「ごめんっ!ほんっとにごめん!!」
目の前で急に泣き出してしまった青年に、半助は幾度も謝る。

その日、日も暮れかけの刻に山田利吉は半助の自宅を訪ねてきた。
半助は利吉の顔を見てはっとした。
そして第一声からこの言葉を繰り返す。
「ごめん、利吉くん!!」
利吉は何も言わなかった。
ただ、半助が謝り出したら逆に泣き出してしまった。
うつむき加減の利吉の目からは涙がこぼれ落ちる。
まさか泣き出すとは思っていなかった。
この場所で、こんな時に……


半助は利吉との約束を破ってしまった。
それは半助がどうしても利吉と紅葉が見たいから、と半ば強引に利吉を
誘った逢引きの約束だった。
その誘いは利吉も嬉しかった。
久しく半助に会っておらず、利吉も「会いたい」と強く願っていた。
そんな時の半助の誘い。
とても嬉しかった。
なかなか半助との都合があわない利吉は、仕事を一つ断わった。

そして約束の日、約束の場所で、約束の時間、利吉は半助を待った。
待っていた。
だが──────


それから時が随分と経っていた。
利吉は忙しく、なかなか半助に会いに来られなかった。
半助も忙しく、手紙の一通すら出すことが出来なかった。
今日、漸く利吉は半助に会いに来られた。
利吉の顔を見た途端、半助はすっかり思い出したのだった。


「……先生……」
利吉がやっと口を開いた。
「私…怒ってませんから……」
「利吉くん……」
震える声で利吉は続けた。
「貴方が、私より生徒が大事なのは分かっています。
教師という立場の貴方が、ただ人に会うためだけに授業を休むなんて
許されませんから……」
「でも利吉くんは仕事まで休んだのに…それに……
私から誘っておきながら君を裏切るなんて……」
半助もうつむいてしまった。
利吉のこんな悲しそうな顔は見ていられない。
「ホントに、怒っていません。だから……」

────もう一度、誘ってください。

利吉は小さな声でそう言った。
「我儘かも知れませんが、やっぱり二人で出掛けたいです。
突然会いに来るんじゃなく、誘われたいんです」
半助は、こんな事を言ってから恥ずかしそうにしている利吉が
とてもかわいくて仕様がなかった。
頬に残っている涙を手で拭い、思わずそこに口付けをした。
「誘われた時って、遠足を楽しみにしている子供みたいに、
ずっとドキドキ出来ますよね。その日を楽しみに毎日過ごせますよね」
──まるで女の子みたいに……
と、半助は思った。
利吉はそれほど可愛かった。
だから、余計にさっきの涙が胸を締め付ける。
「利吉くんはこれからまた仕事なの?」
「はい、仕事の途中で近くまで来たので…」
聞けばこれから大きな仕事が入るらしい。
随分と会いには来られないようだ。
半助に誘われれば、それを目標に過ごせるのだろう。
半助はその言葉を聞いて一寸寂しくなった。
──また行ってしまう、いつも利吉くんに会える時間は僅かだ。
だからこそ、二人の都合のいい日に会おうと思っている。
いつも、いつも。
「今度は利吉くんの都合のいい日に合わせるよ。絶対会おう!
もう約束は破らないから!」
半助は利吉の肩に手を置いた。
そして笑って見せた。
利吉もまた笑った。
しかし半助は利吉を、いつもするように抱き締めなかった。
肩に置いた手はすぐに離れた。
抱き締めれば、彼を離したくなくなってしまいそうだったから。
利吉はそれを察したのか、少し寂しそうな顔をしたが、すぐまた笑顔に
もどり、半助に軽く頭を下げた。
「また…来ます!明日もう一度来ます!」
「うん、気をつけて…」
利吉はくるりと向きを変えて、そのまま走っていった。
夕日に利吉の姿はさえぎられ、最後まで見届けることは出来なかった。


「利吉くん、私を謀ったのかなぁ」
半助はさっきの利吉について考えていた。
「利吉くんがあんな風に涙を零すなんて…」
──でもあれがホントの涙だったら?!
くくっ、と笑い、半信半疑で半助は家の中に戻っていった。


「予想外だったなぁ…」
帰り道、利吉はばつが悪そうにペロリと舌を出した。
ホントはいっぱい怒ったふりして、たまには半助を困らせてやろう、
と思っていた。
「困らせたことには変わりはないけど……」
──どうしてああなっちゃったんだろう?
いざ半助の目の前に立ったら……
──恥ずかしい!もう土井先生に会わせる顔がない!!
利吉はさっきの出来事を振り払うように、更に森深く目指して
走っていった。


                   ────完────

 

あとがき(言い訳とも言う)

良心「小説は書けないと何度言ったら分かるのかしらこの子は……」
はにわ「ごめんなさ〜い、ちょっととある小説に刺激を受けて書きたく
なっちゃったのよ〜〜〜(^^;;;)!!」

ということで、小説書けないくせにまた書いちゃいました。
文章能力はご覧の通り、まったくですわ。
しかし久しぶりに土井×利を書いたなぁ。最近土井利からは離れた
生活してたからな(例:大木利吉、野村利吉)。
やっぱり土井利は相思相愛が一番いいね!!
二人とも仲良し、ラブラブが一番vvわーいわーい!!

Q1……ところで「続く」ってあるんですけど、続きは書くんですか?
A.はい、書きたいと思っています。というか、この後の利吉の行動が
頭の中には既に出来上りました。利吉くんピーンチ!!

Q2……利吉くんってこんなに弱かったっけ?
A.弱いところがあったっていいじゃないですか!可愛いし。

Q3……稚拙な文章なんですが。
A.ほっときなさい。

Q4……えっちっちなシーンは書くつもりですか?
A.あ、こんな時間だ、お風呂に行ってきま〜すv

─────ありがとうございました。