sobbat/DB-2の小型デュアルOPアンプバージョンの製作
ギターダー
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No.18「sobbat/DB-2の小型デュアルOPアンプバージョンの製作」


 えーと、たまに面白い特別注文を受けるんですけど
出来そうもないものもあれば、出来そうなものもあるわけです。
で、今回は「頑張れば出来るかな?」というものだったことと
自分でも興味があったので、やってみる価値はあるかなと思いまして
 まぁ他にも買ってくれてるし、
「へっ!金は惜しまないぜ!いくらでも出したるわ!」(注釈1)って言うし、
(注釈1:礼儀正しくて丁寧な言葉使いでした。)
今まで使ってきたエフェクターが一緒だったり、お互いバイク乗りだったりで
話が盛り上がったりしたので断りきれなかっ・・・あ、快く依頼を受けることにしました(笑

依頼内容は・・・

「DB-2をスイッチと電池が要らないから小型にしてクワッドのOPアンプをデュアルにして欲しい」

というものです。

 このHPの製作記事のNo.1を見て喜んでくれたようで、DB-2のユーザーでした。
私は最初から言ってますけどDB-2って好きなんですよ。
市販の中では数少ない「使えるエフェクター」ですから。(褒めすぎだな)
 最初は小型化が目的ということでオリジナルと同じクワッドOPアンプだったのですが、
話の流れ(注釈2)から最終的にはデュアルOPアンプでということになりました。

(注釈2:「話の流れ」)
これ・・「話の流れから」って簡単に言っちゃってますが・・・
注文内容に関する何通ものメールのやりとりと、同時依頼の他の改造も含めて内容の濃い展開だったので
こんな一言で表現できちゃうんだぁ・・・っていう感じがしました・・・

  既にクワッドでプリントパターンの設計が完成してからの変更だったのと、基板スペース的にアレだったのですが
「(歪みのOPアンプは換えずに)トーン用のOPアンプを色々な(種類の豊富なデュアルの)OPアンプで試したい。」
ということで、金額も跳ね上がって4万円で受けました。
量産性のあるものならもっと安く出来るんですけど、専用設計だとそれなりの金額になってしまします。

 でも本当に熱意のある方でいらっしゃいまして、その情熱たるや相当のものです。
しかも、他にもモデファイDB-2やら何やらを色々持っててTS9やSD-1も使い分けたり
デジタル系も色々と所有されてるようで、電源にもこだわってます。
今回の依頼のきっかけとして、最初にうちの「GUITARDER/OLD QUAD-1」を購入してくれたんですが、

「ギターダーさんのキレイな仕事と実際のOLD QUAD-1を見て、とても他の人に頼む気にはなれません。
何卒よろしく検討お願いします。」

とのことなので、これは期待に応えなければいけません。

 ちなみにうちのお客さんってモデファイ好きの方とか、ハンドメイド好きの方とかよくいらっしゃるんですけど、
他でやったモデファイとか他で買ったハンドメイドと比較してうちのを褒めてくれる方が本当に多いんですよ。
嬉しいですよね。

前置きが長くなりました。

では、レッツ・ラ・ゴーーー!!!


 まず、「ケースをどう使うか。」です。
ジャックやつまみのレイアウトとか、基板の固定方法とか
そういうのを先に決めます。

そうすることによって、基板の大きさと形が決まるんです。

基板を有効に使う為に、こんな感じにしました。



 基板はスペーサーでネジ止め。
可変抵抗器と接触しない高さにしても部品の高さはケース内部に収まります。
ジャックが真ん中あたりにあるのが一般的ですが
それだと基板がジャックの上側と下側に分かれてしまいます。
だったら寄せましょうと。で、ジャックは上に上げてもいいでしょうと。

「寄せて、上げる。」

おぉ!いいじゃないですか!

 HAMMONDのケースは好きなんですけど、傾斜があるので設計が微妙に大変です。
表と裏で寸法が違うからです。
裏側から入れる基板の位置を決めて、表側からスペーサーの穴位置や
基板と干渉しないジャックの位置とかを割り出すとですね、
ケースの厚みが2mmあるのと、傾斜で1mm分の差が生じるので
それを考慮しないと1〜2mm合わなくなりますね。
なのでジャックの穴位置が裏側で上から26mmの場合、表側からでは上から25mmになります。

 ちなみにこの図面でのHAMMONDの1590Bのケース自体の寸法は
私が現物をノギスで測ってから便宜上小数点以下を繰り上げ・切捨てなどしてるので、
メーカーのデータシートの寸法とは若干異なります。

「俺には、俺の寸法がある。」(意味なし)


 さーて、基板の大きさと形が決まったのでプリントパターンの設計です。
これが一番手間のかかる作業ですね。
難しいけど面白い。

 ただ単に道を作るだけならどうでもいいんですけど
これには自分なりの法則がいくつかあります。

 それは太さとか、隣のパターンとの隙間とか、GNDの面積とかVccの面積とかですけど
低周波回路と高周波回路でも異なります。
エフェクターは低周波回路なので、低周波回路なりのものを設計します。
時には迷うこともあり、ジャンパーを使うこともありますが
ジャンパーを使うことが必ずしも悪いというわけでもないし、
部品の配置などの見た目を優先させることもあります。
 ただ、信号線で広い面積のパターンから急激に細いパターンを通過するとかはダメだし、
部品を載せてみたら干渉しちゃったとかはダメですよね。

 回路図から迷路のようなパターンにすること自体はすぐに出来たりもしますが
何回も難解もちょこちょこと微調整とかするので、普通は数日かかります。

おそらく他人から見たらどうでもいいような所をいつまでも微調整してます(爆

出来たのはこんな感じです。(右の小さいのは別の実験用のやつ)
プリント基板としてはまだ仕上げ前の段階です。




まぁ一応仕上げた基板はこんな感じね。



 で、部品を載せていくわけですよ。
この黄色いコンデンサはShizukiの「積層型金属化ポリエステルフィルムコンデンサ」です。
優れた自己回復性能を持ってるそうで、いくつかのタイプがあります。
これはその中の「Type SMC」というやつです。気に入ってます。



さてさて、電解コンデンサですが
いつものMUSE-FXです。緑色に輝いてます。



 でもこれ、もうとっくに廃番品なんです。
しばらくは在庫ありますが、これの代わりを探してるところなんです。
候補はあるんですけどね・・・

 あとこのFXはですね、廃番で生産終了なのですが、
2,000個単位で発注すると作ってくれたりするようです。(2008.6.26現在)
そもそも、生産終了の要因は「材料の調達」あたりらしいです。
たまたま材料があれば1,000個単位でも作ってくれることもあるようです。
あ、ここだけの話ですからみんなに内緒ですよ。

 個人的にはトランジスタの2SA872Aが廃番になったことが残念でならないのですが。
これのランクEのやつがすごい良かったんですよ。
電子回路の専門書では定番で使われてたやつなんですけどねぇ・・・
なんでこういうのが廃番なんですかねぇ・・・
今度からメーカーは廃番にする前に私に相談するように!(無理)
手持ちの在庫が100個を割っちゃったのであんまり使わなくなっちゃいました。

すいません。おもいっきり話がそれました。

 それにしてもDB-2、電解コン多すぎ。
MXRなんか電解コン使わないんじゃなかったっけ?
使わない理由もあったなぁ。
電解コンは年数劣化で容量抜けを起こすからだっけ?

また話しがそれ・・・(以下略


ここまで基板を製作して、ふと思った。

「なんか横幅があるなぁ・・ちゃんとケースに入るのか?」

不安になって入れてみた。



入った!入ったよ!

ギリギリじゃん!

すげぇ。



俺の計算もたいしたもんだな・・・・


(足し算と引き算だけど・・・)


ちなみに基板の裏はコーティングします。



 プリント基板が完成した段階でまず酸化防止の為にフラックスを塗ります。
そうしないと、すぐに酸化して変色してしまいます。

さらに、今度は部品を全て装着し終わった段階でフラックスを全て落とします。
そして、新たに酸化や湿気を防ぐ為の専用のコーティングをします。



 ハンダ付けは接着剤での接着とは違うので、しっかりとコテを押し当てて過熱します。
熱が部品の足と基板の両方にしっかり伝われば、吸い付くようにハンダが広がっていきます。
富士山の形が理想とされています。

あー、あったあった。富士山があった。




じゃ、ケースの加工をしましょうね。



 あ、私に加工の話をさせないで下さいね。くれぐれも加工の話題は避けるように。
実際に仕事として産業用機械の加工やメカニックをやってたことがあるからっていうのもありますが、
私は加工についてはうるさくて、穴あけの話だけでも1時間は出来ます。もうね、病気です。病気。

ドリルって切れ味が悪くなったら研いで使うのでえんぴつのように短くなっていくのですが
そのドリルの研ぎ方なんかも奥が深いんですよ。

 NCマシニングセンターの加工プログラムをGコードとMコードで
インクレメンタル方式でプログラムするのが得意なんですが、
こういうプログラムの仕方はもう古くて、もっとオートメーション化されてますね。

 でもボール盤とかフライス旋盤とかっていう基本的なものをちゃんと使えるかどうかで
NCとかの自動加工のプログラムも良し悪しが出ますから。
単なる穴開けでも切削送り速度や回転数、下穴はどれくらいが最適か?
1つの穴を何回に分けて開けるべきか、などなど。素材によっても変わります。

すいません先生。また話がそれました。

(言わんこっちゃない、加工の話なんかさせるから・・・)


さぁ、あとは組み込みです。



もうバッチリ図面で描いた通りです。

・ケースにぴったりの基板。
・確実な4点ネジ止め。
・無駄のないスペース。
・個性的な外観。
・輝くパーツ(爆

3つあるデュアルOPアンプはそれぞれ
・バッファ用
・ドライブ用
・トーン用
です。

 依頼主さんの「トーン用のOPアンプを交換して試したい」という要望があるので、
クワッドOPアンプで4回路が1組のセットになってたのを2回路の2組に分ける時に
トーンのBASSとTREBLEで1回路ずつ使ってあるやつをペアにして「トーン用のOPアンプ」にしました。

 もちろん「ドライブ用」のOPアンプを交換するのも「バッファ用」のOPアンプを交換するのも自由です。
ちなみにトーンの効きく周波数帯域を決定するのはコンデンサなので、OPアンプを交換して変わるとしたら
それは周波数帯域とは別の、ニュアンスとかの部分だと思います。

 ドライブやバッファなどの増幅回路などに使うOPアンプは、普通の回路設計者の意見からすると
定格の範囲内で使うとかっていうことさえ守れば「何でもいいだろ、どれでも同じだろ。」ということになるそうです。
音の質を変えるなら素子の個性じゃなくて回路や定数で変えるのが設計者ですから。
ところが実際にはOPアンプを変えるだけで音は変わりますよね。
好みの音色に調節してということは出来ないにしても、「交換してみたら偶然こういう風になった」という事は実際あるし
それを行き当たりばったりカットアンドトライで試すのも楽しみの1つですよね。



 音はもう最高ですね。
まぁ基本的にはオリジナルも、以前自分で製作したやつも同じです。
今回のもOPアンプの内部回路を分割しただけで、回路自体は同じですから。
大音量で鳴らした時に、分かる人は分かるくらいの差が出てくると思います。

これにはJRC(NJM)4558DDを3つ搭載しておきましたが、
4580とか5532とか、変化が分かりやすくていいと思います。

 最初の依頼はクワッドのままだったので、クワッド版でのこのサイズも基板を設計してあります。
今回完成したこれは特別注文の依頼品なのでお客様のところへ嫁に行ったので
私の手元にはもうありません。

親としては寂しいです;

自分用に、クワッド版とデュアル版を製作しようかとも思いますが
私はスイッチが無いと使わないので迷ってます。

セレクターを使えばエフェクター自体にはスイッチはいらないんですよね。
プログラマブル・セレクターでも作るか・・・

いや、いっそのことマルチ・エフェクターでも・・・

冒険は果てしなく続くのであった・・・



2008.6.29

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