学園の噂はかねてから聞いていた。 どこそこの城を救ったり、倒したりだのと。 は内心、どんな所だろうとうきうきしながらやってきたのだった。 「ここが忍術学園の門か〜」 青空の下、大きな門を仰いで一呼吸。 はその大きな扉を叩いた。 「こんにちはぁ」 「はぁい」 すぐに門の中から返事がして、ガコッという音とともにとが開いた。 ひょっこり顔を現したのは、どうやらこの学園の事務員らしい青年。 差し出された入門表にサインをし、は学園内に足を踏み入れた。 ちょうどお昼休みだったのだろう、生徒達の楽しそうに遊ぶ声があちこちから聞こえる。 「さて、学園長先生の庵はどこかな?」 ふろしきに納めてある手紙にそっと手をやりながら、は建物の中に入った。 しかし、噂通りに広い学園内。 初めてやってきて、不慣れなはすっかり迷ってしまった。 途中、通りかかった先生に学園長先生の庵の場所を尋ねなかったら、多少方向音痴のは この迷宮から抜け出す自信はとても無かった。 「早くこの手紙を渡して帰らないと…」 あたりをきょろきょろしながら長い廊下を歩いていた。 すると…… は不意に、廊下の曲がり角のその先から、なにやらつ〜んとするにおいが漂ってくるのを感じた。 それと同時に、なにやら言い争っている声と、時折大きな物音が聞こえる。 「ああ、これが忍者の授業なのだろうか。流れ弾に当たらないように注意しなくちゃ…」 引き返そうにも、また迷ったら困るし、はやく手紙を届けて店の親方に知らせないと怒られる。 おそるおそる、はその部屋の前を通り過ぎ…… たと思ったそのとき!! ガタン!!!! 突然入り口の戸が吹っ飛び、は何かと一緒に庭の外まで吹っ飛ばされた。 一瞬の出来事で、何が起こったのかよく理解できなかった。 はおそるおそる、つぶっていた目を開いてみた。 すると… なんと、自分の上には大男がのしかかっているではないか! その姿は、端から見たらさもこの人に押し倒されているような…。 「!!」 は、怒りと恥ずかしさで真っ赤になった。 「なっ!早くどいてください!!」 自分にのしかかってる男は、の声に大いに驚いた。 「うわっ!お前誰だ?!」 そうに言いたいのはこっちの方だ、とばかりには下から睨みあげた。 「と、兎に角…」 男は立ち上がって振り返り、戸の吹っ飛んだ部屋の中に向かって叫んだ。 「野村雄三、この勝負おあずけだ!また遊びに来るからな〜!!」 男は笑いながらしきりにその部屋にらっきょうを投げ入れている。 「もう勝負はついただろう?!お前の負けだ、大木雅之助!!」 大木雅之助と呼ばれたその男は、その声にがっはっはと笑い返しながの前に仁王立ちしている。 「ちょっと…少しは私のことも…」 が文句を言いかけた時、大木雅之助は「やべぇ」と言いながらをひょいと抱え上げた。 「あっ何するんですか!!」 しかし大木雅之助はの言葉に耳を貸す風でもなく、を抱き上げたままひょいと塀の上まで飛んだ。 それと同時に、たちが今まで倒れていた場所が轟音とともに爆発した。 それを見て背筋が寒くなった。 「全く、大げさな奴だ、あいつは〜。今日はやけにあれてるな。まいいか。学園長のじじいに文句を言われる前に とっとと退散するかっ。」 大木雅之助はそういうと、ものすごいスピードで走り出した。 人ひとり抱えて走ってるとは思えないスピード。 は、これが忍者なのか〜と内心ドキドキしていた。 「いや、しかしこんな事考えてる場合じゃない。ねぇ、降ろしてください!!」 抱かれてるのも悪くないな、なんて事も考えながら、は大木雅之助に呼びかけた。 その声に、大木雅之助はちらりとを見た。 「おっ、そうじゃった。お前何者だ?!」 「だから!それを聞きたいのはこっちの方です!けどそんなこと言ってる暇ないんですよ。早くこの手紙を 学園長先生の所に…」 「まぁさっきは危ない所だったな。巻き込んでしまって悪かった。お詫びに団子でもおごってやろう」 大木雅之助は、の訴えなんか全く聞いてないように自分のペースで行動している。 そしてやっと立ち止まり、を下に降ろした。 「ほら、あそこに団子屋があるだろう?あそこ美味いらしいんだ。わし一人で入るのもなぁと思っていた所だ。 良い連れが出来て良かった。はっはっは!」 大木雅之助はの手をぐいぐいひっぱってって、団子屋に引き入れた。 「あの、ちょっと、私の話聞いてます??」 「ああ聞いてるとも。でもまず団子だ。」 ―――この人、お詫びと言っておきながら本当は自分が団子を食べたいだけなんじゃ… はふとそんなことが頭によぎったが、この人には逆らえない、そう直感して素直について行った。 団子屋に入り、は進められるままに団子をいただいた。 確かにこのお店の団子はおいしい。 いや、そんなこと考えてる場合じゃない! 脱線しそうになる自分を押さえて、もう一度この人に言ってやろう、と思い、団子から目を離して 大木雅之助の方にむき直した。 「あのですねぇ!…」 言いかけて、は言葉に詰まった。 随分抱かれて走ってたけど、ちゃんと顔を見たのは今が初めてだったから…。 「何だ?何か言いたいのか?」 団子を頬張りながら、大木雅之助はを見つめ返している。 「あの…大木雅之助…さん。」 「なんじゃ?」 「お団子おごってもらえるのは嬉しいんですけど、私仕事で忍術学園にやってきたんです。 早くお仕事終わらせてお店に帰らないと怒られるんですよぉ。私、戻っても良いですか?」 大木雅之助はお茶をすすりながら、うんうんとうなずいた。 「ところでお前、名前は何だ?」 「え?名前?私はと言いますけど…」 「ふぅん。…あそこに見知らぬ女が居るのは珍しいと思ったが、やはり学園関係者じゃ無いのか。」 大木雅之助は、もう一つのお団子に手を出しながらつぶやいていた。 「で、私学園に戻りたいのでこの辺で失礼を…」 「よし、じゃあとりあえず私の家にこい。ご婦人に無礼をはたらいた詫びもしたいしな」 「いえ、ですからお詫びはもうお団子で…。お願いですから私の話を…」 「おやじさん!銭は此処においておくからな〜。さ、行くぞ!」 「え?ちょっと、大木雅之助さん!」 「フルネームで呼ぶな、雅之助でいい!」 言い返す暇も与えず、雅之助は再びの手をぐいと引っ張り、歩き出した。 二人で手をつないだまま(或いは手をつかまれたまま?)随分沈黙が続いた。 この人には何を言っても通じない、そうはあきらめた。 お店の親方にはどう言い訳しよう?そんな事を考えていると、雅之助が口を開いた。 「お前随分若そうだな。何の仕事してるんだ?」 「見た目ほど若く無いかもしれませんけど…。あ、私学園長先生の極秘のお使いとかで、 仕事内容は話すなと言われています。」 「ふうん。ところでらっきょう好きだろう?わしがたっぷりおみやげに持たせてやる。それで店のおやじさんの ご機嫌を取ればいい。な?」 「え…?」 雅之助は一人でにやにや笑いながら、再び黙々と歩き出した。 ふぅ〜、とはため息をついて、やはり手をつなぎながら歩いている。 ―――こうやって殿方と手をつないで長く歩くのって初めてかもしれない。 雅之助の手は男らしくてごつごつしてて、背も自分よりずっと高い。 横から見上げれば、ぼさぼさと束ねた赤茶色の髪が風になびいている。 は内心ドキドキしていることを悟られないように、必死に無表情を装った。 それからしばらく歩くと、田圃の中に一軒の家が見えてきた。 「あれがわしの家だ。何もない所だがゆっくりしていけ。」 雅之助はたんぼ道をずんずん歩き、強引に家へ引き入れた。 家の中は、ホントに何もない所だった。 散らかってもいないし、かといって綺麗というわけでもない。 何か大きな瓶が土間に置いてある。 「ほれ。」 雅之助はにお茶を差し出した。 「あ、頂きます…」 お椀を受け取り、は一つ息をついた。 「あの、お気持ちは大変嬉しいんですけど、…お団子もおごってもらったことだし、私そろそろ…」 「おい、!」 「はっ、はい!?」 「これもってけ。これ。」 雅之助は、ドシンとの前に大きな瓶を置いた。 つ〜んと、らっきょ漬けのにおいがする。 「わしの漬けた特製らっきょだ。美味いぞ!」 「はぁ、ありがたいのですが、その、そんな大きな瓶抱えて帰れませんよ。」 「じゃあわしが運ぶ。」 「ええ?」 「明日な。」 「ええええええ????」 ああ、この人は一体何を考えているのだろう。 は頭を抱えた。 そんなの前に、雅之助はどっかりと座った。 お茶をすすりながらこちらを見ている。 そんな見つめられた視線に、何故かドキドキする。 「わしは今日忙しい。だから明日瓶を運んでやる。」 え? 「だから泊まってけ。」 え゛。 何を言い出すかと思えば…初対面の女性に向かって! 「私、帰ります!!」 は勢いよく茶碗を床に置き、立ち上がった。 「どうも有り難う御座いました!私のことはお構いなく!」 ぷいっと向きを変え、戸口へ向かおうとするの腕を、雅之助が掴んだ。 「何するんですか!放してください!」 「お前、美人だな。」 え…? 急に何を言い出すのか…。 は動揺を隠せない。 「これ、わしが学園長に届けておくから、お前はもう帰れ。」 そういって雅之助は自分の胸元からの持っていた手紙を取り出した。 「い、何時の間にっ!」 「引き留めて悪かったな。瓶は明日わしが届けてやる。わしを断っても、わしのらっきょうは断るなよ。」 にっ、と笑われて、は思わず赤面した。 ―――私、何考えてんだろう! 有り難う御座いました、と一言残して、は雅之助の家を出た。 顔が熱くなってる自分が恥ずかしくて、来た道を全力疾走で戻っていった。 店に帰るなり、仕事が遅い、と店の親方に怒られてしまったが、その翌日雅之助は約束通り瓶を担いで現れ、 の仕事が遅れたのは自分のせいだ、と謝ってくれた。 幸いにもらっきょう大好きな親方は、瓶いっぱいのらっきょうで許してくれた。 そして雅之助はにむかって小さく、 「明日の昼に、あの団子屋に来い。」 と一言残して帰っていった。 嬉しいようなちょっと不安なような、複雑な気持ちでは帰っていく雅之助の背中を見送ったのだった。 オワリ |
| あとがき言い訳 ↓ |
| いかがだったかしら??初挑戦ドリーム小説。一発目は大木先生で行きました。 ま、出会い程度かな。もっと甘甘砂吐きやっても良かったけど、最初からそれは ちょっとね〜と思い、この辺にとどめておきました。 くれぐれも、女性の名前にしてくださいよ。女言葉だし(笑)。 |