「BOSS/DM-2 アナログ・ディレイ実験機の製作」
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No.23「BOSS/DM-2 アナログ・ディレイ実験機の製作」


 今回はアナログ・ディレイの実験機を製作します。
私が持ってるBOSSのアナログ・ディレイ、DM-2が調子悪くなりまして
まぁスイッチが馬鹿になってるだけなんで交換すれば直ると思いますし
スイッチも仕入れてあるんですけどもね。
この際だからスペアでも作っておこうかと思いまして。

 ところが、回路図と現物で数箇所の違いがあるのと
いくつかのバージョンが存在するということもあってですね、
色々とあちこちいじくって試してみたくなったんです。
あれやこれや試してから製作しようってわけです。



 まずは様々な相違点の説明でもしましょうかね。

DM-2にはMN3101/MN3005を使った「初期型」とMN3102/MN3205を使った「後期型」があり、
さらに後期型は基板Noで「ET5214-510A」と「ET5214-510B」に分かれます。

MN3005版の基板NoはET5214-510で、PCBのNoは2291045801、2291045802です。
MN3205版の基板NoのET5214-510AはPCBのNoが2291045803で
ET5214-510BはPCBのNoが2291045804です。

これは私が持ってる後期型ET5214-510Aの基板です。



基板Noの510のOPアンプはC4558Cで、
基板Noの510AのOPアンプは4558DDで、
基板Noの510BのOPアンプは4558DDと4558DXのものがあります。
それぞれ、ダイオードのカソードマークの帯の色も黒、黄、青に分かれてます。

 また、510Bからはダイオードが1つ追加されてます。
Vccの9Vから22Ωを通ったあと、BBDの電源へ入力する際にダイオードを入れてます。
0.6Vの電圧降下が目的のようです。
(実はこれは重要なポイントになっていると、私は思います。)

 あと、よーく探さないと見つかりにくい違いもあります。
現物から回路図を起こし、部品の1つ1つをチェックして初めて見つかった箇所で
C11の値が回路図では0.0068μFになってますが、私の現物510Aでは0.01μFになってます。
もう1箇所、R48の18kΩというのがありますが、回路図では15番ターミナルの前なのに
私の現物では16番ターミナルの前になってます。
18kΩを通過させる経路が違うということです。

まだありました。私の現物はトランジスタのQ6とQ7が2SC945Pではなく、
2SC1685が使われていました。スイッチング回路のところです。

なので、ネットには初期型の回路図と後期型のET5214-510Aの回路図があるようですが
DM-2は現物を見ないと、回路図はどちらも参考程度にしかならないです。BOSSの回路図なのに。

他にもMN3005とMN3205では正電源と負電源という違いがありますので、
それにともなってVccとGNDを逆にする箇所が数箇所あります。
ダイオードD5の配置場所も違いますね。



おそらく最低でも「初期型」が2種類、「後期510A型」、「後期510B型」の4種類で
実際にはもっと多くのバージョンがあると思われます。



私が実験したい項目は、
・C11を0.0068μFから0.01μFに変更したらどう変わるか。
・510B仕様でダイオードを追加して0.6V電圧降下させたらどう変わるか。

また、個人的に試したいのはC20の0.039μFとC13の0.082μFです。

・Q3のC19は0.033μFなのにQ4のC20を0.039μFにする意味は何なのか。0.033μFだとどうなるか。
・何故C13は0.082μFなどという特殊な数値にしなければならないのか。
 (まぁコンデンサとしてはそれほど特殊な値ではないのだけれども、
  個人的にはよほどの事情が無い限り0.068μFか0.1μFで済ませると思いますので。
  E系列みたいな考え方です。)

・トランジスタの交換
 (2SC945P、2SC732-GR、2SC1685が使われているが、2SC1815-GR、Yなども試す。)

あとは、MN3102/MN3205とは別のICを使ってみたいのですが、4V〜8V動作の5V仕様なので
最大定格を超えないように内部で電圧を制御したいと思います。
これは、スイッチで切り替えるようにします。



さーて!そういうことで製作開始です!

それほど複雑な回路でもないし、今回はベーク板でやってみます。
ベーク板っていうのはこんな感じの板です。



穴を開ける位置を決める為、うまい具合に部品の配置を考えます。
綺麗に整列させたほうが見た目が良いと思います。



510A仕様と510B仕様はスイッチで切り替えるようにします。
(ダイオードで0.6Vの電圧降下をさせる部分)
ダイオードは1S2473にしてありますが、これもソケットにして
色々なダイオードに差し替えられるようにします。





配置が決まったら穴を開けます。



さー、ここからが手に汗を握る瞬間です。
(いや、別にそうでもないです。)

洞窟の奥に隠してある宝箱を出してきます。
ダンボール型の宝箱です。





何が入っているかというと・・・

(なんだか楽しくなってきました。)



ICがレールでドサっと入ってます。



この中から今回使うものを探します。

MN3102・・・

MN3205・・・
4558Dの艶ありもレールで持ってました・・・

NE570N・・・




V3102DとV3205Dは今回試す為に仕入れました。(下の2つ)
DM-2のMN3205をそのままV3205Dに交換してはいけません。
最大定格電圧が違いますから。
(訂正:「最大定格電圧」ではなくて「動作電圧」でした。)


NE570NはSignetics製のものです。3種類ありました。
一番上のはちょっとレアなタイプかなー。(どうでもえぇがな)
真ん中のはよくあるタイプ。
下のもレアかな。「THAILAND」の表記がただの線になっちゃってる(笑
横着すな(笑
Philips製のものも出回ってますよね。




まぁこんな感じで部品を装着していきまして・・・







はい、アナログ・ディレイの実験機が完成しました。はやっ。



2つあるトグルスイッチは1つが「MN3205仕様---V3205D仕様」の切替で
もう1つが「510A---510B」の切替です。






早速、音を出して軽く調整します。

完璧ですね。
私が持ってるDM-2と全く同じように発振します。
調整の仕方についてはあとで詳しく述べます。

 ダイオードやトランジスタは同等品ならどれでも正常に動作します。
が、現物に付いているD5のダイオードは何でしょう?
外観で見比べても同じものは見当たりません。



 4つ並べたうち一番上の黄色い帯のやつがBOSS指定の1S2473ですが
後期型であるこの現物には黒い帯のものが付いてます。
上から2番目の1S2076Aが近いけど帯の太さが違う。
その下のは1S1588と1N914ですが、どれも外観が違います。
でもどれを使っても音や動作には影響ありませんでした。

続いてトランジスタ。
回路図では2SC732TM-GRになってます。
とりあえずBLとGRを用意。



Q6とQ7は回路図では2SC945Pで私の現物は2SC1685になってますが
今回は電子スイッチは使わないので関係ありません。

2SC732-GRはちょっとレアかもです。BLなら入手しやすいですが。
でも普通の人はGRにこだわる必要はありまあせん。BLでも動作は同じですし
ぶっちゃけ2SC1815のYでもGRでも2SC380でも2SC1906でも何でもOKです。
まぁBOSS社も時期によってその時の一般的な汎用トランジスタを使ってますし。



 さて、DM-2の自作で「全く発振しない」とか「あまり発振しない」とか
あるいはBOSSのオリジナルでも「発振の程度に個体差がある」
などという話をよく聞きますが、ちゃんと調整をすれば解決します。

これはオシロスコープで波形を観測しながらの調整になります。
BOSS社の「SERVICE NOTES」にある「ADJUSTMENT」に従って調整しましょう。

当然ですが、この調整を怠ると発振しなかったり正常に動作しないことになります。



まずは【CLOCK】からです。
電源電圧を8Vにして、IC4の4番ピンの出力波形をオシロスコープで観測し、
 T(1周期)が146μsになるようにVR3を設定すします。(周波数=6.8kHz)

これは「つまみを最小にしてディレイ・タイムが一番長くなるところ」の調整なので
絵のように、REPEAT RATEのつまみを最小の位置に合わせて行います。

IC4の4番ピンはIC3の2番ピンでも同じです。
私はここにTPを出しておきました。


オリジナルのTPはここにあります。
ジャンパー線ではなく、プローブを引っ掛ける為のものなので
引っ掛けやすいように山なりになってます。




 じゃー、まずはオリジナルの波形を見てみましょう。
縦の線が見づらいですが勘弁してください。



これがBOSSのDM-2の波形です。
 1周期が3div(3メモリ)くらいの長さになってますよね。
これは今1divが50μsに設定してありますので、150μsくらいということです。
146μsになるようにとのことですから、だいたい合ってますね。

 カタログによると、この状態でディレイタイムが300msということです。
「ピ」って音を出したら0.3秒ごとに「ピ・・・ピ・・・」です。
1分間で200回という間隔になるはずです。
実際に音を出して測ってみたら194回でした。

もちろんきっちり合わせることは可能ですが
まぁBOSSのはオリジナルのままで残しておきましょうかね。



では次に、今回製作した実験機を調整してみましょう。
VR3を回して、さっきのオリジナルと同じ長さになるように調整します。


これでだいたい同じですね。
実際に音を出してもさっきのオリジナルと同じ間隔でリピートします。
これでREPEAT RATEのつまみを右いっぱいに回せばちゃんと発振します。

で、今度はきっちりと146μsに合わせておきましょう。
レンジを1div=20μsに変えて、1周期が7マスと1目盛り半になるように調整します。


1マスが20μsで1目盛りが4μsですから、140+(4×1.5)=146μsです。

このようにちゃんと調整すれば、
発振しないとか個体差があるとかっていう問題は解決します。



次は【BBD BAIAS】です。 BOSSの「ADJUSTMENT」の項目では2番目に掲載されてますが
本来はこれを最初に調整するべきだと思います。
まずこのVR1を合わせないとまともに機能しませんから。



インプットジャックへ200Hzの正弦波を入力して
REPEAT RATEの設定ポジションにかかわらず歪みが最小になるようにVR1を設定します。
500Hzでも1kHzでもいいです。
私は自作の正弦波発振器を使っています。



REPEAT RATEを回すとこの波形が様々に変化しますが
VR1のポイントがずれると波形が小さくなってしまいます。
波形が最大になるようにVR1を調整しますが、とてもシビアです。
音を聞きながら調整すると分かりやすいです。



最後の調整は【CLOCK LEAKAGE CANCEL】です。




各つまみを最小にした状態でVR2を回転させて
入力信号が無いときに、2つの出力波形が1点に集まるように調節します。

絵の左側の状態、つまり、2つの信号が分離している状態がこれで


VR2でこの2つが重なるように調整したのが、絵の右側の状態のこれです。




表示のさせ方なんだけど、横線にして重ねた方が見やすいかも。
分離した状態がこれで、


2つが重なるように調整した状態がこれ。


まぁ、どうや表示させるかは好みなので自由ですが、
どちらにしてもちゃんと調整しないとノイズやハウリングを起こします。





以上で調整は終わりです。



 さて、DM-2の回路で一番重要なのは「電圧のコントロール」だと思います。

エフェクターってだいたい9V電源じゃないですか。
MN3205っていうのは本来5Vで使うものなんですが
一応4V〜9Vで動作するもので、最大定格が9Vになってるわけですよ。

なので、電源電圧が9Vだとギリギリなんです。

一応オリジナルのDM-2で試してみたところ
(ACA仕様はGNDの電位が0Vではないので、乾電池モードで測定)
5.4V〜10.4Vの範囲なら一応、なんとか動作します。

そして、ACA-100を使った場合のMN3205へのVcc入力電圧は実測9.02V〜9.14Vになってました。
不安定だし、ギリギリです。

しかもギリギリセーフではなくて、ギリギリでアウトです・・・


だから、この回路は絶対に動作電圧をもっと下げるべきです。


ただし電源は9Vじゃないと面倒なので、エフェクター内部で動作電圧を下げるべきです。
(念の為言っておきますが、ACAやPSAなどとは別の話です。)

MN3205のデータシートを見ても本来は5V仕様なわけですから
上限ギリギリで使うのは危ないと思いますね。

でもデータシートによる動作電圧が4V〜9Vということは5Vじゃ今度は低くて危ない。
実際の動作を確認しながら試してみても、7Vくらいがいいんじゃないかと思います。
(以前製作した「可変電源装置」が大活躍してます。)


さて、ここであることを思い出します。

私が持ってるこの後期型は「ET5214-510A」ですが、
同じ後期型でも「ET5214-510B」というのがあります。
一体何が違うのでしょうか?

実は、冒頭でも述べましたが、
510Bからはダイオードが1つ追加されてます。
Vccの9Vから22Ωを通ったあと、BBDの電源へ入力する際にダイオードを入れてます。
0.6Vの電圧降下が目的のようです。

BOSSったらみんなに内緒で電圧を下げちゃってるんですよね(笑



そう。でもそれでいいんですよ。
この回路はもっと動作電圧を下げるべきなんですから。



でもまだ下げ足りません。
このあとBOSS社は、さらに電圧を下げようと必死になります(笑

「DM-3」の登場です。

今回のこの電圧の件で気になってDM-3はどうなってるのか回路図を見てみたら
なんと、BBDへ入力するバイアス電圧をわざわざ7.5Vにまで落としてるのを見つけました。





そうです。そうなんです。
だから言ったでしょう。
そこまで電圧を下げるべき回路なんですよ。



510B基板でダイオードを追加して電圧を0.6V下げてもそれでは足りなかったということです。
つまり、510Bへの改良もDM-3へのモデルチェンジも、電圧関係の改良です。
「0.6V下げてもまだ足りなくて7.5Vにまで落とした」ということですね。





2011.2.19
2011.2.22改定
2012.12.5改定

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