利吉くんが私に会いに来た。
もう久しく彼に会っていない。
二か月前、長期の仕事にでるからしばらく会えなくなると彼は言って出ていった。
──利吉くんは仕事だから…売れっ子のフリーの忍者だから
と、私はなんども自分に言い聞かせた。
私の我が儘で彼を自分の側に置いておくわけにはいかないのは承知の上。
それでも私は彼のことを……


「お久しぶりです」
と、彼は戸口で微笑んでくれた。
ずっと会いたかった、と続けてもくれた。
「おかえり」
私はたまらず利吉くんを抱きしめた。
こんな深夜に、人目を気にすることもない。
鍛えてる筈の彼の身体を、ほっそりと自分の腕に感じる。
血の臭い、硝煙の匂い、幾人もの人を殺めた匂いがする。
「仕事が終わったので、まず先にとこちらへ寄らせて頂きました。こんな真夜中のご迷惑、
お許し下さい」
「迷惑だなんて…とんでもない!」
幸い、今日はきり丸がいない。
私はすぐに利吉くんを部屋に入れ、熱い茶を入れた。


久しぶりに会ったものだから、お互い話したいことは沢山あった。
利吉くんは、仕事先で聞いた面白い話や、奇麗な景色、驚いた出来事等、楽しそうに
話してくれた。
とても楽しそうに。
しかし、仕事の話は一切口にしない。
私は、利吉くんの目を見ながらその話を聞いていた。
利吉くんは終始微笑んでいる。
無理矢理。
何か、よほど辛いことがあったに違いない。
彼は何時もこうやって辛いことを隠そうとする。
気を使っているのか。
この私にでさえ、だ。
だからといって、こっちから聞くことなんて出来ない。
聞く事なんて出来ないけど……話してくれないか?利吉くん。
私は君のことが好きだから、大好きだから、
君が辛い思いをするのなら、私も一緒に悩みたい。

空になった茶碗を片付けるとき、その時利吉くんから初めて眼をそらした。
私が目をそらした途端、利吉くんの表情は急に沈んだ。
私から見えないと思ったんだね、その表情。
まだ視界には君が居たんだよ。

君の、そんな辛そうな顔を見るのは嫌だから、わざと後を向いてみた。
助けたいのに、逃げている。
そんな自分がたまらなく嫌になる。
彼だって、誰かに助けを求めているのに。
私に迷惑をかけまいとしてること、分かってるよ。
それが逆に迷惑だということ、気づいてはいないのだろうね。

茶碗を片付けて、もう一度利吉くんを抱きしめた。
利吉くんも、両腕を私の背にまわしてきた。
「忘れるよ」
私は彼の耳元で囁いた。
「え…?」
「辛いことも、すっかり忘れるさ。そういうものは一時的なもの。人に話せない事は沢山
あるよ」
私だって辛い道を沢山通ってきた。
忘れるよ、なんて言ってみたけど、忘れる事なんて出来ない程。
それでも此の道を歩いてきた。
「逃げていたら、利吉くんに出会えなかった」
「土井、先生?」
「ううん、なんでもない。それより、昨日は昨日、今日は今日。明日は明日だよ、利吉くん。
今は君を愛しているからね。そしてこれからもずっと…」
「……有り難う御座います。幸せです…」
利吉くんは照れくさそうに私の肩に額を置いた。
私は両手で利吉くんの頬を包んだ。
ゆっくりと彼の顔を持ち上げて、そして唇を重ねる。
甘い、香りがしたから、もう一度唇を重ねてみた。
それを繰り返していると、時というもの、自分というものを全て忘れる。
今あるのは、この腕の中にいる大好きな利吉くん…
それと────


時を忘れるほど、私は利吉くんと結び合った。
久しぶりだ。
私が呼べば、利吉くんは答えてくれる。
彼が必死に何かを忘れようとして私に手をさしのべてくるから、私はその手を握って
優しく愛撫を続けた。
利吉くんが疲れて眠るまで、私は何度も彼を抱いた。


気がつけばうっすらと朝日が部屋を照らしていた。
目を開けばそこには利吉くんがいて、腕を動かせば利吉くんの髪に指が触れた。
利吉くんは、昨日とは違ってとっても穏やかな表情だ。
少しは…気が晴れてくれただろうか。
ここに来て気持ちがすっきりするなら、いつでも来て欲しいよ。
利吉くんと会っている間は、私もとっても幸せだからね。


目が覚めたら、君はこの家を出ていくんだろう?
次にこうやって触れ合えるのはいつなんだろうね。
私は利吉くんが帰ってくるのをいつも待っているから、君も絶対帰ってくるんだぞ。


                                     <おわり…??>

 

あとがき(言い訳とも言う)

あ〜クサい、クサいねぇ!!
クサい話が苦手な私にはとても無理だわ、こんな小説!
何やってるのかしら私!!
というのも、なんか今朝土井利の神様が光臨したようで、
朝のにんたま再放送見てたら久しぶりに
土井が「カッコイイ(利吉の相手として)」
という感情にとらわれたから…おんや?何かの反動か??

え〜と、あまりクサいのでノーコメント!