BOSS/OD-1をディスクリートで製作
ギターダー
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No.20「BOSS/OD-1をディスクリートで製作」


 OD-1をディスクリートで製作します。
こういう試みはかなり以前からやりたかったし、人と違う事をしたいですし。

 なんだか色々な宣伝・広告を見てるとですね、たまにディスクリートのものってあるんですよ。
でも「ディスクリートなんだぞ」ということを強調しておきながら
単なるブースターやファズだったりバッファだったり・・・
だいたいそういうのに限ってわざわざディスクリートという事を宣伝で強調する必要が無かったりとかしませんか?
クリーン・ブースターなんかは元々FET1つだけでも良いものが作れるわけだし。
ヘタするとモノによってはオーバードライブなんかは「あぁディスクリートって歪みが弱いんだ。」とか
「あぁディスクリートってファズっぽくブーミーになっちゃうんだ」とか
ディスクリートのイメージが悪くなっちゃったりもする場合があるんですよね。

そう、つまり「ディスクリートか否か?」というのは論点になるべき部分じゃないし、強調して宣伝する部分でもない。
ディスクリートなら「ディスクリートでどんな回路を組んだのか」が重要なのだと思うのです。

 それに、ディスクリート製品そのものは昔から普通にあるわけで、
要するに「たまたまOPアンプを使わない回路」というのは、珍しいものではないのです。
エレハモの「BIG MUFF」なんかそうですよね。これは昔からあるエフェクターだけど
BIG MUFFが評判が良くて人気があるのは音であってディスクリートだからじゃないし。

 私がやりたいのはそういう「元々OPアンプを使わなくても出来るもの」とかじゃなくて、
「本来OPアンプを使って作られてるもの」を、あえて、OPアンプを使わずに作る。
ということです。
OPアンプを使わなくても、OPアンプを使った製品と同等かそれ以上のものが出来るんだという事を、
自分でやって証明したかったんですね。
設計によってはOPアンプより性能の良いものが出来るということも、言えることなので。
(というか、理論上、今回私が設計したディスクリートは性能が上がるはず。)

その手始めとして、OD-1をディスクリートで作ろうと。
しかも、オリジナルと聞き比べてなるべく似せて作ったとかじゃなくて、
「ディスクリートであることを除けば、回路的にも音的にも完璧にOD-1と同じであること」が前提。


じゃ、いきます。


 まずは基板ですね。
OD-1の回路をディスクリートでということになると、無理に小型化するよりも
ある程度は面積があった方が精神衛生上も、性能的にも良さそうです。
OD-1にDiscreteの「D」を付けて「OD-1D」です。「OD-10」じゃないよ(どうでもいいけど)



 抵抗器やダイオードはなるべく寝かせるような設計にしました。
これは寝かせられる部品をハンダ付けし終わったところですね。


 このくらい(大きさや回路)のものだと抵抗器を立てても寝かせてもあまり変わらないけど
厳密にはなるべく立てない方がいいし、立てる場合は「向き」も考慮する必要があるんですね。
ただ、あまり意地になって「絶対に全て寝かせるんだ」とかっていうのは
プリントパターンに悪影響が出る場合もあるし、
「立たせる場合にむき出しの足を上に出す方の向きはこうじゃなきゃいけない」とかっていうのも
どちらかというと信号線側は「もやし配線」みたいに空中に浮かせない方がいいとかあるけど
他の部品との距離や配置などにもよるので一概には言えませんね。

むしろ、作る度に方向がバラバラなのは嫌ですよね。
私は自分用に作る設計図には立てる抵抗器の向きを指定して書いてます。



コンデンサは積層型のやつを使いたいのですが・・・



 このコンデンサには元々0.018μFという容量のものがメーカーで用意されてません。
メーカーのデータシートによると0.015μFの次が0.022μFです。
容量の許容差は±5%です。(ランクによっては±10%のと±20%のもあります。)から、
0.015μFなら0.01425μF〜0.01575μFで、0.022μFなら0.0209μF〜0.0231μFということです。

でも私はどうしてもShizukiの積層型金属化ポリエステルフィルムコンデンサを使いたいのです(爆

 そこで、0.0033μFならあるので0.015μFと0.0033μFを合成容量として0.0183μFを作りだします。
そうすればもし0.018μFの±5%というのがあるとすれば0.0171μF〜0.0189μFということになるので
0.0183μFならOKです。
念の為に、合成前の0.015μFと0.0033μFの許容差内での最大容量と最小容量を計算してみても
0.017385μF〜0.019215μFですからまぁこれで充分だと思います。

ここまでこだわれば充分「変態」です(笑

 まぁもし0.018μFのところに0.015μF使ったとしても何ら問題ないし、
もしこの変化を耳で聴いて分かる人がいるとしたら
その人は市販されてる新品の同じエフェクターを数種類並べて聞き比べても「全部音が違う」ということになるのかな。
全ての抵抗器やコンデンサには許容差がありますから。

使う場所にもよりますけど。

コンデンサに限らず、こういった細かい調整は他にも行われてます。
場合によっては合成抵抗や、共用する抵抗器を1本にまとめることもあります。



 トランジスタが装着されました。えへへ。
数種類のトランジスタを使い分けてます。



 えーとですね、トランジスタを何個使おうが自由に設計出来ますので
はっきりいってトランジスタを40個くらい使うOD-1も設計出来ますし、
また、トランジスタの数が同じでも違う回路にしてみたりも自由に出来ます。

逆に、もっと少なくても一応出来るんですけどね。
やっぱり自分の中で「最低限必要な性能」というのもありますんで。

とりあえず今回は基板面積や性能のことをトータルで考えてこのくらいにしました。



 電解コンデンサは気に入ってて使い慣れたMUSE-FXがとっくに生産終了なのです。
まだ在庫はあるのですが、他のものを探していました。
で、これです。



黄金色のMUSE-FGです。
メーカーでもFXの終了に伴ってその代替品ということで出したものだそうです。



 ケースの加工も寸法がシビアになってきました。
スイッチクラフトのジャックってオープンとBOXがあるんですけど、
ジャックを差し込んだ時の感触がオープンタイプの方がカッチリしてて好きなんですよ。
ただオープンタイプの方が場所を取るんですね。
なので、私はこの大きさのケースだと可変抵抗器と干渉する関係で今まではBOXタイプを使ってたんですけど
絶妙な寸法でオープンタイプを使うことが出来ました。

国産のものでもっとコンパクトなやつもあるんですけどね。
かなり前に、国産のオープンタイプのジャックで信用できないことがあったので、
今のところスイッチクラフト派です。





組み込んでみました。

おおぉぉぉ!どうですか!

これぞギターダーのオリジナル!!

OD-1 Discrete version の完成ですよ!!

 

音を出してみました。
BOSSのOD-1と比べても、ざっと弾いた感じ、まずは全く同じ音です。

トランジスタで、OPアンプを使わずにオール・ディスクリートで、
OPアンプもののエフェクターを完璧に再現する設計が出来たということです。



では、オシロスコープで波形を比べてみましょう。



オシロの画面は左側がBOSSのOD-1で、右側が今回製作したディスクリートOD-1
まずはDRIVE最小。まぁ同じですよね。

 


次にDRIVE最大。 あれ?

 

波の高さが1/4マス分くらい違う?
BOSSの方が電圧が高い?
音量に差は無いんだけどねぇ?


ちなみに、BOSSの方のLEVELをちょっと下げて比べるとこうなります。

 

かなり似た、ほとんど同じ波形になります。
厳密にこの形だけをよく比べればそりゃぁ微妙に違いますけど、実際に出てる音を比べると
これってそこらのプロでも耳で聞いて確実に聞き分けられるような違いじゃないです。
つまり、音(歪みの音の質)自体は同じだということです。



 じゃぁこの波の高さの正体は何なのか。
再度、ギターアンプに繋いで音を出して確認してみました。

両方ともLEVELとDRIVEをフルにして、アンプの音量をグーンと上げていきます。
普通の使い方じゃありませんが、オシロでの波形観測と同じ条件で試すということです。
デカ過ぎるほどアンプの音量を上げていきます。



すると!



BOSSのOD-1は常に「ブーーー!」っていうのに対し、
今回製作したディスクリートのOD-1は「し〜ん・・・」としてます!!

これが、ディスクリートの凄さ?
まじで信じられないほどの違いです。


BOSSのOD-1はACA-100対応製品なので、アダプターはちゃんとACA-100を使ってますし
私のディスクリートOD-1には9Vに定電圧化されたパワーサプライです。
アンプのつまみもエフェクターのつまみもそのままで、それぞれをON/OFFして比べてるだけです。


つまり、音量・音質が全く同じなのに、ノイズが全然違うんです!!

「ブーーー!」と「し〜ん・・・」ですよ先生!!




ちなみに、音が違うとどのくらい波形も変わってくるのか、
試しにBOSSのSD-1と自作OD-880も見てみましょう。



まずはSD-1から見ていきます。左がトーンを絞った状態。右がトーンをフルにした状態。

 

トーンをフルにすると波が崩れて尖がってきますよね。

ちなみにSD-1って、かなりOD-1っぽい音が出せるんですが
それっぽい位置にTONEやDRIVEを合わせると・・・



どう?さっきのOD-1の波形に似てる?
頑張ればもうちょっと近い形になるかな(笑

波形を見ながら同じ形を作っておいて、その後で音を出してみると
ちゃんとOD-1っぽい音が出てくるんですよ。


じゃぁOD-880いきますか。
左がDRIVE最小で、右がDRIVEを上げていった状態。

 

OD-880って音がOD-1に似てると思ってたんですけど
こうやってみると全然違いますよね。

DRIVEをフルにすると・・・



こんなになっちゃうんですよ。

波形で見ると、歪みの特徴は機種によってこれだけの差になって現われてくるんですね。

こうやって見ると、今回製作したディスクリートOD-1が
いかにオリジナルのOD-1と同じ音か、もしくはかなり近い音かということが分かると思います。

そして、同じ音のまま、ノイズが大幅に削減されたのです。
削減というか、全く出ないと言っても過言では無いくらいです。

「ブーーー!」に対して「し〜ん・・・」ですから。

実際の演奏ではLEVELもDRIVEもフルにして「ブーーー!」って鳴りっぱなしなほど音量も上げないとは思いますが
これは私が設計したディスクリートの方が性能が良いと言わざるを得ません。



この実験では2台を並べて繋いでるので、
BOSSのエフェクターはOFFにしてもバッファ回路を通ってる為に、
厳密にはバッファ1つ分の差があるということになるわけですが、そこまでの違いは波形に影響しなかったです。

 逆に言うと、例えば「トゥルーバイパスにしてバッファを省いた効果」とか、
「配線材をビンテージなものに変えた効果」とかっていうような差は
この方式の実験での波形観測では違いを波の形では確認出来ないだろう。ということです。

でもこれはこれで興味があるので、
そのうちバッファはバッファだけで色々と実験してみたいと思います。



最後に・・・

 勘違いしないで欲しいのは、「ディスクリートなら高性能」という風に単純に思わないで下さい。
世の中にはハッタリで「なんとディスクリートです!高性能です!」っていう宣伝をしてるところも見かけます。
本当に高性能なら良いのですが、単なるバッファだったり単なるブースターだと私はガッカリしますし
ファズっぽい単純な回路をちょこっといじっただけのものとかだと高性能だとは思えません。

 もう1つ、私はOPアンプも好きですよ。
OPアンプが性能悪くてダメだとかっていうことじゃないんですよ。
小型化するならOPアンプの方が有利ですし、有名で人気のあるエフェクターもOPアンプものが多いですし。
ただ、「ちゃんとした知識があって、きちんと設計すれば」という条件が揃えば、
OPアンプのものを超える性能のエフェクターが出来るということです。

2008.7.5


(追記)
 ずーっと弾き比べて遊んでたんですけどね、
やっぱり全く同じと言い切るのはちょっと違うなぁ。
なんていうか、ギラつき感?違うなぁ・・・艶っていうのとも違うけど、サスティーン?アタック?
うーぅむ・・・
何が違うかをどう表現しようかと何度も弾き比べるうちに夢中になって時間を忘れる感じです(笑
また追記するかも(笑

2008.7.5


(追記)
 いやー、誰が比べても分からないくらいに調整しようかとか思ったけど、もうね、そういうことする必要は無いね。
例えば同じOD-1でもOPアンプを変えたりすれば音は変わるし、アダプターか乾電池かとかでも変わるんだから
やっぱこういう微妙な違いはあっても当然なんだな。と。
そうだねぇ、まぁアダプターから乾電池に変えた程度の違いかな。うん。それだ、それ。まさしくそんな感じ。

ま、格段にノイズが減ったOD-1ってとこでしょう。

2008.7.7

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