「顔のない眼」1959年フランス

ジョルジュフランジュ監督 ピエールブラッスール アリダヴァリ

「<フェイス/オフ>の話をしてたら、この映画の話になったのね」
「ジャンルドン原作、ボワロー・ナルスジャック脚色、ピエールガスカール台詞の、古典的怪奇メロドラマの傑作!僕はこの悪趣味なユーモアが大好き!」
「はあ・・(笑)狩刈くん好みだとは思うけれど、わたしはちょっと・・夢に見そうでイヤ(笑)
「モーリスジャールの音楽がブラックでいい・・軽快に小気味よくて」
「全体にブラックユーモアという感じはするけれど、別に面白がって作っているんではないと思うのよ、女学生を誘拐するあたりも、ニヤニヤできない真面目さがあったし」
「とある医学博士の娘が自動車事故で顔面ぐずぐずになる。で、顔の皮を剥がれた若い女の死体が川からあがる・・博士は娘だと身元確認し葬式までやるけれど、実は娘は生きていて、博士は娘の顔を治そうと若い女を誘拐してきては顔の皮を剥いで移植しようとしている・・」
「そういう設定ていうかストーリーの発想自体が、グロテスクよね」
「だから笑える。これは面白がって見るべき映画だと思うな、アリダヴァリは博士の助手にして実は奥さんなんじゃないかっていうあたり、彼女も博士によって顔を移植されてるっていうあたり。そこまで駄目押しするには意図があるんだろうって思うけど」
「キモチ悪い・・」
「顔のカワを実際に剥ぐ手術の場面は、なかなかブキミだ(笑)突き刺さったハサミに囲まれた娘の顔!包帯マニアにはたまらん(笑)」
「物語としては単純明快よね、しかも、どうなるんだろーって最後まで見せる。死んだはずの娘から電話をもらった元婚約者が謎に気づいて、警察と一緒に謎解きを始めるあたりから、それまでにないサスペンスが始まって、少しノレた」
「囮捜査だよね、で一度ははぐらかされて警察も帰っていく・・ああよかった!(笑)僕はそこで止めて置いた方が良かったんじゃないかって思うんだけど。謎は謎のままに物語は暗転していく・・みたいな」
「けどそれじゃ(笑)後味が悪いだけ。ホント、あのマスクを被された娘の顔はユメに出てきそうなくらいよ。<犬神家の一族>の助清状態(笑)」
「(笑)ほら、笑えるだろ?」
「まああんまりノレなかったからわたしはアレコレ言いたくないけど、アリダヴァリは存在自体がコワイ。ゴツイ(笑)」
「ピエールブラッスールは徹頭徹尾、冷徹ながら、娘に話しかけるシーンだけ父親らしい人情味が出ていて良かった。それでいてああいう結末というのは、なんか親の心子知らずだなーって思う」
「娘は度重なる手術の失敗と誘拐殺人に絶望して、アリダヴァリを殺し、犬たちに父親を噛み殺させる・・」
「結果してそうなっただけだよ」
「・・で自分はマスクをつけたまま夜の森に入っていく」
「ま、警察が謎を解いて一件落着というよりはいい、余韻は残る終わり方だった。僕はこれ、一種のグランギニョールだと思うね、決して勧善懲悪ではないが因果応報という終わり方」
「実はあの娘の素顔はとても美しく澄み切っていて、天使みたいだった」
「うん・・エディットスコブ。彼女はLブニュエルの<銀河>ではマリア様になって出て来るんだ。ところで僕は子供の頃にこういう怪奇映画を見てそれ以来忘れられないんだけど題名も何も分からないんだ、それっていうのはね、ある男が多分殺人鬼の屋敷だかに入り込んでね、そこに大理石で出来たみたいな彫刻がある。人の首の像だ。で、それを何の気なしに触っていると、次第にバラバラと表面が崩れだして、男は驚いて夢中で掻きむしると中からなんと!ぐずぐずに崩れた人間の顔が出てくる!っていうんだけど・・こんな映画、知らない?あれ、女史のやつ、いなくなっちゃったよー」
(1999.1.20)

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