ギターダー
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No.8「2石トランジスタ回路の設計」


はい、どうもー。

 前々回の記事( No.6「ゲルマニウム・ラジオの製作」)でゲルマニウム・ラジオを製作し、
前回の記事( No.7「1石トランジスタ回路の設計」)で1石トランジスタ・アンプを製作しました。

今回はその続きで、2石トランジスタの回路設計です。
前回の1石トランジスタ・アンプにもう1つのトランジスタ回路を追加します。


 前回の1石ではイヤホンまででしたが、今度はスピーカーを鳴らせます。
ということは、スピーカーを使うということです。

どんなスピーカーでもいいのですが、
スピーカーの種類で音もかなり変わります。

ギターの音もスピーカー・キャビネットでかなり変わりますよね。
色々と試してみることをお勧めします。




横長のは不要なテレビから取ったもの。
下の丸いのは市販のスピーカー。

こういうスピーカーなんかは
電子工作でよく使われますね。

音はあまり良くないですよ。
小さいですから。

でも実験用には充分使えます。



オーディオ・ステレオ用のスピーカー。


大きいし、見た目も豪華ですね。

私はオーディオマニアでもないし
これは高価なものでは無いですが
ラジオ用としては贅沢です・・・

これくらい大きいと低音も出ますし
音も良いです。

聞いてて疲れません。

私はこのスピーカーは
マランツのパワー・アンプ経由で
CDなどを聴くのに使ってます。

完全にオーディオ用です。

(高さ:約51cm)



これは3段積みギターアンプの
スピーカーだけの部分。

アンプ部がないとただのスピーカーですから
これだけではギターとか鳴らせません。

これを普通のスピーカーとしてそのまま使うと
音がコモるくらい低音が効きます。

やっぱギター用なんだなー。

(高さ:約29cm)



ついでだから紹介します。

小型ながらも3段積みアンプです。

IbanezのIBZ528というアンプです。
出力15W+15Wで30W。

意外に(意外に?w)良いが音出ますけど
普段は家ではFenderのアンプを使ってるし
これはあまり使ってません。


【質問1】 じゃぁ何故持ってるの?

【答1】 3段積みだから。(それだけ)

【答2】 見た目(重要ですね)

【答3】 興味半分に買いました。(単純)


まぁ今回のような実験などの場合
このギターアンプのスピーカー部分だけを
スピーカーとして使えますよ。
ということです。

(高さ:約73cm)



ん?
これはどこかで見ましたね?

以前の、
No.5「エアバンド・レシーバーの製作」
という記事にも登場しました。

レトロっぽいというか、古いというか。

自作の無線機やラジオを鳴らすのに
私は好んでこれを使ってます。

大きさも丁度良いし、
音声も自然な感じで、温かくて良い音です。

(高さ:約26cm)



 スピーカーのインピーダンスは8Ωのものが一般的ですが
16Ωのものとかもあります。(テレビ用のものは16Ωでした。)
16Ωのスピーカーは2個を並列に繋げば合成抵抗で8Ωになります。

複数のスピーカーを繋ぐ場合は合成抵抗の計算でインピーダンスを合わせます。
抵抗器の計算と同じです。

直列なら足し算で合計するだけですが、並列の場合は以下の式で求めます。
例えば16Ω2個を並列の場合は


になります。
16÷2=8 という計算ではありませんので注意して下さい。
あくまでも同じ抵抗値を2個並列で計算した場合だけ、結果的に1/2になるのは偶然です。

複数を並列に繋げる場合は分母の数を増やします。


異なるインピーダンスを混ぜてでもこの式で計算出来ます。
「16」の部分を入れ替えて混ぜればOKです。

つまり、8Ω4個をすべて直列に繋ぐと合計4個で32Ωですが、
8Ω2個を並列に繋いだものを1セットとして
それを2セット直列に繋げば合計4個で8Ωです。


 さて、いよいよ2石トランジスタの回路設計ですが
前回の1石トランジスタの回路にもうひとつの1石回路を追加する形にします。
ちなみに1つ目の増幅回路を「前段」とか「入力段」と呼び、
2つ目以降を「後段」もしくは「二段」、「三段」と呼んだり
一番最後の出力側の増幅回路は「最終段」とか「出力段」と呼んだりもします。

 ここでは、出力段にもっとも最適なものとしてエミッタ・フォロワを追加します。
エミッタ・フォロワは出力インピーダンスが低いので出力側の負荷の影響を受けないからです。
一般的に機器同士を接続する際には、出力インピーダンスは低く、入力インピーダンスが高い方が
スムーズに信号が流れます。いわゆる「ロー出しハイ受け」ですね。
エミッタ・フォロワはコレクタを接地してベースから入力した信号をエミッタから出力します。
この時、エミッタの出力電位は常に入力よりも「トランジスタの電圧降下0.6V」低い電位になります。
つまり、電圧は増幅されません。電流を増幅させます。

具体的にはこの回路図の定数を決めていくことになります。

(図2-1)


 C1、C2、C3は計算するまでもなく、前回の記事と同じ考え方で決めていいと思います。
ただし、前段では0.1μFだったC1を後段では10μFにします。
前段である程度の電流を稼いでいるので、小さくする必要が無いからです。
前回の記事で説明した、音の立ち上がり(コンデンサに電気を貯める時間)の関係です。

そうすると、あとはバイアス抵抗のRb1とRb2、エミッタ抵抗のReですね。

 まずバイアスですね。
エミッタから出力される電位を「出力波形が最大限に生かせるような中心」に合わせます。
これは、多くの書籍では計算を簡単にする為に、Vbeの電圧降下0.6Vを無視して説明してます。
0.6Vを無視すれば電源電圧(Vcc)と0V(GND)のド真ん中にすればよいことになるので
Rb1とRb2を同じ値にして半分にすればよいだけだからです。
「定本 トランジスタ回路の設計」(CQ出版)でもそのように説明されてますね。

(図2-2)

でも、ここはあえて簡素化しないでやってみましょう。
Vbeの電圧降下0.6Vを無視しないで考えてみます。

常に入力のVbからVbeで0.6V電圧降下したものが出力のVeになるわけですから
出力波形の中心をあらかじめVbから0.6V高くしておいて、
(もっと厳密にいうとReの抵抗値によって、その分も上にずらすことになりますが)
そこをバイアスの電位にすればいいのです。

つまり、電源電圧9Vの中心である4.5Vから0.6V高い位置ということで

4.5V + 0.6V = 5.1V (Vb2)

9V − 5.1V = 3.9V (Vb1) もしくは 4.5V − 0.6V = 3.9V

ということになります。

(図2-3)

 次に、エミッタ・フォロワの場合のIeは高めにしなければなりません。
最大出力電流よりも大きくする必要があります。
これは、交流的にエミッタ抵抗が出力負荷抵抗と並列になり、合成抵抗になる為です。
出力負荷抵抗がいくつだろうと、並列にした抵抗値は下がりますから
Reの値が下がってしまい、オームの法則でVeの電位も下がり、波形の中心も下がります。
すると波形の下側がクリップしてしまいます。
V=RIですから、Ieの値を大きくすればVeの電位も下がらずに済むということです。

そこで、Ieを10mAとします。

で、上記のは交流的に見ての説明でしたが、
今度は出力側カップリング・コンデンサの手前ということで直流的に見るので
合成抵抗じゃなく、オームの法則から Re = (4.5V − 0.6V)÷ 10mA =390Ω になります。

Re=390Ω です。

そして、トランジスタのhFEが180だとすると、ベース電流は 10mA ÷ 180 = 0.056mA
ベース・バイアス回路にはベース電流の10倍程度の電流が必要なので、
0.056mA × 10 = 0.56mA
最低でも 0.56mA は必要です。

先ほどの計算によりVb2が5.1Vですから、オームの法則によりそれぞれ

Rb2は、5.1V ÷ 0.56mA =9.1kΩ
Rb1は、3.9V ÷ 0.56mA =6.9kΩ (E系列の近似値で6.8kΩ)

になります。

これで後段エミッタ・フォロワの定数が決まりました。

(図2-4)


さぁ、これを前回の記事で設計した回路(図1-22)と結合します。

そのまま結合するとこのようになります。


(図2-5)

なんだか無駄が多いですよね。

■電源は1つにまとめることができます。
■バイパス・コンデンサ(C4とC6)も1つにまとめることができます。
■カップリング・コンデンサ(C3とC5)も1つにまとめることができます。

 カップリング・コンデンサ(C3とC5)は、
10μFが2個直列だと合成容量で5μFが1個と同じことになってしまいますので
片方を取り去って10μF1個にすればいいのですが、極性が気になりますか?
どちら側がプラスになれば良いのか悩む場合には電圧(電位)の高い側をプラスにすればいいです。

前回の記事の(図1-14)を見ると載ってますが、前段側の電位が3.070Vですね。
後段側の電位はVb2が5.1Vですから5.1Vです。

前段の「エミッタとトランジスタ内部の電圧降下」よりも後段のVb2の方が高いということです。
よって、前段側の極性をマイナス、後段側の極性をプラスにします。

すると、このようになりますね。
「2石トランジスタ回路」の完成です。

これでスピーカーが鳴ります。

(図2-6)

配線図にするとこんな感じになります。

(図2-7)

 ただし、ここまで厳密に後段のバイアスを計算しなくても
「最大限に増幅した際の波形がどうのこうの」とかって言わなくても良いのであれば、
前段の出力電位をそのまま後段のバイアス電位として使うことにして簡素化できます。

(図2-8)

 お分かりかと思いますが、この時にはカップリング・コンデンサを入れません。
入れてしまうと直流をカットして電位が「0」になってしまうからです。
もし入れるなら、その直後に2本のバイアス抵抗も一緒に入れて、
バイアス電位を上げなければならないということです。つまり、最初の回路です。

(図2-9)




前回の記事で製作した基板(図1-23)に、今回の簡素化バージョンを追加してみました。

(図2-10)

(図2-11)

 ラジオを鳴らす程度であれば、簡素化した方でも良さそうです。
ちなみにゲルマニウム・ラジオの代わりにジャックを付けてギターを入力すれば、
性能はともかく、小型のギター・アンプにもなります。

色々と抵抗器を差し替えてわざとバイアス電位を崩してみると、音が鳴らなかったり
変な風に音が割れてまともな音にならなかったりしますので
いかにバイアスの設計が大事かなどが分かります。



 あ、そうそう。最後にもうひとつ。
わりと大きな音で鳴りますので、ボリュームを付けたくなるかもしれませんね。
エフェクターなどによくある方法で回路の最後に付けることも出来ますが
それだと可変抵抗器の抵抗値が出力インピーダンスに影響してしまいます。

後に接続する機器がエフェクターやギター・アンプだと決まっている場合であれば
100kΩ程度の可変抵抗器で出力インピーダンスを形成してもいいんですけど、
この場合は低インピーダンスのスピーカーを繋ぐので
せっかくエミッタ・フォロアで出力インピーダンスを下げたものを無駄にしないように、
入力側にボリュームを付ける方が良いと思います。

(図2-12)

(図2-13)



 いやー、トランジスタって楽しいですよね。
たった2石でもちゃんと音が大きくなる「アンプ」ですからね。
今はこのような微量の音をスピーカーで鳴らせるように増幅するアンプは
オーディオアンプICというOPアンプで、もっと高性能なものが簡単に製作出来ます。
私は無線機の音量増幅にLM386N-1などをよく使います。
NJM386というのもありますし、そこらへんの小型ギターアンプを分解してみたら
KIA6213Sという韓国メーカーのオーディオ・アンプICが使われてました。

 メーカーが生産するには、性能やコストなど総合的にみてもICの方が効率が良いですが
個人的にはそこをあえてトランジスタで設計するというのも楽しいことだと思うし、
勉強にもなるし、上手く動作した時に嬉しいんですよね。
そして、さらに極めればOPアンプを超える性能の回路を設計出来るようにもなります。
その入り口が、1石、2石の増幅回路なんですよね。

今回、この記事を読んでもらって、実際に製作・体験してみてもらって、
そういう楽しさとかが伝わればいいなと思います。

2009.2.16



【参考文献】
・「定本 トランジスタ回路の設計」(CQ出版)
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