「ワイルド・エンジェル」1966年 アメリカ


ロジャー・コーマン監督 ピーター・フォンダ ブルース・ダーン

「こないだ長谷部安春監督の<野良猫ロック>を見たんで、バイク映画の元祖のこっちでも見ようかなーって勢いだけはあったけど、まあ内容は・・(笑)」
「一見、どうしようもないよねぇ。もっともコーマン監督作品だし、時代が時代だし題材も題材だし、ここはマジに語っても仕方ないわけで。ただ僕はこの映画を中学生くらいの頃に東京12チャンネルで見て、音楽なんか強く印象に残ってたんで実に懐かしかった。あの時見たのはやっぱりこの映画だったんだな、っていうよな懐古趣味があった」
「そういう個人的な思い出がないと見ていてツライの。主人公はヘルスエンジェルス。仲間ルーザーの盗まれたバイクが見つかった!ってことで砂漠のメキシコ人街まで押しかけて行って喧嘩沙汰、警官が来て逃げる途中ルーザーは撃たれて入院。グループのリーダー、ピーター・フォンダは重傷のルーザーを取り返そうと病院を襲撃、それで案の定、彼は死んじゃって、今度はお葬式を出すために皆で教会へ押しかけて、そこでランチキパーティ、最後は墓地で近所の住民と乱闘。また警察が来てバイク野郎たちが逃走するなか、Pフォンダだけは全ての責任を取るかのように一人で残る・・」
みんなバカどもだよね(笑)、牧師に『君たちの要求はなんだ?』とか言われて『自由だ、酒を飲みたいんだ』とかね(爆)。Pフォンダは、しかしさすがにこの台詞をマジには言わず、自分の言葉のアホらしさを十分に自覚していながら声をひっくり返すという優れた大根役者の演技をしてみせてくれたあたりに、まあ救いがあるというのかナンというのか・・そのへん、この映画は実は確信犯だったりする。決してヘルスエンジェルスの礼賛映画ではないし、若者たちの無軌道で傍若無人な振る舞いにはシンパシーを寄せてない
「まあねぇ。これだけおバカな展開が続くと映画それ自体の批評精神が発揮されてきて、真面目に見入るよりはバカバカしさに笑っちゃえ〜って感じがするの。ルーザーの死体をお棺から担ぎ出すあたりはもう落語みたいな悪ノリで大笑い」
「そうそう、基本的にはこれ、やはり<イージー・ライダー>とは語っている次元がまるで違うんだから」
「あれれ、狩刈くんは<イージー・ライダー>については沈黙を守るんじゃなかったっけ?」
「あ、そうでした(笑)でも言わんとするところは女史には分かるでしょ? <イージー・ライダー>は60年代アメリカの精神的行き詰まりと暴力による突破という嗜好性を見事なまでにアッケないかたちで凝結させてみせた。あの映画、僕にとっては一種の謎の映画、迷宮の映画というふうに感じているから、実はよく分からない部分が多いんだ。でも今回の<ワイルド・エンジェル>は早々に底が割れてるし、その割り方は例えば、悲しみにくれるルーザーの彼女の描き方とかダンマリを決め込むPフォンダのおバカさ加減で示されてる」
「つまりは底が浅い、っていうことかしら?」
「浅いというより、まあ、そうした志向性にはない映画だっていうことだね、だってロジャー・コーマンなんだし」
「っていうか、この映画はバイクを運転するしか能のないヤツが暗闇のなかでレザーを黒光りさせたり、風のなかで髪をそよがせたり、ぶんぶんエンジンを吹かしてみせたりする、そういうそれだけの映画だ、ってことでしょ。まあそこで、それがカッコいいかどうか、Pフォンダがカッコいいのかどうかは別問題だけど(笑)」
「あはは、そりゃそうだ。キャプテン・アメリカは悩むんだね。彼は自分が悩めない、心の底から明日のこと今日のこと自分のことが考えられない、かといってエンプティではない、ただヤクとバイクとメキシコへの逃走のことしか考えられないでいる浅薄で行き止まりに来ている自分に対して、深い深い違和感を覚えていながら、それでいて突然、ズバン!と撃ち殺されちゃった・・・」
「ああわかった。でも今回のPフォンダは、ルーザーの死とか、牧師の問いに対する自分の答えぶりとか、ナンシー・シナトラ扮する彼女のこととか、いろいろと悩む。彼なりに苦しんでるってわけね?」
「ところが、その苦しみはどれも下世話でバカバカしいものだ(笑)っていう底の割り方を、コーマン監督は言外に観客へ伝えているんだね」
「この映画のPフォンダも<イージー・ライダー>のキャプテン・アメリカ同様に寡黙だけど、今回のピーターが考えていることは、まあまあ、よく分かるのね。ところがキャプテン・アメリカの場合は、分からない感じ・・だから実は逆にナニも考えていないんじゃないか、って(笑)」
「ま。ね。考えていないのと考えられないのは紙一重だし・・とはいえこの映画が<イージー・ライダー>の原型であったいうことは記憶されるべきなんだろうね」
「それとは全然関係ないんだけど、やっぱりアメリカ西部の大自然とバイクっていうのが素晴らしく溶け込みあって、それはそれで風景としてはキマってるなーって感じ」
「僕は大型トレーラーも似合うと思うね。この映画は<イージー・ライダー>よりペキンパー監督の<コンボイ>なんかと一緒に考えるのがいいのかも・・って最後になって急に思ってはみたものの(笑)まぁいいや」

(2008.08.08)




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